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第五百五十九話 闇の祭司? その2

いぬ

「・・・姐さん。」

うりぃ

「・・・なんや、いぬぅ・・・。」


いぬ

「忘れてましたけど、本来のストーリーって、

タケル編にしても、シリス編にしても、フラア編もみんな救いがないっすよね・・・。」

うりぃ

「タケル編はまだ多少、ええ話になる余地はあったろう?」


いぬ

「まあ、そうかもしんないすけど、

最終的には・・・みんな・・・。」


うりぃ

「その辺にしときぃ。

一応、フラア編も誰も救われないようでいて、

イザベルはんとミカエラはんみたいに、ええ話も残しとるやないか。」

(それはフラア編終わった後だけどね)


いぬ

「でも、この異世界の話もあんまり人は死んでませんけど、結局は同じ流れになっちゃうんですか?」


うりぃ

「それは別の物語にしよか。

あくまで今皆さんが見とるこのお話は、平和に終わらそやないか。」


いぬ

「・・・今回のお話読んでそれを安心しろと?」



<視点 麻衣?>


うん、そう、そんな話だった。

あたしたちの造物主様は、あたし達人間自身の手で殺さねばならないのだ。


ちなまぐさすぎる。

そして救いがない。


でも本当にそうなの?

それこそ騙されてない?


 「うん、まあ、それ言い出すと疑うのもキリなくなっちゃうんだよね?

 でもたぶんこの辺りは天空の神々も認めてるような気がする。

 だって過去の歴史の通りなんだもの。」


・・・ああ、

まあ確かに。

人間の歴史なんて殺し合いと戦争の歴史だ。

共喰い文明と言われても否定できないよね。


そして神々と言われるものが

その子供に・・・


いや、これはここで言わない方がいい気がする。


そうなると天空の神々と造物主さまの盟約って何になるんだろね?


 「何となくなんだけど。」


お、わが麗しの闇の祭司ちゃんには先が見えるのだろうか。


 「あたし達人間のことよりも、

 天空の神々が、死に絶えることに関わるとかどう?」



うええええええええっ!?


さ、流石にそれは、む、無理でしょう?

人間が神と呼ばれるレベルにまで進化したとしても、

そこまで追いつけるわけもないし、

造物主様と手を組んだとしても無理でない?


あの人だって今までずーっと封印されてきたんだし、

その間、神々だって成長するよね?


 「うーん、いい考えかと思ったけどなあ。」


何の根拠もなく当てずっぽで言ったのかな?

確かにこの子はあまり頭がいいイメージはない。


・・・すいません。

あたしが言える事じゃないです。


それもあくまであの世界の聖女さまに比べての話だ。

たぶん普通の一般の女の子より、この子は頭の回転は良さそうだ。


 「でもね、マイちゃん、

 完全にただの思い付きってわけじゃないんだよ?」


え?

て、ていうことは何か根拠でもあるんだろうか?


 「うーん、

 なんとなくっていうかさ・・・。」


なんだろう?

まさか聖女さまみたいに、なんだかよく分からないうちに知ってしまうような能力なのか?


 「あはっ、そんな身もふたもないような能力じゃなくて、ただの感想。

 それは麻衣ちゃんたちの異世界転移のストーリーがヒントになってるような気もするんだよね?」


なんだってええええええええええええええええっ!?


 「まあ、どっちみち、あたし達の生きてるうちは関係ないよ。

 気楽に行こう、気楽に。」


それはあたしも同意する。

21世紀の科学技術程度じゃ、

天空の神々に追いつくどころじゃない。


そう、時代が進めばとか言う話でなく、

何かこう、次元が違うとでもいうのか、

それこそ魔法文明でも進化させないと・・・


あれ?


いま、

あたし、


なんかとんでもないことに気づきそうでない?




 「どうしたの、マイちゃん?」


黒髪の女の子が床下にいるあたしを覗き込もうとしている。



え、あ・・・いや、


なにか、おかしい。

変だ。


最初の印象通り、危険は何もない。

黒髪の子は柔らかい友好的な笑みを浮かべている。


顔はよく見えないままだけどね。


でも

この子は本当に


あの黒髪の女の子なのだろうか。


あたしの知ってるあの子は火炙りになった筈だ。


じゃあこの子は誰なの?


 「やだなあ、マイちゃん、

 あたしは華だよ。」


ハナ!?


え?

その名前は・・・日本人!?


