表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
548/748

第五百四十八話 弟くん登場

・・・そういえば、

リィナの耳って真っ白だったはず。


あ、どうしよう。

そうなると全身真っ白でアルビノっぽくなっちゃうな。

まぁいいや。

少し色ついてても許容範囲にしておいてください。

<視点 ケイジ>


リィナも意表を突かれたのかポカンとしてるな。

一方、聖女ミシェルネはリィナの反応など想定済みということなのだろう、

話を最後まで止めるつもりもないようだ。


 「さっきのお話の逆です。

 片や幼い子供のあなたは、奴隷としてとても辛い過去があったんだと思います。

 それに比べあなたのご両親は、それなりに裕福な貴族に買われ、奴隷と言えども三食昼寝デザート付きの安定した生活を送っていたとしたらどうでしょう?

 そんなのほほんと暮らしていたご両親に、リィナちゃんは感動の再会をしたいと思いますか?」


あ、

な、なんか話の方向性が見えてきたぞ。

もし一連の話の中で、

この最後の話が事実だとしたら・・・


そこへあの侯爵令嬢の奇妙な反応・・・。

まぁ昼寝とデザートは例えばの話なんだろうけども。


 「ああ~、そ、そういう話かあ~、

 うーん、そうだなあ、そりゃ思うところがないでもないけど・・・

 それなりに酷い目に遭わないで暮らしてこれたってことなんでしょ?

 そりゃやっぱり良かったって言っていいと思うよ。

 うん、えっと、あたしの両親は無事に生きて・・・いたんだね?」


リィナの顔が明るくなった。

まだ話を自分の中でうまく消化し切れてはないのかもしれない。

けれど、誰が聞いたってこれはいい話だ。

この後・・・間違いなく。


 「はい、生きていらっしゃいます。

 では最後に、

 あっ、最後が二つになっちゃいましたね、

 リィナちゃんはご家族があなたに会いたいと言ったら、あなたは会ってくれますか?」


 「あ、う、うん、なんか緊張するけど・・・

 え? あ、も、もしかしてここに連れてきているの!?」


なんだって?

いや、だが、ここまで焦らしているんだ。

その可能性は十分にある。


 「はい、皆さん揃っていらっしゃいます。

 もちろんご両親はリィナさんに会いたいとおっしゃってます。

 後ろの部屋に声を掛ければすぐに出てきてくれることになっています。」


なんてこった!!

そんなもん、今回の会談で真っ先に話すべきことだろがよ!

・・・い、いや、事によったらリィナが両親を恨んでいる可能性を考えていのだろう。

そうなったら慎重にならざるを得ないか・・・。


あ、あれ、

待てよ?

今、皆さん、って言ったか?

両親二人だけなら・・・皆さんとは、言わないよな?



 「じゃ、じゃあせっかくだし、う、うわあ緊張する・・・。」


そこへ護衛騎士が主人のミシェルネに声を掛けた。


 「あ、あのミシェルネ様、

 いきなりだとびっくりされると思うので、先にリィドから・・・。」


ん?

リィド?


 「あ、そうですね、

 ていうか、後からだと感動的な輪の中に入っていけないでしょ、

 あの子、人見知り激しいみたいだから。

 じゃあ、ツェルちゃん、

 リィド君、先に呼んでくれる?」



待て?

リィナの両親の話をしていたんだよな?

あの子?

人見知り?


護衛騎士のツェルヘルミアが後ろの部屋の誰かに優しく声を掛ける。

 「リィド、いらっしゃい?

 あなたのお姉ちゃんに紹介するから。

 ほら、昨日話したでしょ?

 もう、そんなビクビクしないで大丈夫ですよ。」


お姉ちゃんっ!?


オレはみんなと視線を交わす。

ていうか、みんなオレと似たり寄ったりの反応するしかないだろう。

もちろんこの場の主役はリィナだ。

まだ何が何だか分かってないのは彼女も一緒なんだろうが、その顔が綻びかけているのは間違いない。



 「あ、来ました来ました。」


場の流れは完全にミシェルネが仕切っている。

どこからどこまで成り行きをコントロールしているんだ。

状況を把握する能力というべきか、人を使う能力というべきか、

この歳で大勢の人間を動かすことに、何の不備も不慣れな様子も見せない。

いったいどんな生活を送っていればこんな子供に育つんだ。


そして





入ってきたのは

ツェルヘルミアと・・・


いや、ツェルヘルミア戻って来ただけ?

じゃないな。


よく見るとツェルヘルミアの太ももに小さいのが何かくっついてる。


長い白い二つの耳が隠れてないけどな。


ツェルヘルミアの健康そうな太ももに細い腕が巻き付いている。

えーと、絶対領域って言うんだっけか?


