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第六百二十一話 ぼっち妖魔は振り返る

メニュー画面変更されてわかりづらい!


予約投稿もできなくなったかと思いました。

「投稿」ボタン押してから予約画面が現れるなんて分かるかあっ!!

<視点 麻衣>


再びお空の旅である。

もう魔族の人たちの土地からはおさらばだ。


今やこの辺りは完全に人間達の住んでいる地域だろう。


初めてあたし達が空を飛んだ時は、ワイバーンの群に襲われたけど、

あれは人里離れた魔族領でのお話。


人間が多く暮らしている地域を航路として選ぶのなら、そこまで危険はないと思う。


今回ワイバーンに襲われたのなんて一回、二回と数える程度。

しかも一匹ずつだ。


ラプラスさんもあたしの能力知ってるせいで、完全に落ち着いていた。


まあ、あたしの虚術結界領域内に入った瞬間、空気がなくなっちゃうんだものね。

ワイバーンさんも、何が起きたか分からずそのまま墜落していった。

ご冥福をお祈りさせていただきます。


ちなみにラプラスさんの飛行能力は空気を必要としない。

さらに言うと空中で静止することも可能なのだ。


なので、あたしの結界領域が外れる心配もない。

空中で馬車を静止させて、

のこのこと近づいてきた魔物は勝手に自滅するだけである。


我ながらチート。

まあ、ラプラスさんの能力あっての戦術だけども。


なお、前回もその手段を使えば良かったのかもしれないけど、あの時はあまりにワイバーンの数が多すぎた。

真上から接近されたらあたしの虚術は役に立たない。

さらにいうと、バキューム使ったら、

ラプラスさんのエアスクリーンもカラドックさんの風の精霊術も使えなくなるしね。


なのであくまで前回とは異なる戦い方で済んだというだけのお話です。



さてさて、

今あたし達が向かっているのはキリオブールだ。

ゴッドアリアさんやツァーリベルクおじいちゃんの住んでいる街でもある。


なお、

あたしがこの世界に転移してから、

始まりのカタンダ村からこのキリオブールまでは同じ一つの国の中の地方である。




・・・国の名前なんだったっけ。


カラドックさん達と合流したのは魔族領だったし、その直後訪れた街はベードウーア王国だったしね。


それまではずーっと同じ国の中で活動してたおかげで、国の名前を意識する必要なかったんだよね。


 「キリオブールはそこそこ有名な街ですから分かりますよ。

 国名はノルドレーンですな。

 国自体はそれほど大きくもないですが、トライバル王国やグリフィス公国よりかは亜人も少なく、国情も安定した国と評されております。」


頼りになります、ラプラスさん。

まあ、もう物語も終わりなので覚えなくていいと思う。


え?



邪龍討伐以降、めちゃくちゃ物騒なフラグ立ってたみたいだけど、ホントにこのまま何事もなく終わるのかって?


知りません。

あたしは一切関知しません。


あたしはこの世界の住人ではないのだ。

あたしが何か働かなくちゃいけない義務は、もう金輪際一切ない。


せいぜい頑張って下さいケイジさん。

きっといいことあると思うよ。




なお、さすがにラプラスさんでも、

空から下を見て、そこがどの街かを特定するのは難しいらしい。

そもそも、ラプラスさんもキリオブールに来るのは初めてとのこと。


なので何回か地上に降りて街の人たちから情報収集する必要も本来ならあるのだけど、

ほら? あたしの能力だとそれもクリアできる。


手間としてはそんなに大したものではない。


そんなこんなで、

朝方マドランドを出発したあたし達は、

日が沈む前くらいの時間にキリオブールに到着したのである。



 「麻衣様、今晩はどうされますか?」


 「うーん、ゴッドアリアさんがキサキおばあちゃんの所に身を寄せていれば、あたしもラプラスさんも一緒に泊めてくれると思うんですけどね。

 いきなりだと失礼ですよねぇ?」


 「断られる事はないと思いますが、貴族相手にあまり褒められた行為ではないでしょうね。」


 「ですよねぇ、

 それにゴッドアリアさんが今どこに住んでるかも分からないしなあ、

 前と同じ安アパートのままか、教会にいる可能性もあるし・・・

 さすがにお母さんのところに戻ってはいないと思うけど・・・。」



 「おや?

