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第五百六十一話 ぼっち妖魔は舌鼓を打つ

お食事シーンは一話で終えようと思ったのですが、

ちょっと文章多くなりましたので分割します。

<視点 麻衣>


あ、うう、またあたしか。

え?

あとちょっと?

今度のお食事風景で終わり?


分かりましたよ、

ならちゃんとやりますよ。




ミシェルネさんとメリーさんが手を繋いで帰ってきたのはみんな驚いたみたい。

うん、まあ、そりゃそうだろうね。


 「リィナちゃん、リィナちゃんのお母さん、お待たせしました〜、

 おかあ・・・あ、じゃなくてメリーさんも参加してくれるそうです。

 じゃあみんなでやりましょう〜!」


さすがに動く人形を初めて見たリィナママたちはびっくり仰天。

完全に動きが止まっていなさる。


けれど予定調和というのか、

ミシェルネさんとツェルヘルミアさんは全く気にも止めずに厨房へと入っていった。

もちろんメリーさんも一緒に。


ツェルヘルミアさん、あの騎士服で料理しないよね?

一度着替えるのかな?



あっと、こっちもみんな事態を把握できていないね。


 「ま、麻衣さん、な、何で聖女さまとメリーさん、あんな仲良さげなんだ?」


そりゃあたしもケイジさんたちに説明したいのはやまやまなんですけどね。

ケイジさんにこれ以上情報渡すの怖いんだよね。

ケイジさん、自爆しそうで。


 「え、と、いちおうメリーさんのプライバシーに深く関わるので・・・

 お聞きしたいのならメリーさんに直接・・・。」


 「そ、そうか・・・。」


とりあえずはケイジさん納得してくれたけど、ちゃんと釘は刺しておかねばならない。


 「それで、特にケイジさんには注意して欲しいんですけど。」


 「え、な、何をだ!?」

 「メリーさんの前で・・・

 絶対にミシェルネさんの機嫌を損なうようなマネは控えて下さい。

 ケイジさんの命を保証できません。

 あたしに言えるのはそれだけです。」


ケイジさんの呼吸が止まった。


ケイジさんもバカじゃない。


いま、

あの厨房にはケイジさんの実力を持ってしても抑えきれない人間が三人も・・・

リィナさんも入れていいのかな?

そうすると四人もいらっしゃるのだ。


勝ち残るどころか、生き残る目さえ存在しない。


是非ご自分の命を大事にしてもらいたい。


 「わ、わかった、気をつける・・・。」


ようやく再起動したね。

このイベントが終わるまで絶対に油断しないでほしい。


これ以上、何もないとは思うけどどうも嫌な予感が消えないんだよね。


何かこう、

普段何気ない生活を送っていて、

何か忘れてるんじゃないかって気がするところ、

ようやくその何かを思い出してスッキリしたと思ったら、まだ何か忘れてるんじゃないかって、そんな感覚。


多分おおごとには至らないレベルのものだと思うのだけど。



ケイジさんはその後、おとなしくしていたようどけど、

時々ケイジさんの鼻がヒクヒク動いているのがわかる。


あたしにも美味しそうな匂いが、厨房に続く出入り口から漂ってるの分かるくらいだものね。


・・・ていうか、酷く懐かしい匂いな気がする。



これはなんの匂いだ?


と言ってる間に料理が出来てきた。


部屋付きの給仕の人と、リィナママがお皿を運んでくれる・・・。



ってこれ、

チャーハン!?


あと、あれグツグツ煮立ってるの、

も、もしかして麻婆豆腐!?


ああああ、あっちからはオムレツと、とんかつと、や、野菜サラダはいいとして、

またお鍋に入ってるの・・・

まあ寒いから鍋料理はいいんだけど・・・



お で ん !?


まだ食べてないから味もそうだと断言出来ないけども、


ちくわにはんぺん、たまごにだいこん、

昆布巻、がんも、ゴボ天、あとあれなんだ?

ふき?

ふきが入ってるおでんて珍しいな。

どこか地方の伝統バージョンか!


・・・ていうか、



ちょ、ちょっとこれ、

これで日本からの転生者いないって絶対無理があるよ!!

普通に考えればメリーさん情報かと思うんだけど、ついさっき状況を理解したばかりのメリーさんに、ここまで手際よく料理を作れるはずがない。

しかも確かメリーさんは日本の文化の知識があるだけであって、日本で暮らしたわけではないそうだ。

となると、ツェルヘルミアさんか、ミシェルネさんか・・・。

まぁミシェルネさんの方は、転生じゃなくても例の能力だと言われてしまえばそれまでか・・・。


 「これは絶対美味いやつ」

 「我生涯に一片の悔いなし」


エルフのお二方はおそらく生まれて初めて見る料理に心奪われていると見える。


カ、カラドックさん、大丈夫かな?

