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第五百七十三話 手段

今回明らかにしてますが、


以前ローゼンベルクのアスターナさんとこのお風呂シーンで、

麻衣ちゃんがヨルに後ろから胸を揉みしだかれていたのは、ヨルが麻衣ちゃんの感知能力をやり過ごすことが出来るかどうか確かめる為だけの行為でした。


あの時点から作者は・・・

じゃなくてヨルは計画を進めてました。




麻衣

「揉みしだかれてません!!

タッチされただけですっ!!」

<視点 ケイジ>


なんだと?

オレを行方不明にしておいて、

カラドックを元の世界に帰さない、だと?


そ、そうか、そんな理由・・・いや、待て!?


 「ヨ、ヨル!

 動機は分かるが、いろいろおかしいぞ!?

 オレが行方不明になったからと言って、どうしてカラドックがオレを探す必要がある!?

 確かにあいつが自分の世界に戻るまでなら、オレの捜索に尽力してくれるかもしれないが、

 期限を逃したらアイツは元の世界に帰れなくなるんだぞ!!

 そこまでしてオレを探し続けるわけないだろう!!」



そうとも、

邪龍まで倒した以上、ヤツがこの世界に残る理由は何一つない。

別にオレの消息が分からなくなったくらいで・・・


 「そこは認識の違いですよぅ、ケイジさん。

 カラドックはケイジさんとリィナちゃんが幸せそうにしてるのを見ているだけで、満足だって言ってましたよねぇ?

 ならケイジさんがいなくなったら、リィナちゃんは必死にケイジさんを探すと思いませんかぁ?

 そんな姿を見てカラドックは二人を見捨てられるような人なんでしたっけぇぇ?」


そ、それは・・・


ヨ、ヨルのヤツ、なんて事を考えるんだ。

確かにヨルのカラドックへの想いは本物なのだろう。

そこを否定したいとは思わない。

けれどこのままなら当然カラドックは元の世界に戻る。


カラドックに想いを寄せたままなら、ヨルの選択肢は限られる。

もちろん、魔族のヨルを元の世界に連れ帰るわけには行かない。

オレだってカラドックと結婚したラヴィニヤとは旧知の仲だ。

別にラヴィニアに惚れちゃあいないが、カラドックが別の女を連れ帰ったら、きっとラヴィニアだって悲しい顔を浮かべるよな?

そんなもん想像したくもないぞ。

そしてそれ以上にその後の世界が変わることの方が恐ろしい。


・・・いや、

アスラ王、もしくは天使シリス・・・


あの二人がそんなマネを許すとも思えないが、

こちらからコンタクトを取る手段がない以上、何の保証もなくあの二人に任せるわけにも行かないだろう。




だからそれだけは必ずオレ達で阻止しないと。


そして未来を変えてはならないというならば、

当然カラドックも無事に元の世界に帰さねばならないのだ。


そんな事、誰に言われるまでもない当然の話。

カラドックをこの世界に縛りつけておいてはならないんだ!!



だが・・・

片足を切り落とされた今のオレに、この状況を覆す手段などあるのだろうか。


いや、何としてでもヨルの考えを変えさせなければなるまい。


 「だからといって、ヨルの目的はそれで達せられると思うのか!?

 いくら隠し通すにしたって、いつかは計略を練ったのがヨルだってバレるだろ!!

 騙されたと知ったらカラドックは絶対にヨルを許すわけがない!!」


そこで初めてヨルが困惑した表情を浮かべた。

もっとも意表を突いたと言うほどではない。

ヨルもそれは想定している話ということか。


 「そうなんですよねぇ〜、

 そうなったらケイジさんには、こっちで作ったストーリーに口裏合わせてもらうしかないんですよねぇ〜。

 ただそのストーリーが決まってないんですよぅ。

 一番ラクなのは、魔王様がケイジさんに嫉妬してってパターンが自然なんですけど、さすがに魔王様をダシに使うのは恐れ多いですよぅ。」


そりゃいくらミュラでも、そんな事の為に自分の名前使われたんじゃ堪んないよな。

じゃあ結局ヨルはどうするつもりだ?


 「さもなくば、もうケイジさんにはカラドックに絶対に再会できないようにするしかないですかねぇ?」


ゾクっ・・・




いかん、その方向性はマズい。



 「ケイジさんを生かしておこうと思ったのは、カラドックに全部バレた時に、少しでも怒りを和らげるためなんですよぅ。

 でもバレそうになるくらいなら、ケイジさんの存在自体、この世界から消してしまったほうがいいんですかねぇ?」


ダメだ、コイツ真剣にその二つの選択肢を天秤に掛けてやがる。

やはり、この街から連れ去られないうちに解決するしかない。

オレが身動きできないなら、やはりここ一番で頼りになるのは麻衣さんだろうか。


 「い、いや、それこそその前にバレるって!!

 いくらそのハイエルフの結界能力があるとはいえ、お前は麻衣さんの感知能力を見くびり過ぎている!!

 たとえオレ自身の姿を隠したとはいえ、街中に結界なんか敷いたら、その不自然さに必ずあの子は気づく筈だぞ!?」


だが、とことんオレの考えは甘かったらしい。


 「ケイジさんこそ、麻衣ちゃんの感知能力を過剰評価しすぎですよぅ。

 ヨルは今まで麻衣ちゃんとお風呂入った時とかで麻衣ちゃんの能力の隙や限界を把握してるですよぅ。

 今度も麻衣ちゃんには決して分からないように、念入りに準備しましたからねぇ。」


そ、そんな。

コイツはいつからそんな準備を・・・。

そういえばオレたちが聖女の相手をしていた時も、街へ繰り出して単独行動していたよな。

その時にこいつらと計画を練っていたのか。

それを言うならオレの足を斬った剣もオレが貸した剣か。

そして腹ペコキャラを演じたり、お腹を下したフリをしたのも全て計算か。


完全にオレはヨルの本性を見誤っていたんだな・・・。


 「あ、た、食べ過ぎでお腹壊したのは想定外でしたよぅ・・・。

 計画実行までに治ってホントに良かったですよぅ。」



・・・やっぱり見誤ってなかったかもしれない。



 「わかった・・・、

 カラドックがオレを探すかどうかの話は一度置いておこう。

 オレが逆らわないなら、出来るだけオレの自由を尊重してくれるってことでいいのか?」


 「嬉しいですよぅ、ケイジさん!

