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第六百三十話 ぼっち妖魔は結婚式に参加する

あ、ちょっと長くなっちゃった。

<視点 麻衣>


あたし達はいつも通り、

村の入り口手前に馬なし馬車を着陸させ、

そこから先はラプラスさんの風魔法を使ってゆっくり村の入り口へと向かう。


 「ラプラスさん、思ったんですけど地上を走らせる時は、帆船みたいに馬車の上に帆を張ったほうが便利なんじゃないですかね?」


ラプラスさんは一度振り返ってあたしを見た。

ラプラスさんは風魔法のエキスパートだけど、それほど魔力量は多くないと聞いている。

ならあまり魔力を無駄遣いしない方がいいと思ったのだけど。


単純なあたしの意見にはすぐに賛同してくれないかな?

それでも何か考える必要があったのか、数秒考え込んだようで一度あたしから視線を外してしまわれた。


あ、実際には城門くぐる時とか、馬車の上に帆を張ったら邪魔になるかもしれないな。

いいアイデアかなと思ったけど。


 「・・・いえ、麻衣様、良いアイデアだとは思います。

 少しいくつかの修正案や発展パターンを考えていたら、口を開けなくなってしまいまして申し訳ありません・・・。」


 「あ!

 思いつきで言っただけなんで気にしないでください!

 ラプラスさんの方で他にいい意見あったら、是非そちらの方を!!」


あれ?

なんかラプラスさんの表情が暗い気がする。

暗いと言うか後ろめたそうな・・・


 「ラプラスさん?

 な、何か・・・?」


するとそのまま、申し訳なさそうにラプラスさんはこちらを再び振り返ったのだ。


 「い、いえ、麻衣様。

 実は今更ながら単純な話に気がついてしまいましてね・・・。」


ん?

どうしたんだろう?


 「い、いったい何が・・・?」


そこでわざとらしい咳払いを。

 「ゴ、ゴホン、

 あ、あのですな、

 私が馬車を飛ばせるのは私のユニークスキルの『飛行』を使ってるわけでして・・・。」


うん、そうだよね?


 「そして、私のスキルはユニークスキルとはいえ、妖魔や霊体が身につける『浮遊』スキルの完全上位互換とも言えるものです。」


だよね?

あたしも浮遊スキル取れるんだけど、

元の世界には持ち帰れないからここでスキル取っても仕方ないんだよね。


 「そして今、麻衣様の話を聞いて気づいたのです。」


え?

な、何をだろうっ?


 「地上に降りたなら浮遊スキルのように、この馬車を浮かせるだけで良いのではないだろうかと!」


あっ!!




その言葉通りにラプラスさんは馬車を少し浮かせて見せた。


もちろんこっちの方が快適に決まっている。

だって車輪は地面に接してないのだもの。

振動も揺れも感じない。


スピードは普通の馬車のように落として飛ばしているから風の抵抗もそんなにない。

エアスクリーンの必要さえないだろう。


 「全然気がつきませんでした、

 リィナさんいたら何やってんのって呆れられたかもしれませんね?」


 「そうかもしれませんね・・・、

 ちなみにこれはあくまで飛行スキルです。

 本来の浮遊スキルなら浮かせられるのは自分自身だけでしょうからね。

 ちなみに車輪を動かすことは出来ませんから、側から見たら違和感ありまくりなのはどうしようもありません。」


まあ、それは今更だよね。


 「・・・馬が馬車を曳いてない段階で違和感どころじゃないから、それは気にしなくていいんじゃないですかね?」


 「・・・はは、それはその通りでしたな。」




案の定、村の入り口にいた見張りの人に、思いっきり注目されながらあたしはカタンダ村に帰ってきた。


うん、注目っていうか、口が開いたまま閉じられる様子がない。


ちょっと手前で止めてもらおう。

あの人の顔も見覚えあるし。



カタンダ村の入り口を守る門番さんは棒立ちでこちらを見つめていた。


そりゃあ近づいてくる馬車に馬がいないんだから驚くしかない。

しかも、馬車を曳く音もなければ土埃も立たない。

どこぞの霊体系の魔物が近づいてきたと言った方が真実味があるだろう。


そんな誤解をされないうちにこちらの正体を明らかにしとかないとね。


 「おはようございまーす!

 お久しぶりでーす!

 覚えてらっしゃいますかあー!

 冒険者の伊藤麻衣でーす!」



そんな馬車から小柄な女の子が出てきたせいか、門番さんは更に困惑の表情を浮かべてしまったけども、あたしの名前を聞いて我に帰ることが出来たようだ。


 「あ、あっ!?

 き、君、あ、あの召喚士のっ・・・!!」



この村で活動している時点で、あたしが蛇とフクロウを呼べる召喚士だって有名だったと思うしね。

たぶん、この後もいろいろ聞かれたり驚かれたりする話がバンバン出てくるだろうけども、

あたしが関わるとなればきっとみんな納得してくれると思う。


 「カタンダ村もスタンピードに襲われたって聞きましたけど、もう大丈夫なんですか?」


そのはずだ。

もしまだ何か重大なトラブルが継続中なら、村の入り口とて、いつもと違う様子になっていると思うし。


あたし達が近づくまで、ごくごく普通の日常的な光景だったもの。


 「あ、ああ!

 冒険者中心に被害は出たけど、一般の村人たちの死者はゼロだった、

 初心者向けダンジョンとはいえ、それだけで済むなんて本当に奇跡・・・

 いや!

