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第六十五話 それぞれの夜


 リィナ視点

その後、お隣の部屋では。



 「びっくりしたね、今日は。」

はい、兎型超絶美人剣士リィナちゃんが実況します。

只今の状況を解説いたしましょう。

3つあるベットのそれぞれの上に、

タバサとアガサが、半裸に近い状態でくつろいでいます。

ここには女の子しかいませんからね、

野郎の目を気にする必要はありません。

それにしてもこのエルフたち、スタイルが半端ありません。

同性の私でも目がえっちな部分に吸い寄せられちゃいます。


 「魔人ネタ以外でこんな急展開は予想外。」

 「ケイジをあんな容易く扱える男も想定外。」


これは私たち女性陣3人ともほぼ同じ感想ですね。

 「だよねー、だよねー?

 あのプライド高いケイジが素直に言うこと聞いたんだよ、

 今まであたしの知るケイジからは考えられない。」


ところがここで爆弾発言ありました。

 「賢王の称号は疑う余地皆無。」

そこまでは良かったんですが、

 「これは真剣に玉の輿一考の価値。」

はい?


アガサとタバサは口調も同じで、話の内容も同じような事を喋るのだけど、

時々どちらかがとんでも無い事を言い出す時があります。

今回はタバサが人の道を踏み外しました。


 「ちょ! タバサ何言い出すの!?」

 「タバサ抜け駆け禁止、それなら私も参戦。」


あああ、アガサまでー!


 「こらーっ!

 エルフは純血に拘るんじゃないのーっ!?」


その筈です。

エルフは同族同士でしか婚姻しないし、他種族とのハーフもいない事もないんですが、純潔エルフよりハーフエルフは低い扱いを受けるとか。

要はヒューマンと獣人との関係性と似たり寄ったりらしいです。

さすがに奴隷扱いされるハーフエルフは見たことありませんけど。


しかし挑発的な視線を浮かべるエルフ達。

 「フッ、笑止、

 閉鎖的な血族に発展など皆無。」

 「至高の血を新たに注いでこそ、

 更なる魔導の高みに到達。」


 「あ、あわわわわ、

 この人たち、そう言えば革新派だったー!!」


まあ、でも今夜はちょっと安心。

あたし以外でも、ようやくケイジが心を許せる人が現れたってことなんですかね?

もっとも、あたしだってケイジに信頼されてるかどうかは、あんまり自信ないんです。

それは・・・もうずっと長いこと背中預けて生き死にの戦闘してきたし、

どんな事があってもケイジがあたしを見捨てるなんて、絶対ない!

と思うんですけど、心に引っかかるものもあるんです。


ていうのは、きっとケイジはあたしにも心を開ききっていない気がします・・・。

あたしが頼りないせいか、

ケイジのプライドの高さから来るものかわかりませんけども、

いつか、彼があたしを全面的に頼ってくれる日を待ち望んでいるのです。


・・・まあ、今のお騒がせエルフ達との共同生活も悪くないんですけどね!




 カラドック視点

そしてこちらでは。


 「カラドック、先に風呂入れよ?」

 「いや、新入りに気を使うことないぞ?

 私は後で構わんが。」


 「そうじゃない。

 単にオレの後は体毛が凄いからな。

 後始末に時間かかるから、

 先にどうだってだけだ。」


ああ、いっぱい抜けるのか。

しかし本当に今まで見てきた獣人のイメージが崩れてゆくな。

さすがに宮廷暮らしはダテじゃないということかな。

冒険者パーティーで見かけた獣人達は、見た目まんまに粗野な者達が多かった。

 「なら先に入らせてもらうよ。」


しかし、我ながら順応性早いと思う。

ついさっき初めて会ったばかりだというのに、もう何か月も一緒に旅してるような感覚だよ。

いや、順応性早いのはケイジの方かもしれない。

聞くと今まで、いろんなパーティーに臨時に出入りしてたそうだからな、

見知らぬ人間と行動を共にするのも慣れているのだろう。




 視点ケイジ

同じ部屋の片隅で。


別に気を利かせたわけじゃない。

オレはカラドックが風呂に入っている間、

奴の荷物をチェックした。

もちろん金目の物を盗む訳でもないし、

正体不明のアイテムを忍ばせているかを探るつもりもない。


カラドック・・・その存在を確かめたかっただけだ。

奴の荷物には、普通の旅で使う生活必需品、

結構な額の路銀、

最低限の身を守る武器、

その程度・・・

あ、これグリフィス公国の門外不出の術具じゃなかったか?

いや、それはいい。


それよりも、オレは荷物の中の一つに目が釘付けとなる。


笛。


何の変哲もない、凡庸な。

オレは楽器には詳しくないが、手作りっぽい。

カラドックが自分で作ったのだろうか?

まさか一国の王がそんなものを肌身離さず持っているとも考えられないので、

奴曰く異世界だというこちらの世界で作ったのか。

恐れ入るな。


今、オレは自分の口がニヤついていたのに気付いていた。

仕方ないよな。


だが、これからオレはどうなるんだ?

カラドックがやって来てパーティーに加わった。

単純に心強い仲間が出来たと喜んでいいのだろうか?

それとも、

オレを裁く人間がやって来たと覚悟を決めるべきなのだろうか?

さっき、あいつがどこまで見通しているのか、カマをかけてみようと思い不要な質問もしてみたが、

今のところ、気づく様子はなさそうだ。



それにマルゴット女王・・・

カラドックから彼女の話を聞いたのも衝撃的だった。


オレはあの人の事を・・・憎んでいたつもりはない。

ただ、オレの母親の事があったから、

素直に認めることが出来なかっただけだ。

オレがあの人を認めることは、

母親への義理を欠く事になると思い込んでいたからだ。

母は・・・母さんはあの人の事をどう思っていたんだろう?

それを聞く機会はなかった。

その前に母さんは息を引き取った。

幸せそうな笑顔を浮かべたまま。




今日の話を聞いて、

また昔の事を思い出す。

けれど、いろいろ思い悩んでみても、

今回も明確な回答など出てこない。



いや、明日は強力な魔物と戦うことになるんだ。

余計なことを考える必要はない。

明日はこのパーティーの実力を披露する時だ。




 

ケイジの尻尾パタパタ!!


なお、カラドックの適性職業に、音楽家があるのは、彼が笛の演奏できるからです。

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