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第五百三十七話 立食パーティー

<視点 ケイジ>


そのままオレたちは立食形式の昼食会に雪崩れ込んだ。


これはオレたちを労うための食事会ではない。

式典に参加した来賓たちがオレたちと接点を持つために開かれるものだ。


もちろんマルゴット女王がここでも主催者となり場を仕切る。


お?

それでも司会はコンラッドの役目か。

この国の次期跡取りだものな。

国の内外に顔を売っておかねばならないのだろう。


基本、オレたちは置物だ。

もちろん食事や飲み物のフォローや後片付けは、城のメイドたちが全て手配してくれる。


 「ああ、ニムエさん、

 前回は魔人の本拠地までお疲れ様だったね、

 お陰でなんとか邪龍を討伐できたよ。」


オレの飲み物を片付けてくれたのは、見覚えある顔のニムエさんだ。

本来、こんな席でメイド相手に私用の会話をする必要ないんだが、あの場では命の危険まであったからな。

メイドとはいえ、労いの声はかけてもバチは当たらないだろう。


 「・・・まあ、ケイジ様、

 こんな栄えあるパーティーで私などに・・・」


あれ?

気のせいか反応悪いな?

別にオレ嫌われるようなことした覚えはないんだが。



オレが一瞬フリーズしたのを女王は目敏く気付いたようだ。

 「すまぬな、ケイジ、

 ニムエを責めんでやってくれ。

 昨晩からちょっとの仮眠しか取れておらぬでな、

 本来ニムエは会場担当ではなかった筈なのじゃが、どうしてもメイドの数が足りなくての、

 急遽こちらの係にまわされて少々拗ねておるのじゃ。」


 「じょっ、女王!

 そんな事はございませんっ!

 勇者様方のお世話をできることは心の底から光栄なことと存じておりますっ!!」


おお、どうやら図星だったらしい。

まあ、オレがとやかく言える事じゃないよな。


 「む、無理はしないようにな・・・。」


こんな月並みなセリフしか出ねーよ。


 「う、うう、ケイジ様、

 ありがとうございます・・・。」


ん?

なんか気のせいか不穏な空気を感じる?


痛っ!?

突然耳を引っ張られた!!

ってリィナか!!


 「ニムエさん、別にケイジにお礼なんか言う必要ないって。

 最近こいつ調子乗ってるっぽいから、ちょっとどこかで痛い目遭った方がいいぐらいだからさ。」


リィナ!

お前なんて事言うんだあ!!

そ、そりゃ、邪龍の討伐してリィナの件も大丈夫そうだし、カラドックも満足そうだし、いいことばかりだけどさ!?


 「ケイジよ、

 別に妾は重婚を咎めはせぬが、せめてリィナ殿と正式に祝言をあげてから、次の女を探すべきではないのか?」


この女王、火に油を注ぐつもりか!!


 「やめてください!

 マルゴット女王!!

 ホラ!?

 リィナの表情がマジになってるぅ!!」


 「・・・ケイジ様の第二夫人・・・

 え、いえ、でも、それは・・・。」


ニムエさん?

それはどんな反応?

獣人なんか嫌だけど女王の甥なら結構な身分かもしれないとか、そんな打算?


そして、リィナ、

頼むからその般若みたいな顔やめて?

カラドックが安心して元の世界に戻れなくなるからな?


 「男の人っていつもそうですねっ・・・!」


麻衣さん、どこから現れたっ!?

さっきまでメリーさんのところにいなかった!?


ていうか、今の話の流れってオレ何か悪い事したかっ!?


あれ、ニムエさん?


 「・・・麻衣様、今のセリフ、今度私も使わせてもらっても構いませんでしょうか?」


 「え? べ、別に構いませんけど?

 あたしが考えたセリフってわけでもないし?

 ていうか、どんなシチュエーションで使うつもりなんですかっ?

 ゾンビなんか溢れさせちゃダメですよ!?」


麻衣さん、それは演劇か映画か何かのネタだったとでもいうのか?


なんでゾンビが溢れる話になるのか分からなかったが、話はうまく逸れたっ!

今のうちに別の場所に逃げよう。



そう言えばアガサはギルドマスターのところにいるな。

あいつ、ダークエルフの街に冒険者ギルドを作るような事を言っていたが、本気で取り組むのだろうか。


お?

ギルドマスター、ヴァルトバイスは機嫌良さそうだな。


 「そうか!

 アガサ殿は冒険者ギルドの仕事に興味があるのか!

 有り難い!!

 ・・・そうだ!

