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第五百八十一話 臨時秘密勇者会議

<視点 ケイジ>


ヨルがいなくなった。


形としてはオレ達のパーティーから追放した事になる。

もちろんカラドックの選択と決断に異を唱えるつもりは全くない。


ただ・・・

多分、大なり小なり、オレ達メンバーは皆同じ思いをしているだろう。


喪失感。



あれだけのお騒がせキャラだったからな。

よく何とかな子供ほど可愛いというが、それに近い感覚なのだろうか。


それでもあれだけの事を誰にも気付かれずに画策できる女である事もまた確か。


この辺りが潮時だったのだろう。


帰りの道中、

そんな事を考えていた。

時折、麻衣さんやリィナ達がポツポツとヨルの事を思い出すかのように口を開いていた。


仕方ないことだ。


どうせこの辺りは魔物も生息してやいないし、

他にする事もない。


どうしてもみんなヨルの事が頭から離れないでいるのだろう。



そんな時、

麻衣さんに異常が起きた。


ただ別に危険が生じたとか、

誰かに待ち伏せされているとか、そんな話ではないようだ。


どうも異世界転移を行った者からメッセージが送られたとか。



・・・うむ、麻衣さん、めっちゃ慌てているな。

どうしたらいいのか、分からないでいるような雰囲気だ。


 「麻衣さん、何か厄介ごとでも生じたのか?」


オレだけでなく、

みんな麻衣さんのリアクションを注視する。


同じ転移組のカラドックやメリーさんも同様に。


 「あ、あわわわわっ、

 あ、い、いえ、ごくごくプライベートなお話みたいなので、ちょ、ちょっと皆さんにはお伝えにくいな、と・・・。」


麻衣さん個人向けの話か。

それならオレ達もあまり干渉するのは憚れるな。


 「わかった、

 無理に教えろとは言わないから、困り事だったら何でも相談してくれよな。

 オレじゃダメそうならリィナでもカラドックでもいいだろうし。」


もちろん二人とも頷いてくれた。

これ以上、誰も消えてほしくない。

式典が終われば、麻衣さんは一足先にオレ達とお別れだ。

なるべくなら笑って見送りたいしな。


 「あ、は、はい、ちょっと考えさせてください。

 その時には、誰かに頼らせてもらうかも・・・っ。」



後でリィナに聞いたら、思いっきり嘘ついていたのがバレバレだったらしい。

さすがにリィナも麻衣さんが何に困惑しているのか、内容は分からないとの事だったが、

多分、メンバーの誰かのことについてなのではと言うことだった。


そしてリィナの予想は的中する。


ホテルに戻って夕飯の後の話、

的中どころの話じゃなかったけどな。

オレは自分の部屋で麻衣さんの訪問を受けたのだ。


部屋の前には、一緒にリィナもいた。

オレの部屋に来る前に先にリィナに声を掛けたのだろう。

もちろんオレの方に不満は全くない。


麻衣さんが、オレに相談したいということなら全力で力になりたいと思う。



 「・・・いえ、お話はケイジさんのことだったんです。」


マジか・・・。




麻衣さんから全てを聞かされた。

確かにこれはあの場で喋られては堪らない・・・。


オレは頭を抱える。




かんっぺきにっ!!

オレの問題じゃねーかよっ!!


本当に麻衣さんには気を遣わせてしまって申し訳ない。


それにしても、あのクソ野郎、

いまだにオレの父親ヅラしてやがるのか・・・。


 「ケイジ・・・聞きたいんだけどさ?」


オレが無言で塞ぎ込んでいたらリィナが声をかけてきた。


声の調子からするとオレを非難するような雰囲気じゃないな。

単純な疑問のようだ。


 「なんだ、リィナ・・・。」


 「前に聞いたよね?

 その前世でのケイジのお父さんは、お母さんを酷い目に遭わしたって・・・。」


 「そうだな、そう言ったはずだ・・・。」


 「具体的に何したの?

