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第六百十三話 ぼっち妖魔は解決する

ぶっくま、ありがとうございます!



更新今日だったか・・・

明日かと思ってた、危ない危ない。

<視点 麻衣>



ラプラスさんの馬なし馬車は北へと向かう。

そう言えば思ったのだけど、

馬なし馬車って表現、なんか首無し騎士を連想しない?


首無し騎士・・・デュラハンか。

この世界ではまだ見た事ないな。

不死系の魔物だと屍鬼とリーパーまでしか会ってないもんね。


・・・いえ、もちろんそんな物騒な魔物になんて会いたくないですよ?

ゲームとかだと、魔法の効きも悪いような設定だと聞いたことがある。

間違いなく、あたしと相性悪い。

せめて、味方側であってほしい。

そして、こんな物語終わり間際でなんかのフラグにもなるまい。


・・・ならないよね?


話を戻そう。


ラプラスさんが座っている御者席は、

あたしのいる籠の外だけど、

周りをエアスクリーンで囲っているおかげか、少し大きめの声を出せばいいだけで、会話には不自由ない。



 「特にですね、何か異常事態が起きたというわけではないのです。」


ラプラスさんによると、

あたし達と別れて世界樹洞窟に戻った時に、何らかの違和感を覚えたそうだ。


最初はなんてことはなかったらしい。


お互いに帰着の挨拶と、

それまでの状況報告が終わった後、

あのスライムが人型に擬態しているというオデムちゃんの、和やかな空気を読まない発言までも。


 「あー、らぷらすったら美味しいものばっかり食べてたんでしょう!

 布袋どんが羨ましがってたよー?」


 「えっ、いや、オ、オデム!?

 そ、そんなはっきり、じゃなくて、か、会長がどんなもの食べてるのかなって、気になっただけだよっ!?」


 「・・・確かに豪勢な食事に与ったのは否定しませんがね、

 それでも私は犯罪者認定されているのも確かなので、一切気を抜けなかったんですがねぇ?」



そこまで聞くと、多少のトゲはありそうだけど、いつもこの三人はだいたいそんなノリだという。


ならお約束というヤツで、ある意味微笑ましいシーンなのでは?


 「そこまでは良かったのですよ、

 マスターも私に労いの言葉をかけていただきましたしね。

 邪龍も滅び、大勢の魂も世界樹に戻ってきました。

 良い事ばかりです。」



ではいったいどうしたというのか。


 「しばらくして布袋さんに呼び出されました。

 オデムやマスターから離れたところに。」



む?


 「なんでも、私がグリフィス公国にいる間に、世界樹洞窟に一人の男がやって来たと。」


 「え? 

 あんな所に?」


 「はい、通常の手段で見つけられる場所でもありませんし、近くに人里すらありません。

 そして、これは布袋さんから聞いた話ですが、その男はマスターの能力も布袋さんの肉弾攻撃も一切効かなかったと。」


え、それって。


 「あの時、麻衣様は覚えておられますかな?

 邪龍を倒されたあと、私が念話で、オデムの身に異常が起きてスライムに戻ってしまったという話を聞かれたと思うのですが。」


あ、そう言えばそんな事言ってたっけ。

 「確か、食事したら元に戻ったってことなんですよね?」


 「あの場では言いませんでしたけどね、

 オデムが食べたのは、その一人の侵入者の人間だったそうです。」


 「はい?

 だって、その人、女神様の能力が一切通じなかったて、今、言いませんでした?」


他人の攻撃が効かないのに、スライムには食べられるなんて事があるのだろうか?


 「そうなのです。

 その男は、自分を食えばオデムは元通りになると言って、自殺するかのようにスライム状態のオデムに身を投じたらしいのです。

 ・・・結果は、無事にといいますか、その男の言葉通り、オデムは元の少女の姿を取り戻し、前と同じように会話もできるようになりました。

 そして、マスターもオデムも何事もなかったかのように・・・。」


人が食われたのを無事と言っていいのかは大いに疑問だけど、ここはあたしが苦労の果てに身につけたスルースキルを使う。


 「全部解決したってことなんですか?」


 「・・・。」


え、やめてください、その無言。

背筋がぞわぞわくるでしょうに。


 「後から戻って来た私からはそう見えますな、確かに。

 けれど布袋さんにしてみたら、その男の正体も目的も全て不明なままなのに、マスターがまるで何の気にもしてないことがおかしすぎるということなのです。

 ・・・私も話を聞けばその異常さはよく分かります。」


 「お二人とも女神様には・・・?」


 「それとなく、伺ってはおります。

 けれど布袋さんのいうとおり、マスターは何の警戒も危機感も覚えておりません。

 それこそまるで、あの洞窟の地面に雑草が生えてくるよりも興味をお持ちでないようです。

 ・・・無論、我らもそこまで執拗にマスターを問い詰めるわけにもいきませんからな。」


うーん、

ここまで聞いて、


タイミング的に「あの人」の関与を疑わざるを得ないよね?

