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第五百八十話 ぼっち妖魔は頭を抱える

<視点 麻衣>


はーい、みなさん、

麻衣でございます。


最後の最後だというのに大変なことになりました。


これが、

大騒ぎしつつも、万事丸く収まるのであれば、

「まーた、あの人は人騒がせな・・・」で終わるはずだったんですけどね、


・・・残念なと言うか・・・


ヨルさんはいち早くあたし達のパーティーから抜け出ることとなった。


抜け出るっていうか、

追放だよね。


え?

そしたら、ヨルさんが新たな力に目覚めて、あたし達がザマァされるって?

何言ってるんですか。

訳の分からないことを言わないで下さいね?


もうトラブルは起きない。

物騒なイベントは全て終わった。

後は元の世界への帰還に向けて、各自身辺の整理をするだけである。


ああ、まだ邪龍討伐記念式典がありましたね。

それが終わればあたし達は正式に解散となるのだ。



・・・それを前に一人いなくなってしまったのは、


うん、

なんかこう、上手く言えないけど、

さみしいというか・・・

いや、それとはまた違って・・・

あるべき姿で最後までやり遂げられなかったという意味で残念な気がする。


ケイジさん曰く、

最終的には誰も死ななかったのだから、

邪龍を倒すと言う偉業の前には小さなことだろうとの事だった。


なんて冷たいことを言うのかとも思う?

でもケイジさん達は、

その気になれば、またヨルさんに会いにいくこともできるんだよね。


二度と会えないのはあたしとカラドックさんだけだ。

・・・もちろんメリーさんはカウントする必要ないだろう。



冷たいというのはあたしのことかもしれないね。

ヨルさんがいなくなったことを「スッキリしない」程度の事で済まそうとしているのだから。


わかってくださいな。

毎度毎度言ってるけど、あたしはそこら辺の感受性豊かな女子校生ではないのだ。

切り替えは誰よりも早いのだよ。



でも



 「・・・静かですよね。」


 「うん、・・・そうだね。」


あたしとリィナさんが静かに言葉を投げ合う。


辺りはもう夜だ。

アガサさんが照明魔法で前方を照らし、

あたし達は市街地への帰路を歩く。


冒険者パーティー「聖なる護り手」の皆さんには、カラドックさんが魔力を戻してあげて、そのままヨルさんごと引き取ってもらった。


あの人達に特にペナルティーは与えてない。

その代わり、魔族の街まで責任を持ってヨルさんを送り届けるようには言ってある。

あたしが遠隔透視をして、ヨルさんの居場所が魔族領で落ち着いたことを確認したら、

カラドックさんに言って、パーティー登録も解除すると言う流れで決まった。

・・・どっち道、カラドックさんが元の世界に戻る時点で自動的にパーティーは解除されるとは思うんだけどね。


・・・ヨルさんはあれで引き下がるのかな。


まあ、あそこまでカラドックさんに、バッサリ意志と覚悟を示されてはヨルさんでもどうしようもないと思う。


それだけ角を斬り落とすという行為は衝撃的だった。


それこそあたしのような平和に暮らしてる一般人には思いつきもしないよ。




・・・そうなんだよね。

あたし達が今、こんだけ静かに歩いてるだけってのは、

みんな、それぞれ思う事があるんだろう。

だから誰も喋らない。


さっきのあたしみたいに誰かが一言口を開けば、

思い出したように他の誰かが反応するだけのこと。


そう、何も喋っちゃいけない空気が流れてると言うわけでもないのだ。

だからあたしは口を開く。


 「・・・今更なんですけど、

 ヨルさんて、凄く能力高いですよね。」



反応してくれたのはケイジさん。


 「・・・思い返してみるとそうだな。

 槍の腕前も十分だし、風の術法で自分の身を守ることもできるし、

 魔戦士になってからは、たとえ相打ちとはいえ、あのエンペラーギガントトータスの甲羅をブチ破る威力の突きも放てる。

 ・・・そして麻衣さんの感知をやり過ごす隠蔽術もか。

 改めて思い返すと凄いよな。」


 「それだけじゃないですよ、

 今度の事への、計画とか準備とか・・・

 結果的にはそれほど血生臭いことにはなりませんでしたけど、はかりごとを立てる能力まであったんですから。

 それこそパラメーター的には万能キャラと言えるんでしょうね。」


 「ただあの子は言動だけが残念。」

 「否、むしろその言動こそが最大の武器。」


お?

