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第六百三十四話 ぼっち妖魔は最後の冒険を始める

最初の頃を思い出しながら書いてみます。


何か矛盾点を見つけたらこっそり直すかもしれません。


<視点 麻衣>


というわけで懐かしのオックスダンジョンにやってまいりました。


以前このダンジョンには何度か突撃した。

久しぶりとはいえ、もはやそんな慌てるような事は何もないかと思っていた。


けれどやはりいくつか、

不測の事態というほどでもないけど、考えを改めねばならないなと思う事がいくつかあったのだ。



そうそう、入り口は土塊を固めたような、

ダンジョンというよりは古墳のような遺跡を思い浮かべる。

そして中に入った瞬間「あら?」と思った。


そう、真っ暗なのだ。


うん、あたしには意味ないはずの話。

透視能力あるからね。

でもよくよく考えてみたら、

移動しながら透視能力は使えないのだ。


今までアガサさんのライトに頼りっぱなしだったことに今更ながら気づいてしまった。




・・・油断するつもりはないと言った瞬間、これだ・・・。


まあ、最悪の事態というわけではない。

何しろこの後、ラミィさんにプレゼント予定であるあたしの巾着袋にはたいまつがいくらでも入れられる。


最初に火種を付けておけば、多少の手間になるだけで明かりに困ることはない。


不便と言えば、

ラミィさんが槍を持つからあたしの片手が封じられるくらいだ。

まあ、どの道あたしは直接戦闘に参加しないしね。


とゆうわけで、あたしは着火の魔道具を巾着袋から取り出してたいまつに火をつける。

ついでにいうと、着火用の魔道具はあたしの持ち物以外にも、ラミィさんが背負っている冒険者ギルド専用、ダンジョン探索基本携帯セットの中にも用意されているのだ。


うむ、本当に初心者みたいな話をしているね。



そしてもう一点。


 「はい、人化解除ー!」


周りに他の冒険者の姿も見えないので、遠慮なくラミィさんは元の姿を取り戻した。

・・・服は自動で外れるのに、どうしてダンジョン探索基本携帯セットはカラダから外れないのだろう。

謎だ。


あ、いや、取り上げたい話はそれでない。

本題というのは、ラミィさんの姿は下半身が蛇であること。

移動する時はその胴体を上下か左右にくねらせて進む。

うん、誰でもよく分かる話だろう。


そしてラミィさんはあたしの前衛だ。

これがケイジさんやカラドックさんがあたしの前衛を務めてくれるなら、両者は1メートル前後の距離を空けることになる。


ところがラミィさんの下半身て、

長さ3、4メートルで済まないんだよねぇ・・・。

無理にラミィさんのすぐ後ろを歩こうとしたら、その胴体を踏んづけてしまう未来がすぐ見える。

つまりあたしは、

ラミィさんの上半身部分からかなり離れて後を着いていくことになるのだ。


・・・さすがに心許ない。



なので、通路にある程度の幅がある場合に限り、ラミィさんの斜め後方を着いて行くことになる。

・・・さすがにラミィさんの背中におんぶは出来ないものね。



 「じゃあ行くわよ、麻衣ー。

 ルートは覚えてるー?」


どうだったっけ。

歩いてるうちに思い出すとは思うのだけど。


 「まあ、警戒を切らさない程度の歩みでお願いします。

 そのくらいのペースなら道も迷わず思いだせそうです。」


 「オッケー、

 じゃああたしが先導するねー。

 麻衣は攻撃魔法使えないのよねー?

