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第五百七十二話 目的

すいません、

数話前のヨルの発言に時系列的な間違いがありました!


こっそり修正してますのでお気になさらず!!


ヨル

「さ、作者さんの間違いですよぅ!!

ヨルは嘘ついたんじゃないですよぅ!!」

<視点 ケイジ>



あの目だ。

身内である筈のシグの背中を貫いた時と同じ目。


なるほど・・・

というか、ちくしょうと言いたい。

もちろんそれはヨルではなくオレに対して。


警戒すべき理由はちゃんとあったのに。

いつもふざけたような喋り方と、色恋沙汰以外興味ないようなあの態度に、完全に騙されていた。

それを見抜けなかった自分に腹が立つ。


 「あんまり、驚いてないようですねぇ、

 その割には呆気なくヨルに足を斬られたですよぅ。」



 「いつか誰かに裏切られるケースは常に想定していた。

 それがまさかヨルだったとは考えられなかっただけさ。」


 「・・・普通そんなこと考えないと思うんですけどねぇ?

 まぁでもヨルの計画が事前にバレてたわけじゃなかったのなら良かったですよぅ。」


計画か・・・。

こいつは一体いつからこんな物騒なこと考えていたというのか。

いや、今はそんなことより・・・


 「何のためにこんな事を・・・

 いや、オレを殺さないってことは何か交渉事でもあるのか?」


 「まさしくその事ですよぅ、ケイジさん。

 ヨルはケイジさんとお話ししたくて、こんなマネしてるんですよぅ。」


 「・・・オレと?

 先に聞いておくが、ヨルはオレに何か恨みがあるとか、オレに殺意を抱いてるとか言うことではないんだな?」


一応それだけははっきりさせておきたい。

そんな事はないと思うんだが、聖女様の時のように、オレに何か後ろ暗いことがあった場合、オレにできることが極端に減るからな。


 「いえいえ、ホントにケイジさんに恨みなんかないですよぅ。

 ヨルはいつも嘘なんかついた事ないですしねぇ。

 前々から言ってる通り、ケイジさんはいい人だと今も思っているですよぅ。」


そう思ってるヤツの左足を何の躊躇いもなく、斬り飛ばすヨルの思考回路の方が恐ろしいんだが。


 「なら何故オレを襲った?

 何か願い事があるなら普通に頼めばいいだろ?

 わざわざ他の冒険者まで連れ回して何故こんな手の込んだ真似をする!」


 「ああ、ケイジさん。」


ん?

またあの冷たい目か。

何を言うつもりだ、こいつ。


 「交渉事を始める前に断っておくですよぅ。

 ケイジさんを生かしておくのはただの保険ですよぅ。

 もし、ケイジさんが余計なマネをして、ヨルたちの手に余るようなら、ケイジさんを生かしておく事に価値はありませんですぅ。

 その辺を理解してからヨルたちに付き合って欲しいんですよぅ。

 ヨルの言ってる事わかりますかぁ?」


実質、オレに反抗する余地は与えないってか。

まあ、ここまでするくらいなら、オレの反撃だって警戒して当たり前か。


・・・状況はかなり良くないな。

ヨル一人だけならまだ隙もあるのだろうが、

Aランクパーティー冒険者の半数が揃っているとなるとかなり厳しい。

そういやダンもそうだが、オレを眠らせた死霊使いの女もいないな。

確かカルミラと言ったか、

外で見張りをしているのかもしれないが。


 「・・・わかった、話を始めてくれ。」


そこでようやく、ヨルはいつもの明るい能天気な態度を取り戻したのである。

まったくどうなっていやがんだ、こいつの思考回路は。


 「嬉しいですよぅ、

 交渉事と言っても、ケイジさんがヨルの言う事聞いてくれれば、ケイジさんに不都合は全くないですよぅ。

 その気になったら地域限定で冒険者活動してもらっても全く問題ありませんですよぅ。」


は?

人の足を切り落としておいて何言ってやがんだ?


 「・・・この足でどうしろって言うんだ?」


すると後ろに控えていたメイド魔族の女が大きな箱を持ってきた。

魔道具か?


