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第五百七十六話 救出

ヨルの裏切り(?)については比較的前の方から構想練ってましたが、

どうやって解決するかはつい最近思いつ・・・いえ、まとまりました。


ヨルにミスは有りませんでしたよ。

あくまで

カラドックのミスです。


ケイジ

「え? カラドックの手柄でなくミス?」


カラドック

「ま、まあいいじゃないか、ケガの巧妙ということで。」

<視点 ケイジ>



 ケイジ・・・


 惠介・・・


 ケイジ・・・


 惠介・・・




誰だ・・・

誰かがオレの名前を呼んでいる。


一つは今のオレの名前、

もう一つは懐かしいかつての名前・・・。


うすぼんやりした景色の向こうに二人の人影が見える。


その二人がそれぞれ別の名前でオレを呼びかけているのだ。

優しい声で。


とても穏やかな声で。


二人の顔ははっきりとは見えない。


でも誰かはすぐに分かった。

顔が見えないのはとても寂しい事だけど、

二人の温かい気持ちは伝わってくる。


 「・・・オレは元気だよ。

 仲間も出来たんだ。

 今度こそオレは真っ当な人生を歩んでいると思う。

 だから・・・」



安心してくれよ。


今は夢の中なのだろう。

それでも最後までは言葉にできなかった。

けれど、オレの気持ちは伝わったような気がする。


二人の顔に安心したような様子が窺えたからだ。


・・・やっぱり二人は別人だったんだろうな。


いつだったか麻衣さんは言ってたっけ。

母さんも、おふくろも、

二人とも満足して亡くなったんじゃないかって。


恐らく二人とも誰も恨んじゃいない。

オレが元気であること、

特に母さんは、オレに父親やカラドックが現れたことで心底から安堵してたんだと思う。


確かにあの男は母さんを騙していたんだろう。

最後の最後まで。


けれどそれを誰が咎められるというのか。

全ての真実を知った時には、オレも話そのものを受け入れられなかったけども。


・・・今ならなんとか受け入れられる。


事実、母さんの最後の顔はとても安らかだった。


おふくろもそうだった。

あの時、オレに仲間はいなかったが、

オレの未来を信じてくれていたんだ。


この世界はヒューマン以外にも獣人やら亜人やら訳のわからない種族がたくさんいる。

獣人とヒューマンのハーフだなんて、オレも被差別種族に生まれたことを恨んだりもしたものだが、

今やオレは邪龍を倒した冒険者パーティーのリーダーだ。


考えうる限りの出世をしたと思っていいのではないか。




・・・なんて浮かれてたつもりはない。

つもりはないんだけど、目を覚ましたら今の現状はヤバいよな。

夢の中でも覚えているぞ。


ただ希望は捨てない。

最後まで抗ってみせるさ。

だから、二人とも見ていてくれよ。


そんで、

もしまたどこかで転生なり生まれ変わることがあるのなら・・・



今度こそ長生きしてくれよな。




母さん、おふくろ・・・


さよ な



 「ケイジ・・・」


うん?



 「ケイジ!」



あれ?

この声は誰だ?


 「ケイジ、しっかりしてよ!

 生きてる!?」


お、おお





 「あ、あれ、リィ・・・ナ?」


 「良かった!

 目が覚めた、ケイジ!!」


うわっと!

いきなりリィナに抱きつかれた!

う、うむむ、うん、リィナの匂いだ。

間違いない。


見慣れてるリィナの顔がそこにある。

あれ?

オレ、今・・・


あ、いや、確かヨルと「聖なる護り手」の連中に囚われていたよな?

うむ、オレが寝ていたところはフカフカの棺桶のような狭い箱の中だった。

酸欠にならないように小さな小窓のような穴もある。


それはいい。

でもここにリィナがいるということは・・・


オレはゆっくりとリィナのカラダを離し辺りを見回す。


ここは幌馬車の中かな?


街中じゃあないな。

郊外の草原を通る街道のようだ。

陽は・・・傾いているな。

もうちょっとで日没か。


他に、

・・・カラドックも麻衣さんも、

アガサもタバサもいるな。

いないのはメリーさんだけか。


そんで向こうに・・・

あ、ダンと例のスケスケハイエルフたち。


なんかかなり弱っていそうだな。

あと一撃でとどめを刺せる状態のスライムみたいだ。

いや、スライムなんか一撃で消せるけどな。



そして




一人・・・力なくしゃがみ込んでいるのがヨル。



どうやら




オレは助かったようだ。



 「みんな・・・

 みんなでオレを助けてくれたのか・・・。

 すまない、そしてありがとう。

 本当になんと言っていいか・・・。」


 「全くケイジには最後の最後まで、この慈愛の女神タバサが必要。」

 「いつ如何なる時も、心優しき天使アガサがケイジを救済。」


おお、ありがとうよ。

オレも二人を愛してるよ。

オレが差し出した両手を二人がペチンと引っぱたく。


・・・こんなノリ、なんか嬉しい。




お?

よく見たら左足も元に戻ってるじゃねーか。

眠ってる間にタバサが繋いでくれたのか?


