第五百三十九話 聖女入場
ミシェルのセリフで一人称の時は、「わたし」って統一しようと思っていた筈だったのに、
読み返したら前回の大司教さんとのやり取りが全て「私」になっていたので、修正しておきました。
そしてなんとか画像は貼り付けましたが、背景までは手が回りませんでした。
そしてもちろん、衣装は自分で作るの大変なのでVRoidの公式アイテムの色を変えただけです。
気にしないでくれると嬉しいです。
あとタイトルが「聖 女湯入」に見えた人は何か精神が病んでるぞ!
<視点 ケイジ>
・・・ここんとこ、ずっとオレのモノローグだよな?
いいのか、それで?
カラドックや麻衣さんのほうかいいんじゃないのか?
カラドックはニコニコしながら両手を上げて遠慮してるし、
麻衣さんは首を左右に激しく振って、全力でオレにどうぞときたもんだ。
まあ、パーティーリーダーだし別に構わないんだけどな。
では、話を進めよう。
ついに運命の日がやってきた。
聖女との会見である。
いや、魔人と対峙したり邪龍と戦ってきたことに比べればぬるいもんなんだけどな。
しかもこれから会う相手は12歳の女の子だという。
もっとも、オレが心配しなきゃならんのは、オレの顔見て相手の子が泣き出さないかどうかだけだと思うんだ。
邪龍を倒した冒険者パーティーのリーダーが、12歳の聖女を怖がらせて泣かせたなんて醜聞が拡まったら、話をどう収拾していいか全く分からないもんな。
それ以前に、結構オレの精神にもダメージ入るんだがな。
子供に泣かれるのは。
ここはホワイトパレスの迎賓用の建物。
その中でも会議やパーティーどちらにも使える「水鳥の間」を用意された。
城の宴席担当はこちらにも派遣されている。
さすがに今日この場にニムエさんは居ない。
会場にはオレたち一行と、聖女の一団の参加だけだそうだが、飲み物を配ってくれたり雑用などは彼らがやってくれる。
周りには警備兵もいる。
もちろん彼らは会場内には配置されてはいない。
それと女王のことだから、この場にも首を出してくるかとおもったが、政務が山のように溜まっているらしい。
・・・無理ないよな。
まあ、今回ここで話す内容は後で女王に報告することになっている。
当然、会場係の中にも女王に報告する暗部の人間が配置されてる筈だ。
そんな抜かりのある人間じゃないわな、あの女王。
ここの部屋はオレも初めて使うが、風通しがよく、
天井が吹き抜けになっているので天窓から日光も入るし、
乳白色のアラバスターの壁に青系の染料で、壁に抽象的な図形が描かれて、清涼感溢れる部屋となっている。
ただし冬は寒い。
なので、今は内庭に面している廊下に篝火を焚いて、ぷちファイアーウォールを再現しているのだ。
まあ、今日は風がそんなにないからそれくらいでいいだろう。
これ以上寒くなったら魔道具の出番となる。
そしてこの水鳥の間。
出入り口は何ヶ所か有り、
ちょうど今回のオレたちみたいな、立場の違う者が相対して入室できるように、部屋の正反対の位置に扉がある。
その先にはそれぞれ控室もあり・・・
・・・お見合いにも使えそうだな、
横には小さな厨房まであるものな。
会場係はそこでお茶を淹れているわけだ。
今は正午少し前。
時間的には会談後、昼食なわけだが、
聖女達側は敢えてこの時間を指定したのだろうか。
オレたちと食事を共にすることまで計算しているのなら、やはり友好的な人間かと思うのだが。
「そろそろ時間だね。」
カラドックがオレたちを呼ぶ。
この場合、ホスト側はどちらになるんだ?
それと立場はどちらが上になるんだ?
