第五百五十七話 ぼっち妖魔はお腹が空いた
前話のあとがきにミシェ姉画像アップしてます。
大人になったら身長は伸びるんですけどね、
お胸の方は残念ながら・・・
それと
【お詫び】
話の整合性確認するため前の話を読み返してみたら・・・
アスターナまま達の街の名前ローゼンベルクが、
世界樹洞窟を出たら全てローズベルクに変わっていたことに気づいてしまいました。
全て修正したと思うのですが、もしまだ残っていたらご容赦くださいませ・・・。
<視点 麻衣>
いいものを見させてもらった。
何か色々思うところはある。
邪龍戦の時は、
メリーさんの中の人、すなわちイザベルさんの本性についてあれこれ思ったのだけども。
そう、さっきの会談で、その場の勢いに任せてあたしはケイジさんを弁護した。
環境が人間の心性や進む道を変えるってね。
そこには当然、
人の出会いも含まれる。
今まであたしが見聞きしてきたイザベルさんという人の内面は、
善人か悪人かで言えば後者の範疇に入るんじゃないかと思う。
それは本人も自覚してそうだった。
でも黒髪の女の子の件で、やりたい放題好き放題に他人の人生をめちゃくちゃに狂わせた結果、
それを良心と言っていいのか分からないけど流石に罪の意識も感じたんだろう。
心の中に澱となって、重しになって、
人間として生きることを放棄して人形のカラダを手に入れた。
メリーさんのカラダなら感情も失ってしまうものね。
自分の罪の意識から逃げるにはちょうど良かったかもしれない。
その事をご本人が気付いているかどうかは知らないけど。
これだけ聞くとホントにどうしようもない人に聞こえるけど、そんな人にもやっぱり人並みに幸せを感じれる世界が存在したんだよね。
イザベルさんにとって、
再婚した人は何か途轍もなく最低クラスのクズ野郎だったらしい。
あれ、これ夢で見たんだっけか、
メリーさんから聞いたんだっけか、もう記憶もあやふやだ。
なんでまたイザベルさんはそんな人と一緒になったのか。
同族意識のシンパシーでも感じたのか、それとも自分の方がまだマシだと優越感に浸れたのだろうか?
けれど、
そしてその二人の間に生まれたミシェルネさん、ミカエラさんて言ったかな?
ミカエラさんはイザベルさんの、真の意味で心の癒しになったんだろう。
再婚した人はミカエラさんが生まれてすぐ自殺してしまったという。
再婚した男の人も、何を考えて生きる事をやめたのか知らないけど、もう少し長生きしてみたら、ミカエラさんとイザベルさんとで、幸せに暮らす道もあったかもしれないね。
なにもミシェルネさんだって、完全無欠のスーパー聖女というわけでもなかった。
あたしなんか比べ物にならないほどすごい女の子だということは間違いないけども、
あの歳でとても色々考えて、
色々悩んで、精一杯生きて行こうとする普通の女の子である事も間違いないんだろう。
だから周りの人も共感できる。
支えてあげようと思う。
あたしでもこの子をそんな簡単に死なせたくはないと感じるくらいだもの。
ならご主人様も、直接自分の手で守ってあげればいいのにね。
・・・それも出来ないの?
何かのつまらないルールに縛られているのかな。
そういう意味でもヘタレなんだろうかね。
まあいいか。
今、メリーさんとミシェルネさんは仲良く手を繋いで元きた道を戻っている。
もちろんあたしが先導する必要は、もはやこれっぽっちもない。
二人の邪魔をしないように静かに後ろを歩いているだけだ。
・・・そしてこの廊下を歩いている人はもう一人いるんだよね。
ミシェルネさんの護衛騎士ツェルヘルミアさん・・・。
この人も、さっきは二人の再会・・・とは言わないか、
二人の出会いに心から喜んでいた筈だ。
魔道具をつけてるらしいから、あたしにはツェルヘルミアさんの心中は全く分からない。
分からないけど何か顔がこわばっているというか、不機嫌そうな印象を受ける。
ミシェルネさんを取られるとか、メリーさんに嫉妬でもしてるのだろうか。
いや、そんなこともなさそうだよね?
少なくともツェルヘルミアさんは、そこまでミシェルネさんに執着してるようでもなかった筈。
どちらかというとツェルヘルミアさんの興味はリィナさん寄りだった気もするし。
「・・・あ、顔に出ていましたでしょうか?」
え!?
ツェルヘルミアさんに、あたしが顔色窺っていたのバレた!?
この人も洞察力半端ないな!!
「す、すいません!
ちょっとここのところ、いろいろあったもんで、周りの状況気にするくせがついちゃったみたいで!!」
「ああ、いえ、気にされなくて結構ですわ。
私もまだまだ修行が足りないのでしょう。
別にミシェルネ様は私にとって護衛対象というだけで、私は保護者ではありません。
ミシェルネ様が誰と仲良くされようと、私は暖かく見守るだけですわ。」
え、でもさっきのトゲトゲしい視線は?
