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第六百六十話 魔王の脅威

ぶっくま、ありがとうございます!!


・・・20年以上愛用していた腕時計が消えた・・・。

有り得ないところからひょっこり出てくる可能性は残っているけども、


心当たりはある。

大体家に帰ると机の上に置く。

机の下にはゴミ箱がある。

ゴミ箱にはコンビニやスーパーのレジ袋をかぶせ、すぐに捨てられるようにしている。


昨日ゴミ捨て前にうっかり手をゴミ袋に手を入れたとき濡れたような感触が・・・。

濡れたものなんて捨ててないのに。

その時点で大して気にも留めずに袋縛ってゴミ捨て場に直行。

その後、ゴミ回収屋さんがやってきて・・・


あれあの感触・・・濡れた感触ではなく冷たい金属の感触だったなんてことは。


喪失感ハンパないっす・・・。


<視点 カラドック>


女王の許可が出たのをダンが確認すると、

それに合わせて騎乗していたドラゴンが上空に向かって耳をつんざくような咆哮をあげる。


どうやらそれが合図なのだろう。

しばらくすると遠方からさらに数匹のドラゴンが近づいてきた。


魔王到着のための下準備もダンの役目らしい。

彼は宮殿の兵士たちに向かって大声で叫ぶ。


 「あー、すまねぇ!

 その辺り空けといてくれー!

 ドラゴン六匹分だーっ!」


つまり乗っている人間も六人、てことだね。

すなわちミュラと、例の竜人と、

後はいつものメンツなら、

メイドの魔族と、冒険者パーティーメンバー三人てとこかな。



まあ、しばらく待てばわかるか。


・・・とはいえドラゴンは飛行速度においても他の魔物の追随を許さない。


あっという間にその一団は私たちの頭上にやってきたのである。


白銀の鱗に覆われたドラゴンに跨り、先頭はお馴染み竜人ゾルケトフ。


その後ろにまだ小柄ながら威風堂々とした少年魔王ミュラ。

騎乗するは王者の風格を纏うゴールドドラゴン。


続いてメイド魔族のメナさんと、

結界師オスカ、少年僧侶クライブ、


そして・・・あれ?

確かあと死霊術士の女の子がいたよね?


あ、いたいた。

あの子はまだドラゴンの騎乗に慣れてないのか、ドラゴンの背中でぐったり屍のような姿を晒している。


背中に乗せているドラゴンも気にしているのか、しょっちゅう後ろを振り返っているね。


あ、動いた。

 「ダ、ダン・・・

 カルミラちゃんはもうダメなの・・・

 よってたかって服を脱がされても、かわるがわる犯されても抵抗できっこないの・・・」


流石に城の兵士たち相手にそんな心配はしなくていいと思うよ。

ほら、みんな兵士たちも心外なと言わんばかりの視線を向けているし。


一方、パーティーリーダーの筈のダンは、

こんな事態に慣れているのだろう、それがどうしたというような顔で、死霊術士の女の子を突き放す。


 「なーに、言ってやがんだ、

 お前自身は抵抗できなくったって、

 操ってる死霊ども使ってそこらじゅうに呪い振り撒けるだろうがよ?

 おーい、というわけで、あの女扱う時は優しくしてくれや、

 間違ってもセクハラなんかしようとしたら、一生アソコが勃たなくなる呪いをかけられるからな。」


なんて恐ろしい呪いを使ってくるんだ。

しみじみベアトリチェの黄金宮殿で戦ったときに呪われなくて良かったと思える。


まあ、こっちにタバサがいる時点でそんな悲劇は回避できるとは思うけども。


それにしても魔王のお供は常時この編成で確定なのかな。

考えてみればとてもバランスがいいと思う。

雑事をなんでもこなすダンに、

守りの要、竜人ゾルケトフ、

身の回りをお世話するメイド魔族メナさん、

遠距離からの攻撃も防ぐ結界師オスカ、

万が一ケガをした場合は少年僧侶クライブが治療する。

・・・死霊術士の女の子だけいなくても・・・

あ、いや、そうだね、

今みたいに死霊を使って遠隔攻撃できるのかもしれない。

あるいは死霊を使って探知術のようなマネを・・・。

 

 「・・・ダン、やっぱりカルミラちゃんはお留守番してれば良かったの、

 もうお空なんか飛びたくない・・・。」

 「ああ、でもよう?

 オレらいなくなったら、黄金宮殿にヒューマン一人もいなくなるぞ?

 さすがにお前一人、魔族の群れに残しておけねーよ。」

 「うう、ダンの余計な気遣いがありがた恨めしい・・・。」


 「お前、それ、オレに感謝してんのか、文句言ってんのかどっちだ!」

 


相変わらず仲のいいパーティーだよね。

 

おっ、

ミュラが降りてきたな。

また成長したんじゃないか?

