表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/748

第六十六話 ステータス公開

ぶっくまありがとうございます!


風が強い。

いよいよこの5人パーティーで初の行動だ。

まず私たちはこのアークレイの冒険者ギルドに向かった。

昨日も来たが、この街は土地が有り余っているせいか、建物同士の間隔が広い。

近場には酒場やら武器屋、道具屋、薬屋などもあるが、乱立しているというより、それぞれで一戸建て住居のようにも見える。

まあ、ちゃんと看板を掲げているからそれが何の店なのかは一目瞭然だ。


大都会や王都のように人口が多い街ではないので、冒険者ギルドのクエストコーナーもそれほど殺気立ってもいない。

みんな、お目当ての依頼があるとか、今日は渋いなぁとか、のんびりしたもんだ。

近場に脅威度の高いモンスターが現れると緊急クエストが発生し、その場合は冒険者達の緊張は一気に高まる。

それはどの街でも共通だ。


 「特に目を引く依頼は出てないね~、

 討伐系でも害獣が出没するので困ってます~くらいかな。」


リィナちゃんが、スルスルと冒険者の間を掻き分けて依頼表を覗いて帰ってきた。

私は昨夜のうちにしたためていた、グリフィス王宮宛の手紙の郵送をギルドの受付カウンターに申し込む。

なお、中身の文面はケイジがチェックした。

ケイジにとって恥ずかしい事・・・いや、都合の悪い事が書かれてないか確かめたいらしい。

時々「う~」という小さな唸り声をあげていた。

獣人の習性なのか、

警戒でも威嚇でもなく、恥ずかしがると無意識のうちに出てしまうようだ。

これはアガサやタバサが萌え死にするのも無理はない。

昨夜も長い過去の話の最中、

アガサとタバサの二人で、ケイジとリィナの掛け合いが、いかに彼女達のハートを射抜いていたか、的確かつ適切な場面でツッコミを入れていた。

まあ、本人に面と向かってそれを伝える程、私は意地悪じゃあないぞ。


そして女性陣を待合室で待機させ、私とケイジはギルドのカウンターに向かう。

昨日もカウンターに座っていた、三十代くらいの目鼻立ちのはっきりした女性だ。

髪は綺麗に揃えていて、旧世界ならばバリバリのキャリアウーマンてところだろう。

 「あら?

 昨日いらっしゃったカラドック様ですね?

 『蒼い狼』のケイジ様とご一緒されているところを見ると、交渉成立されたのですか?」


 「おかげさまでね、

 琥珀の灯火亭の地図はわかりやすかったよ。」

 「お力になれて良かったですわ、

 本日はクエストの申請ですか?」


そこから先はケイジが話した。

 「まずはパーティーの新メンバーの登録だ。

 このカラドックをオレ達のメンバーとして登録する。」


営業スマイルだった女性職員の顔が素で驚いたように破顔した。

 「まあ!

 Aランクパーティーに、精霊術師のカラドック様が加入なさるんですの!?

 それってもしかしたらSランク並みの戦闘力になってしまわれるのではないですか!」


このアークレイはどちらかというとフロンティア的な僻地だからね、

そんな所に世界有数の高ランクパーティーがいるのは特別な意味がある。


それはまだ人の手が入らない未開拓地の踏査だ。

もっとも北側の大渓谷を越える手段は現在の文明では未だ存在しない。


私は冒険者カードを受付の彼女に提示して、私のカードに新たなパーティー情報を転写してもらう。



その手続きの間、私は小声でケイジに聞きたいことを思い出した。

 「そう言えばなんで『蒼い狼』なんだ?」

狼はケイジの種族だから分かるけど、彼の体毛は黒だしなあ。

 「・・・笑うなよ、

 死んだお袋の好きな色だ・・・。」

 「笑うものかよ、・・・済まなかったな。」


 「別にいいけどな・・・。」



死んだ恵介の愛用していた剣の名が蒼狼刀・・・

私の赤狼剣と一対の武器である。

スーサの国へと向かう私たちに父シリスが用意してくれた宝剣だ。

勿論、どちらもこの世界には存在しないが、私にとって弟との繋がりを思い出させる言葉なのだ。

グリフィス公国で、最初にその言葉を聞いた時から気にはなっていたんだが、

リィナちゃんの名前といい、ケイジの名前や環境といい、

何かしら似てしまう法則のようなものでもあるのだろうか。


 「お待たせしました、登録更新完了しましたよ。」


受付女性は和かにカードを返してきた。

そこで本題だ。

 「ではクエストの受注だ。

 北で新たに発見された洞窟の探索はまだ募集してたよな?

 オレ達『蒼い狼』はそれを受注する。」


ケイジの申し込みに受付女性は、一瞬、理解出来なかったようだ。

 「え、は、はいそれは、・・・ええ?

 あ、あのクエストは特に危険度が少なくなって、Eランク相当とクエストランクがダウンした物件ですよ?

 Aランクのケイジ様達が受けるようなものでも・・・達成報酬もたかが知れてますし。」


 「いや、それを受けたいんだ。

 クエスト内容は未踏査エリアのマップの完成だよな?

 なら現時点でのマップは用意してくれるんだろ?」


 「それは、はい・・・。」

 「なら頼む。

 ああ、それとギルマスに伝言頼む。

 オレ達はあの洞窟に強力な魔物がいると踏んでいる。

 事によったら大騒ぎになるかもしれないとな。」


 「えええええっ!?

