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第六百五十七話 ぼっち妖魔は許しを乞う

・・・終わらない。

後一話か・・・。



全然物語に関係ないですけど、

「出禁のモグラ」面白いです!

「鬼灯の冷徹」も好きでしたけど、出禁のほう、最初の一話だけ読んで、登場人物たちが地味過ぎるかなと思って、それ以来読む機会なかったのです。


何かのサイトで物語のジャンルがホラーになってたので、「え?あれが?」と思い直して読んだらまあ・・・


鬼灯のような一話形式ではなく、ストーリー展開になっているのですね。



<視点 麻衣>


落ち着こう。


まずは状況整理だ。


あたしはまもなくこの世界から消えていなくなる。


ご丁寧にも、あたしに送られてきた帰還チケットにはタイムリミットが表示されている。



それは今現在、正確にカウントダウンを刻み続けている。

すなわち本日の正午ちょうど。


それまでにみんなとのお別れを済ませなければならない。


あたしがこの世界で初めて訪れた人間の村、

カタンダ村の皆さんと、愛くるしいスネちゃん、ふくちゃんとのお別れを済ませれば全ての予定を済ませたことになる。



ところがその最後の最後にて、

キリオブールからゴッドアリアさんを始めとする皆様の乱入・・・。



あたしとしてはキリオブールの皆様とはお別れを済ませたつもりなのだけど・・・


やっぱりあんな中途半端な済ませ方はよくなかったのか。


それともまさか、みんなしてあたしにお仕置きをしにきたわけじゃないよね?


忘れたフリをしてたけど、思い起こすとあたしの所業は常識に照らし合わせても、そう簡単に許されるものではないだろう。

どうせこの世界からいなくなるのだから、ほったらかしにしちゃっても問題ないよね、と自分に言い訳してただけ。


ああ、昨夜のダナンさんのセリフがお説教に思えてきた。


それと、

今になって何だと思われるかもしれないけど、


よくよく思い出してみれば、

あたしにはかつてママから遺言のように戒められている言葉を与えられていたのだ。


 「自分の行動には責任を伴う」


まだ小学生だったころ、あたしはママからそう注意を受けた。


あたしが人間だった頃のママとの会話はアレが最後だったのに。


だからある意味遺言。


本来リーリトの行動原理はやりたい放題、

自由気ままに生きていくことを是とするのだけど、

ママなりに、それだけではいけないとあたしを戒める意図もあったんだろうね。


まさかこんな状況を想定してたわけじゃないんだろうけども。




ていうか・・・

そもそもゴッドアリアさん達があたしを追ってきたのは



うん、これ以上、ギルドのロビーにいるわけにもいかない。

みんなの視線はあたしに集中しているし。


まあ、あんな大きな声であたしの名前を呼ばれれば、正体不明の集団とやらの目的はあたしだと誰でも理解できるよね。


あたしはぎこちない笑みを浮かべてみんなに断りを入れる。


 「ど、どうやらあたし絡みのお話だったみたいですね、

 危険はなさそうなので、ちょっと行ってきます・・・。」



 「じょ、嬢ちゃん何やらかしてきたんだ?」

 「伊藤さま、貴族の馬車も来てるって言ってますよ?

 ホントに大丈夫なんですか!?」


エステハンさんとチョコちゃんが心配そうにあたしの側に寄ってくれる。


 「あ、ご心配なく、

 きっと全員あたしの知り合いだと思いますし・・・。」


そう、ゴッドアリアさんもそうだけど、貴族の馬車っていうのも想定外。

普通に考えればツァーリベルクおじいちゃんも一緒に来たのかと思ったけど、

あの人はどちらかと言うと、教会の馬車を使うことが多い筈。


となるとまさか、キサキおばあちゃんの方だろうか。

・・・あの人とは正面からかち合いたくないな。

まず絶対に勝てない。


いいや、覚悟を決めよう。


まさかいきなり命を奪われることはないと思う。

牢屋に繋がれたくらいだったらその前に元の世界に帰れそうだし。

十中八九、こんこんとお説教をされるくらいだと思うのだけど。



そしてあたしは冒険者ギルドの扉を開き表に出る。



向こうもあたしの居場所が冒険者ギルド辺りと踏んだのだろう、

確かに沢山の馬車や馬の蹄の音がこちらに近づいてくる。


あ、ちょうどその姿が見えてきたね。

うん、鎧姿でこそないものの、正装した騎士の人たちが護衛する馬車が先頭にいる。

周りや後続にはキリオブールの冒険者のみなさんだ。

確か朝方にはすっぽんぽんになってた・・・ゼロスさんだっけ、

お風邪をひいてないか心配だったのだけど無事そうだ。


あ、向こうもこっちに気づいたね。


 「ガハハハハッ!

 いたぞ!! 暴走魔女っ子ねーちゃん!!

