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第六百九話 ぼっち妖魔は解き放たれる

<視点 麻衣>


さあ!

カラドックさんの返答は!?


 「・・・凄いな、麻衣さん、本当に君は凄い女の子だ。

 最後の最後に来て、

 私の中で君の評価がまたうなぎのぼりになってるのだけど。」



ちょ!?

予想もしない反応が返ってきた!!



ヤバい、顔がにまにまする!!

くそっ、さすが賢王、

こんな返し手を使ってくるなんて!!


 「カ、カラドックさん、人が真剣に話してるのに茶化さないでくださいようっ!」


カラドックさんの方も余裕の笑みを浮かべているじゃないの。

あたしの決死のぶっちゃけ告白も、カラドックさんの掌の上で転がされるだけということなのか。



 「いやいや、ごめんね、麻衣さん。

 ふざけたり茶化すつもりは全くないし、本当に本心なんだよ。

 でも・・・そうだね、真面目に考えるならば・・・。」

 「ま、真面目に考えるなら?」

ていうか、やっぱり真面目じゃなかったのかな?


そこでカラドックさんは真顔に戻る。

賢王ともなると、自分の本心とは無関係に顔の表情なんかも容易く繕うことが出来るのだろう。


 「父上は人間という種に興味はなさそう・・・に見えたけどね。」




それは


 「麻衣さんの目にはどう映っていたんだい?」


え、いや、ちょっと待って。

確かにそれはその通りだったんだけど。


あれ、でもあの人、人を実験動物のように見てたよね?

それは興味ないという話にしてもいいんだっけ?


 「・・・確かにそう見えました、あたしにも。

 でも、その答えには納得できる自分と納得出来ない自分がいます。」



 「・・・ほう。」



恐らくあたしが知る天使くんは、二年前の時点で人の心を得ていない。

だから人間という種を本当には理解出来ていない筈なのだ。



けれど、カラドックさんの世界の天使くんは、

・・・人間の心を理解しつつあったようだ。


でもそれはいつの段階の話なのだろうか。

確かカラドックさんの世界の天使くんは、

アスラ王という人を倒して、国をカラドックさんに譲り、自らは姿をくらませた。




あれ、でもあたしが夢で見た・・・

ケイジさんの前世の人に天使くんが刺されたのは・・・



あの時の彼の寂しそうな顔・・・

自分が人間だった時に愛した女性の息子にお腹を刺されるなんて・・・



しかも一切抵抗すらせずに



彼はあの時、何を思い、何を考えていたのだろうか。



そしてその事件は・・・

ケイジさんの容姿から考えて、

今のカラドックさんの恐らく十数年後の未来の話ではないだろうか。



あ、そういえば、ケイジさんはリナさんて人を失ってから二十年彷徨ったって言ってたっけ。







・・・ヤバいな。



メリーさんではないけど

あたしはその話をここでしてはいけない気がする。

迂闊に未来のことを話して、

カラドックさんが今後の行動に変化を起こした場合、

メリーさんの時代に大きな影響を及ぼす可能性が出てくる。



やめよう。



この話はここまでだ。



そう思ってたら、

いつの間にかカラドックさんの表情が和らいでいたのに気付いた。


 「麻衣さん、

 じゃあこう言えば納得してくれるかい?

 そもそも私は国王と言ったって、別に国民を恐怖政治で支配しているわけではないよ。

 条件付きの徴兵制はあるけども、それ以外は人権にも配慮した民主的な国でもある。

 そんな状況で私が国民を、ましてや全人類を他者に売り渡すなんて出来る筈もないさ。」



そ、それは信用していいのだろうか。

ていうか、カラドックさんが嘘をつくとは思えない。

ここは信じる一択か。



 「じゃ、じゃああたしの考え過ぎってことでいいんですかね。

 えっと・・・結論どうしましょう?」



 「ぷっ、考えてなかったのかい?」


ううう、カラドックさんに噴き出されたっ。

だって仕方ないじゃないか。


あたしがどう言葉を返そうか悩んでいると、

一度カラドックさんは天を見上げた。

もしかして、カラドックさんだって考えてなかったってことじゃないの?



 「な、なあ、おい」



お?

ケイジさんが横から首を突っ込んできた。

当然あたしもカラドックさんも顔をケイジさんに向ける。



 「お、オレにはなんで二人が揉めてるのかも分からないが、

 ・・・メリーさんの話を忘れたのか?

 確か400年後くらいに、カラドックの子孫とアスラ王の子孫達とで世界を救ったとか言ってなかったか?

 それが本当なら何も心配は要らない筈だろ?

 そうじゃないのか?」



ああ、それは





そこで名前を呼ばれたメリーさんも反応する。


 「ケイジの言う通りよ。

 ・・・その話は忘れて欲しかったから、口を挟まないつもりだったのだけど。」



そうだね、

メリーさんもそう言ってたよね。


でもメリーさんが口を噤んでた理由は他にもあるよね。


あたしだって知っているんだ。


そのアスラ王の人の子孫、

メリーさんが人間だったころ結婚した男の人が、


カラドックさんの子孫、あの、黒髪の女の子を死刑台に送ったのだから。



うん、絶対に言えない。

カラドックさんには。



二人の天使の子孫が手を組み世界を滅亡の危機から救う。



素晴らしい話じゃないか。


それがなんでその後、そのもう一人に裏切られて殺されなければならないのか。


鬱になる。


メリーさんならその顛末を詳しく知っているだろう。


でも聞きたくないな。

聞くと絶対に後悔しそうだ。

胸糞悪い展開しか予想できない。


しかもその発端はメリーさんの中の人の悪戯。

更にメリーさんにはいまひとつその自覚がない。

  


・・・・・・・・・。



ああああああああああああああ!!

あっちもこっちも問題だらけじゃないかあああああああああっ!!



もう帰る!!

そうとも、

あたしには関係ない!!


目の前の仲間の人が困ってるなら手を貸すのもいいけれど、

そんな世界も別で更に未来の話なんか、あたしの知った事かあああああああああああっ!!


え?

なに?

後でなんかお手伝いするようなこと言われてなかったかって?

知りません。

勘弁してください。


 「はっはっはっはっ!!」


と思ってたら突然カラドックさんが笑い始めた!?


 「いやあ、このカラドックともあろうものが相当目を曇らせていたようだ。」


お?

空気が変わった?


 「・・・済まない、麻衣さん、

 全面的に謝るよ。」


え?

えっ?


 「そ、そんな頭を上げてください、カラドックさん!」


 「父上のやる事にいちいち思い悩むのはバカバカしいって最初に理解していたのにね、

 父上が消えて国王の仕事に忙殺されるようになってから、肝心な事を忘れてしまったようだ。」


ああ、

何となくそれは分かる。


 「ということで、麻衣さん、許してくれるかい?

 もしそうなら仲直りしたいのだけど・・・。」


そう言ってカラドックさんは両腕を広げてくれた。


・・・いいんですね?


やっちゃいますよ?


遠慮しませんからね?


あたしは助走をつける。


とおおおおおおりゃあああああっ!!


 「カラドックさぁーーーーーんっ!!」





そしてあたしはダイブした。

もちろんカラドックさんの胸板に。



うへへへへへへへへへっ

感動的なお別れというものはこういうのでないとね?




よし、みんなに泣いてるところを見せる事なく乗り切ったぞ!!


皆さん、今までありがとうございました!!

どうかこの後もお元気で!!




それで済むと思わないことです。



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