そしてぴょこぴょこと、

太ももの隙間だったり外側から小さな頭がチラチラ見え隠れする。


男だったらうらやまけしからんと、血の涙を流すところだが、見た感じアレはミシェルネより幼いだろう。


ていうか、

これ・・・こいつ。


 「ほら、リィド、皆さんにご挨拶なさい。

 やり方は教えたでしょ。

 あなたの真正面にいるのがあなたのお姉ちゃんですよ?」



お姉ちゃん。

兎獣人の子供。

名前はリィド。


うん、誰がどう見てもリィナの弟、って事になるのかな。



うわあ。

リィナがどんな反応するかと思ったらフリーズしてやがる。


そりゃそうだろうな。

感動するのかどうかはともかく、生き別れになった両親と再会するのかと思ったら、

本人が知らないうちに弟が出来ていたらしい。


前情報も何もなく。


そりゃどんな反応していいか、わからんよな。



 「え、え、と、ツェル様のお世話をさせていただいてるリィド、です。

 よ、よろしくお願いします・・・。」


 「まあ、リィド!

 とてもよく出来ましたわ!!」


どう見てもよく出来た挨拶には見えない。

しかもまだ太ももにしがみ付いたままだぞ?

なんか侯爵令嬢ツェルヘルミア・・・

彼女もオレらを相手にした時とかなり態度が違う。

こっちがこの女性の素なのだろうか。


それに対してリィナは・・・


おい、リィナ!?

まだフリーズしてやがる!!


 「リィナさん、リィナさん!」


麻衣さんの声掛けでリィナもハッと我に返った。


 「あ、あ、ああ、あ、あた、あたしがお、お姉ちゃんのリィナ? だ!」


ダメだ、しばらくリィナは使い物にならない。

まさかこんな意表を突いた攻撃を喰らうとは。


ミシェルネの方も流石に見かねているようだ。

混乱と石化の状態異常を起こしたリィナに呆れたのか、

諦めたかのようにため息をつく。


 「やっぱり紹介する順番間違えたのかしら・・・。

 でも時間引き延ばしても仕方ないですね。

 じゃあ、ツェルちゃん続いて・・・。」


 「あ、あの・・・。」


そこへ場の流れをぶった斬るように、

護衛騎士の侯爵令嬢が手を挙げた。

何か想定外のことでもあったのか?


 「ツェルちゃん?

 例の話をするの?

 あなたは何も悪くないと思いますよ?」


例の話?

あ、そう言えばさっき、

リィナの両親は貴族に買われたって・・・


 「い、いえ、リィナさん、

 ご家族の再会を前に・・・私に謝罪する機会を与えてください・・・。」


やっぱり、なのか。


 「え?

 謝罪って・・・あたしに?」


お、どうやらリィナも再起動できたか。


 「そ、その、リィナさんのご両親を奴隷市場で購入したのは・・・こ、この私なのです・・・。」


 「え、そ、それって侯爵家のツェルヘルミア様が?」


 「はい、先に言い訳からさせて下さい。

 当時の私は、今ここにいるリィドよりも幼い歳で、

 獣人や奴隷という存在に何の疑問も抱いておりませんでした。

 奴隷市場で寄り添うように怯えていたあなたのご両親を見て、その場で父に二人を買うようにねだってしまいまして・・・。

 今では私を豚貴族に嫁入りさせようと企んでいる父ではありますが、当時は私の我儘を何でも聞いてくれる父親だったのもあって、即決で購入してしまい・・・。」


豚貴族に嫁入り?

なんか・・・貴族の子女も大変なんだな。

けれど結果的に彼女がリィナの両親を購入した事で、オリオンバートという侯爵家で二人は庇護される事になったわけか。


 「あ、で、でもツェルヘルミア様は、あたしの両親が生きていける場を作ってくれたって事なんだよね?

 な、ならそれこそ、あたしがお礼を言うべきであって、ツェルヘルミア様は何も悪くないじゃない、ですか・・・。」


 「そ、そう言っていただけると・・・

 も、もう二人とも真面目に働いているので、奴隷の身分からは解放しています。

 そうしたらいつの間にか、このリィドも生まれてきて・・・。

 とはいえ、他に身元保証もないので侯爵家から出ていっても苦労はするとは思いますが、

 今回、私を聖女ミシェルネ様が召し上げる形にされたので、父の許可を得て私たちの身の回りの世話をする名目でネミアまで連れてきていたのです。

 そうしたら、邪龍討伐の冒険者のメンバーの中に、雷を操る剣を持つ兎獣人奴隷剣士リィナ様のお名前が聞こえてきて・・・。」



それでリィナのことを知ったのか。

そうだよな、

たかだか冒険者の名前なんて貴族が興味など持つわけもない。

それは金枝教教会も一緒だったろう。

さらに言うと、勇者の称号はオレについていると周囲に勘違いされてたしな。


邪龍討伐参加という大きな話が出て、初めてリィナの名前が広まったわけか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