第六百話 感動のない再会
ぐーぐるどきゅめんと29シート目
ついに600話到達!!
さて呼び出された百合子ママは、
「外伝白いリリス」の世界の彼女か、
それとも「緒沢タケル編」の彼女か、
それともまた別世界の彼女なのか・・・。
以前アップした画像と顔はそんな変えてません。
髪型変えて瞳の色を薄くしてます。
<視点 カラドック>
ついに召喚は成功した。
まだ意識もはっきりしていないのだろう、
蹲るその女性に麻衣さんが慌てて体を支える。
「マ・・・、だ、大丈夫ですか!?」
恐らく第一声は「ママ」と叫びたかったのだろう。
けれどこの状態では仕方ない。
それに全く別の世界から呼び出されて、
いきなり「ママ」とは呼ばれた方も困惑するのは当然だ。
お、どうやら彼女も気がついたようだ。
「ん・・・
あ、あら?
ここは、どこかしら・・・。
私はいったい・・・。」
確か麻衣さんの母親の名前は百合子さんだったっけね。
先ほども思ったが、まだ若い年頃だろうに神秘的な色香を放っている。
なるほど、さすが百合の名前を冠するだけのことはある。
「ご、ごめんなさい、
ここはあなたの存在する世界とは異なるパラレルワールドです。
たったいま、あたしが召喚術であなたを呼び出しました・・・。」
説明としてはその通りなのだけど、
呼ばれた方としてはそれだけで全てを理解するのは難しいだろうね。
ほら、その彼女も困ったような顔になった。
「ぱ、パラレルワールド?
それに召喚術?
いったいどういうこと・・・。
あ、ありがとう、もう自分で立てるわ。」
話には納得できなくても、自分の体が無事かどうか、先に確かめようとするのはおかしな話ではない。
彼女は自分の身体を見下ろしたり、手足を動かしたりして異常のないことを確認する。
「あ、じゃ、さ、最初から順を追って話しますね?
で、でもその前に確認を・・・
え、と・・・あなたは伊藤・・・百合子さんで間違いないですか・・・。」
麻衣さんの反応を見るに、
この場に呼び出された女性の姿形については、麻衣さんが違和感を生じさせてる様子はない。
すなわちあの女性は間違いなく、麻衣さんの母親と同じ姿をしているのだろう。
・・・子供を産んだことすらなさそうなほど若く見えるのは置いておくとして。
あとは状況か。
もしかしたら麻衣さんの世界といろいろ異なるかもしれないものね。
・・・む、悪い方にその懸念が当たったのか、当の百合子さんの顔が怪訝そうな表情になった。
「はい? 伊藤?」
「・・・う。」
こちら側からは見えないが麻衣さんの顔が歪んだのだろう。
恐らくそう判断して差し支え無さそうな呻き声が聞こえてきた。
「ただ、名前は合っているわね、
確かに私は百合子よ。」
名字が違う。
瞬間的に私は彼女の左手薬指を見る。
距離があるのでそこに何か嵌っているか確認しようと思ったが流石に遠すぎるかな。
「薬指には何も嵌ってないな。」
そこはイーグルアイを持つケイジが確認してくれた。
ということは・・・。
「あ、そ、それならまだ、マ、いえ、
百合子さんは独身なのですね、
て、ことは、名字は安曇?
安曇百合子さんで合ってますか!?」
その百合子さんの顔が驚いたように歪む。
「ど、どうして初対面のあなたがそこまで・・・
いえ、待って。
あなた・・・私と同族!?」
瞬間的に麻衣さんの魔力が高まる。
もしかすると妖魔変化を使ったのかもしれない。
普段は麻衣さんの瞳は濃緑色だけど、
妖魔寄りになると瞳は翡翠色に輝き始めるからね。
「は、はい!
あたしはリーリト!
あなたと同じ種族です!」
「え、ちょっと待って、
お母さん以外に同族と会えたのは嬉しいけど、後ろの人たちって・・・。」
ああ、こちらを見た百合子さんの警戒度が高まったようだ。
そういえば彼女たちの正体を他人に知られたらいけないのだったっけ。
「あ、大丈夫です!
後で紹介しますけど、後ろの人たちもあたしの種族や過去の話は理解してますので!」
こっちもだいたい百合子さんの状況が分かってきたかな。
麻衣さんも同じく把握しただろう。
恐らく麻衣さんが呼びだした彼女のお母さんは、
その世界では、まだ誰とも結婚していない。
つまりまだ麻衣さんを産んでもいない。
愛した男性とも会っては・・・
いや、そこまではまだ分からないな。
既に知り合っているが、まだ夫婦となるほどの関係でない可能性もある。
「そ、そう、なら大丈夫なのかしら?
