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第五百九十一話 ぼっち妖魔は報告を聞く

お金に余裕は出てきたけど



よく考えてみたら買わなきゃならないものがたくさんあり過ぎる。


ノートパソコン買い替え。

壊れたロッキングチェアーの買い替え。

変な音がして漕ぐ度に足に振動が伝わってくる自転車。

ファスナー部分が壊れたダウンジャンバー。

かかとの裏に穴が空きかけてる通勤靴。


ヤバいのは自転車かな。

そろそろチェーンも外れ始めた。

明日買いに行くか・・・。

<視点 麻衣>


はい、みなさん。

何が起こるかご期待されていたかもしれませんが、

邪龍討伐記念式典、

何のトラブルもなく、平和に終わりましたよ。


別に詳しい描写要らないでしょ?

先週簡易版やったんだし。


式典の内容もある程度想像できると思う。

勲章やら褒美の品の授与だとか、

時間がなくて前回用意できなかったものをいただいたり、

金枝教やらエルフの教皇様とかお偉い人の話や、

ギルドマスターから「蒼い狼」のSランク昇格のお話とか諸々ね。

別にあたしが緊張のあまり、何かやらかしたとかそんなことは決してないのだ。


 「麻衣さん、声が上ずってたけd」


さいれーんす!!


ケイジさん、あたしのことはどうでもいいのです。


それよりも。


式典の後、

あたしとケイジさん、

どちらからと言い出すわけでもなく、

もちろんリィナさんも交えながら、

ここに第3回秘密勇者会議が開催されることになったのだ。


 「はい、ケイジさん、あたし達に報告することあるんですよね?」


あたしとリィナさんに問い詰められてケイジさんが小さくなっている。

別にあたしはケイジさんを責めてるわけではないのだけど。


 「なんだよ、ケイジ、

 せっかくあたしは昨日のおまえを見直してたんだぜ?

 なのになんで一日経ったくらいであんな子供みたいなマネすんのさ?」


リィナさんがケイジさんを問い詰めてるのはあたしとは違う理由。


そう、あのモードレルト君という男の子の手を、ケイジさんが握り潰す寸前まで追い込んでいたからだ。


リィナさんとしては、その直前までモードレルト君と仲良く握手したばかりだったからね。

ケイジさんが嫉妬に狂ってあんな子供っぽいマネをしでかしたと思っているんだろう。


 「い、いや、それは、あ、アイツ、オレ達に紹介される寸前までおふくろやオレを犬っころとかベディベールやイゾルテの陰口を・・・」


リィナさんはため息を吐いて頭を掻く。


 「・・・はぁ、そうかあ〜、

 それにしたってさあ〜・・・。」


ケイジさん、何言ってんです?

それが本当の理由じゃないですよね?


 「リィナさん、騙されないでください。」


 「えっ?」

 「麻衣さんっ!?」


 「ケイジさん、ホントのことを言うつもりでこのメンバー集めたんですよね?

 今のも嘘じゃないんでしょうけど、核心は別のところですよね?」


 「ケイジ、どう言う事!?」

 「う・・・うむ。」


ケイジさんも言わねばならないと思ってるけど、話の切り口が見つからないのかな?

なら闇の巫女麻衣ちゃんがお手伝いしてあげましょう!!



 「あの男の子、カラドックさんが惠介って呼んでましたよね?」


 「え、麻衣ちゃん、惠介って

 ・・・あ、それってケイジの前世の!?

 じゃ、じゃあカラドックが興奮してたのはその件で?」


さては

リィナさん、ケイジさんのかつての名前覚えてなかったな?

