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第五百九十六話 「白いリリス」

あけましておめでとうございます。



召喚シーン、裸のように見えるかもしれませんが、

パーツを何も付けてないだけです。

素体というやつです。

ですから裸ではありません。



<視点 カラドック>


え?

私でいいのかい?


ここは麻衣さん本人に・・・


いや、そうだね。

麻衣さんには目の前の奇跡に集中させておくべきだよね。

それこそ、それ以外の些事は私たち周りの人間がフォローすればいいだけの話。



さて、

賽は投げられた。



具体的に言うと、

麻衣さんはお花フォルダとやらに添付されていた召喚チケットを使用した。


内容は、麻衣さんが会いたいと思う人間を別次元から麻衣さんの魔力が及ぶ限りにおいて呼び出すこと。


そして麻衣さんが会いたいと思う人間はただ一人。




ベアトリチェの黄金宮殿において召喚された、奇抜な格好の女の子と三匹の獣の時と、

仕組みや法則がどう違うのかも分からないけれど、

恐らく次元を超越した召喚にはある程度の時間を要するのは共通だろうか?



麻衣さんはと見れば、

必要な作業を終えた後、

ゆっくりとその視線を宙に向けていた。


やはり空から現れるのだろうか。



私たちは期待と不安を半々にしてその光景を待つ。




・・・まだか。


既に2、30秒は経過した筈。

もちろんそんな焦るようなことでもないかもしれないが、

目の前で全く何の変化も起きなければ焦れてくるのも仕方ないと言える。


案の定、私の隣でケイジが落ち着きなくソワソワし始めた。


 「・・・どうなってんだ?

 まさか、肝心の人物を探し当てられないとか、

 ・・・それとも別次元でも麻衣さんのお母さんは・・・。」


不吉な事を言うんじゃないぞ、ケイジ。

大人しく見ていろと言いたい。


 「・・・む。」


次に反応したのはマルゴット女王。

精霊術の使い手として、

そしてその技量と魔力において、私と女王にはほとんど差はない筈である。

違いがあるとするならば、

女王が身に付けている魔眼の影響か。

私より先にその変化に気づいたようだ。



・・・いや、わかる。

私にも精霊たちのざわめきが聞こえ始めたぞ?



 「・・・空間が歪み始めている。」


認識の仕方はメリーさんと私たちでは多少異なるのかもしれない。

けれど彼女も精神感応型超常能力者。

この現象の解釈としては適切な捉え方だろう。


 「あわわわわわわ」


少し離れたところから聞こえてきたのは妖精ラウネの怯えた呻き声。


悪魔や鬼人を見た時同様、魔物らしく自分より強大なものの出現に対しては敏感だ。


そして当然アガサやタバサもその魔力を感知する。

 「果たしてこの異質なる魔力の脈動は、次元を捻じ曲げた故のもの?」

 「はたまたこの強大なる魔力の波動は、呼び出された者から放たれる故のもの?」



そうだ。

感傷的になり過ぎて忘れていたが、

麻衣さんは妖魔とヒューマンのハーフ。


それならば今、

麻衣さんが呼び出そうとしている存在は、

麻衣さんの母親であると同時に・・・



麻衣さんの姿を再び見ると、

さっきより彼女の視線の位置が下がっている。


前回の召喚は上空に現れたが、

私が見るに精霊の騒ぎの中心はもっと低い。

もっとも本当の中心部分は、台風の目のように精霊なんか存在できないんだけどね。



どうやら今回はかなり低い場所に・・・

と言っても通常の召喚術では地面に魔法陣が浮かんだが、

今回は魔法陣らしきものは何もない。

ただ麻衣さんの前方、その視線は麻衣さんの身長より僅かに高い位置に固定されている。


どうやらその位置こそが、

今回の次元超越召喚のゲートとなるのだろう。



 「あ、・・・あ?

 周りが薄暗く・・・雲もないのに?」


リィナちゃんの言葉に私も辺りを見回す。

太陽は普通に昇っているし、雲もそれほど多くない。

にも拘らずまるで日蝕でも起きたかのように辺りが暗くなってゆく。



とは言え、夜のように真っ暗になったわけじゃない。

せいぜい薄曇りの天気くらいの明るさだろう。

なのに、太陽の下を何も遮るものがないというのは違和感しか覚えざるを得ない。



ただその薄暗さの中心は紛れもなく召喚術の中心地。

その一画だけ、周りより更に仄暗いのだ。


やがてその闇に変化が現れる。



暗い緑。


その中心の一点から緑色の靄がガス状に吹き出し始めたのだ。


 「・・・これ、間違いなく、麻衣さんのお母さんを呼び出してるんだよな?