 デバフオンリーと思えばいいのかしら?」


改めて思うに、あたしって出来ること少ないんだよね。

ケイジさん達のパーティーが有能すぎた。

あくまで彼らにとって多少足りない部分をあたしが埋めていただけにすぎない。


ううむ、今回のダンジョン探索はあまり意味ないミッションだと思ったけど、あたしの能力を省みると言う意味では良かったのかもしれない。


 「そう思ってください。

 敵が大量だったり、ボスクラスだったら、ふくちゃんやスネちゃん呼びますけどね。」



それと・・・


今更ながら試してみたかったことがある。


 「『サイレンス』。」


 「え、麻衣それ、

 あたし達の声も・・・あら?」


 「ラミィさん、このまま進んで下さい。」


 「え? うん。

 じゃあ、・・・あれあれ?」


どうやらラミィさんはすぐに気づいたようだ。



もともと蛇の胴体を持つラミィさんといえども、移動時に多少の音は生じる。

そして当然あたしにしたところで、

歩く時の足音や衣擦れの音は注意しても消しようがない。


だから

あたし達の首から足元までの空間の音を消した。



これで音で獲物を感知する魔物の接近を防ぐ事ができるのだ。


そして、

今回あたしが特に出来るかどうか確認したかったことは、

サイレンスの限定エリアでの使用の話ではない。


今まで出来ないと思い込んでいたもの。



それは、あたしを中心に結界空間を移動させる事である。


今まで全ての虚術は、

その場から移動できないと思い込んでいた。


実際何度も実験したからそれで間違いないと思っていた。


そう、

確かに結界空間を移動させることは出来なかった。


一度「その場」にセットしたら、ずっと結界空間は、その位置を変えることは出来なかったのだ。


タバサさんやアガサさんの色々な術を見てしまった後では、

更にあたしの認識はそういうものだと思い込んでしまった。


だってファイアーウォールや、アースウォールは一度作ったらその場を移動しない。

けれど、プロテクションウォールやエアスクリーンは、術者にかかるので、守られた者が移動すればそのまま術は本人ごと移動する。


つまり術の種類によって、

固定か移動可能タイプか別々に分かれるかと思っていたのだ。


そしてあたしの虚術は前者だと。



そして今一度あたしはその考えを見直す機会を得たのだ。

まあ思い起こすと、結界師のハイエルフ、オスカさんが、いくつかそのような術を披露していたものね。

思い込みというものはほんとうに厄介だ。


 「ふっふっふ、成功しましたね。

 これであたし達の声以外、魔物に音で感知する事は出来なくなりましたよ。」



そう、

試してみたのは、

虚術の結界空間を、

あたし達に「纏わせる」。



つまり術を「移動」させるわけではないのだ。

あくまで術は「その位置」に固定したまま。

ただし、「その位置」が勝手に動くだけ。


 「麻衣、凄いじゃなーい!

 あ、それなら念話も使う?

 そしたらもう完全にあたし達無音の暗殺者よー?」


 「あ、さすがに移動時にそれはやめたほうがいいと思います。

 周りへの注意力が削がれますから。

 強敵を前にして隠れ潜む場合だけ念話を使いましょう。」



一応、敵がほとんどいない一階部分で色々試してみたよ。


どういう理屈なのか、

結界を維持させるには、多少あたしの意志と努力がいる。


例えば単に歩いている分には、少し意識を向けるだけでサイレンスの結界エリアはそのままあたし達に纏わりついたまま。


ただし、ダッシュしたりスピードを上げると、

結界エリアは置いてけぼりになって、すぐに解除されてしまう。


ある意味これも習熟度があるのかな。


少なくとも戦闘時に敵にダークネスやサイレンスを掛けっぱなしには出来ないね、


今のところ。



だから今回のダンジョンアタックでは、

この術の新たに判明した特性を戦闘時に役立てる事は出来ない。


あくまで静かに移動する時だけの話である。



 「でもこれ、あたしみたいに地面の振動で獲物の接近を感知する敵には役立たないわねー。

 あと匂いで感知するヤツらも。

 あ、でも麻衣は空気も消せるんだっけ?」


 「そうですね、

 だからあくまで敵の遭遇率を減らすだけの効果です。

 それに空気を消すバキュームの使用も出来るとは思いますけど、術の平行使用はちょっと負担も大きくなるので、念話同様、基本的に使わないつもりです。」



・・・なんか本格的になってきたな。




実際、地下五階まではほとんどスムーズに歩いて行けたよ。

こっちのルート上に居座っていたキラードッグとかゾンビとかいたけど、

あたしがサイレンスかけた上で、ラミィさんがストーンバレット打ち込むだけで、簡単に仕留める事ができた。


吸血蝙蝠の大群は、いちいち相手にするのも面倒なので、バキュームで無力化して戦うこともなく通り過ぎた。

別に今更レベルやスキルポイント稼ぐ意味もないし、お金もいらないしね。




とゆーわけで、

次回は懐かしきかな、

以前、ベルナさんたちと一緒に戦った、

地下五階のフロアボスとの対戦から始まるよ。


今度もまた四つ腕クマかな、

それともまた違うモンスターか。


多分四つ腕クマなら、今のスネちゃんがソロで倒せると思う。




あと、それからしつこく繰り返すけど、

今回のダンジョンアタック、

血生臭いシーンは全くない、筈。


だから、この先バトルはあってもあたしが苦戦したり命の危険はない。



これは決定事項だ。

絶対だよ。



・・・絶対だからね?


今回、地下五回のボス誰にしようかな。


もちろん楽勝できる相手にしておきます。

・・・じゃないと麻衣ちゃんに「話が違う!」と怒られちゃうので。

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