 「治療はタバサ、解凍はアガサにやってもらったよ。」


にこやかなカラドックが教えてくれる。

カラドックの奴、オレを心配する様子が全くないな。

今回のことも大して大騒ぎする必要すらないと思っていたのか。


それともヨルの事だ、

何か大ポカやらかして、すぐバレるような手掛かりでも残していたのだろうか?


 「いえ、今回は本当にどうしようかと思いましたよ。

 ものすっごい念入りにあたしの感知や透視からケイジさんを視えないようにされてましたから。」


麻衣さんがげんなりした顔で言う。

スゴいな、

そこまで計画を練ってたヨルもヨルだが、

どうやってオレを見つけ出してくれたんだ?


 「気分はどうだい、ケイジ?」

 「ああ、全く問題ない、カラドック。

 足を斬られた以外ダメージはなかったし、

 その足もピッタリくっついているようだ。

 今すぐ戦闘に入れと言われたら不安もあるが、多分日常生活なら普通に動けるだろう。」


オレは立ち上がって恐る恐る屈伸運動をする。

タバサの治癒術を信じないわけではないが、

やはり斬られた足がいつの間にか元通りってのも、すんなり頭が追いついていかないんだよ。


 「それは良かった。

 『聖なる護り手』の連中も最初から私たちと事を構えるつもりは全くなかったようだ。

 まあ、もう全員戦闘不能だけどね。

 歩けることくらいは出来るようだから、後はほっといて皆んなで帰ろうか。」


 「あ、ああ、それはいいが、どうやってオレを見つけた?

 麻衣さんの透視能力でも見つけられなかったって言う話だよな?」


そこでカラドックは少し照れたような顔を浮かべた。


 「あ、ああ、ちょっと私もうっかりしててね。」


ん?

うっかり?


 「まさか、あんな強引な手を使うなんて・・・。」


麻衣さんが苦虫を噛み潰したような顔で言う。

そう言えば苦虫ってどんな味がするんだろう?

・・・いや、絶対に食わんぞそんなもの。



カラドックが言い渋っているのを見て、呆れたようにリィナが説明してくれた。


 「それがさぁ、聞いてよ、ケイジ。

 ホラ、邪龍と戦ったとき、一時的にミュラ君達とパーティー組んだじゃない?」


ん?

邪龍と戦ったとき?


あ、ああ、そう言えばそれでみんなのMPを麻衣さんに集めてたよな?

でもそれが?


 「カラドックったら、パーティー解除するの、すっかり忘れてたんだって。」


え?




え?

え?


それってつまり・・・


 「つまりね、

 あたし達は今もなお、『聖なる護り手』ともパーティー成立状態。

 ということで、カラドックのユニークスキル、『徴収ディストリビューション』が使用可能。

 みんなのMPを強制的に徴収、集めた魔力を使って、

 アガサが全力光呪文ライト起動、

 それを麻衣ちゃんが虚術ダークネスで真っ暗にして、

 さらにタバサがディスペルで術を無効化、

 そんな無駄で何の役にも立たない作業を、何回も何回も繰り返して、無理やりあの人たちのMPを消費し続けてたんだって。」



えぐ・・・


あ、それで

今アイツらMP枯渇状態か。


 「うん、それでさすがにあの人たちも限界までMP失って、ケイジの周りに掛けられてた隠匿結界も解除、無事に麻衣ちゃんの遠隔透視も使えるようになったってオチ、ちゃんちゃん。」


オレは哀れな屍状態になってる冒険者どもを温かい目で見詰める。


 「も、もう、カルミラちゃん鼻血も出ないの・・・

 これ以上は勘弁してなの・・・。」


 「た、立ち上がるのも辛い・・・。

 カラドックさん、せめてもう少しMPを・・・」


 「・・・かあ〜、だっるぅ〜、

 こらぁダメだぁ〜、オレらの負け負け〜。」


 「これが虚脱状態・・・

 う、うふふ、

 ちょっと癖になりそう・・・。」


スケスケハイエルフだけまだ余裕か?

ていうか、あいつ一人だけやっぱりおかしな性癖持ってそうだよな。

いや、オレは関知しないけども。




そこでカラドックが真剣な顔でオレに近づいてきた。


 「ケイジ、最後に君にも確認したいのだけど・・・。」


カラドックが聞きたい事はわかっている。

これからが修羅場なんだろうな。


 「ああ、何でも聞いてくれ。」

 「今回の誘拐劇の主犯は・・・」


カラドックの事だ。

既に当たりはつけていたのかもしれない。

そして、

ここへきてヨルが話を誤魔化そうとする事もないだろう。


 「ああ、ヨルだ。

 彼女がカラドックをこの世界に繋ぎ止めたいという願い、その一点だけの動機だそうだ。」



さあ、どうする、カラドック。


ベッドの中の魔王ミュラ

「何で僕まで・・・とばっちりだ・・・」


ケイジ

「え、パーティーって自分で抜けられないのか?」


カラドック

「ふふ、賢王からは逃れられない!!」


あ、さすがに魔王君は逃れられますよ?


ミュラ

「それに気づくのが遅すぎたんだよ!!」




さて、次回、

いよいよ修羅場。


カラドックはどんな答えを出すか。


エンディング、ヨル編大詰めです。

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