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第六百二十四話 ぼっち妖魔は悪い子じゃありません

最近のニュースで、


何年か前に、沖縄で財布無くした高校生に六万円貸してあげたお医者さんの話が、

美談として道徳の教科書に載るそうです。


・・・昔、バイト中、あの先生には脳外科外来の冷蔵庫にストックしているアイスクリームとか取りに行かされた懐かしい記憶が蘇る・・・。


まあ、そのアイスクリームもおひとつお裾分けしてもらいましたけどね。

気前のいい先生であるのは確かです。

私のバイト先に遊びに来た友人は、肩と背中揉まされた代わりにピザを奢ってもらってたし。

・・・お前ら初対面やろ。


<視点 麻衣>


 「ごめんくださーい!」


中にいるのはわかっている。

隠しても無駄だ。


あたしは教会の扉を叩く。

ちなみにここは金枝教の教会ではない。

金枝教の他にも宗教はたくさんあるのである。

教義とかにどんな違いがあるのかは知らないけども。



 「は、はい、どちら様でしょうか?」


フェリシアさんとか知ってる子が出てきてくれればなと思ったけど、そう美味い話がいつも起こるわけではない。

恐る恐る扉を開けてくれたのは、おとなしめな感じの子である。

もしかしたら前回、顔くらいは見たかもしれないけど、たくさんいた見習いシスターさんの中の一人だろう。


・・・そう言えば本職のシスターさんはいないのだろうか。

いや、多分正規のお仕事やお勤めは本職シスターさんが担当して、時間外の訪問者とか雑用を見習いさん達が対応しているのだろうか。

まあ、あたしが気にすることでもないだろう。



 「えーと、冒険者の伊藤麻衣と申します。

 こちらに同じ冒険者のゴッドアリアさんがお世話になってると聞きました。

 以前同じパーティーを組んでいたものです。」


 「あ、はあ、ゴッドアリアさんの・・・」


ちょっとぼーっとした子だな。

歳はあたしと一緒くらいだけど。

目も細くて居眠りを誤魔化すとき便利かもしれない。


・・・




え、と、どうしてそこで動きが止まるのかな?

早くゴッドアリアさんを呼んできたり、

何かあたしの正体に疑問があるなら、質問でも何でもしてくれればいいのだけど。


 「あ、あの?」


痺れを切らしたあたしが声をかける。

そしたらこんな言葉が返ってきたのだ。


 「・・・ゴッドアリアさんに友達いたんですね。

 良かった、神様はあの子を見放してなんかいなかった・・・。」


そこで涙ぐまないでくれる?

あの子ここで本当にうまくやってるの?

ていうか、あなたは友達になってあげれないのかな?


 「あ、あと、それとツァーリベルクさんもいらっしゃるならご挨拶をしたいのですけど。

 以前一緒に吸血鬼を討伐してキャサリンさんを助けたことがあるので。」


そこでようやくその子はあたしが誰だか分かったようである。

細かった目もバッチリ開かれる。


 「あ! あ! あ!!

 あなたはあの時の!!

 はい!! ただいまあ!!」


いろんな子がいるよね、この教会。


しばらくしたらドタドタといくつもの慌てた足音が聞こえてきた。


扉の向こうを透視すると先頭はゴッドアリアさん。

続いてフェリシアさんとキャサリンさんかな。




ドバタァン!!


荘厳で厳粛なはずの教会の玄関の扉が荒々しく放たれる。

 「麻衣いいいいいいっ!

 ・・・いいいいいっ!?」


よし、待ってた。

この状況は予想できた。

予知能力なんか不要。

だから事前にふくちゃんを召喚しておいた。


会いたかったみたいだよ、ふくちゃんもあなたに。


 「なんでいきなりそのふくろうがああああああああああああああああっ!?」


ゴッドアリアさん、ふくちゃんに懐かれてたよね?

だから出会い頭に感動の再会をさせてあげようと・・・


 「いやだああああああっ!!

 また生え際を狙ってるうううつつっ!!」


ふくちゃん、顔を傷つけちゃダメだよ。

綺麗に頭髪だけを狙いなね?


