第六百十五話 ぼっち妖魔は悩む
ううう、下書きが全然進まない。
ようやく投稿日12時に校了。
これから見直し。
次回アップできるだろうか。
<視点 麻衣>
うわあ・・・
ちょっと見ない間にヨルさん、
やさぐれまくってるよ・・・。
自分の部屋だから仕方ないかもしれないけど、
衣服はだらしなく着崩してるし、下半身なんかパンツ一丁だ。
後ろでラプラスさんが恥ずかしそうに視線を逸らしている。
そして髪の毛もボサボサ・・・あ、これはふくちゃんのせいかな。
ふくちゃんもゴッドアリアさんの件で味をしめたのかもしれない。
とりあえず、スネちゃんとふくちゃんを引っ込めよう。
なお、ヨルさんも自分で言ってたけど、
片角はカラドックさんに切り落とされたままである。
自分の部屋の中にいるだけなら、わざわざ布切れ巻きつけて隠す必要ないものね。
上位僧侶クラスの回復魔法なら、角の再生できそうな事言ってたけど今のところ治す気配はなさそうだ。
「う、うう・・・
誰かと思ったら闇の申し子、麻衣ちゃんじゃないですかあ・・・。
どうやらヨルの息の根を止めに来たようですねぇ・・・?
でも、それも、いいかもしれないですよぅ・・・。」
何を言っているのか。
なんであたしがヨルさんに引導渡さなきゃならないのか。
ほら、案内してくれた番頭さんの顔色が変わっちゃったじゃないの。
「ヨルさん殺してあたしに何のメリットあるんですか、
早く正気に戻って下さいよ。
あたしはヨルさんの様子を見に来たのと、ちゃんとお別れしたかっただけですよ。」
一方、酔っ払いながらもヨルさんの顔は信じられないとでもいうかのように、疑いと驚きの眼差しをあたしに浴びせてくる。
「う、嘘ですよぅ!!
なら、な、なんでそんな殺意剥き出しの魔族フェイスで現れるんですかよう!!
完全に戦闘態勢ばっちりじゃないですかあ!!」
・・・あら?
ああ、そ、そうか。
それは勘違いさせてしまったかもしれない。
あたしは妖魔変化を解いておく。
なるほど、
妖魔変化してたから、魔力上乗せでスネちゃんとふくちゃんの攻撃も圧倒的だったみたいだ。
余計にヨルさんを勘違いさせてしまったかもしれない。
「ああ、ごめんなさい、
それはこの姿の方が魔族の皆さんに受けがいいかと思っただけです。
ほら、変化は解きましたからヨルさんも起きてくださいって。
・・・てか、立てます?」
「うう、ほ、ほんとですかよぅ、
麻衣ちゃん、その気になるとホントに容赦なくなる人ですから、こっちは気が気でなりませんですよう。」
何いってるんだ。
自分がケイジさんに大掛かりな計略引っ掛けておいて、よくもまあ、そんな自分を棚にあげるようなことを・・・
「麻衣様、・・・もしかしたらお二人は根本的な部分で似た者同士なのかと。」
はあ?
ラプラスさん、何を寝ぼけたこと言ってるんですか!?
清廉潔白なあたしとヨルさんのどこが似た者同士なんだと!!
そこは徹底的に抗議させてもらいますよ!!
「・・・どうやらお話を始められそうですね、
では私は失礼いたします。
お飲み物の用意はいたしますので。」
執事のバトさんは、あたしが暗殺者じゃないとわかって心底からホッとしたようだ。
だいたいこんな弱そうな刺客がいるものですか。
「麻衣様、積もるお話もあるでしょうから、私も一階のロビーで待たせていただきますよ。
何かあれば念話でも構いませんのでお呼びいただければ。」
ラプラスさんもぶれないな。
確かにラプラスさんは、これまであたし達とは一緒に戦うこともなかった。
ワイバーンの群れや邪龍の眷属たちに囲まれた時も、あくまで馬なし馬車の御者に専念していたので、どんな時もあたし達とは一線を引いたお付き合いをしているのだ。
ある意味、あたしみたいないい加減な生き方してる人間とは対極とも言える。
そしておじさん達二人はこの部屋から出て行った。
さて、あらためてヨルさんとお話しよう。
一応、酔っ払った顔はどうしようもないけど、服だけはちゃんと着てもらった。
女の子同士で変な気が起きることもないけど、親しき仲にも礼儀あり。
決してあたしに百合っ気が湧き上がるという流れになることはない。
・・・ないからね?