あ、ま、まさか。
「と、という事はさっき見てたのは・・・、」
「・・・ええ、あの人形のほうです。
ミシェルネ様は心配要らないと仰ってましたが、人間なんてそうそう変わるものではありません。
またよからぬ事を企んでいるようであれば、今度こそ私が息の根を止めて差し上げるべきかと・・・。
あ、いえ、・・・変わりすぎてますかね?
もう、人間じゃないのですものね?」
話してる途中でツェルヘルミアさんは混乱してしまったようだ。
あれ?あれ?と不思議そうな困った顔になっている。
ていうか、
ツェルヘルミアさん、メリーさんに会ったことあるのかな?
そう言えばメリーさんが最初に転移した場所は、ツェルヘルミアさん出身のトライバル王国ってとこだっけ?
いや、でも最後の言い方からすると、
ツェルヘルミアさんが知ってるのは人形以前?
・・・どうしよう。
そう言えばさっきリィナさんを抱きしめていたときも変だった。
ツェルヘルミアさんもハッキリ断言したわけではないけど、
転生者と思って間違いなさそうだし。
まさか、ケイジさんたちの世界で、
リナさんて人のお母さんだったとかないよね?
ていうか、あの時、リィナさんが「お父さん」て呟いたのは何だったのか・・・。
とりあえず性別の件は置いといて、
ツェルヘルミアさんがリィナさんの関係者なら、
それは前世でのケイジさんより上の世代の筈。
ならメリーさん関係ないよね?
メリーさんの中の人が人間として生きてたのは、ケイジさんやカラドックさんの時代から400年後くらいだったっけ?
むしろケイジさん達より前の世代だとしたら、
それこそあたしのママかマリーちゃんたちの頃?
直接ツェルヘルミアさんに聞いた方が早そうなんだけど・・・
もうあたしも情報過多でお腹いっぱいなんだよね。
いや、そろそろ現実のお腹はなりそうなんだけどね。
そしてあたし達は無事に元のお部屋に戻る。
確か水鳥の間ってお部屋だったよね。
「ただいま、戻りました、
お待たせして申し訳ありません!」
ミシェルネさんの声が明るい。
嬉しかったんだろうね。
メリーさんに、
自分を「聖女」なんて肩書きなしに真正面から向き合ってもらったんだから。
さっきの話だと、実のご両親にも「異物」を見るような目で扱われていたそうなのなら。
もう大昔の話になっちゃってるんだけど、
前回の邪龍討伐の時の聖女ベルリネッタさんも、同じような扱いを受けていたのかな。
だからこそ、ずっと聖女ではなく名前で自分を呼んで欲しいという願いを持ち続けて・・・
・・・おっと。
それはそれとして部屋の中の空気が微妙。
カラドックさんが向こうの司教さん中心にお話してて、
アガサさん、タバサさんがそれに付き合う形なのはいいのだけど。
そこの男衆。
ケイジさんに、リィナさんのパパと弟くん。
この三人が余りにこの場所に浮いている。
カラドックさんも気を遣って、
たまにリィナパパに話を振ってるんだけど、
リィナパパは緊張して、ああ、ハイとか会話が続かない。
弟くんに至っては、リィナパパの後ろに隠れて耳しか見えなくなっている。
ケイジさんもどうしていいか分からないようだ。
え
あたしこの空気でどこに混ざれば。
あ、一応ケイジさんがこっちを救いを求めるような目で見てきたけど、
すぐに聖女さまとメリーさんが手を繋いで歩いてきたのを見てフリーズしてしまったようだ。
「はい!
じゃあ、このままわたしたちは厨房に向かいます!
お料理たくさん作りますからもうちょっと待ってて下さいね!!
ツェルちゃん、おかあさん、行きましょう!」
やっぱりというかあたしに声はかからなかった。
うん、いや、声をかけてほしかったわけじゃないよ?
あたしも家でお料理することはあっても、人様に召し上がってもらう程の技量はない。
ミシェルネさんも主役はリィナさんだと言ったんだから、あたしはぼっち・・・
じゃなくて置物のように控えておりますとも。
この後は食べるだけに専念しよう。
間違っても、
危険察知反応なんかない事を期待する。
ケイジさんが
「ん? おかあさん?」
とか危ない単語を拾っていたようだけど、
勝手にリィナさんのお母さんの事かと勘違いして済ませたようだ。
この場にリィナさんのお母さんいないのにね。
そう、これ以上騒ぎの種は蒔かなくていいと思うんだよ。
ではお楽しみご飯タイムだ!
タイトル・・・
麻衣ちゃんももう考えるのに疲れたようです。
さて、
この後、お料理&ご飯タイムなのですが、
私もさすがに同じ流れを続けるのに飽きてきたので・・・
次は
麻衣(?)ちゃん視点で別のお話を・・・
ああ、安心してください。
誰も死にませんし誰も苦しみません・・・
単に、
これまでの聖女様のお話について、
黙って聞いていられなくなったある人の「反撃」とでも言うのでしょうかね、
いよいよ「あの子」が物語に・・・