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第五百八十四話 再会

ぶっくま、ありがとうございます!


リィナ

「あのさぁ、ふっと思ったんだけど、

前回の話の最後にゾンビとかスケルトンの話した後に、次回タイトル『再会』って、

この先とんでもない展開になるって勘違いした人出てこないかな?」


ケイジ

「え? なんで・・・あっ!?

いや、まさかそんないくらなんでも・・・。」


麻衣

「ただの偶然だそうですよ・・・。

ちょうど話の切りが良かっただけで・・・。」


というわけでカトレヤさんはゾンビにはなってません。





<視点 ケイジ>


墓地の管理人は詰所に不在の時が多い。

と言ってもだいたい敷地内のどこかにいるようだ。

今回はちゃんと詰所の中にいた。


昔とおんなじ人間かは、さすがにオレも覚えちゃいない。

管理番号と埋葬された人物の名を記された割り札を見せると、管理人は名簿と照合する。


 「・・・24地区三列2番、カトレヤさんだね。

 うん、墓はちゃんと残ってるよ・・・。」


よし、命を永らえたな。

まあ、しばらく手入れしてなかったから、墓の方はかなり寂れているかもしれないな。


そしてオレは忘れかけていたことを思い出す。

 「そうだ、管理費はどうなってる?

 前回来た時に10年分くらいは前払いしてたと思うが、もし必要なら今回多めに払っておくぞ?」


今のオレは金持ちだ。

追加で10年分くらい訳もない。


 「ん?

 ああ、ちょっと待っててくれ?」


そう言って管理人の墓守りは帳簿を引っ張りだす。

番号と受け取り記録を照合しているのだろう。

まあ、ちょっとやそっと待たされてもどうということはない。


ところが

 「んん?」


反応がおかしい?


 「どうした?

 残額不足だったか?

 すまんな、まとめて払うよ。」


ところが管理人は頭を捻っている。


 「い、いや、カトレヤさんの、だろ?

 既にこの先向こう30年近く払われているぞ?」


なんだって?


流石にそんな大金払った覚えはないぞ。


まさか?


 「もしかしてマルゴット女王が手を回してくれたのか?」

 「ああ、あの人ならそこまでしてくれるかもね?」


だよな?

リィナも同じ考えのようだ。

真っ先に考えつくのはそれしかないよな。


とはいえそこまで記録はしてないようだ。


 「ああ、悪いな、

 誰から支払ってもらったかは記載がないのさ。

 連絡先としてケイジさん・・・あんたかい?

 あんたの名前は記されてるけど、その時の支払いは誰だったのかまではわかんねーのさ。」


ふむ、なら仕方ないな。


まあ、手続きはこれで終わりだ。


オレは墓守りに挨拶してお袋の墓に向かう。



霧が深い。

これだとオレの記憶も頼りにはならんな。

まあ、至る所に地図と案内板があるから迷いはしないけども。



数分歩いたところでお袋の墓を見つけた。


ん?


 「意外と綺麗だねぇ?

 ケイジはしばらくここに来なかったんだろ?」


ホントだ。

周りの見すぼらしい墓石に比べれば遥かに状態がいい。

苔も生えてないし、墓石の変色や風雨による侵食の気配も酷くは見えない。


マルゴット女王本人がここまで来るとは思えないが、配下の者に手入れでもさせてくれていたのだろうか?

女王は何にもそんな事言ってなかったと思うが。

もし、誰か命令とはいえ、お袋の墓を定期的に掃除してくれていたのなら、直接お礼を言わないとだな。


まあ、オレのやる事は変わらない。

管理人室で掃除道具は借りたし水も汲んできた。


リィナも掃除を手伝ってくれたし、大した手間でもない。


その後、オレは買ってきた花を飾る。

前世の日本だったら菊が定番なんだろうけど、

花屋にはなかったっていうか、この辺で墓前に菊を供える風習自体ないだろう。

墓参りと言って花屋が選んでくれたものを持ってきただけだ。



さてと。


 「・・・お袋、久しぶり。

 長い間来れなくて悪かったな。

 でも・・・お袋が言ってくれたように、オレは好き勝手生きてきたよ・・・。」


言葉が返って来るはずもない。

けれど、オレはお袋からの反応を待つかのようにしばらく黙っていた。


そして


 「リィナ・・・。」


事前に打ち合わせする必要もなかった。

 「うん・・・。」


彼女は台本でもあるわけじゃないのに、

オレの思う通りに動いてくれた。

恐らくリィナもここに来るまでにいろいろ考えてくれていたんだと思う。


 「は、はじめまして、ケイジのお母さん。

 リィナと言います。

 ホントは奴隷なんだけど、ケイジに買ってもらえて、普通の仲間として扱ってもらえて、

 なんでだか分かんないけど、今、勇者やってます。」


仲間っていうよりもっと突っ込んだ表現してもらって構わないんだぞ?