いや、あたしは確かに言った。

名前が似てると。


アスターナままの、生まれてくることができなかった赤ちゃん。

あの子の名前が・・・確かハンナちゃん・・・。

メリーさんは最初気づかなかったけど、

あの黒髪の子の名前がお花を意味しているとしたら、

日本語を介せば似た名前だとあたしは思った。


まあ、普通は異なる言語の国や民族の名前と関連させようなんて思わないんだろうけどね。


あたし達はそれを飛び越えられる現象を知ってる。

・・・転生なのか、

それともパラレルワールドの概念なのか。


果たしてどちらなのかは分からないけど、

日本語を知ってる人間が絡んでいるなら、

日本風の名前に変化することは十分有り得る。


それにしても華さんか。

そういえば以前も思ったけど、

華子さんでなくて本当に良かった。

メリーさんに続いてハナコさんにまで縁があったら、あたしの人生、都市伝説まみれになる。

この後もしかしたら、口の裂けたコート姿のお姉さんにまで遭遇するかもしれない。

特に今のご時世、マスク付けっぱなしでも不審者扱いされないしね。


 「あたしのことよりも、さ。」


華という名の女の子は更に屈んであたしに近づく。

ごめんなさい、今、華さんでなく別の女の人考えてました。




ふぁさ、と。


綺麗な長い黒髪が床に垂れる。

ようやく顔も見えてきた。


あれ?

あたしが以前に見た未来の顔とちょっと違うな。

でも魂は間違いなく・・・一緒?


何かが違う。

転生者なら生まれ直したことで遺伝子の変化も起こりうるだろう。

けれど魂に変化はないはず。


たった今、あたしが受けた印象は・・・



何かが欠けてる。


日本人風の名前を名乗った「華さん」は、

日本人ぽい顔と言われればそうかもしれないけど、

肌の色とかは欧米風だ。

お胸もあたしより大きい。

どうするんだ、聖女さま?

あの人ではこの子に勝てないぞ!!



 「だからー、あたしのことじゃなくてー、

 マイちゃんの方は大丈夫なの?」


え、どういうこと?

大丈夫って?

あたしがどうしたっていうんだろう。


 「あれあれ?

 まだ気づかない?」


気づかないって何を



 「マイちゃんはなんでそんな床からあたしを見上げてるの?」


そ、そうだ。

そこからおかしかったんだ。

カラダは普通に動かせるし、痛みも苦しみもないから、気にしていなかったんだけど



いや、気にしなきゃダメでしょ!!

なんで気づかなかったんだ!?


 「でも慌てることは何もないよね?

 だってあたし達は友達だものね?」


彼女はあたしの前に手を差し伸べる。


反射的にあたしも手を伸ばそうとして





ようやくあたしは気づいたのである。


あたしの腕がなくなっていることに。



右腕も左腕も。

腕っていうか肩の関節自体がないぞ?

そして異状はそれだけに留まらない。


あたしにはお腹から下の足すらも存在していなかったのだ。


ただただ真っ白な鱗が蝋燭の光を反射させて、

ぐねぐねとその場を蠢いているだけに過ぎなかったんだ。


まあ、いまさらだよね。

ご定番の蛇の胴体か。

気づいてしまった今ならそれほどショックはない。


・・・いや、落ち着け。

あたし、人間に戻れるのか・・・。

うん、もちろんこれは夢なのだから、目が覚めればいいだけなのだけど、

これが未来の光景だと言うのならあたしは一体・・・



 「うふふ、今後ともよろしくね、マイちゃん。

 あたしのかわいいお友達。

 これから聖女さまとあたし。

 ようやく同じ時代に生まれたんだ。

 どっちが先に死ぬのかなあ。

 あ、マイちゃんは、あたしの味方してくれるんだよね?

 きっとよ?

 あなたのこと、頼りにしてるからね?」




発言内容がやけに気味が悪い。

二人は敵同士になるのか。

冒頭の話じゃないけど、

造物主様の祭司同士で殺し合いでもするんじゃあるまいな?


その場合、あたしは闇側に就けということなのか。




前に造物主様があたしに頼んだこと・・・

・・・協力って


そういうことなのか。



うわあああ、とんでもない目に遭わせやがって・・・。


これ、目が醒めたらこのこと覚えているのかな・・・。



ううう、最悪


何のためにこんなもの見せやがった・・・


ああ、意識が薄れてく・・・ 


 「あれ?

 マイちゃん、いっちゃうの?」


いっちゃうのじゃないよ、

あの子の声もどんどん小さくなって・・・


なんにもみえなく・・・


 「じゃあマイちゃん、まーたーねー・・・」


そして黒髪の女の子の声は完全に聞こえなくなった。



最後まで明るそうに振る舞って・・・


あの子のことはいいのだけど・・・

あたしはいったいどうなるんだろう


でも


これ、でもきっと、


あたしにとって


唯一の救いは。



なんとなく確信めいたものがある


ここに いるのは

きっと




「あたし」じゃ・・・




ない


 

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