 暴力とか?」


 「いや、そんなんじゃない。

 十数年もオレ達を放ったらかしにしていた事と、

 ・・・もう一つ、詳細は言えないが、ずっとあいつは母さんを騙していた・・・。」


この話も絶対にカラドックには明かせない。

カラドックはある程度あの男を尊敬しているからな。

さすがにオレも、わざわざカラドックのその気持ちをぶち壊したいとまでは思わない。


 「・・・ああ、放ったらかしはダメだよね。

 その・・・騙くらかすってのは、こないだ麻衣ちゃんも言ってたような気がするけど、

 その事自体はそれほど酷い話なの?」


人により意見は違うのだろうか。

確かにあの時、麻衣さんは強く主張してたよな。

母さんは幸せだったんじゃないかって。

でも・・・


 「最後まで騙くらかしたからな、

 母さんは真実を知らずに亡くなった・・・。」


 「最後にそれを知らされる事と、

 そのまま真実を知らないで亡くなることは、

 ・・・どっちが幸せ?

 あ、ご、ごめんな、ケイジ。

 聞かれたくなかったのかもしれないけど。」


リィナは、

自分の発言がオレを傷つけるんじゃないかって、途中で気付いたようだな。

まあ、別にリィナなら何言われても構わんさ。



 「いいさ・・・

 ただ、真実を知るってのだけは無しだ。

 そうなったら恐らく母さんは発狂していた。」



 「「うわ。」」


もちろん今際の際ではそこまでの体力もなかったろうが、

実際どうなったかは想像すら出来ない。


 「・・・それだけの・・・。」


 「ああ、たとえオレに全く責任が無いこととは言え、あまりにも胸糞悪い話なんでリィナにも明かしたくはない。」


 「そうなんだ・・・

 でも麻衣ちゃんがもらったメッセージ聞くと、酷い父親なのはそうなのかもしれないけど、ちゃんとケイジの動向や言動まで見守ってるみたいな感じだよね?」


だから余計にムカつくんだ。


いまっさらっだそ!?


 「で、でも、ケイジさん、

 確かに不機嫌そうですけど、そこまで感情的にはなってないですよね?」


麻衣さんもオレの態度が気になるのだろうか?


 「オレの中ではもう終わった話だったからな。

 ヤツが母さんを騙したってのも、落ち着いて考えれば他に選択肢もなかったのかもしれない。

 それにヤツの対応が違っていれば、オレだって生まれてくる事も出来なかったんだ。

 そんなこっちの世界に転生してまでも引きずるような話でも無い、

 ・・・と理屈では分かっている。」


 「「ああ。」」


何で二人ともそこで納得するんだよ。



それにしてもリィナは今更なところでさっきは質問してきたな。


 「ああ・・・そうかもしれないね。

 なんか、ほら、ここにいるあたし達って、みんな子供側じゃん?

 いろんな事情があるにせよ、子供を手放すほうの親からしたらどんな気持ちなのかなって・・・。」


ああ・・・

そうか、リィナは今回初めて両親に会ったみたいなもんだものな。

そんなもの親になってみないと・・・


 「え、えっと・・・

 そうだな、当面の脅威は何もないし、オレたちも落ち着いたら、

 そ、そろそろ親になって・・・ギャバァァッ!!」


酷い!!

リィナの奴! オレの顔面に後ろ回し蹴り喰らわしやがったぞ!?


 「い、いま! この流れでなんでそんな話になるんだよっ!!

 このバカケイジ!!」


い、いや、そうなんだろうけどさ、

いままでそれっぽい話は全然なかったからさ、

そろそろいいかなって。


 「それにしても前から思ってましたけど、

 リィナさんからの攻撃って、ケイジさんのイーグルアイ全然仕事してないですよね?」


ほんとだ。

勇者からの攻撃はイーグルアイの見切りは無効になるのだろうか?


