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第六百四十一話 ぼっち妖魔は固唾を飲む

麻衣

「まあ、固唾を飲んだのあたしじゃないんですけどね。」

<視点 麻衣>


思いっきり効いちゃったよ、七つの状態異常。

それはいいのだけど、その内容が、あの、その。



・・・うん、ラミィさんに任そう。

あの人、こういうの得意そうだし。


 「ラミィさん!」


 「うふふ、なーにー?

 さぁてー、どう料理してくれましょーかー?」


 「あ、えっと、ラミィさん、鑑定でリビングメイルの状態異常見えますか?」


 「え?

 今戦闘中だからそんなゆっくりは・・・

 あら・・・

 あらあらまあまあ!!」


落ち着いて見てみれば、

リビングメイルは魔力消費が激しくてもはや魔法も撃てない。

そうなると、攻撃手段が何もなくなるのか、気のせいか後ろにタジタジと後ずさっているようにも見える。



いつの間にかラミィさんは全てを理解したのか、槍をゆっくりと床に置いた。


 「「「「えっ?」」」」


あたし以外みんなも理解出来ないだろうね。


 「ふくちゃんもスネちゃんも攻撃中止!!」


 「「「「えっ!?」」」」





あたしだってこんな展開予想外だ。

まさか霊体に精神異常が効く・・・

いや、霊体だからこそか。

今まで考えもしなかった。


考えてみたら以前リーパーと戦った時も、あの魔物に悲喜の感情は見えていたのだから。


まあ、七つの状態異常のうち、下から二つ目は理解できませんし、詳しく教えて欲しいとも思いませんけどね。



あと不思議なことがもう一点ある。


ラミィさんと共にあたしがスネちゃん達を退がらせると、

まるで計ったかのように交戦中だったスケルトンナイトもその激しい攻撃を止め、

三体ともボスであるはずのリビングメイルに首を向けたのだ。


完全に戦意が消えている。

何よりも、剣撃を撃ち合っているベルナさん達当人には、あたしが言うまでもなく理解できている筈だ。


 「え、ま、まーちゃん、なにが」


とはいえ何とか理解できるのは、スケルトンナイトの戦意が消えてなくなっていることまで。

そこから先はあたしですらよく分からないことになっている。

何が起きたかは説明できるかもしれないけど、

この先どうしようかというのが、あたしの口からは説明出来ない。


だからラミィさんにお任せする。



 「そうかー、そうゆーことだったのねー?」


 「「「「ええええ!?」」」」


今回驚きの声を上げたのはあたしも含まれている。


ん?

括弧の数が人数と合わない?

うん、

もう一人の方は「らみたそおおおお!!」と鼻血を吹き出していた。


そう、ラミィさんは解き放ったのだ。



冒険者ギルドカタンダ村支部陰の支配者、

チョコちゃんに禁じ手とされていた忌まわしき手札テクを。



あたしが以前あげたブランケットがゆっくりと地面に落ちる。




勘違いしないで貰いたい。

今回ラミィさんは、あの凶暴な双丘を剥き出しにしたわけではない。


 「人化ーっ!!」


何故ここで人の姿を?

と思うかもしれない。


今や彼女はギルドの制服を着た清楚なお姉さんだ。


彼女は優雅な動作で、青い髪を靡かせながらリビングメイルに近づく。




もう、

誰もがこの局面から目が離せない。


あたしもベルナさんも、ブラックファングの皆さんも、

敵であるはずのスケルトンナイトでさえもだ。



 「え、ど、どうしてそこでブラウスのボタンを!?」


リビングメイルの目前で足を止めたラミィさん。

なんとそこでリカルドさんの説明通り、いきなりラミィさんは自らの服のボタンを外しにかかった。


ぷつん、ぷつん、とその留め具が外される度に豊かな胸が制服の内側からこぼれそうになる。


もはや男性陣の視線はその一点にしかない。



誰かがゴクリと唾を飲んだ。

固唾飲み込む水の音というヤツだ。

うん?

そんな日本語はない?