 麻衣様は知り合いの方がどこにおられるかは遠隔透視でお分かりになるのでは?」


あー、

まーそうなんですけどね。

あたしが空からキリオブールの街を特定できたのも、遠隔透視を使ったからだ。


 「分かるのはゴッドアリアさんの現在位置だけなんですよ。

 だから例えば今、ゴッドアリアさんがキサキおばあちゃんの屋敷にいたとしても、

 単に何かの用で呼ばれているだけかもしれないし、いとこの女の子たちと遊んでいるだけかもしれないんです。

 夜になったら自宅へ・・・もしかしたら教会にご厄介になってるケースとかもあるわけで・・・。」


 「なるほど、それだと結局はご本人に確かめるしかなさそうですな。」


そしてもちろん感知能力を持ってない人に、

あたしの念話は届かない。 

だから今すぐにゴッドアリアさんを探すよりかは他の用を済ませた方がいいと思うんだよね。


 「どちらにしろ、私は街の宿屋に泊まった方が良いでしょうね。

 明日のお昼前後にまた待ち合わせるのはいかがですか?」


ちなみにキリオブールからカタンダ村までには、普通の馬車だと結構時間かかるけど、ラプラスさんの飛行能力ならあっという間だ。

恐らく二時間もかかるまい。


まあ、最高速度がどのくらいか知らないし、

そこまでスピード出されるのも怖いから要求しないけども。


 「じゃあそうしましょうか、

 あたしはある程度この街には土地勘ありますから、まずは冒険者ギルドに顔を出しに行きます。

 明日の待ち合わせは商業ギルドの方にしましょうか?」


ラプラスさんは元商人だからそっちの方がいいかなと思ったんだけど。


 「い、いえ、私は盗賊でもありますので、万一顔バレしてた場合、商業ギルドに顔出すのはちょっと・・・。」


あ、むしろ危ないのか。

ならまだ冒険者ギルドの方が安全かもね。


てなわけで、

ラプラスさんは街の中でも高級な宿泊所が並んでる通りに馬なし馬車を着陸させた。


もちろんまだ陽は高いし、

周りの人たちにはびっくりされたけど、

別に犯罪行為をしてるわけでもなし、

この辺に細かい道交法もあるわけでもなし、

高そうなホテルを見つけてとっとと優雅にチェックインした。


最初からラプラスさんがいたら、

いろいろな交渉とかは全部任せられたんだろうな。


もっと早くに知り合っていたならば!!




そしてあたしは一路冒険者ギルドへ。


懐かしい街並み。

考えてみればこの異世界転移、

このキリオブールが一番長く過ごしていたんだっけ。

カタンダ村でも結構長く過ごした気もするけど。


ゴッドアリアさんの自宅から屋台引っ張ったりとかもしてたんだよね。


懐かしいなあ。

あの頃から比べると気候はかなり寒くなっている。



そしてこの通りの角を曲がれば・・・


うん、見えてきた見えてきた。

冒険者ギルドである。


もうこの時間帯はクエストから帰ってきた冒険者くらいしか待合室にはいないだろう。


というわけで、あたしは何食わぬ顔顔でギルドの扉を開く。


中にいる人達の最初の反応は分かっている。


こんな子供が何しに来たんだという奇異の目。


そしてそれはもちろん受付嬢の人もだ。


ただまあ、

・・・受付嬢の人は・・・


 「あっ!?

 あなたは・・・い、伊藤様ですか!?」


おお、どうやら覚えてくれたようだ。

そんな派手な活動してなかったけど、

失せ物探しとか、採集系ミッションとかあたしの探知能力をフルに使えるようクエスト受けてましたからね。


それで確かこの受付嬢の人のお名前は・・・


 「お、お久しぶりです、カティアさん、

 お元気でした?」


この街にいた時、主にあたしの担当をしてくれた人だ。

吸血鬼エドガーによる連続少女誘拐事件調査の依頼を勧めてきたのもこの人なのである。



カティアさんの窓口には冒険者は誰もいなかったので、すぐにあたしに気付いてくれたわけだけど、タイミングが遅れて他の窓口のお姉さん達もあたしの存在に気付く。


フロアにいる一般の冒険者の方々は、すぐにその違和感を感じ取れるだろう。



 「お、おい、あの子供みたいな黒髪の子・・・」

 「た、確か少し前に吸血鬼事件を片付けた召喚士と巫女のジョブを持っているっていう・・・」

 「そ、それに商業ギルドの前にプリン売ってた子だよな?」


連鎖反応的にあたしの正体がバレてゆく。

確かに吸血鬼事件はこの街でも大事おおごとだろうからね。

あと、プリンはその後一大ムーブを湧き起こしてしまったのだろうか?


 「いっ、伊藤様っ!!

 よく、このキリオブールにお戻りくださいましたっ!!

 どうぞ事務所の奥にいらしてくださいっ!!

 ギルマスも呼んで参りますのでっ!!」



あれ?

そう言えばここのギルドマスターさんとは面識なかった気がするけど・・・?

あ、いや、確か吸血鬼事件の後、お小言もらった時にいた人かな?


受付嬢のカティアさんには会いにきたつもりだけど、ギルマスには用ないんだけどなあ?


そこへなんか聞き覚えある声が。


 「ば、バカやろう、お、おめーら、何言ってやがる・・・?」

 「あ? なんだってんだ、ゼロスっ?」

 「おめーら、邪龍を討伐した勇者パーティーのこと聞いてねーのか!?」

 「ああ?

 邪龍? 勇者パーティーって・・・」


 「知らねーはずねーだろ!?

 邪龍を倒した勇者パーティーの中に、召喚術と巫女職を兼ね備えた黒髪の女の子がいるって・・・」


あれ?

あの人は顔も見覚えあるな?


あ、確かキャラバンの護衛してたリーダーの人だ!

一緒に打ち上げパーティー参加してたよね。



 「え、お前、それって・・・」

 「間違いねぇ!!

 あの子が邪龍を倒したんだっ!!

 うおおおおおおおっ!!

 こうしちゃいられねえっ!!

 お前ら仲間全員声かけろ!!

 英雄の凱旋だぞおおおおおおおっ!!

 今夜は宴会だあああああああああああっ!!」


あたしが邪龍倒したんじゃないのだけど。




それにしてもこの人たちまた飲むのか。

いつもお酒飲んでる印象しかないな。


ていうか、どうしよう。

ひっそり帰ってきたつもりがただごとで済まなくなってきたみたい・・・。


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