あの人、大陸最大国家の王様だっていうから、おでんはともかく、きっと中華料理は知ってるはず。


 「いや、これは・・・流石にスルーできないよ・・・。」


やっぱり知ってるよね!

ついにここで初めてカラドックさんがスルーを諦めて兜を投げた!!



そこで恥ずかしそうに、頭に白い頭巾を巻いたミシェルネさんが出てきた。


 「コースとか料理のバランスとか全然考えてないんでごめんなさいね。

 ここにいる人たちで好きなもの作ろうって流れになっちゃったんです。」


いや、確かにいろんな料理でバラバラなんだろうけど、それぞれ美味しそうなのは違いない。


お、ここでリィナさん登場。

 「・・・ごめん、あたし、ワイバーンの串焼きしか作れなかったけど、タレとか香辛料とかツェルヘルミアさんやミシェルネさんがいろいろあるっていうから、つい調子に乗って・・・」


リィナさんが恥ずかしそうに山盛りに積み上げた肉の串焼きを運んできた。

いや、でも十分美味しそうですとも。

ていうか、この世界にも串焼き文化はあるみたいだけど、

肉と肉の間にネギを挟み込むだけで、日本料理っぽく感じてしまうのはあたしだけだろうか。


いけない。

口の中にヨダレが・・・



 「聖女さま、

 ・・・いくつかのお料理に魚の出汁が効いているようですが・・・。」


ついにカラドックさんが動いた!!


そうだよね!

今までこの異世界の料理って、いつも元の世界の西洋料理っぽかった!

それに焼き魚はあったけども魚の出汁を使った料理は見たことない!


 「はい、ごめんなさい、

 これもわたしの能力絡みです。

 聖教国ネミアの南側には海があるので、魚も獲れるんです。

 その食材使ってると、この料理にはこんな使い方すると美味しいはずって閃いちゃうんですよね。」


な、なんという便利能力・・・。


 「いや、魚はこのグリフィス公国でも獲れるが・・・こんな使い方は・・・。」


ケイジさん、手が震えているよ。

やっぱり前世では日本の味に慣れていたのかな?



あ、うん、あたしも人の顔を窺ってる場合じゃないね。

確かにあとちょっとしたら日本に帰れるんだけどさ。

まさかここでおでん食べれるなんて思いもしなかったもの。


あ、煮卵発見。

じゅるり。

思わず舌が鳴る。


リィナさんやツェルヘルミアさんも席についてみんなでご飯タイムだ。


メリーさんは、ミシェルネさんの隣に椅子を用意してもらう。


メリーさんは食事できないのにいいのだろうか。

と思ってたら、

メリーさんの手がミシェルネさんの手の上に。


あ、あの人、確か他人の感覚を共有できるんだっけ。

自分のカラダじゃないからどこまで再現性あるのか分からないけども。


 「・・・美味しいわ。

 本当にあなたの料理の味がする・・・。」


 「ええ〜、本当?

 食材だって向こうと一緒かわかんないのにい?」


さっきの会談での顔つきや喋り方と違うね。

こっちがミシェルネさんの本当の姿なのかな。

でも屈託のない笑顔だ。

こんな子に世界の命運を背負わせようとしているところだったんだよね、この世界は。



うん、

おでんも美味しいけど、

炒飯や麻婆豆腐も美味しいや。

うちで食べるのとやっぱり違う。


あれ、でもこの炒飯、普通の中華料理にでてくる奴じゃ・・・

え!? かまぼこ入ってる!?

味付けもお醤油ベースだよ!?

ネギと炒り卵は普通の炒飯にも入ってるだろうけど、他にもかつお節まで乗ってる!!


 「その炒飯は、私とミシェ姉の合作ですわ。

 こんな風に教会本部で一緒に料理作るのは本当に楽しいのですよ。」


確かに楽しそうだ。

元の世界に戻ったらあたしもマリーちゃんたちと料理を作ろう。


 「本当にツェルちゃんが女の子で良かった・・・。

 わたし、ずっと一人っ子だったし、お姉ちゃんや妹が欲しかったの。

 男の子でもいいんだけど、きっと手がかかりそうだし、こんな風に抱きつけないし。」


ミシェルネさんがツェルヘルミアさんに抱きついた。

ツェルヘルミアさんも困ったような顔してるけどまんざらじゃなさそうだよね。


でも今のセリフ、誰かヘタレの人が聞いたら泣きそうになると思うよ。

 


焼き飯にかまぼこ入れると美味しいです。


今は亡き中国拳法家兼中華料理屋の兄が実家にいた頃、家で腹を空かせると、冷蔵庫漁って作ってました。


そういや結局彼の店で名物の麻婆豆腐食べてあげられなかったな。

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