 ヨルは今後もケイジさんと仲良く出来るですよぅ!!」


いつもの能天気なツラに戻りやがった。

あらためてとんでもないヤツとパーティー組んじまったんだな・・・。


まあいい。

今は情報と状況を把握するのが先だ。


 「じゃあこの後は運命共同体ってわけだよな?

 オレの足はいつ元に戻してくれるんだ?

 このままだと移動も出来ないぞ?」


 「魔族領に落ち着くまではそのままでいてもらいますよぅ。

 この国の辺境に向かうヒューマン冒険者の荷物として過ごしていただければオッケーですよぅ。

 人の目につかないところまで行ってくれれば、ドラゴンタクシー手配するので快適な旅になりますよぅ。」


え・・・

ドラゴンタクシーって、こないだダン達が目を回していたヤツだよな。

アレにオレも乗るのか・・・。


ていうか、そこまでされたらオレに逃げ出す手段は一切無くなる。

それまでに脱出するか、みんなに見つけてもらうしかないか。


 「そもそもここは何処なんだ?

 安宿のようだが公都には違いないんだろ?

 いくらそこのハイエルフの結界があるとはいえ、移動したりする段階でほんとに麻衣さんの感知に引っかからないのか?」


 「その通りですよぅ、

 ちなみにケイジさんを眠らせた後は、同じホテルのヨルの部屋に運んでいたですよぅ。

 暗くなってから、ヨルが内側から窓を空けて冒険者パーティーのおじさんに外に連れ出してもらったですよぅ。」


その役割がダンか。

てことは、この部屋にいないのも今現在別の役割を負っているということだな。


 「さすがにAランク冒険者か、

 アイツ、レンジャーのジョブも持っているのか。」


そこへしばらく静かにしていたスケスケハイエルフが割り込んできた。

相変わらず薄毛が見える。

どこのとは言わないが。


 「ダンはレンジャーのジョブも確かに持っているけど、こっちには浮遊スキル持ちも風魔法のエアライド持ちもいるから短距離の移動には困らないわ。」


ああ、それでオレの部屋ではこいつらの足音が聞こえなかったのか。

そしてヨルは浮遊スキルを身につけてなかった筈。

ならばもう一人のメイド魔族の方か。

ヨルがエアライド使ってるのは見たことないが、確かヨルも風魔法は得意だったはずだ。


どっちみち、ヨルが自分の部屋の窓を開けてコイツらを迎え入れていたというなら、ホテル関係者も誰も目撃していないだろうな。


 「なるほど、

 ・・・後、オレの協力が必要と言うならもう少し情報が欲しい。

 ここまで麻衣さんの感知や他人の目撃をくぐり抜けてこれた経緯はわかった。

 だが結界というのはベアトリチェの宮殿でも見たが、一定のエリアに限定されるってことだったろ?

 移動し続けるオレを結界で覆い尽くすことなんてできるのか?」


それこそ膨大なエリアで隠し通さないとならないのではないだろうか?

そして、

感知術の仕組みはオレも知らないが、

麻衣さんも自分の感知が働かないエリアを見つけたならば逆にエリアを限定しやすくなるのではないか?


 「心配は要らないわ。

 むしろ結界はエリアを狭くする方が楽だし、

 発覚しづらくなるものよ。

 今で言うならこの部屋だけ。

 そして、この後はあなたを収納する棺桶に掛けておけばいいだけだもの。

 そんな狭いエリアに感知が働かないのはおかしいだなんて、気付くことの方があり得ない。」


ああ、そういうことか。

砂漠の中に黒い石があるのを見つけろと言う話になるのか。

それは麻衣さんでも難しかろう。


しかもスケスケハイエルフの奸計と能力はオレの想像以上だった。


 「更にいうと建物規模のダミーの結界をたくさん仕掛けているの。

 一つ一つ調べているうちにあなたは空の旅、というわけ。」


 「は?

 それこそ、そんな事したらお前の魔力が保つまい?

 いったいどんな仕掛けでそんな大それたマネを!?」


そこでスケスケハイエルフはおかしそうに笑い出した。

今のやり取りでどこに笑う要素がある?


 「あらいやだ、

 あなたのところのハイエルフや、この国の神官達が使ったフォースフィールドの封魔石を流用しただけよ?

 そのままあの結界を上書きすればいいだけだもの。

 時間はそれなりに掛かったけど手間は殆ど掛からなかったわ?」


あ・・・。


そ、そんな・・・。

確かに一度術をかけてしまえば、

封魔石は術の効果が切れるまで何の管理も要らない。

そして邪龍を倒した今、

封魔石はその存在も不要となったが、だからと言ってすぐに撤去する必要もないものだ。


オ、オレたちが邪龍対策にやっていたことを逆手に取られたっていうのか・・・。




ヨル本人が隠匿結界持ち(対象は自分自身のみ)で、

殺気を抑える技術も持っています。


恐らくステータスウィンドウの適性職業欄にはアサシンが表示されていることでしょう。


更にその上でオスカの結界も併用しましたので、

麻衣ちゃんでもどうにもならなかったというわけです。

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