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第五百五十八話 闇の祭司? その一

今回は麻衣ちゃん用のタイトルになってません。


それと以前、あの子は物語に登場させないと言いましたよね。

これは現実空間の話でないのでセウトです。

<視点 麻衣?>


あれ?

ここどこだ?


確かまだあたしはグリフィス王国の公都にあるホワイトパレスで、聖女さまイベント真っ最中のはずだ。


・・・あ、もうイベントはほとんど終わりのほうだったかな?

大事な話は全て終わったと思う。


ならここは・・・夢、予知夢の世界・・・


というわけでもないな。

夢の世界には間違いないけども、


以前、何度かあったと思う、誰かの夢と繋がっている状況なのだろう。


いったい誰と?



これが誰かの夢の中だと言うのなら、近くにご本人がいる筈なわけで。



あたしはその姿を探す。


けど、

・・・なんかおかしいな。

ここは多分個人の部屋の中だと思うけど、

あたしの視点がやけに低く感じるのだ。


まるで自分が赤ちゃんにでもなったかのような。


・・・まさかあたしが赤ちゃんに転生したなんてやめてね。


部屋の中は薄暗い。

窓はないのだろうか。

それとも今は夜なのだろうか。


とはいえ、光源はすぐに見つかった。

あたしの位置からはよく見えないけど、

燭台か蝋燭の灯りだろう。


天井からぶら下げられてる比較的最近の現代照明でもなく、おそらくテーブルの上に設置されてるものと思われる。


床はウッドフロアって言うのか、

ニスを塗ったような深い色合いの板切れを敷き詰めている。

あたしが転移した異世界の宿屋さんでよく見かけるような内装だ。


そしてあたしの眼前には、

テーブルとか椅子の脚が何本も聳え立っているわけだ。


けれど、

その何本かの脚のうち、

隣り合ってる二本の足だけが他と違う。


周りの脚は全て木製なんだろうけど、

その二本の足は熱を持っている。

さらに言うと、その二本の足の周りには布切れで覆われて・・・


ああ、もったいぶらなくてもいいか。

そうですよ、

スカートを履いた普通の人の足ですよ。


あたしの今の位置からじゃ上半身が見えないので、近いところまで移動しようと思う。


ちなみに危険は感じない。


他人の夢の中で危機察知が働くかどうか、

実を言うと一度も検証したことないので、不用心と言われれば不用心かもしれない。


え?

悪霊リジー・ボーデンの時はどうだったって?


いや、あれ危機察知使う使わないの話じゃなくて、あの状況、まんま危険だったから。

見たまんま異常な世界だったから。



今はこう、なんていうか落ち着いた・・・

そう、普通に仲のいい友人の家にでもお邪魔してるような気楽さなのである。


だから皆さんはこの状況で、

あたしにとんでもないトラブルが起きるとか気にしなくてもいいと思うよ。



さて、本題だ。

あたしは何故か低い視点のまま、

這うように体を前に進ませる。


スカートを履いてるということは、

そこにいるのは女の人なのだろう。


その人もあたしのことは認知してるみたいで、カラダの正面をあたしに向けている。


・・・あら、

顔が見えるかと思ったけど、蝋燭の光が逆光みたいになってて、よく顔が見えないな。


でもこの感じ・・・


流れるような黒髪・・・


あの子・・・だね。



前に見た時は、確かあの子はとても酷い目に遭っていたと思う。

今は・・・いつの頃なのかな。

落ち着いている感じだ。

誰かに拘束されてるわけでもないし、

普通に怪我とかもしていない。

五体満足だ。



あたしを見ても騒ぐことはないようだね。

あたしの能力も把握しているのかな?

向こうもあたしを友達みたいな感じで迎えてくれてるようだ。


 「あら?

 いらっしゃい、マイちゃん。」



あれ?

なんであたしの名前知ってんだ?


ていうか、なんか違和感あるな。

あたしの名前を呼んでくれてるのは間違いないんだけど、

・・・本当にそれは「あたし」の名前なのだろうか?



 「聖女さまに会ったんだって?」


よく知ってるね。

こっちの状況、リアルタイムでわかってるのかな?



それにしても、ここはどこで、今はいつなのだろう。

他人の夢と繋がる時は、時代も場所もバラバラだったからなあ。

黒髪の子が生きてる時代なのはいいとして、

ここはカラドックさんたちの世界の何百年か後の時代なのだろうか。


 「ここは以前、麻衣ちゃんが転移していた世界だよ。」


え?

以前?