なんとなく向こうがゲスト側だと思うんだが、
身分的には向こうのほうが偉そうなんだよなあ。
向こうを待たして入るほどオレは偉くなったつもりもないので先に入るか。
む、会場係もオレたちに先に入るように促している。
なら指示に従おう。
「いや、多分これは女王の配慮だろうね。」
「む? カラドック、配慮というと?」
「先に私たちが入っていたほうが、
後から入場する聖女たちを観察し易いだろ?」
なるほど、そう考えてくれたのか。
麻衣さんは緊張してるようだな。
麻衣さんから見ても相手は年下の女の子なんだし、それほど気にしなくても良さそうなんだが。
「あ、いえ、
それはそうなんですけどね、
まだやっぱりこのまま、タダで終わるわけないのかなって疑念が消えなくてですね・・・。」
ああ、その事か。
何かどんでん返し的な事が起きるかもしれないって言ってたもんな。
それに麻衣さんとは別件だが、オレもこの先油断はしないと決めている。
状況的に新しく登場する人物に何かされるとは思わないんだが、警戒だけはしておくか。
部屋の中は芳しい花の香りでいっぱいだった。
ふかふかの絨毯は濃紺。
配色は壁の色に合わせているのかもしれない。
テーブルは「ロ」の字で真ん中の空間にはオレたちの会談の邪魔にならないよう、左右の端に見目麗しい花々が生けてある。
こちら側に並んだ椅子の中央にオレとリィナ。
オレの脇に麻衣さん、リィナの隣にカラドック、そして席の両端にアガサとタバサだ。
相対するテーブルの先には二つの席。
まずテーブルの中央の位置に一脚。
もう一脚はやや端に寄せられている。
つまり実質、相手は聖女だけ、ということなのか?
「聖女様方、ご入場です。」
会場係がついにそれを告げる。
12歳の女の子か。
まだ小さいだろうに、と思っていたら、
扉が開いて入ってきたのは長身の中年男。
あっ、金枝教のローブを着てるってことはお目付け役の司教かというヤツか。
細身でメガネの研究者タイプに見える。
そしてその次に
赤い髪・・・
いや、赤く輝いた髪の・・・
まさに、
人形かと思うような・・・
リアルドールのメリーさんとはまた違う・・・
どちらかというと子供がお人形さん遊びで使うような、
そんな人形のような少女が現れた。
瞳の色は浅い朱色・・・。
顔立ちが幼く見えるせいか、どことなく元の世界の日本人ぽくも見える気がしたが、
髪と瞳の色が日本人ではあり得ないと主張している。
髪型は麻衣さんに近い印象だ。
もっとも麻衣さんが裾で長さ揃えているのに対し、
この聖女は髪の裾を不揃いに刈っている。
確か麻衣さんが16歳、
そしてこの子が12歳だというなら、顔つきも体付きも近いものになるだろう。
そしてその後に現れたのは騎士服に身を包んだ長身の女性。
ハニーブロンドの髪と、
・・・こちらも珍しいな、
柘榴色とでもいうのか、深い赤系統の瞳。
一見して騎士というより貴族の佇まいを感じる女性だが・・・めちゃくちゃ美人だな。
この騎士と聖女、二人セットでいるだけで男どもの視線・・・
いや、女性の視線までも独占してしまうのではないだろうか。
いや、だがこっちもタバサとアガサが・・・
おい、待て。
お前ら二人ともたじろいでないか?
それ程のものだと言うのか!?
聖女はオレたちに視線を巡らせ、
ペコリと頭を下げるとゆっくりと優雅な動作で椅子に座った。
続いて脇の席に金枝教の司教が。
護衛の女性騎士は壁に立つ。
そういや、マルゴット女王が護衛の女性もいくつか称号を持っているようだと言っていたな。
聖女の背後を任されているという事は、
女だてらに腕のある騎士なのかもしれない。
ん?
サラリーマンなら相手が入ってきた段階で立てよって?
悪いな、オレはサラリーマンなんて知らないんだ。
まあこの後、挨拶させてもらうさ。
では、
いよいよ聖女との会談だな。
いったい彼女は、何の目的でこんな急いでオレたちに会おうとしたのか。
部屋に入ってきた時の表情からは、何も読み取る事は出来なかった。
果たしてどんな内容になるのだろう。