少し背が伸びている。


 「どうやら間に合ったようだね、カラドック。

 見送りにきたよ。」


律儀なことで、と言いたかったけれども正直嬉しいことを言ってくれるな。

魔族領から結構距離もあるだろうに。


あ、チラチラ、リィナちゃんに視線送ってるな?

そっちが本命か。


ん?

そう言えばマルゴット女王も驚いた顔をしているようだぞ?


 「これは・・・そなた、本当にあの女狐の息子か?

 ついこないだまで赤ん坊の姿だったではないか!?」


あ、そうか、

女王は邪龍戦の時、ミュラの姿を見てないものね。


一方、ミュラは女狐の息子と言われて表情を曇らせたけれども、そんな短気なヤツでもないだろう。


 「・・・確か、マルゴット女王でしたか、

 先日はろくな挨拶も出来ずに失礼いたしました。

 異世界において、母があなたのお父上にしでかした件については話を聞いております。

 ・・・母になり代わり謝罪を。」


傍目には魔王が頭を下げたと見えるかもしれないけど、

これは普通にベアトリチェの息子として、ということだね。


もちろん女王も素直に頭を下げるミュラに対して、大人気ない態度など取らないだろうけども。


 「う、うむ、

 ベアトリチェの息子のそなたにまで罪を問おうとなどはせぬ!

 それに元々、この世界の妾の父に対して被害を被ったわけでもないしの!

 その件についてはなかったこととして構わぬぞ!」


ん?

なんか女王の様子が変だな。


いや、もちろん言ってる内容は私の予想となんら変わることがないのだけど。



 「ありがとうございます、

 これで肩の荷が一つ減りました・・・。」


うん、ミュラのほうにもおかしな様子はない。

・・・強いて言えば、ミュラも女王の様子が少しおかしいと感じているか?



 「いやいや、妾のほうもそなたとはわだかまりを解かねばと思っていたものよ、

 そうよな、今晩はお互い時間をかけて話をするとしようぞっ!」


 「「「「母上っ!?」」」」



・・・いかん、

私も反応してしまった。


ここはスルースキル・・・



いや、

ダメだダメだダメだっ!

ここはスルーしたら絶対にいけない場面!



考えてみたら、

私の世界とはまた別の世界とはいえ、

私の祖父はベアトリチェに誘惑されて道を違えてしまったという。


・・・だとしたら、

今度はベアトリチェの息子ミュラに、

私の母が心を揺らされることになるってこと?


そんなもの遺伝子レベルで、我が一族はベアトリチェの血にいいように弄ばれる定めだとでもいうのかっ?


そんな事はあってはならない!

だが、明日にはこの世界から離れてしまう私には何の手立ても・・・!?



 「カラドック兄上様、ご安心くださいませ・・・!」


イゾルテ!?


 「イゾルテ、君は一体・・・?」


 「カラドック兄上様のご懸念はよおく分かりますわっ、

 恥ずかしながらこの私もあの方の美貌には、一瞬魂を抜かれたように思いましたもの・・・!」


危機意識が今ひとつ鈍・・・

いや、頭の中が絶対平和花畑状態にあるイゾルテにここまで言わせるとは・・・


ミュラ、君はなんて危険な男になってしまったのだ。


いや、今はイゾルテの言葉を・・・


 「一国の王たる母上様が心を傾けさせてしまっては、まさしく国の一大事なのでしょうが、

 ただの王女に過ぎないわたくしなら、話は別です!

 この身を差し出してでも魔王くんの脅威からこの国を守ってみせますわ!!」


あ、うん、えっと、

イゾルテ・・・


君の志はすごく立派なんだけど・・・


まさか君までミュラに取り込まれてないよね?

瞳の奥にハートマークなんか隠してないよね?




私は無意識のうちに、この場にいるたった一人の救世主の顔に視線を向けていた。


 「カ、カラドック、何・・・?」


そう、魔王に立ち向かえるのは彼女しかいないのだから。



 「勇者リィナちゃん、

 私がいなくなっても女王たちのことを守ってやってくれないだろうか。

 ミュラを抑えられるのは君しかいないのだから!」


 「・・・そ、それあたしの役目なの・・・」


だってミュラを難なく御せるのは君しかいないだろ?


 「いや、待て、カラドック!

 そもそも魔王を討伐してしまえばお前の懸念は全てなくなるぞっ!!」


うん、ケイジの主張もよくわかる。

だが私とて、これ以上、血を流すのは見たくないんだよ・・・。



 「いや、君たち、僕の意志を無視して勝手に話を膨らませてもらわないで欲しいんだけどね・・・。」


諦めろ、ミュラ。

君は魔王の力を手にしてしまったのだから。



当たり前ですけど、ヨルはお留守番です。

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