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第五百九十三話 ぼっち妖魔はスルースキルを身に着ける

<視点 麻衣>


静かな時間が流れる。

ケイジさんはあたしを見ていない。

目と鼻の先のどこかに視線を合わせて何かを考えてこんでるような・・・。


 「ケ、ケイジ?」


リィナさんがケイジさんの態度を不審に思ったようだ。

あたしからは声をかけられない。

早く答えろなんて催促できる立場じゃないしね。



 「あ、ああ、少し考え込んでた。」


む、

当たり障りのない反応かな?


 「それについては・・・」


それについては?


 「転生の仕組みも分からないし、生まれてきた子供の立場のオレじゃ何も答えられんさ。」





・・・そ、そりゃ







そうだああああああああああああっ!?


考えてみれば当たり前じゃないかあああああああああああっ!!


子供に自分の顔が誰かに似てるよねって言われても答えようなんかある筈ないっ!

「訳あり」だった場合、親なら何か心当たりあってもおかしくないけど、

赤ちゃんとして生まれてくる子供には全く関知しようもない話じゃないか!


ああっ、もうあたしはなんてあほの子なのだろうか!

どうにか話を誤魔化すか!!


ええっと、ええっとぉ、

まだケイジさん達に明かしてない話っていえばぁ・・・


 「そ、それと追加情報なんですけど!!」


でもあの話は微妙なんだよねぇ・・・


 「追加情報?」

 「ただケイジさんには気分悪いかなっ?

 天叢雲剣をサイコメトリーした時の映像なんで、多分ベアトリチェさんの言ってたもう一つの世界の出来事だと思うんですけどっ!」


多分だけど、

ベアトリチェさんが思い出したというもう一つの世界は、

あたしのご主人様が天叢雲剣を手にしてめっちゃ暴れていた世界だと思う。

そして同時にその世界は、世界樹の女神アフロディーテ様がご主人様と一時の愛を交わしていた世界・・・。


 「ベアトリチェの?

 確か麻衣さんのお母さんと知り合いだったという世界の話か?

 天叢雲剣にその世界のオレの情報が?」



 「は、はい、年齢はモードレルト君より少し年上っぽい感じで、

 やっぱり口髭は生やしてましたよ。

 髪は短くカットしてましたけど黒髪も一緒でした。」


どうでもいい情報を付け加えると、革のライダースーツに身を固めて拳銃を手にしていた。

ライラックさんやガラハッドさん達と同じ集団の人に見えたけど、「騎士」ってイメージじゃないよね。

まぁ、馬の代わりにオートバイに乗ってるならある意味騎士なのかもしれない。


 「・・・へえ、それは興味あるな。

 でもなんでオレの気分が悪くなる?」


どうだろうね?

ケイジさんにしてみたら今更かな?

ただ、あたしが天叢雲剣から視たのって、

二つのシーンなんだけど、どっちもあんまりいい話じゃないんだよね。


あたしはやんわりと遠回しな表現を選択する。

 「あ、あの、天叢雲剣の映像ってことは、

 天叢雲剣を使用してる状況にケイジさんがいたということで・・・。」


そのうちの一つはね。


どっちにしてもぼかして喋った方がいいかな?


 「あ、ああ、

 てことは、ベアトリチェの世界のオレは天叢雲剣を使って殺されたってことか?」


 「は、はい、その時の天叢雲剣の持ち主、つまり多分リィナさんの・・・」


あたしが最後まで言わなくてもケイジさんはその先を理解できたようだ。


 「ああ、復讐は叶ったのか・・・。」


ん?

理解し過ぎてる?

まあ、話が早くて助かるけども。



ベアトリチェさんの世界のケイジさんは、


あたしのご主人様のお姉さんを暗殺している。

そして、

ケイジさんはその事を何故か幻視したって言ってたもんね。


だからあたしのご主人様がその世界のケイジさんを天叢雲剣で倒したってことは、


そうだね、ケイジさんの言うとおり復讐を果たしたんだろう。


あれ?

ケイジさん、笑ってる?