珍しくアガサさんとタバサさんで意見が割れた。


 「ああ、そうか、

 確かに残念な言動してたけど、それがあたし達の油断を誘ってたわけか。」


リィナさんがまとめてくれた。

そう考えるとホントに凄い人だったんだよね、ヨルさんて。


 「流石にそこまで計算していたわけではないだろうとは推察。」

 「是、あれだけは間違いなく天然。」


今度はタバサさんも同意した。

確かにそうだろう。

いくら何でも、そこまで道化みたいにキャラを演じられていたら、さすがにあたしでも見抜けるだろうしね。




・・・カラドックさんは静かなままだ。

きっと心のうちでは色々思い悩んでいるんだろう。


それこそあたしなんかが声を掛けることも憚れるくらいに。


でも、そんな余計なあたしの心配にも気づいてくれるのがカラドックさんだ。


 「おや、私のことを気にかけてくれるのかい、麻衣さん?」


暗がりでもカラドックさんが顔を綻ばせたのが分かる。


 「あ、えっと、その・・・。」

ダメだ、なんて声を掛ければいいのかが分からない。


 「ありがとう、心配要らないよ。

 そうやって気を配ってくれるだけで私の心は軽くなる。」


万能超人はここにもいた。

本当に世の中、上には上の人がたくさんいやがりまくるのだ。


あたしなどいい気になってる暇がない。


まあ、何はともあれ、

ヨルさんエピローグはこれで終わりだ。


あたしの最後のイベントは式典の後にするか。


何でもケイジさんが式典の前に、

リィナさんと二人で行きたいところがあるという。



恐らくケイジさんエピローグがそれになるんだろうね。


・・・そう言えばケイジさんも、何か隠し事があったような・・・。


いえいえ、別にそんなもん曝露したいとも思いませんよ。

自分が転生者だとカミングアウトした上で、それでも何か隠したいことがあるというのは、多少気にはなるけども。


それこそあたしなんかが口を出すことでもない。






けれど


♪ ピーンポーンパーンポーン



・・・嘘でしょ。


こんなタイミングでまだ何かあるのか。


 「麻衣さん、どうかしたかい?」


いきなり歩みを止めたあたしにカラドックさんが声をかけてきた。


メリーさんにも反応はない。


てことは異世界転移組でなく、

あたしだけに送りつけられたメッセージ。



 「あ、えっと・・・すいません。

 どうやらあたしだけみたいですね、

 例のメッセージが届きました・・・。」


 「え!?

 このタイミングで!?」


だよね、

今更何かあるのか。


ステータスウィンドウに着信メッセージの文章が点滅・・・。


もったいぶる必要もない。

むしろ何か緊急のお知らせか・・・。


そしてあたしはそのメッセージを開く。




あ あ あ・・・


頭痛くなってきた・・・。

これ、どうしろと。

いや、あたしは巫女。


これを、そっくりそのままケイジさんに伝えるしかないか。


送りつけてきたのは、

どこかの偉そうな天使さんだ。

文面見れば分かる。




 『やあ、麻衣。

 久しぶりだね、僕のことを嫌ってるくせに、子供たちによくしてくれてありがとう。

 心から感謝しているよ。

 更に手間をかけるようで申し訳ないのだけど、一つ伝言をお願い出来るかな?

 ああ、もちろん君のご主人様にも了承は得ているよ。

 惠介・・・ケイジに伝えて欲しいんだ。

 新しい人生は、悔いが残らないように生きろよって。


 ただ・・・ここから先が大事なんだけど、

 君にも覚えていて欲しい。

 『永劫なる運命と全能なる時間』の前には、

 僕も、君のご主人様でも逆らうことは出来ない。

 ケイジにも・・・無理矢理異世界転生させた代償を支払う時が近づいてきている。

 内容は教えなくても、その時になればケイジ本人にはすぐ分かることさ。

 事前に準備なんかすることもない。

 心構えだけしっかりしていれば何の心配もないよ。

 麻衣、君が言ってくれたように、

 ケイジ、あいつが道を外さないでいるのならね。』



あ~の~野~郎~ぉ・・・




というわけで次はケイジイベントです。


まぁ、仲間に裏切られる今回のイベントからそのまま連続にはなってしまうのだけど。


・・・毎回綱渡りだな・・・

話を作るの・・・。


うりぃ

「この期に及んで、まだお終いまで考えついとらんのか。」


いえ、ある程度、指標を立てとけば登場人物たちが勝手に動いてくれるかなって・・・。

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