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第五百七十四話 誘惑

なお、

ヨルは「聖なる護り手」の皆さんにお金払ってます。


ヨル

「ヒューマンの国の金貨いっぱい貰っても、

買い食い以外、使うところないですよぅ。

このお金でみなさん雇うですぅ。」


ダン

「まあ、魔王様の承認もあるから協力してやるけど、

戦闘行為は勘弁な。」



<視点 ケイジ>


 「そういう訳で、ヨルもあんまり麻衣ちゃんの感知出来ないところに長く居続けるわけには行かないんですよぅ。

 ただでさえカラドック達には、この結界能力が、破廉恥ハイエルフさんの能力だってバレちゃってますからねぇ、

 ちなみに今は、みんな手分けしてケイジさんを探してる最中ですよぅ。

 後でみんな集まって情報や結果を報告し合うことになってますよぅ。

 まぁ、ドラゴンの背中に乗っちゃったらこっちのもんですけどねぇ?

 通常の移動手段なら、魔族領に到着するだけでタイムアップになるですよぅ。

 なので後はメナ達がケイジさんのお世話するだけですよぅ。」


ヨルが部屋から出ようとする。


だがここで彼女を帰してはならない。

何故ならオレが交渉できるのはヨルしかいないのだ。

冒険者パーティーどもとオレには接点は何もないのだから。


 「ま、待ってくれ、ヨル!」


仕方ないとばりに振り返るヨル。

ホントにオレには何の興味もなさそうだ。

なんとかヤツの隙を見つけねば。


 「リ、リィナはどうなる・・・?」


ヨルに女性同士としての仲間意識があるのかどうか・・・

望みはないかもしれないが、試してみる価値はある。


 「あー、リィナちゃんですかぁ?

 どうなるんでしょうねぇ?」


な、なんだと?

だってヨルは魔王ミュラに


 「あ、えーと、ケイジさん、

 ヨルはリィナちゃんにも恨みも何もないですよぉ。

 リィナちゃんがケイジさんを見つけて仲良く暮らしたいっていうなら、そのままお幸せになって欲しいくらいですぅ。」


な、なら


だがヨルの言葉はオレを絶望に突き落とす。


 「ただヨルも魔王様には逆らえませんですからねぇ。

 魔王様はケイジさん誘拐計画にはノータッチですけどもぉ、

 このままケイジさんとリィナちゃんが離れ離れになっているなら、そのまま二人を会わせないように、なんて言ってくるかもしれませんですねぇ。」



は?


 「ふ、ふざけんな、そんなん詐欺みてーなもんじゃねーか!!

 今までオレを自由にするとか言ってたのは全部嘘だってのかよ!!」


 「だから落ち着いて欲しいですぅ。

 ケイジさんへの評価もケイジさんへの思いやりも全部ヨル個人の意志ですよぅ。

 けれど、そこに魔王様が入ってきたら、ヨルにはそれらを保証できなくなるって話だけですよぅ。」


ふ、ふざけやがって・・・



 「最初の話に戻りましょうかぁ?

 ケイジさんが協力的ならヨルはこれまで通り、ケイジさんと仲良くするですよぅ。

 ・・・けれど、もし、ケイジさんが反抗したり、ヨルのお願いを聞いてくれなくなったのなら・・・


 ヨルは遠慮なくケイジさんの心臓を一突きするですからねぇぇぇ?」



・・・くそっ!

しょせんそんな美味い話もないか・・・。


こうなったら・・・ なるべくならやりたくなかったが、背に腹は変えられない。

オレも覚悟を決めよう。



 「ヨ、ヨルっ、あんまりだ!!

 考えてみてくれっ!!

 誰も知らない土地に一人取り残されたら、いくらなんでもオレのメンタルが持たない!!

 淋しすぎるだろっ!!

 リィナが一緒にいてくれればまだしも、周りが魔族だらけで、心を許せる奴もいないだなんて・・・。」


スケスケハイエルフと少年僧侶に思いっきり笑われた。

まあ、オレも逆の立場なら、何コイツ情けねぇこと喚いてんだと思うものな。


けれど逆に「こっち方面」の話ならヨルを釣り上げられるのではないだろうか。


 「あー、確かにケイジさん一人きりってのは淋しいですよねぇ?

 どこかで可愛い獣人奴隷でも捕まえてきましょうかぁ?

 ケイジさんに絶対服従させるんならケイジさんも満足ですよねぇ?」


・・・確かにアタリはあったけども、

ヨルよ、

お前はオレの事をどんな目で見てたんだ?


 「い、いや、出来れば知ってるヤツがいい・・・。」


 「はあ、わがままですねぇ・・・、

 うーん、リィナちゃん以外でですかぁ?

 麻衣ちゃんだって元の世界に戻るですよねぇ?

 アガサさんやタバサさんだって足がつくから無理ですよぉ?