 「だからめてよおおおおおおおおおおおっ!!」






 「ごめんなさい、ゴッドアリアさん、ここはお約束かなと。」


お部屋の隅で「ひどいよひどいよ」ってベソをかいている。

うーむ、少しやり過ぎてしまったか。


ふくちゃんもバツが悪そうにしているな。


あ、自分の羽を嘴で抜いて、ゴッドアリアさんに差し出してる。

 「えっ、く、くれるのっ?」


ふくちゃんは申し訳なさそうに頭を下げて、

トコトコと近づいていく。

うむ、とてもかわいい動きだ。


 「あ、ありがとう・・・。」


友情って種族を超えて成立できるんだね。

あたしは感動したよ。

でもゴッドアリアさんも気をつけた方がいい。

確かふくろうって、お世話になった人間の顔を覚えると、自分が捕まえたネズミとか虫とかをプレゼントしてくれるらしい。

さすが貧乏だろうとゴッドアリアさんもそんな食糧は貰っても困るだろう。




 「麻衣さん、お久しぶりです・・・。

 でも女の子の髪の毛をかきむしるだなんて・・・。」


おや?

赤茶けた髪のフェリシアさんの視線がどこか冷たい。

そう言えばキャサリンさんのことで、あたしはフェリシアさんに前回偉そうなことを言ってしまった気がする。


もう忘れてしまったけれど。


 「フェリシアさんもお久しぶりです。

 キャサリンさんはその後お加減はどうですか?」


あたしは小動物系の顔したキャサリンさんの方を窺う。

以前、吸血鬼に血を吸われてしまったからね。

ちゃんと普通の人間に戻れたのか心配だったのだ。


 「ああ、うん、あたしやエミリアはもう大丈夫だって!

 一応毎月検診みたいなものは受けなきゃいけないんだけどもう心配いらないってさ。」


それは良かった。

エミリアさんは教会の子じゃないけど、

キャサリンさんと病室も治療コースも一緒だったんだよね。

二人とも屍鬼への進行度は微々たるものだったから、社会復帰も早かったのだろう。

一番症状の重い子は、まだ治療続行中なのだとか。

日常生活はなんとかというところらしい。

安心するにはもう少し時間が必要なのだろう。


なお、キャサリンさんは獣人とのハーフだそうなので、顔つきもどことなくそれっぽい。

けっしてネズミ顔と言ってはいけない。

ご本人曰くフェレット獣人だそうだ。



 「それで明日にはもうこの街を去ってしまうのか、

 出来ればもっといて欲しいところだったのだが。」


遅れてやってきたのがツァーリベルクおじいちゃん。


やっぱり年長の男の人がいると安心できるね。

ツァーリベルクさんはここの教会の館長さんと一緒に来たのだけど、館長さんも忙しいらしくあたしに挨拶だけしてお仕事に戻られた。


・・・ああ、

やっぱり被害者はそんなに出なかったと言っても、死者の収容や埋葬の件などで大変なようだ。


 「なに、今晩だけなら私もゴッドアリアもカラダは空けられる。

 そもそもゴッドアリアが忙しいのは日中だけだからな。」


ならここのメンバーだけ誘って冒険者ギルド・・・いや、冒険者主催のパーティー行けばいいかな。



・・・よくよく考えたらあの人たちを主催にしていいのだろうか?

悪い人たちではないとは知ってるけど、この街やギルドの代表でもなんでもないよね?


 「キサキや娘たちに知らせるのは無理か・・・。」


 「それこそ大掛かりになっちゃいますよ、

 後でよろしくお伝え下さい。」


 「クィンティアも麻衣殿に会いたがっていたのだが。」


どうやらクィンティアままはまた山に戻ってしまったらしい。


感動の親子の再会は済ませたようである。

ツァーリベルクおじいちゃんと妹のロワイエルさんとだけだそうだけど。

・・・ツァーリベルクおじいちゃんのデレ顔を見たかった気がする。

クィンティアままはどんな表情で対応したのだろうか。


それにしても、まだキサキおばあちゃんとは意地を張り合ってるのか。

凄まじい親娘だ。



次回は飲み会です。


一話で済むかな。

まだ何も考えてないのです。

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