それであなたは・・・。
瞳の色を変えなくても私の仲間であることは理解したわ?」
「あ、は、はい、え、と。
いと・・・じゃないや、
ま、あたしは麻衣と申します・・・。」
よそよそしい喋り方だと思う。
そして麻衣さんは自分の名字を名乗るのを躊躇ったね。
どうやら手放しで喜べる状況ではなくなったようだ。
召喚した麻衣さんの母親は、
その自らの世界では結婚も出産もしていない。
つまりその世界に、現時点で麻衣さんはいない。
従って百合子さんにとって、
麻衣さんは初対面のただの同族の女の子に過ぎないということだ。
もし、百合子さんの方でも、麻衣さんの容姿に心当たりがあったのなら、
メリーさんと聖女様のように、感動的な出会いが成立していたかもしれないのに。
果たしてこのパターンは・・・麻衣さんにとって予想された範疇の話なのだろうか。
「えっと、じゃあどこから話そうかな。
百合子さんは、あたしたちの造物主様のことはわかりますよね?」
「・・・もちろんよ。
何しろあの方の復活の儀に立ち会ったのは私だし。」
えっ?
復活の儀っ!?
何の話だ?
もしかしてこの百合子さんの世界でも何やらとんでもない事件が起きているのか!?
いや、待てよ?
前に一度同じフレーズを聞いたような気もするぞ?
「え!?
そっちの世界では造物主さま、もう復活してるんですっ!?」
もちろん麻衣さんだって驚いたろう。
ただ、以前どこかで聞いたとしたら・・・
「そっちの世界・・・
パラレルワールドって、そういう意味なの?
SF小説で読んだことあるような・・・。」
「あ、じゃ、それは分かりますか、
えっと、今あたし達がいるこの世界には日本すら存在しません。
剣と魔法のファンタジー世界です。」
後ろでアガサが各属性の魔法を実演してくれる。
それを遠目に見て百合子さんも驚いているようだね。
「え、耳がとんがってる・・・
あれってエルフ?
それになんなの?
狼男までいるの?」
驚いたのはそっちだったか・・・。
「それで、あたしは普通の日本人ですけど、
多分造物主さまの意向もあってか、このファンタジー世界にいきなり飛ばされて・・・
一応そのミッションは全てクリアしたんですが、そのご褒美として、あたしが逢いたいと思った人を別の世界から呼び出す権利を与えられて・・・。」
麻衣さんの会話が途切れる。
百合子さんは何も言わない。
今の麻衣さんの言葉を聞くだけ聞いたけど、その真偽まで判断できないということか。
「そ、それで、その、あなたを呼んだんです・・・。」
「私を? 何故?
あなたが私と同族なのは理解したけども、それだけで私を呼ぶ理由になるかしら?」
「そ、それは・・・。」
麻衣さんには言い辛いかな。
やむを得ない。
無粋かもしれないが一肌脱ぐとしよう。
「申し訳ない、話の邪魔をさせてもらうよ。」
「カラドックさん・・・!?」
「・・・人間、いえ、凄い精神能力を持っているわね、何者?」
かなり警戒されているようだね。
彼女は捕食生物が獲物を狙うような視線を私に突き刺してきた。
「私はカラドックと申します。
麻衣さんとはこちらの世界で知り合いましたが、私自身、麻衣さんとは別世界の存在です。
父の名は斐山優一、母の名はフェイ・マーガレット・ペンドラゴン、
ウィグル王国第二代国王でもあります。」
「・・・たいそうな肩書きだけど・・・
え? フェイ・マーガレット・ペンドラゴン?
名前に聞き覚えがあるわね?」
え?
母と知り合いか?
いや、名前に聞き覚えと言ったか、
なら直接会ったことはないということだろうね。
一度女王に視線を送ったが、
女王も前に出る必要はないと判断したようだ。
軽く首を横に振って私に話を続けろということらしい。
「麻衣さんにはこの異世界転移でとてもお世話になりました。
そこで彼女の手助けをしたく口を挟ませて貰います。
百合子さんと仰いましたね、
麻衣さんの世界では、百合子さん、あなたは既に亡くなっている存在のようなのです。
だから、麻衣さんは貴女に一目会いたいと願った次第なのですよ。」
「私が死んだ?
あなたの世界で?」
「は、はい・・・。」
もう私のフォローは不要かな、
麻衣さんが申し訳なさそうに頭を下げる。
「自分を守る能力くらいあるつもりだけど、
どうして私は死んだのかしら?」
う、
これも麻衣さんには話し辛い内容じゃないか?
「そ、それは、あ、あたしを守るために・・・。」
「私があなたを?
あなただってかなりの能力を持っているわよね?
なぜ私がわざわざ?」
これはまた私が説明しなければならないと思ったが、その役目は他に適任がいたらしい。
私の横を一人の人物が・・・
いや、人形が横切った。
「言いづらければ私が話すわ、麻衣。」
「メリーさん!?」
緑の瞳を持つ百合子さんは怪訝そうにメリーさんを睨む。
「え、なに、あれ、今度は人形?」
・・・まあ、そうなるよね?