 やっぱり冒険者ギルドにいたらしいぜっ!!」


そしてそれを合図に馬車の皆様の行軍が止まる。


貴族の馬車から出てきたのは、

キツい眼差しをこちらに浴びせるゴッドアリアさん・・・。



怒ってるね。



無理もない。

あたしはゴッドアリアさんを簀巻きにしたまま、キリオブールの冒険者ギルドに置いてきたのだから。


ママの遺言とダナンさんのお説教にあたしは逆らうつもりはない。



だから近づいてくるゴッドアリアさんに、

誠心誠意向き合おう。


言い訳もしないし、開き直りもしないぞ。

だからこの後のあたしの行動選択は一択!



 「申し訳ありませんでしたあああああああああああああああああああああああああっ!!」



土下座っ!!



それはもう硬い土の地面にぺたっと膝と額をつけて、ひたすら土下座をキメる。

あたしに出来ることはそれしかないのだ。




・・・?



あれ?

何の反応もないな・・・。


てっきり盛大な罵声やらあたしを糾弾する声やら浴びせられると思ったのだけど・・・。


恐る恐る顔を起こす・・・。



ん?

そこには呆れ果てたようなゴッドアリアさんの冷めた顔。


 「・・・なにやってんの、麻衣・・・」



え、いえ、なにやってんのと申されましても・・・


 「え、と、あれ?

 み、みんなしてあたしを吊し上げに来たのでは・・・?」


 「なんでそんな物騒な話になるんだよっ!

 そりゃ文句や言いたいことは一つや二つじゃないけどさっ!!

 別に麻衣を捕まえにきたわけじゃないよっ!」


あ、良かった、

なら一安心!


で、でもね?

 「な、ならなんでそんなみんな鬼気迫る表情で・・・

 しかもゴッドアリアさん、その馬車ってキサキおばあちゃんのところのヤツですよね?」


するとゴッドアリアさん、今度は疲れ果てたかのようなため息をついた。



 「・・・麻衣が今日中に元の世界に戻るって言ってたから、みんな徹夜で行軍してきたんだよっ、

 セルルとぺンドットで馬だけ乗り換えてね、

 明かりの魔道具とか、スタミナポーションとか諸々の手配は、ツァーリベルクおじいちゃんやキサキおばあちゃんに話を通している。

 二人とも麻衣にはよろしく伝えてくれって言ってたよ・・・。」



ん?

それって・・・

お二人ともあたしに怒ってない、

ということなのだろうか?


すると後ろの馬車からまた見知った人が出てきた。


 「まったくなあ、挨拶もろくに出来ねーようじゃ商人失格だぞお?

 しかも最後は金で有耶無耶にするだあ?

 そんなんトラブルの解決方法としては最低最悪の手段だからなあ?」


あっ、商人ギルドのデミオさんだ!


それだけではない。

デミオさんの後には、前回のお別れパーティーで会えなかったエミリアさんと妹のユーノちゃんまでいる!


 「ま、麻衣さま、

 あたし達にもお礼を言わせて下さいっ!

 あたし、おかげでもう普通に生活できるんですよ、

 先日は麻衣様がキリオブールに戻ってるなんて知らなくて、お別れ会に参加できなかったんです!

 せめて最後に是非!!」


そう言えばエミリアさんたちには会えなかったっけ。


ていうかエミリアさんもユーノちゃんも、こんな強行軍についてきたのか。

そっちの方が心配なんだけど。

カラダは大丈夫なのだろうか。



そして登場人物はこれだけに留まらない。


ゴッドアリアさんが降りてきた馬車には、

更に三人の人物が乗っていたのだ。



ゴッドアリアさんの次に降りてきたのは執事姿のお爺さん。

あ、確かマヌエルさんだっけ。


かなりやつれているな。

一晩かけての長旅はご高齢のカラダにはキツかったろう。


うん?

てことは・・・


そのマヌエルさんが馬車の方へ手を伸ばす。


その手を取って降りてきたのは・・・



 「伊藤様!

 お久しぶりですわ!!」


あ!?


あれは確かゴッドアリアさんのいとこのエンジェちゃん!?


そして更にもう一人!!


 「伊藤様!

 ようやく会えましたの!!」


同じくこちらはメサイヤちゃんだ!!

何で二人が!?


あたしとはそれほど絡むことはなかったと思うのだけど。


それについては、この場でもっとも話を把握できる立場にあるであろう、執事のマヌエルさんが説明してくれた。


 「・・・はい、

 邪龍を倒し、キリオブールを救っていただいた伊藤様に、我らが主は多大なる感謝の念をお持ちです。

 ただし、さすがに主の年齢と体調を考えれば、ここまでの強行軍に参加するわけにもいかず、この度は主の名代として、エンジェ様とメサイヤ様が参った次第なのです・・・!」



ああ、なるほど。

さすがにご高齢のあの二人をこんな強行軍に参加させるわけにもいかないか。

・・・確かマヌエルさんはツァーリベルクおじいちゃんより年上だった気がするけども。



 「伊藤様!

 感謝いたしますですわ!!」

 「伊藤様!

 ありがとうございますですの!!」


何故ふたりとも腕を胸元にくんでドヤ顔をしているのか。


執事のマヌエルさんの顔が「違う、そうじゃない」と困惑していなさっている。


しかし二人とも可愛い。

これはあたしの世界にお持ち帰りするわけにはいかないのだろうか。




え?

だめ?


きっと次回で麻衣ちゃんの物語は終わります。

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