まあ、それはいいや。


 「そ、そうなんだ、

 それに、これもカラドックには言えないが、

 あのモードレルトという名前は、オレが行方をくらました後に名乗った名前とほとんど変わらない・・・。」


うわ。


そこまで一致してるのか。


 「え、ちょ、それ、ケイジ!?」


この冒険で思ったのは、

リィナさんは決して頭が弱くない。

むしろ要所要所で素晴らしい閃きを生み出している。


けれど、あまりにも信じ難い話には、これまでの常識が邪魔をして、すぐに理解が及ばない時があるみたいなのだ。

まあ、無理もない話ではあるけども。


 「・・・そうだな。

 リィナにはこう言えば分かるかな。

 お前がベアトリチェに喰らったナイトメアの術法、

 あれがオレにとって現実として目の前に現れた。」



悪夢ナイトメア」、

サキュバスのオリジナルスキルだったっけ。


そう、確かその悪夢の内容は、

ケイジさんとリィナさんの前に、もう一人のリナさんが現れたってことらしい。

そしてその悪夢の中でケイジさんは、追い縋るリィナさんを捨て去るかのようにリナさんと二人で消えていこうとしたとか・・・。


 「うぇ、そ、それ・・・

 あ、ああ、もう一人のケイジ・・・。」


一瞬で理解できたみたいだね。

それこそリィナさんには何よりもわかりやすい例えなんだろう。


 「正直、今のオレはテンパってる・・・。

 カラドックとマルゴット女王も今現在二人で密談中だが、内容はアイツの事だろう・・・。

 カラドックにしてみれば、例え惠介の記憶のない存在とは言え、弟と同じ顔をした男を放って置けるはずもあるまい。

 ・・・だが、

 それに対してオレは何をカラドックに言ってやればいい・・・?」


 「「ああ・・・」」


確かにこれは難問だ。

簡単にできる事はあるけれど・・・。


 「ケイジさん的には第三者のフリをして、カラドックさんに温かい言葉をかけてあげるなんて・・・ひっ!?」


どガンっ!!


ケイジさんがテーブルをぶっ叩いた。

・・・逆鱗に触れてしまったか。


 「出来ない・・・!」


これはアレかな。

男同士の嫉妬というやつだろうか?

ていうか男同士というか自分自身同士なんだろうけど。


あたしはリィナさんと一度視線を交わす。

多分リィナさんもあたしと同じ感想なのかな?


 「で、でもさ?

 カラドックは後一週間で元の世界に戻るだろ?

 ならそれまでの辛抱じゃん!」


そう、ならばそこまで話を大袈裟にする必要はないのではないか、

・・・そう思うんだけどね?


 「そう、そうなんだ。

 それこそがせめてもの救いであり・・・

 同時にオレが動けない理由でもある。」


ん?

動けない理由?


 「ど、どういう事だっての?」


 「もし、カラドックがこの世界に永久に残るんだとしたら、

 オレは犯罪者の汚名を着てでもモードレルトを殺す。」


はあっ!?


 「ちょっ、ちょ、どうしてそうなんだよ!?

 そんな事したらまた、カラドックがやってくる前のケイジを倒せ展開に戻っちまうだろうがよ!?

 しかも今度は誤解なし、言い訳無用のお尋ね者になるしかないじゃんよっ!!」


それってまさか・・・



 「ケイジさん。」


 「なんだ、麻衣さん?」


 「それって、前に言ってた、カラドックさんがケイジさんの前世の罪を知ったら、ケイジさんを処刑しなきゃならないって言ってたヤツですか?」


ギョッとするリィナさん。


ケイジさんは微動だにしない。

あたしの言葉を黙って聞いている。


ビンゴか。


 「オレが聖女に責められてた時・・・」


ん?

何の話?


 「麻衣さんは言ってくれたよな?

 守るべきものがある以上、オレは道を踏み外さないって。」


あ、うん、確かに言った。


 「は、はい、言いました・・・。」


 「道って・・・なんだろうな?」


え?

そこ?


 「前世で罪を犯したのも・・・

 それも一つの道じゃなかったのかな・・・。」


 「え、そ、それは?」


ヤバいぞ。

あたしが雰囲気と直感で適当に言った言葉がボロボロ崩れ去るっ!?


 「もし、異なる世界でも、聖女が言うように似たような道を歩まなければならないのなら、あのモードレルトという男は、この先オレと同じ過ちを犯す可能性が高い。」


う、

ケイジさんが恐れているのはそれか・・・。


 「ケ、ケイジ、過ちって・・・。」


 「前も言ったと思うが内容は勘弁してくれ。

 ただ大勢の人間が犠牲になる。」


 「な、なら事前にそうならないように・・・

 そ、そうだろ、ケイジ?

 この世界がやり直しなら未然に防げる事だって・・・。」


 「難しいと思う。

 前世のオレが道を踏み外したきっかけはリナの死・・・

 だがきっかけ以前にオレが父親のことをずっと前から憎み続けてきたという経緯がある。」



 「な、なら?」


それって・・・

リィナさんはまだ最悪の事態を避けれるのではと思っているみたいだけど・・・


 「この世界のモードレルト君にも同じ事が起きればってことですか?」


たぶんそういう話なんだろうと思う。

そして今の言い方からすると、

モードレルト君も、既に何か恨みや憎しみを抱えているということなのだろうか?



この話はもう少し続くけど、

ケイジさんの懸念とは別に、

あたしはとても気になってることがあるのだ。


そのお話は次回に。



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