 他の何か別の生物を呼び寄せてるんじゃないよな?」



だから不吉な事を言うんじゃない、ケイジ。

仮にも麻衣さんのお母さんだぞ?

それにこれまでだって麻衣さんが呼び寄せたのは・・・


あれ?

そう言えば不死身の和犬と、吸血鳥と死体の猿親娘と・・・それに



深淵アビス・・・


いや、なんでもない。



ここは黙って事の成り行きを見るんだ。

そうだろ、ケイジ?


 「いや、さすがにそれはスルーしたらダメだろ・・・。」


ちなみに今日の私は絶好調さ。

敵性国家の外交官が条約違反に抗議してきてもスルーしてみせるぞ。


 「ごめん、オレが悪かった・・・。」



 「あ!

 な、何か、じゃなくて誰かいる!?」


ケイジの独り言を無視していると、

リィナちゃんの言うとおり、

確かに緑色の靄の中に人影が見える。


見れば麻衣さんの姿勢も変化していた。

間違いなく、あの靄の中にいる人間に反応しているのだろう。





・・・待て。

いま、私は何を言った?



靄の中にいる・・・人間・・・だと?


人間 ?



あれが






やがてそのシルエットがはっきりしてきた。




その長い黒髪はゆらゆらと波打ちながら宙に拡がり、


艶かしい・・・と言うべきか、

それともそんな表現すら烏滸がましいのか、


それは絵画の中の人魚のようにうねった肢体・・・

その白い肌は陶器のようにも思える。

そう、緑色の靄の中に揺蕩う姿は、まるで海の中を漂う妖精と言ってもいいだろう。


挿絵(By みてみん)



美しい・・・





はっ・・・?


・・・この私が眼を奪われていたというのか。

思わず見惚れてしまったが、

あれは妖精でも人魚でもない。

何故なら、

その白い半身は人魚のそれより長くうねり、

まるでS字を描くかのように曲がりくねる。


そう、それはあたかも先日麻衣さんが召喚したラミアを思い起こす・・・

いや、ラミアなら臍から下の下半身が蛇の体だった。

今私の目の前に浮かんでる彼女は更に・・・


白蛇びゃくじゃ



・・・のわけもない。

普通の人間の姿じゃないか。

下半身どころか首の下から全て蛇の胴体なんてあるわけないだろうに。



・・・今の私の説明は忘れて欲しい。

いまだその全身は靄の中から抜けきれないでいるが、

コントラストがはっきりしてきた今なら、ちゃんと服を着ているのが分かる。


最初は服どころか一糸纏わぬ姿のように見えたんだ。


・・・いや、もしかしたら、

今回の召喚術では肉体から先に転移するシステムだったのかもしれないな。

それなら私が見たのは目の錯覚ではなかったのだろうか?



顔の方も今ではハッキリ分かるが、

まるで眠っているかのように彼女の瞼は閉じたまま。

唇は薄く開いている。

意識はないのだろうか?

そう言えば私がこの世界に召喚された時はどうだった?

確かに白い光に包まれ意識が遠くなっていたはずだ。

ならば、麻衣さんの母親・・・彼女の意識も今は朧げな状態なのかもしれない。


歳の頃は二十歳ちょっと過ぎほどだろうか。

少なくとも子供を産んだことのあるような年齢には見えない。

ならばやはり次元が異なれば、時間の進み方も他の世界とは一致しないということか。



麻衣さんは日本人というから、

一般的な民間人の服装かと思ったが、

あれはどこか別の民族の衣装なのだろうか、


両肩を露出しているが袖は普通に肘の辺りまで覆っている。

下半身はくるぶしが隠れるほどのマーメイドラインのスカートだ。

私が最初人魚に見えたのはこれのせいかもしれないな。


そして

全身すべてを緑の靄から抜け出た彼女は、


まるで水の中で揺らめくかのように、

ゆっくりと、

瞼を閉じたまま・・・

静かに、そしてうずくまるような態勢で、

この地にふわりと舞い降りたのだ。


果たして次回、感動の再会となるでしょうか?



なお、添付した画像とカラドックの説明が一致してなくても、気にしないでください。


できればどこかから白蛇の画像探してきて透明度調節して薄く重ね貼りすればよかったのだけど・・・


それにしても百合子さんの出演、

こないだのちょい役除くと本当に久しぶりだな。

何年振りだろうか・・・。


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