「さっきの番頭さん・・・いえ、バトさんは、新しい執事さんですか?」
とりあえず気軽な話から始めよう。
「あの時のシグさんて執事の人の代わり」って言い出すと、話が重くなるかもしれないから名前は出さないほうがいいと思う。
「もともとシグの前任ですよう。
ヨルがシグを倒しちゃいましたからねぇ、
引退して余生を楽しんでたバトをお父さんが復帰させたですよぅ。」
何の遠慮も要らなかったようだ。
どうせならカラドックさんの事も、こんなきれいさっぱり吹っ切っていれば良かったのにね。
「元気出してくださいよ、
そのうちケイジさんやリィナさんも、ヨルさんの顔を見にくるって言ってましたから、それまでに立ち直れればいいんですけどね。」
ヨルさんはそっぽを向いてため息をつく。
「はあ、麻衣ちゃんもそうですけど、みんなお節介焼きですねぇ、
種族も違うヨルのことなんか放っておけばいいんですよぉ。」
これはヨルさんの本音なのか、それとも単にふてくされてるのかどっちなんだろうね。
さすがにあたしもそこまで人の心の奥底はわからないしね。
あたしはバトさんに煎れてもらったお茶を飲む。
人間の街で飲むお茶とはまた一風、風味が異なるようだ。
だいたい、グリフィス公国で飲んだお茶は、だいたい紅茶の範疇の中だったと思う。
この魔族の街のは・・・
あたしも詳しく知らないけど中国茶みたいなイメージの香りや苦味が・・・
もちろん飲めないわけじゃない。
そこそこ美味しくも感じる。
そのうち慣れるだろう。
「まあ、ヨルさん、聞いてくださいよ。
あたしだって、ここの世界の人たちから見れば、人間なのか魔族なのか、そのどちらでもないのか定義出来ませんけど、せっかく繋がった人たちのことを全部切り捨てることないと思ってます。
ヨルさんだって、ケイジさんやリィナさんの事、嫌いなわけでも無いでしょう?
ならこれからも仲良くすればいいじゃないですか。」
あたしはもう、この世界に来ることは出来ないけれど、ヨルさんたちはそうじゃない。
単に遠いとか往復に時間がかかるというだけで、
その気になればいつでも会えるのだ。
それなのに、関係を断つなんてあまりにも勿体ないし、さみしい話だと思う。
しばらくヨルさんは黙っていた。
そのうち、ゆっくりと口を開いて・・・
そして段々話に勢いが・・・
「・・・ズルいですよう、麻衣ちゃんは。
わかってますよう、
みんないい人たちだって。
でも、でもヨルだけご褒美ないなんて酷いじゃないですかあ。
ヨルの望みは何一つ叶えられてないんですよぅ?
なんで、ヨルだけそんな辛い目に遭わないいけないんですかよう!?」
最後は搾り出すような声だった。
・・・またこの話なのか。
ヨルさんに、何も与えられてないというのは間違いだと思う。
だってヨルさん、めっちゃ強くなってる。
もちろんそれはご本人の才能と努力と言えばそれまでだけど、
世界樹の女神様からだってギフト貰ってるし、レベルアップだってこの街にいたままだったら、ここまで上がる事も無いはずだ。
でもヨルさんの言いたい事はそういう事じゃないだろうしなあ。
このまま帰ろっか?
次回更新できなかったらごめんなさいですよぅ。