 ちなみにヨルの知ってる人なら誰がいいですかぁ?」


よし、ここまで食いついた。

あと一息・・・。


 「ヨ、ヨル、お前は・・・

 お前なら適任じゃないか?

 オレへの監視も続行できるし。

 お互い気心も知れてるし、一緒にいてオレも淋しくなんかない。」


案の定、素っ頓狂な声を上げるヨル。


 「は、はあっ?

 そ、それ、って、ヨルと二人っきりでケイジさんと暮らせって言ってるですかあ!?

 何バカなこと言ってるですかあっ!!

 ヨルはカラドックと一緒になりたいんであって、ケイジさんがそこに邪魔してくる筋合いなんか何処にもないですよぅっ!!」


うむ、

話が逸れてきた。


 「分かってる。

 ヨルの純粋な気持ちは分かっている。

 けれど思い直してみろ。

 お前の計画のままだと、オレが見つからない限りカラドックは心配で元の世界に戻れないほどのことなんだろ?

 なら、オレを探してる状態でヨルとどうにかなる心の余裕すら、カラドックには生まれないはずだ。」


 「うっ!?」


よし、効いてる効いてる。


 「その間・・・ヨル、お前だって寂しくないのか?

 オレを探してる間、カラドックの目にお前は映らないんだぞ?

 そんなの余りにも辛くねーか?」


 「やっ、やめるですよぉ!!

 ま、まずはカラドックをこの世界に縛りつけておくしかないじゃないですかぁ!!

 カラドックが元の世界に戻ってしまったら、もう二度とヨルはカラドックと会えなくなってしまうんですよぉ!?」


その・・・通りだよな。

それはオレも同じ認識だ。

ヨルにしてみれば、とりあえずでも元の世界に帰れなくすれば、後はどうにかなるっていう、僅かな望みに賭けたってことか。


 「・・・分かるよ、

 会えなくなるのは辛いよ、な。」


このセリフは演技じゃない。

オレの本音だ。


 「ケ、ケイジさん?」

ヨルにもオレの真剣さは理解できるだろう。


母さん、おふくろ、リナ、仲間たち・・・

いや、前世に関してなら、もうオレには仲間と呼べるものなんかいない。



全てオレは捨て去ってしまった。

自分から。


けれど、

この世界に転生して、新たな家族や仲間もいるんだ。


もう会えなくなるのはたくさんなんだよ。


 「・・・いなくなって、会えなくなって、

 初めてその辛さが分かるんだよな・・・。

 他に何にも考えられなくなって・・・

 心にポッカリ穴が空いちゃって、毎日毎晩幻だけを追い求めるようになっちまうんだ。

 なんでオレの隣にアイツはいないんだろうって。

 あの時、こうしていたら、

 あの時、他に出来ることはあったろうにってさ・・・。」


 「な、何言ってるですかぁ!!

 そんな、そんな恐ろしいことヨルは考えたくないですよぉ!!」


そこでオレは精一杯の優しい目を送る。


 「ならさ、残された者同士で慰め合えないか?

 オレはリィナに会えない。

 ヨルもカラドックに会えない。

 互いにその涙を拭いてやれるぞ。

 ヨルが望むなら、その綺麗な角を毎晩さすってやったっていいんだ。」


 「ギヒッ!?」


あっという間にヨルの顔が真っ赤になった。

やっぱりアイツの弱点は角でいいのか。


 「ケッ、ケイジさんっ!!

 ふ、ふ、ふしだらですよぅ!!

 もっ、もしかしてヨルの角をそんな嫌らしい目で見てたんですかあっ!!

 み、みそこなったですよぅ!!

 ケイジさんっ!!」


 「ん?

 オレじゃだめか?

 おれの黒い体毛で夜通しくるんでやってもいいんだぞ?

 それこそヒューマンのカラドックに出来ないことだって味合わせてやると言って・・・」


その時、部屋の扉が開いた。

死霊術師の女だ。


 「はいはい、スリープクラウド。

 声が外まで漏れてるよ。

 まったくクライブもオスカもいて、何やってるのだ?

 その狼男くん、クィーン様の二番煎じやってるだけだよね?」


くっ、バレたか・・・


いかん、また眠気が・・・。


 「いやあ、これはこれでどうなるか面白いかなって・・・。」

 「演技は分かってたけどね、

 ちょっと魔族と獣人の間に新しい扉が開くのかと・・・。」

 「あんたたち・・・。」


あ、コイツらには通じてなかったか・・・


 「い、い、いい、いけませんですよぅっ、

 ヨルには、ヨルにはカラドックがいるのにぃ・・・。」


うん、ヨルは・・・

やっぱりヨルだった・・・



ケイジ

「万事休す。」

麻衣

「あたしもあんまり役に立たなさそうな・・・」

メリーさん

「ふーん、彼さらわれちゃったの。」

リィナ

「ど、どこからか颯爽と救いの手が!?」


ないです。

そこにいる人たちだけで解決して下さい。

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