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第六十七話 洞窟の中へ


次に装備の話をしよう。

私を含めこのパーティーは魔法系職業が3人。

私とアガサは大きな魔石を備えた杖を。

タバサは純銀のロッドを装備している。

魔石、宝石、そして一部の金属は、

魔法を強化したり、それぞれの属性効果を高めたり低減することができる。


なお私の杖は、グリフィス公国の宝物庫からマルゴット女王公認で引っ張り出してきたものだ。

杖の先端に精霊との同調効果を高めるムーンストーンがはめられている。

各都市やダンジョンの宝物からも、これだけの術具を見つけることは出来なかったことからも、

グリフィス公国の国宝級の一品と見て間違いないだろう。

マルゴット女王からの依頼を無事に果たしたら、報酬代わりに貰いたいぐらいだ。

タバサの銀のロッドは聖属性を高め、闇属性を低減する効果がある。

恐らくビスタール神殿で最高級か、もしくはそれに準じる効果のアイテムと思われる。


そしてアガサの杖には、かつて魔法都市エルドラ領内で暴走した妖精を討ち果たした時に、妖精が残した魔石を埋め込んでいる。

これは術者の内在する魔力の総量を増大し、なおかつ魔法の威力を高めるという

その価値は一国の最高クラスの魔術士が手にすべき一品といえよう。

聞いたらやはり、深淵の黒珠には劣るものの、エルドラ魔法兵団の最大級の術具だそうだ。



それに対して、

ケイジの大剣は業物ではあるが、

恐らく武器屋でも金さえかければ手に入る部類だろう。

稀少な金属と腕のいい鍛治職人の手によるものだ。


また、リィナちゃんの武器はロングナイフの二刀流。

これも上等な武器ではあるが、一般的には入手し易い部類のもの。

 「あれ?

 でもリィナちゃん腰に吊るしているのは剣だよね?」


そこには、革製の鞘に納められた一本の剣がある。

長さも太さも特に目立つものでもない。

まあ、元は剣士職だというから、

別に剣も使えても何の不思議もないけれど。


現在このパーティーでのリィナちゃんの役目は偵察、撹乱、遊撃だそうだから、

メインがナイフ攻撃、剣は戦術の幅を持たすために必要なのだろう。

ケイジだって弓を使うからね。


さて、そんな話をしているうちに、

アークレイの街並みからは遠ざかり、

傾斜の厳しい斜面を登る。

この向こうには底もよく見えない程の大渓谷となっている。

街中には何箇所か、湧き水が出る事もあり、またこの大渓谷の下に流れる川の支流が存在するので、わざわざこの大渓谷を越えようとする必要もない。

誰しもその向こうに何があるのかと視線を向けることがあっても、

目に映るのは荒涼とした岩砂漠だけである。

もっとも、こちら側に支流があるように、

この先の荒野にも、こちらから見えないだけで、いくつかの川があるかもしれない。

それを裏付けるかのように、ところどころ緑も存在する。

目を向けると猛禽類の鳥や・・・

飛行タイプの魔物も大空を舞っている。

つまり大地やその下に獲物が存在するのだろう。

アークレイの街にも時折、空を飛ぶ魔物が舞い降り、

少々の被害を受ける事がある。

そんな時こそ冒険者の出番なのだ。


さて、今度は下りだ。

見晴らしのいい景色も見納め、

後は岩場の足場を注意しながら降りて行く。

道具を使わなければ降りることも出来ないような、急斜面ばかりではない。

既に何組かの冒険者達が往復しているように、申し訳程度のルートが出来ている。

つまり細心の注意を払っていれば、

なんとか降りられるというわけだ。


まあ、ケイジとリィナちゃんなら駆け足でも降りて行けるだろう。

二人はむしろ、私達魔法使い勢を心配して気を遣ってくれていた。

とりあえず無事に全員、

斜面を下り切ることができた。


問題の洞窟への入り口は冒険者ギルドで情報を手に入れている。

最初にここへ入ったパーティーが、

入り口に赤い旗を立てていた。

後続が調査に入る事を想定しての対応だが、

結局、その後、この洞窟にはめぼしいお宝も危険な魔物もないという結果だったのだ。

それでもまだ探索は全て終了したわけではないということで、

調査の依頼は継続中というわけだ。


 「そもそもこの洞窟が怪しいとケイジが睨んだ理由は?」

 「別にオレがそんな深読みしたわけじゃない。

 前回倒した竜が、

 魔人のいる領域に陸路で移動する手段の一つに、このアークレイの土地の名を挙げただけだ。

 だからオレらはこの地で調査を続けていた。

 そして、最近発見されたというこの洞窟が怪しいと最終的に判断した。

 人間が住む領域から、魔人側の領域に移る際、そのどこかの地点に門番がいる事も聞き出している。

 ・・・まあこの情報はダークエルフのベルナールからだがな。」


なるほど。

となると、現在までに、他の冒険者がその門番に出くわしていないのは、


 「門番とやらがこの洞窟の先にいるか?」


 「さもなくば、この洞窟のどこかに隠れているか」

私の最初の答えに返すようにケイジがもう一つの可能性を口にした。


そのどちらかというわけか。

 


洞窟の入り口は、

赤い旗がはためいているので比較的簡単にわかった。

斜面の足場自体はしっかりしていたのと同様、

入り口は強固な岩で囲まれており、

崩落などの心配はなさそうだ。

入り口の大きさも十分で、

身長2メートル位の亜人が入っても苦にはならなさそうだ。

もっとも、中の道もそれだけの広さを保っているのかどうかはまだ不明だが。


 「ライト。」

アガサが光の初級魔術を使う。

少人数の周りだけを明るくする魔法。

本来、未知のダンジョンでの使用には慎重になるべき魔法だ。

何故ならダンジョンに隠れ潜む魔物に、

絶好の目印となってしまうから。

どうせ明るくするなら、

広域全てを光で覆うフィールド呪文の方が安全と言えよう。

その場合は魔力消費が激しくなってしまうのだが。


今回に関して言えば、

この洞窟は魔物が殆んどいないという事なので、

遠慮はしないということだろう。


ケイジが冒険者ギルドから手に入れたマップと地形を照らし合わせる。

リィナちゃんは獣人特有の感知機能で、

辺りを警戒している。

タバサは防御呪文を、

アガサは攻撃呪文をいつでも放てる用意を。


こうやって思うと、

このパーティー、一見バランスが良く思えるけど、

感知系能力が少し弱いかもしれない。

索敵能力はそれなりにあるが、

例えば、霊体系には聴覚、嗅覚は役立たないし、

魔道体にも嗅覚は役立たないだろう、

さらに魔物一部は周囲に溶け込む傾向があるので、視覚も頼りにできない場合がある。


 

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