 そんな情報どこからっ!?」

 「まあ、それを確かめに行くのさ。」


そして私たちは冒険者ギルドを後にした。

さて、ここいらで私たちパーティーの基本戦力を明らかにしておこう。

ただしあくまでもデータ上の数字だ、

戦場では高い判断力、分析力、

そして不利な状況や恐怖に挫けぬ胆力が必要とされる。

それは数値には現れない。

だからこそ、この戦いで私の実力を確かめたいということなのだろう。


さて、

まず私のレベルだが、

正直、戦闘なんて久しぶりだったからね、

グリフィス公国に転移された時点で42とされたレベルは、今や48まで上がっている。

と言ってもここまで来ると中々アップしないらしい。

そして、精霊術師たる私のMPは3200。

一般の魔術士クラスより精霊術師の方がMPの伸びは大きいそうなので、

レベル以上に私のMP総量は他の追随を許さない。

おそらく私がこれまで会ってきた冒険者の中でも、この数値を超えるものはいなかったろう。

マルゴット女王なら私の数字を上回っているかもしれないが。


だが、それに全く見劣りしないのが、ここにいるタバサとアガサ。

この世界の亜人を含めた全人類の中で最も魔力が高いと言われる種族の二人だ。

タバサ、上位司祭、レベル44、MP2850、

アガサ、上位魔術士、レベル46、MP3000、

アガサが魔力、及びレベルが上回っているのは、偏に戦闘経験の差だろう。

ただ、神官職は、戦闘以外の回復行為の積み重ねでもレベルを上げられるそうなので、

治療メインでそこまでレベルを上げられるタバサも凄いと思う。


そしてケイジである。

彼のクラスは騎士、これはちょっと意外だった。

ケイジは剣士とかアタッカークラスだと思ったが、これは訳を聞いて納得した。

魔物との戦闘によっては、状況次第でアガサやタバサを守る必要があるため、

守りにも重きを置いた戦いをするのだそうだ。

また、ケイジは弓も使える為に、前衛オンリーの剣士は不向きだと言う。

騎士なら近接、盾、そして弓術に補正ボーナスがつくらしいからね。

そして恐ろしいのがケイジのレベル。

なんと61まで伸びている。

グリフィス公国でも他の冒険者でも、レベル60オーバーの人間なんて見たこともない。

この世界でも何人かいるというSクラス冒険者なら、レベル60オーバーもいるかもしれないが、今のところ私の知る限りでは、存在するのかどうも断言できない高みのレベルと言えよう。



そしてケイジのステータス、

これは自己申告である。

鑑定で見てもいいが、勝手にやると失礼なので先に聞いたら答えてくれた。

ストレングス2200、

敏捷性2400、

器用さ2300である。 

さすが勇者というべきなのか、

無茶苦茶と言いたい。



だが更に恐ろしいのがリィナちゃん、

レベルは36だが、

ストレングス2000、

敏捷性2500、

あ、器用さは1000だ。

それでも凄い数字だよ。

ただ、リィナちゃんは魔法を使えないが、

どういうわけかMPも1200と高い。

物理的ステータスに比べれば見劣りするが、MP1000超えなんて、ヒューマンの魔術士でもエリートクラスだ。

ケイジなんかMP150しかないというのに。


ちなみに全く戦闘や魔法に縁のない一般人のステータスはどの項目もだいたい二桁だ。

レベルだって大人で10を超えるのがせいぜい、

一生でも20に届く者はまずいない。

冒険者や兵士、あるいは職業格闘家でもないとその先のレベルには届かないという。

そういった者たちでも各ステータスが300~500ぐらいが一般的。

その上のステータスを持つ者がエリートと呼ばれて間違いない。


このパーティーには純然たるパワーファイターはいないと思われがちだが、

ケイジもリィナちゃんもそこらの筋肉ダルマよりストレングスが高いってのはなんなんだろうね?


それとリィナちゃんの職業だが、

シーフかと思いきや、ハズレだった。

敏捷性は充分だが、器用さに欠けるのが適性ではなかった証左になるということか?

じゃあ真っ当に剣士かと聞いたら、冒険者になった当初は剣士だったのこと。

そう言えば琥珀の灯火亭でも最強奴隷剣士って言われてたものね。

そして「降参っ!」て言ったら、リィナちゃんはニヒッと笑って、

 「こないだまで暗殺者アサシン!」と激白した。


マジですか!

でも今は違うのか?

そこでケイジが途中で話に参加してきた。

 「まあ、そこは内緒なんでな、

 カラドックが正式メンバーになったら教えてやる。

 だからそれまで彼女を鑑定しようとしないでくれよ?

 別にお前が信用出来ないから言ってるんじゃない。

 クイズのようなもんだと思ってくれ。

 正解はこのクエストが成功した後な。」


ほう、

そうまで言われたら自力で当ててみよう。

この先、魔物が待ち構えているというなら、そこでみんなの動きや戦い方が見れるわけだからね。

それで判断させてもらおうか。


ただ意外と戦闘職だけに限ってもクラスはかなりあるんだよねえ。


冒険者の基本職として、

剣士、シーフ、魔術士、僧侶、テイマー、弓士、格闘家、鑑定士、

まあ、鑑定士はもともと冒険者向きの職業じゃないけど、魔物からの戦利品を効率良く獲るために、

パーティーメンバーに同行し冒険する鑑定士も多いという。


上級職では、

騎士、上級魔術士、プリースト、武闘家、暗殺者、召喚士、巫女、精霊術師、

結界師、バード、


その上も更にあるがそこまで行くと、もはや国や何らかの団体のトップクラスとなる。

ちなみに魔法剣士は器用貧乏イメージがあるせいか、

基本職カテゴリーにも入るし、上級職にも属すると解釈されるらしい。

というより、魔法剣士より位の高い上級に相当するクラスが存在しないということだろう。

剣技も魔法も専門職で覚えるものらしいからね。

一度魔法剣の原理を習得してしまえば、

それこそ、その中途半端な職に就いているメリットが無くなってしまうそうだ。


今回出てきた武器の名前は覚える必要ありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