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第五百四十五話 聖女の恨み

ぶっくま、ありがとうございます!


あと前回もお礼言い忘れました、前回分もぶっくまありがとうございます!

<視点 ケイジ>


 「お待たせしましたでしょうか。

 ではお話の続きをさせていただきますね?」



 「そ、その前に一ついいだろうか。」


オレは意を決して発言した。

既にこの段階で聖女の眉間に皺が寄っている。

いくらなんでもこのままずっとこんな調子で続けられたら堪らない。

誤解があるのだとしたら早いうちに解いておきたいと思うのは当然だろう。


 「・・・なんでしょうか、ケイジ様。」


すげぇ、すげぇよ、

どうしたら12歳の女の子がこんな氷のような冷たい圧力を出すことが出来るんだよ・・・。


 「あ、あのオレは今日初めて聖女様に会ったん筈なんだが・・・。」


 「はい? 今日、初めて?」


え?

今の聞き直しってどういうことだ?

まさかまたオデムに化けられてたとかそんなオチじゃないよな?


 「そ、そうですよ。

 オレはネミアに行ったこともないし、

 聖女様ほどの女の子に会って忘れるはずもない・・・。」


 「ああ、ええ、そうでしょうね、

 わたしも初めてケイジ様に会いました。」


オデム変身説は撃沈。

ならなんでだよ、ちくしょう。


 「なのに、なんでオレをそんなに睨むんですか・・・!

 オレはあなたに恨まれるような覚えはない!」


 「・・・・・・」


うわ、重い。

なんというプレッシャーなんだ・・・。


これが、聖女の・・・。


む?

護衛騎士の女性が直立の姿勢を解いた?


 「ミシェルネ様、

 私があの者を始末して参りましょうか?

 17回くらい連続で。」


侯爵令嬢がなんて物騒なセリフを吐く!?

ていうか、なんでそんな執拗に始末されないとならないんだ。


 「・・・ツェルちゃん、ありがとう。

 でも大丈夫、あなたの手を汚すまでも有りません。

 そうですね、確かにケイジ様にはなんの覚えもないのでしょうね・・・。」


え、待って。

それって



 「ケイジ様、確かにケイジ様のおっしゃる通り、大変失礼なことでした。

 ごめんなさい、先程もでしたが感情を抑える事ができませんでした。」


 「い、いや、謝ってもらうより、オレとしたら訳を話して欲しい。

 もしかしてオレが全く意図せずに君に迷惑をかけていたというなら、こちらこそ謝ることだってできるんだから・・・!」


 「いえ、わたしが至らないんです。

 記憶もない人間に恨みをぶつけたって仕方がないのですから。」


恨み?

恨みだって!?


 「お願いだ!

 オレが何かしたなら教えてくれ!!

 自分が知らないうちに罪を犯していたなんてそのままになんか出来ない!」


 「それは・・・

 ただこれはわたしの称号なのか能力のせいなのか、他人に上手く説明できなくて・・・。」


さっき司教もそんなこと言ってたな。


 「こちらの麻衣さんには、未来視とサイコメトリー? そんな能力があるという。

 それに近い能力ですか?」


オレは一度麻衣さんの顔を窺ってから質問した。

麻衣さんも頷いてくれた。

問題はないだろう。

どの道麻衣さんはもうすぐ元の世界に戻るしな。


 「ああ~、それとも違うかなあ~。

 感覚としたら・・・

 あの、皆さん、眠るときに夢を見ますよね?

 夢を見てる時って目の前に一つの情景しか浮かんでいないのに、

 頭の中にその舞台設定とか背景がわかってる時ってありません?

 そんな感じなんですよね・・・。」


ん・・・

あ、ああ、なるほど。

た、確かに夢ってそういうことあるけども。


 「じゃ、じゃあ、聖女様は、今日初めてオレを見て、その時にいきなりオレへの恨みだか憎しみだか浮かんできたっていうのか!?」


 「はい、大筋でまちがってません。」


ま、間違ってないって

そ、そんな・・・。

それじゃ訳もわからない話じゃないか。


 「あ、それ、もしかして。」

 「麻衣さん、何か気付いたのか?」


 「もしかしてですけど、

 世界樹の女神様配下の、ラプラスさんや布袋さんのユニークスキルに近いんじゃないですか?

 あの人たちのスキルって、『異世界の知識』と『異世界の記憶』でしたっけ?」


そういや、いつだったか、カラドックが元の世界の音楽を聴かせた時に、聞いたことないのに知ってる曲ってのは不思議な感覚だって言ってたっけか。


 「へぇ、そんな方々がいらっしゃるんですね?

 直接聞いてみないと分かりませんけど、

 もしかしたら私の能力に近いのかもしれません。」


あれ、この話の流れって、もしかして。

麻衣さん、何か狙ってないか?