 あの助っ人のラミアを寄越してくれたのは君だって聞いたぞ!!

 その話は本当だったのか!?」


あれ以降もラミィさんが何か不埒なことをしてるか心配だったけど、今の言い方なら安心してよいのかな?


 「ああ、ええ、少しでもお役に立てて良かったです。

 今回はその後始末的なことと、皆さんにお別れを言いに・・・。」


 「そうか!!

 お陰でオレの家族も無事だった!!

 この場で済まないが礼を言わせてくれ!!」


それは何よりだ。


この分ならみんなと再会してもおかしな事にはならないだろう。


結婚式みたいなお祭り騒ぎも気になるけど、

まずは冒険者ギルドに向かおう。



その後、あたしは再び馬車に乗り込み、カタンダ村の入り口門をくぐる。


門番さんは終始にこやかな顔をしていたよ。

最後の最後で浮いたまま進む馬なし馬車に首を捻っていたけども。




・・・もちろん話は入り口だけで済むはずなかったよね。


冒険者ギルドに着くまでの間、近隣に住む人たちの間でも大騒ぎになってしまった。


 「・・・村の入り口に馬車置いてきた方が良かったですかねえ・・・。」

 「でもさすがにそれだと盗まれたりしません?」


ちなみにラプラスさんはこの村では自分の顔を隠す気はないそうだ。

いくらなんでもこんな辺鄙な村に手配書など回ってないだろうとのこと。


なので馬車は冒険者ギルドに泊めることも出来るはずだけど。


 「麻衣様がギルドにご挨拶行かれる時はご一緒いたしますよ。

 その後はまた別れてこの村の宿泊施設に泊まろうと思います。」


あー、ならオススメはリッチリッチホテルだね。

身一つだったあたしなら家族経営のランプ亭に泊まるところだけど、

立派な馬車を泊める必要あったり、元商人のラプラスさんが泊まるなら、あっちの方がいいだろう。



そんなこんなで群衆に囲まれているのをスルーしつつ、あたし達は冒険者ギルドに到着した。


馬車から降りたあたしを見て、驚きの声を上げる皆様方。


パッと見、あたしの知り合いの人はいなさそうだと思う。

狭い村だから、当時のあたしのことは話題になってたはず。

ただ、

この村から旅立って半年近く経っているから、みんなには忘れられているかもしれないね。



すると、騒ぎを聞きつけたのか、あたしが冒険者ギルドに入るより先に、

一人の女の子がギルドの戸口から出てきたようだ。



 「な、なんですか、こんなに人が集まって・・・

 あら?

 ど、どうして馬もいないのに馬車が・・・。」


そこで、その子とあたしは目があった!




チョコちゃんだ!!


 「チョコちゃーーーーーーん!!」


思わずあたしの口から叫び声が出る。

無事な姿を見れたんだから仕方ない。


 「・・・え、

 も、もしかして・・・麻衣さ・・・伊藤様っ!?」


無事だったんだね!!

あたしは感動のあまりダッシュして抱きつきに行った。


最初は棒立ちになってたチョコちゃんだったけど、すぐに満面の笑みを浮かべてくれたのだ。



 「い、伊藤様、戻ってきてくれたんですか!?」


明日には元の世界に帰るんだけどね。

でもこの場でそれは言いにくいかな。


 「戻ったっていうか、いま、お世話になった人たちに挨拶周りしてる最中なんですよ。

 まずは冒険者ギルドに来ようと思って。」


とりあえずこう言っておこう。


 「ほ、ほんとですか、

 でもまた会えるなんて思ってなかったからとても嬉しいです!

 お父・・・いえ、エステハンもおりますので是非挨拶してあげてください!」


チョコちゃんはあたしより年下なんだけど、完全に大人の世界に混じってお仕事してるんだよね。

本心から凄い立派だと思う。

あたしに対しても、

送別会とかでは麻衣さんと呼んでくれていたけど、ギルド職員としてあたしに向かう時は、伊藤様と呼び分けるほどの真面目さなのだ。



あ、そうだ、

チョコちゃんには聞けるかな?



 「あ、そう言えばチョコちゃん、

 ここに来る途中、やけに賑やかだったけど、結婚式でもあるのかな?」


するとチョコちゃんは「ああ!」とばかりに手を叩いた。


 「すっごいいいタイミングですよ!

 麻衣さんも結婚式出席されてはいかがですか!?

 飛び入りでも全然大丈夫だと思いますし!」


さすがにそれは


 「いやあ、それは迷惑でしょ・・・」

と言いかけてあたしは気付く。


 「もしかして結婚する人ってあたしの知ってる人です?」


狭い村だからね、

その可能性はあるとは思っていたけども。


そこでチョコちゃはニッコリと、

何の下心も邪心もなく微笑んだのだ。


 「ええ!

 麻衣さんも覚えてらっしゃると思いますよ!!

 一緒にクエスト行かれてましたもの!!」






え え?


それって


 「うふふ、誰だか分かりません?

 ほら、医療ギルドのダナンさんです!

 麻衣さんの送別会にもいらっしゃってましたし、向こうも歓迎してくれると思いますよ!!」



ダナンさん・・・だって?


なん・・・だと。



そ、そんな



ことって


みなさま、予想は当たりましたか。


さて次はあの人がどうなったか・・・

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