いや、この話の流れでそんなもん取り出すって事は・・・


箱の中には氷漬けになってはいるが、

それはよく見慣れた・・・


見慣れたって言っていいのだろうか。

あり得ない場所によく見慣れたものが、

よく見たことない角度でオレの目の前にある。


そう、切り落とされたオレの足だ。

それが氷に覆われた状態で箱の中に入っていたのだ。


 「オレの、足、だよな?」


 「何度も言うですよぅ、

 ヨルはケイジさんに何の恨みもないですよぅ。

 痛い思いをさせて申し訳ないとも思っているですぅ。

 ですからヨルの言うことさえ聞いてくれれば、元の状態に戻してあげるですよぅ。」


元の状態って・・・ああ、だから少年僧侶がここにいるのか。

オレの知識じゃ、僧侶系クラスは基本職では切断された足を元に繋げるのは難しいが、

上位職で身につけるハイヒールなら接合可能な筈。

事実、クライブという名の少年僧侶は、オレの視線に気づくと無言で頷いた。


 「そこまでしてオレにやって欲しい事ってのは何だ?

 オレは何すればいい?

 ていうか、こんな手の込んだマネしなくても、これまで一緒に戦ってきたヨルの頼みなら、大抵のことは聞いてやれるぞ?」


お?

ちょっとヨルの顔が綻んだぞ?


 「嬉しい事言ってくれるですよぅ、ケイジさん。

 ホントにいい人ですよねぇ?

 カラドックに出会う前に仲良くなってたら、ヨルも絆されてたかもしれませんですねぇ?

 あ、ケイジさん、ヨルを甘く見ないで欲しいですよぉ、

 今更ヨルの心は動きませんですからねぇ?

 さてさて、ヨルの願いは簡単ですぅ。

 これからほんの一週間ちょっと、

 ケイジさんには行方不明になってもらえれば済むことですよぅ。」


一週間ちょっと・・・だと?

それってつまり。


 「はいぃ、まあ、その後もしばらく魔族領にでも静養してくれれば言うことないですよぅ。

 ヨルの住んでたマドランドだと足がつくかもしれないので、そこにいるメナの故郷ビュッテバウア辺りがいいですかねぇ?

 魔族はヒマしてるニートどもがたくさんいやがりますから、ケイジさんのお世話できる人員くらい魔王様の名前出せばすぐに手配できるですよう。」


 「魔王だと?

 今回のことはミュラの指示か?」


あの野郎、生まれのことがあるから多少同情してやっていたのに、やっぱりアイツは気を許していい男じゃなかったか。


だが、ヨルは慌てて首と手を振っている。

 「ちっ、違いますですよぅ、

 魔王様は今回の件に全く関わってないですよぅ。

 ヨルは魔王様に願いを言って、魔王様はヒューマンの冒険者とメナを貸すから好きにしろと言ってくれただけですよぅ。

 さっきカラドックにも聞かれましたけどヨルは嘘を言ってないですぅ。

 リィナちゃんや麻衣ちゃんにバレないよう、ヨルは慎重に進めてきましたからねぇ。」


ん?

そうだよな?

オレがいなくなったらカラドック達も大騒ぎする筈だ。

麻衣さんだって遠隔透視能力でオレなんか簡単に見つけられる筈だ。

なのに・・・


ああ、それでスケスケハイエルフがここにいるのか。

確か彼女は高度な結界能力の持ち主。

その結界でオレの存在を麻衣さんの能力から隠し通しているわけか。


それにしてもヨルはいつの間にミュラとそんな打ち合わせを?

いや、恐らく邪龍と戦った後だろうな。

思えばそれだけの時間は十分にあった。


 「そこまでしてオレを隠し通す理由はなんだ?

 オレに何の悪意も害意もなく、ただ単に一定期間行方をくらまして欲しいだと?

 そんな事してヨルにメリットなんか・・・」



一つ頭に浮かび上がることがある。

ヨルは恋愛脳だ。

他に興味なんかありもしない。

そしてその対象はカラドック。

だかヤツは後ちょっとで元の世界に帰る。


だがそれとこれとは


 「決まっているですよぅ。

 ケイジさんが行方不明になったなら・・・

 カラドックはケイジさんを取り戻すまで、元の世界に帰ろうなんて、思いませんですよねぇぇ?」

 

ヨルの裏切りを物語に入れることは、


彼女が魔族執事シグを殺した時にはまだ、思いついていませんでした。


自分でもあの時点でヨルの性格と考え方は、

あれでいいのかどうか迷いましたが、

結果的に必要な配役になってくれたようです。


いつから彼女がこんな事を考えていたかは次回に。

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