か、彼女とか、こ、恋人とかな?


い、いや、今日は普通に墓参り。

結婚相手の紹介をしに来たわけじゃない。


 「・・・前来た時は、これから冒険者になってこの国を出てくって話をしたよな。

 その通り、冒険者の身分のままだが、

 マルゴット女王やその家族達とは仲直りして、新しい仲間もできた。

 欲を言えば、異世界からのオレの兄貴も紹介したかったんだけどさ、

 そこは訳ありで正直に言えなくてな、

 でも、お袋、これだけは言える。

 今のオレは幸せだ。

 お袋、

 オレを・・・産んでくれてありがとう・・・。」



 「ケイジ・・・。」


何も言わずとも、リィナがカラダをオレにくっつけてきた。

左肩が温かい。


そしてふと、

あらためてリィナの家族が無事に生きて再会できていたことも幸運だったなと思う。

もしリィナが天涯孤独の身のままだったら、

この場でオレは何と言っていただろうか。

聖女にはキツい目で睨まれていたが、ツェルヘルミア嬢と聖女様には感謝したい。


うん、

良かった、

あの野郎シリスが麻衣さんにまた不安なメッセージを送りつけたようだが、ここにきてこれ以上、変なことは起こるまい。

今のオレはとても満足だ。


そう、

そしてオレはこの姿をお袋に見せにきたんだ。


母さんの時も、

お袋の時も、

どうして笑って見送ることが出来なかったんだろうな。


いや、さすがにそれは当時のオレには無理か。


だからこそ、こうやって、人は何度も墓参りするのかな。


まあ、これでしばらくは大きなミッションも無くなるだろう。

その気になればいつでもここへ来れる。

一年に一回くらい・・・


 「あれ?」


リィナの耳が動いた。

この霧の中、何か聞こえたのだろうか?


 「どうした?」

まさか魔物でも?

やめてくれよ、ここまで来て。



慌てて手を振るリィナ。

 「ああ、ごめん、ケイジ、

 いま、馬車の音が聞こえた気がしてさ。」


馬車?

こんなところへ?


もちろん市街地からそれなりに距離の離れたこの共同墓地だ、

中には馬車に乗って来る参拝者もいるだろう。


けれど、だいたいそんな金持ってるやつは、

もっと市街地に近く墓の値段もそれなりのところにいくもんなんだけどな。


まあ、別にオレ達には関係あるまい。

他所の人など気にせず、そのままオレはお袋の墓に声を掛けるつもりでいたのだが、


その音はオレにも聞こえてきた。


しばらく時間が経ってからの話だったが・・・

誰かがこっちに近づいてきている。



足音は一つだ。


成人男性・・・。



偶然、近くの墓に参拝しに来たのだろうか。


オレもいい加減、そんな安直な思考などしないぞ。


目的はオレらか、



それとも・・・




足音の次にオレが知覚したのは花の香り。

これはカトレヤの匂い?




そしてオレの視界の真ん中に青い色の塊が見えた。


すぐにそれがカトレヤの花だということは、オレじゃなくても気づくだろう。


近づいてきたのは、

青いカトレヤの花を手に持った一人の壮年男性。


その姿は紛れもなく貴族。

恰幅もいい。

武人タイプの人間であることはすぐにわかる。


そして、

こんな場所に貴族が一人で現れることなどある筈もない。


その男の足が不意に止まる。


オレ達の姿を見て驚いているようだ。



向こうにとってもオレたちがいることは予想外だったってことか。



オレも久しぶりに見る顔だ。

オレの記憶の中の顔より幾分老けたな。


それでも十分若々しいが、

「向こうの世界」で見た時よりかは遥かに若い。



そいつはオレの顔を見て呻くように呟いた・・・。


 「ま、まさかケイジ・・・か。」


 「久しぶり、だな、アルツァー・・・。」




オレの父親がそこにいた。

 

メリーさん


「ウェールズの魔女の現し身がこの世界にいたのだものね、

なら、その弟もこの世界にいても何の不思議もないわよね?

・・・それで、



これだけ、なの?」

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