 「あの、ミシェルネさん、

 あたしも一つ聞いてもいいですか?」


やっぱり麻衣さん、狙ってるな。

その質問て、まさか。


 「はい、どうぞ、構いませんよ?」


 「ミシェルネさんのその感覚って、

 あたしたちみたいな異世界の情報を元にしてる、なんて事はありますか?」


やっぱり麻衣さん、斬り込んできたあ!!

その話題出すと、オレの出自が・・・

いや、麻衣さん、まさか、聖女が異世界からの転生者だとでも思っているのか!?


 「うう~ん・・・。」


え、な、悩んでる悩んでいるぞ、聖女!!

その可能性があるのか!?


 「聞かれたことについて、そのまま答えるならば・・・。」


答えるならば!?


 「異世界の情報ですら、わたしにはわかってしまうのかもしれません。」


ま、まさか本当に!?


 「でも、本当にわかることは限定的で、知りたいものが知れるってわけじゃないんですよ。」


 「あ、それはあたしの未来視と同じですね。」


 「ではわたしの能力は麻衣さんのものにちかいのかもしれませんね。

 ・・・それより麻衣さん、もっと他に聞きたい事があるのでは?」


聖女ミシェルネ・・・

これだけのやり取りでそれに気付くのか。


 「え!

 い、いや、まあ、それは・・・。」


 「もしわたしのことを疑ってるなら今のうちに明らかにしちゃいましょう。

 わたしは転生者でも転移者でもありませんよ。」


断言したか。


ひょっとしたら・・・と思ったが、それはないという事で確定か。

オレが前世でやらかした事の犠牲者の可能性も考えていたんだが。


 「そ、そうなんだ。

 じゃ、じゃあ、ミシェルネさんがさっき言ってたケイジさんへの恨みって、

 具体的な内容はなにもわからないってことでいいんですか?」


 「・・・・・・。」


え、何その無言。


 「わたしよりも・・・。」


え、え?


 「ケイジ様には本当に記憶はないんですか?」


え、それは、どういう・・・


 「わたしには、ケイジ様は知っている筈だという確信があるのですが・・・。」


 「そ、そんな、でもオレは君には・・・」


 「ミ、ミシェルネさん、ちょっと待って貰えますか!?」


麻衣さん?


 「ケイジさんに何かあるにしても、この人、今は混乱しています!

 ケイジさんが何かやらかして、謝らせるにしても今は勘弁してあげてくれませんか!?

 そ、そのミシェルネさんを疑うわけじゃないんですけど・・・!」


麻衣さん、君はなんて・・・


 「・・・ええ、いいですよ。

 そうですね、異世界に帰る麻衣さんとは違って、ケイジ様にはまだまだ時間がありますものね。

 ただケイジ様。」


 「あ、な、なんでしょう。」


 「間違ってもわたしに危害を加えようとしないでくださいね?

 ツェルちゃんはわたしを害そうとする者を決して許しませんので。」



な、なんでそんな突飛な考えになるんだ。

そして護衛騎士の侯爵令嬢・・・。

ミシェルネの言葉を証明するかのように、オレに対して肉食獣のような・・・或いは猛禽類のような目で睨みつけて・・・。



 「あ。」


その言葉を発したのは麻衣さんだ。

オレは当然、周りの皆の視線が麻衣さんに集中する。


 「麻衣さん、何か分かったのか?」


 「あ、い、いえ、もしかしてっていうより、ただ似てるなって感じただけなんですけど・・・。」


 「似てる? 誰が誰に?」


 「い、いえ、人が似てるっていうんじゃなくて、反応の仕方が似てるのかなって・・・。」


 「反応の仕方?」


 「ケイジさん、魔人ベアトリチェさんとマルゴット女王のやり取りを覚えてませんか?」


女王の?

どのやり取りだ?


 「マルゴット女王の魔眼の能力なのかどうか分かりませんけど、

 あの時、女王はベアトリチェさんを見て、

 まるで親の仇に会ったような感覚って言ってませんでした?」


む?

た、確かに・・・

だけど、今は・・・




いや、待てよ?

あの時、ベアトリチェはオレの前世とは別の世界で、

オレたちの・・・いや、

アーサーさんとマーガレットさんの父親を自殺に追い込んだって・・・


もちろんこの世界のマルゴット女王には全く関係ない話の筈だが、

それでもマルゴット女王が、理由もわからずベアトリチェに憎しみを感じたというのなら・・・



そして今、オレの目の前にいる聖女ミシェルネは、マルゴット女王をも越える神眼の持ち主。


この両者が同じ事象だと言うのなら、

聖女ミシェルネがオレに恨みを持っていると言うのは・・・


オレは今の思考の延長で、そのまま自然に口を開けた。


 「ミ・・・ミシェルネ様は、

 こことは違う他の世界で、オレに・・・」



 

麻衣

「その先は言っちゃダメーっ!!」

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