まあ、人かどうかもわからないけど。

何しろあたしは「彼」の本当の正体など見たことないのだ。


 「それと時折ですが、オデムの様子がおかしくなる時があるようです。」


 「え、ど、どんな?」


 「これも私がまだ戻っていなかった時なのですが、いきなり吐血したかと思えば、大量の状態異常が付与された時がありまして。

 まあ、しばらくしたら、これも何もなかったかのように回復したそうですが。」


スライムって血を吐くのかな?


 「吐血って、なんの状態異常を?」


 「それもおかしな状態異常ばかり、

 引き篭もりだの、泣き虫だとか、弱虫毛虫だの、意気地なしなど、まるで子供の悪口を浴びせたかのような・・・。

 なお、こちらはマスターも慌てふためいていらっしゃったと聞いております。」


あっ




もう分かっちゃった。


ここまでヒントあればね。

麻衣先生にはお見通しだよ。


 「ラプラスさん。」

 「な、何でしょう、麻衣様。」


 「全部分かりました。」

 「おお! 今の情報だけで!! 

 さすがは麻衣様です!!」


 「えっとですね、

 たぶん、その人、女子供や義理人情には弱いと思うので、当面はオデムちゃんの心配は要らないと思います。」


 「で、では麻衣様は今の話の流れを理解したと!?」


 「正直、その人が何考えてるかは分からないんですけど、

 むやみやたらに他人を害することはないでしょう。」


 「で、ではマスターの様子がおかしいのも?」


あー、これは難しい。

どう説明すればいいんだろう?


 「・・・女神さまが、その人の正体に気付いているのか、

 或いは気付いておらずに、その男の人に何らかの影響を受けてるかはあたしにも分かりません。」


 「え、そ、それは何とすれば・・・。」


女神様に仕えるラプラスさんにしてみれば不安になるのも仕方ない。


うーむ、


もう、ぶっちゃけましょうか、

説明が面倒になって来た。


 「その人、例の深淵、あびすさまですよ。

 女神様の元の世界での思い人の、

 こっちの世界での別人格ですよ。

 たぶんオデムちゃんに精神だけ潜り込んだんでしょうね。

 女神さま、どうすんだろ?

 あくまで別人格なんだから、前の世界と同じように恋心抱くわけにもいかないし。」


元の世界では、ヴォーダンとか他の呼び名を使ってたけど、

こっちと区別したいから、こっちの造物主様の呼び名はあびすさまでいいだろう。

・・・ていうか、布袋さんといいコンビになりそうな名前の気がする。



 「は、はい?」

一方、ラプラスさんの時が止まった。

今のあたしの説明で何秒くらい止められるかな。


その間にあたしも考えよう。

布袋さんの「異世界の記憶」スキルでも気付けないのだろうか。

やっぱり無理かな。

あくまで布袋さんの記憶は、あの人が人間として過ごした時期についてだけの記憶だものね。


そして時は動きだす。


 「あの、ま、麻衣さま、そ、そうだとして我々はどうすれば・・・。」


あたしに言われたって知りませんよ。


 「とりあえず、どうしても困ることが起きたら、金枝教の聖女ミシェルネ様を頼るといいと思います。

 たぶん、あびすさまに言うこと聞かせられる人って、あの人くらいしか思い浮かばないので。」


時を止めるTWOツー

たまにはあたしが人に衝撃を与える立場になってもバチは当たらないと思う。


 「は?

 聖女さま?

 聖女様って・・・あの強大な魔力波動ぶちまけた深淵相手にそんな事が・・・」


はい、出来そうなんです。


なお、あびすさま、

あたしは裏切り者じゃありませんからね。

個人的な人間関係のあれやこれやにあたしは関与しませんから。


犬も食わないようなケンカは、仲のいい人同士で勝手にやってくださいな。



うむ、これで問題は解決。

あたし達はこれより、

魔族の街、マドランドに向かうのだ。


あたしは行くのはじめてだからね。

しかも今回は交渉ごとの矢面に立ってくれるカラドックさんやケイジさんはいない。

ラプラスさんはあくまで運転手さんだしね。


あー、緊張する。



さて、ヨルさん、今からご機嫌伺いに行きますよ!!


とゆーわけで、


ヨル再びです!


なお、ヨルのエンディングは終えてますのでここから先はあくまでおまけです。

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