そうだったっけ。

まあ、今はこっちの話に集中しようよ。



 「じーり、じーり。」


かわいい声を出してラミィさんがリビングメイルに近づく。

二つのお手てはガオー状態だ。

それに反してまるで怯えたように後ずさるリビングメイル。



これ、すでにラミィさん、魅了発動しているな。


うん、リビングメイルの精神耐性も落ちているしね。

まさかこんな攻略法があったなんて。


 「逃げなくていいじゃなーい?

 もうあたしはあなたに危害加えないわよー?」


会話も通じてるのだろうか。


霊体・・・



ああ、そう言えばローゼンベルクの絵の中のおじいさんも霊体と言えば霊体だったしね。

まあ、あの人は魔物じゃないけども。


 「ごめーんねえ、

 痛かったあ?

 あたし達仲良くできるなら、戦う必要なかったわよねー?」


そしてゆっくりラミィさんはその腕で鎧の胸の部分にそっと触れた。


瞬間、ビクッとリビングメイルの体が揺れる。




うん、まあ、

童貞さんか、


一瞬吸血鬼エドガーのことを思い出したけど、

彼はお相手する同族の子がいなかっただけで、

普通の人間の女の子にはもてていた。


それに彼自身女性の扱いは慣れていたっぽいしね。


それに比べてこちらはどうなんだろう。

初心うぶと引っ込み思案までが、状態異常に燦然と光り輝いていなさる。


・・・これ、たまたまあたしの魔法でくっついただけなのか、それとも元々この個体についていたのか非常に気になるのだけど。



 「うふふ、おっきーでしょー?

 こんなの見たことあーるー?」


こんなのって何なのか説明しなくていいよね?

今のラミィさんは前屈みだ。

リビングメイルに視線があるのかどうかも分からないけど、何の話をしているかは誰も目にも明らかだ。


リビングメイルの体が左右に小刻みに揺れる。

あれは「こ、こんなの見たことない・・・」って否定しているのだろうか。


うん?

あたしの後ろで何かポタリと液体が落ちるような音が聞こえた。


ふっと振り返ると、カリプソさんが「ち、ちくしょう、あいつうらやましい・・・」と血の涙を流していた。


見なかったことにしよう。





 「うーん、触ってもいいんだよー、って言おうと思ったんだけどなあ、

 さすがに霊体じゃあたしに触れないんだよねー、かわいそう・・・。」


後ろから上の歯と下の歯を押し潰したようなギリギリという音が聞こえた気がしたけど、



聞こえなかったことにする。


サイレンスを使うまでもない。




 「・・・ああ、オレにはわかったぜ。」


何がだ。


何がわかったというのか、リカルドさん。



 「恐らく、ずっとあの鎧は騎士として生きてきたんだろう。

 それこそ血反吐を吐いてまでな。

 そこまで修行と修練を重ねていれば、女性と親しくする機会なんかない筈だ。

 良家の出なら、親や親族が縁組をしてくれるが、貧乏貴族や平民から取り立てられた騎士には・・・。」



なんか凄いいいこと言ってそうな気がするんですけど、

それでいいんですか、リカルドさん。

隣のアミネさんの目から光が失われてますよ。


ガチャガチャ!


え?

スケルトンナイトの皆さんがリカルドさんの方向いてウンウン頷いているよ!?


えっ、



ていうか待って。


スケルトンシリーズって生まれた時からそのまんまだって、地下10階で言ってたよね!?


なんでこんな時だけ元は人間だった設定になるの!?

色々おかしいでしょう!?


 「いや、それはそういう意味じゃないぞ、まーちゃん。

 あいつらの大元はただのスケルトンの筈さ。

 だからそのスケルトンが、スケルトンナイトやリビングメイルに進化するには、気の遠くなるような努力や、戦闘を積み重ねないとならないっていう話だとあたしは思うよ。」



はあああああああああ!?

それ、いったいどこの異世界のお話なんですかあっ!!



それにしても・・・

なんていうか、



確かに血生臭い話は起きていない。

起きていないんだけど、生臭い話になってはいるよね。



たぶん、次回でこの茶番終わります・・・。

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