どういうことだろう。

あたし今現在を除いて他の世界なんか行ったことないぞ。


・・・ということは、

この子がいるこの世界は、


あたしがカラドックさんやメリーさんと飛ばされて、邪龍を倒した世界の・・・未来か?


 「あ、もしかして、ちょっと混乱してる?

 じゃあ、これ食べて落ち着いて?

 ほら、殻を剥いておいてあげたから。」


そう言って、黒髪の女の子は、

あたしの前に、お皿に乗った卵を床に置いてくれた。


おお!

ちょうどお腹すいてたんだよ!


 「一応茹でてあるから。

 殻付きでも大丈夫かもしれないけど、

 ない方が食べやすいでしょ?」


何を言っているんだろう。

殻付きで食べたら後が面倒だろうに。

まあ、でもせっかく剥いてくれたんだから、ありがたくいただきますよ。


むんぐ。



ぐぱぁ。




モグぅ



ゴクン。



うん、美味しかった。

ごちそうさまです!




黒髪の子は満足そうに笑いながらお皿をかたしてくれた。


さて、何のお話だったっけ。



 「それでマイちゃんは、聖女さまのお話聞いてどう思ったの?」


ああ、そうそう、その話だったね。

夢を見てるせいか、あたしの頭の回転が鈍くなってる気がする。


間違っても元から鈍いわけじゃない。


それにしても聖女さまの話か。

いろいろショックなお話が多かったかな。

メリーさんとの件は置いておくにしても、

あたし達の主のことをお説教するとか言い出したり、ヘタレ扱いしたりとか、そんな事ができるのかと思ったよ。


 「ねえ・・・。」


そこで黒髪の子は不思議そうな顔をした。



 「何でマイちゃんは、

 その話を聞いて、

 それが真実だと思ったの?」





え?


 「聖女さまの話を、マイちゃんは何の疑いも持たなかったの?」


え、なに?

どういう事?

まさか聖女さまがあたし達を騙したとか?


 「ううん?

 別に聖女さまが嘘つきとか、みんなを騙してるとか、そういう事じゃないの。

 ただ、あれって、

 聖女さまの目には、そういうふうに視えていたってだけの話のはずよね?」


えっと、

それって、つまり・・・



 「忘れちゃダメだよ、マイちゃん。

 あの人は・・・この世界の創造主は、

 天空の神々ですら欺いてきた史上最大空前絶後の正真正銘ナチュラルぼーん詐欺師なんだよ?

 ならあたし達人間を騙してないなんて、誰にも分からないはずだよね?」



え、

じゃ、じゃあまさか聖女さま自身が騙されているってこと!?


 「・・・正解は、わからない、よ。

 あたしだって全てわかるわけでないもの。

 でもあたしは前の世界であの男に会ってる。

 彼の意図は本当に分からなかった。

 あたし以外の人間には完璧な聖者のように振る舞っておきながら、あたしには意地の悪いいたずらっ子みたいに、あーでもない、こーでもないとからかい続けてくれやがったんだもの。

 まるであたしを試すかのように。」


・・・それは



聖女さまは光の祭司、

今ここにいる黒髪の女の子は闇の祭司、



一人の人間・・・じゃなくて、

一人の神様を正反対の属性の祭司が全く異なる見方を持っている。


つまり、

二人は・・・聖女さまとこの女の子は、

決して相容れぬ道を進むという事なのだろうか。


だからこその光と闇か。


それって、

当然あたし達の創造主も理解しているはずだよね?


ていうか、そうなるように仕組んでいるのかな?


何のために?


 「あたしにもよく分からないけど、

 でもあの人の目的の一つはわかる。」


目的の一つか。


それは


 「人間を神に進化させること。」


そうだ。

あたし達が今いる世界の神様だとかいうように、死んで精霊から進化するような存在の話じゃない。


まさしく、天空の神々と肩を並べるような高次元の存在。


それならあたしも理解できる。

神々に復讐を果たすとかいう話も一理あるとは思うのだけど、

それこそそんな器の小さい主ではないと思う。


となると、そのために必要となるのが



 「人間同士で殺し合いをさせる。

 そして創造主様を人間自身の手によって殺す。

 二度と復活も転生も出来ないように。」




やっぱりそうなるか。

以前いつかの夢でも見た気がする。


この子は果たして以前も主役級で登場していたあの子と同一人物なのでしょうか?


一つ言えるのは、

「闇の祭司」になってしまったら、

以前と同じ性格ではいられなくなるかもしれませんね。


ただ、

今回の話でマイちゃんと話をしてる人には、

少なくともこの時点で「闇の祭司」の称号はついてません。

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