 「ケイジさんの言動に対してのツッコミだから、カウンター扱いなのかもしれませんね?」


麻衣さんからの有難いマジレス。

・・・そう言われるとそんな気もする。

カウンター攻撃は回避不能ってか?

なんで物語の終わり間際にそんな設定が明らかになる?




それよりオレとしてはこれからの話の方が大事なんだ。



 「それで麻衣さん。」

気を取り直そう。


 「あ、は、はい!」


 「話を戻すんだが、麻衣さん的にはどうなんだ?

 オレとしては前世からの因縁はあらかた片したと思ったんだが、まだ終わってないと言うべきなのだろうか?」


リィナを失ってしまった事。

今度の世界では助けられた。


仲間の裏切り・・・

裏切ったのは仲間なのか、

それとも・・・なのか、

そのイベントも終わった筈。


聖女絡みの事件は現在進行形でこれからもあるかもしれないが、

一応、あの会談では和解したっぽく流れた気がする。


なのにまだ終わってないというのか。


 「う、うん、いえ、ていうか。」


 「ていうか?」


 「話が全く異なるのかと。」


ん?


 「話が異なる?」


 「あたしの印象と、今までケイジさんと話してきた内容をおさらいすると、

 こっちの世界でケイジさんが経験してきたイベントって、

 その、なんて言うか、ケイジさんの前世のレールに沿うか沿わないかっていうお話じゃなかったです?」


 「そう、だな。

 前世でやらかしたこと、失敗したことをこっちの世界でやり直す、取り戻すような・・・。」


 「今回の天使くんのメッセージって、

 そのまま読むと、ケイジさんをこっちの世界に転生させたことが、そもそも有り得ない話みたいに感じません?」


まあ、そう言われても、

ヤツのメッセージは麻衣さんが読み上げてくれただけなんで、オレは文面確認しようもないんだけどな。


 「・・・落ち着いて考えてみればそうだな。

 異なる世界に転生って、本来そうそう起きる事なのか?」


 「そこら辺の知識はあたし達には全くないですもんね。

 ミシェルネさんなら何か分かったかな?

 いない人の話しても仕方ないんで、話戻しますけど、

 ケイジさんがこっちの世界に転生したのは、誰かさん達が干渉したことによるもの。

 ・・・そして、それによって、何かひずみというかゆがみというか、不都合なことが起きたとしたら?」


なるほど?

それは確かに今までの話への考え方とは違うよな。


 「嫌な話だな・・・。

 他の転生者たちもアイツらの干渉のせいだとしたら・・・。」


 「ベアトリチェさんは亡くなりましたから、これ以上のペナルティはないですよね?

 アフロディーテ様はあの場所を動けないのは十分なペナルティな気がします。」


 「自由に生きているのはオレとミュラだけか。

 あいつにも何かあるのかな?」


 「あるかもしれませんね、

 でもあたしにもこれ以上のことはわかりませんよ?」


まあ、これだけでも話につきあってくれたんだから、オレとしては十分にありがたいさ。


ん?

あともう一人転生者っていなかったっけか?


 「・・・アレはペナルティかな、

 もうペナルティ受けててあの姿なのかな?」


誰の話か分からないが、麻衣さんには心当たりあるのだろう。

まあ、大事なのは、オレ自身だからな。

特にオレの関係者じゃなければどうでもいいか。




あ、今回でケイジのエピローグ、メインイベントまで行くつもりが字数オーバーしちゃいました。




華ちゃん

「ちなみにあたしは最初っからペナルティ有りなんだって。」


ツェルヘルミア

「私のはペナルティだったのでしょうか・・・。

まあ、それでリィナさんに逢えたのなら受け入れますけども。」


ミシェルネ

「わたしにとってはご褒美です!」


ツェルヘルミア

「そこで私の胸を揉まないでくださいっ!!」

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