あたしが怪訝な表情をしているのにケイジさんも気づいたんだろう、

申し訳なさそうに言い訳する。


 「いや、すまない。

 特に何か意味があるわけでも何かに納得したってわけでもないんだが、

 いろいろ不思議に繋がってるもんだなって思ったら自然に口元が緩んでな。

 オレにも何で笑ったんだかよく分からん。」


な、なるほど。

そういうものなのかな。



ちなみに説明が難しいのだけど、

天叢雲剣からのあたしが視た映像の中で、

ケイジさんがご主人様のお姉さんを殺したというのは、天叢雲剣があった場所にケイジさんがいたわけではない。

ケイジさんは遠距離から家の外に取り付けられた爆弾を狙撃したのだから。


たとえ天叢雲剣が、ベリアルの剣みたいなインテリジェンスウェポンだとしても、天叢雲剣自身がそれを知覚できる筈もない。


あたしがサイコメトリーするのは、

あくまで対象物に焼き付けられたイメージだ。


つまり、

誰かがケイジさんの狙撃シーンを知覚、或いは想像したビジョンが天叢雲剣に焼き付けられたのだと言える。



実際のところは分からないけどね。

とにかくそういう仕組みだとあたしは理解している。




結局、

この話し合いで有意義な結論は出なかった。

あたしがケイジさんについて見聞きした情報は、これ以上開示する必要はないと思う。


なので元の話に戻るわけだけど、

ケイジさん自身はカラドックさんの反応をこのまま様子を見るという。

カラドックさんが元の世界に戻るまで何もなければそれでいいそうだ。


・・・それでいいの?



確かにモードレルト君は、

カラドックさんの弟さんの、この世界の写し身と言っていいのかもしれないけど・・・。


本物の弟であるケイジさんがここにいるのに。




そこであたしはふと思い出した。


なんで他人には干渉しないはずのリーリト麻衣ちゃんが、こんなに人の事を気にしているのか。

確かにケイジさんの過去に触れる機会はこれが最後になるだろう。

それどころかあたしはケイジさん達と二度と会うことはないのだ。

少し淋しい気持ちは確かにあるけど、これ以上干渉する必要なんてどこにもないのだ。


もしケイジさんに

これ以上なにかあるとしても、もうあたしは何もできない。

何もする必要もない。

後はケイジさん自身の問題だ。



それよりあたしのことでしょうが。


明日。


明日いよいよ、あたしは邪龍討伐ご褒美特典を利用する。

宝石のつづらとお花のつづら。

どっちを選ぶかはもう決めてある。

みんなにもその事は伝えてる。


ここでそれをひっくり返すようなどんでん返しはいたしませんからご安心くださいな。


ただ、あたしにとって最重要なイベント・・・

後ろでみんなに見られることになるんだよね・・・。

めっちゃあたしのプライベートな話なんだけど、

何が起きるか分からないというリスクを無視できないので、

「安全」のために見世物にされてしまうのだ。

もちろんみんな善意からの申し出であることは分かっている。


単にあたしが恥ずかしいだけなのだ。


そしてそれが済めばみんなとはお別れ。

一応、今晩はあたしの送別会をみんなで開いてくれる。


・・・なんかパーティーや打ち上げばっかりやってるな。


そうなのだ。

皆さま、ご理解いただけたであろうか。

というわけで、これ以上あたしは他のことに気を取られる余裕はないのです。


なお、

このファイナル秘密勇者会議、

あたしの質問に、

ケイジさんが「生まれてきたオレには答えられない」と言ってた時、

リィナさんがの顔が強張っていたことなんて気にしないのだ。

まるでリィナさんが、他人の嘘を見抜いた時のような反応に見えたにしても。




世の中知らないほうがいいこともある。

 


麻衣

「え、

今のがスルースキル!?

おお! つまりあたしはまた一歩成長したという事ですね!!」


カラドック

「・・・素晴らしいよ、麻衣さん・・・。」


なお、リィナちゃんの「嘘を見抜く」スキルは、

実際に嘘を言ってるかどうかではなく、

相手が「嘘をついている」ような時に現れる身体的反応から見抜きます。


なので相手が嘘を言っても、心の底から全く悪びれない人の嘘は見抜けません。

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