 トライバルのダリアンテ領のギルドマスターはエルフの女性だった筈だ。

 良かったら紹介状を書くので、あそこで勉強してみるのも一つの手だと思う。

 もちろん私のところで一から始めるのも歓迎だがな!」


なお、来週の本番式典での話になるが、

オレたち「蒼い狼」はSランクパーティーに昇格出来ることになっている。


・・・形式だけな。


実際は、

異世界組は自分達の世界に帰るし、

アガサもタバサも自分達の帰る場所がある。

ヨルもちゃんとパパのところに戻るんだぞ。


そうなるとオレはまたリィナと二人きりだ。


それでも二人とも高いレベルと獣人の索敵能力、

天叢雲剣にベリアルの剣という特殊武器を持っている。


Aランクはどうにかギリでこなせるかな、というレベルになるだろう。

それで十分だと思う。


まあ、アガサがしばらく冒険者ギルドの仕事をしたいと言うなら付き合ってもいいだろう。

魔術士一人いるだけで全然違うしな。


タバサの所にはナイトポーリィ教皇と、

金枝教関係者が集まってるな。

タバサもひいおじいちゃんに抱きついたりしてるせいか、教皇の顔が崩れまくっている。

そりゃ自分の曾孫が、全世界の人々に賞賛されるような行為をした後に自分に抱きついて来て、毅然とした態度を貫ける男など一人としているわけがない。

うん、男の人ってみんなそうだ。

そうに決まってる。


一方、ヨルとメリーさんのいる所に集まっている勇敢な者たちもいるようだ。

いや、カラドックにベディベールとイゾルテもいるか。


それと・・・どこかで見たことあるなと思ったら、

護衛騎士のブレモアと・・・妖精ラウネまでいるじゃねーか!!

こんな席に魔物出席させて大丈夫なのか、女王!?


 「おお、ケイジ様!!」


そのブレモアに声をかけられた。

ていうか、一介の騎士がこの場によく出られたな?

いや、もちろんオレは全く構わないんだが。


 「いえ、一応私はラウネの世話をその後も申しつかって・・・いえ、違いますよ!?

 あれ以来、私はラウネに精を提供しておりません!!

 おりませんが、ラウネの食事の手配などを今もなお任されたままで・・・

 前回までの扱いよりはマシですが、

 果たして私は騎士としての本分を全うしてるといえるのでしょうか・・・。」


迷走してるな、ブレモアよ。

まあ、そこはオレも立ち入れる領域ではない。

騎士団長ブレオボリスと上手く相談して欲しい。


ヨルは相変わらずカラドックにベッタリだが、

周辺の国々の大使らしき者達が、うまくカラドックやベディベールから情報引き出そうと躍起になってるようだ。


悪いがメリーさんもヨルも、

それぞれ別の意味で口が固いからな。

少なくともあの二人とは満足なコミュニケーションは取れないだろう。

ああ、メリーさんは物理的にも口が硬いっけな。


そうそう、

オレたちを運んでくれたラプラスだが、あいつは式典には参加せずとも、こっちのパーティーにはちゃっかり参加している。

もちろん女王やコンラッドに目立つ様な紹介はされていない。

それどころか目の部分を・・・なんか蝶々のようなマスクで隠して優雅にワインを飲んでいやがる。

様になると言えばどこまでも様になっているんだが・・・。

他の来賓も話しかけづらそうにしているじゃないか。


まぁ、奴に関してはこの後、報奨金をもらって世界樹の女神の所に帰る手筈になっている。

今のうちにオレも挨拶くらいしておくか。

またどこで縁があるかもわからないしな。



まあ、そんなこんなで平和に終わった。

ちょっとオレだけ身の危険を感じたくらいで。


ところが、

やはり麻衣さんの予感は正しかったのだろうと思う。



昼食会がお開きになった後、

オレたちはマルゴット女王の元へ集められ、

その時、いつになく女王の表情が固いことに違和感を覚えたのだ。


 「実はの・・・」


何があったというのか。

オレたちは女王の言葉の続きを待つ。


 「急な話であったのと、本人の固辞もあったので、今回の式典や昼食会の参加は見送らせたのじゃが・・・。」


なんだ?

もったいぶるな、女王にしては。


 「聖教国ネミアより聖女ミシェルネ殿がこちらの国にいらしておる。

 勇者の皆と是非とも会談をしたいとな。」


 「聖女!?

 ネミアってことは金枝教か!

 金枝教に聖女がいたのか!?」


勇者とともに、その称号が与えられるのはかなりのレアな筈だ。

数十年に一人現れるか否かと言う程の。


 「ごく最近、金枝教に認定されたそうじゃ。

 ただ、ミシェルネ殿はあくまでも聖女としてではなく、プライベートな立場で其方たちと会いたいということでな。

 皆の者には明日の正午にミシェルネ殿と会ってもらいたい。」


 「・・・女王がその聖女に会えというなら断るつもりはないが・・・

 それもグリフィス公国と金枝教に深い繋がりを持たすためか?」


オレとしては大人の政治の世界に巻き込まれたくはないが、それほど子供みたいな我儘を言うつもりもない。


ところがマルゴット女王は全く違うことを考えていたようだ。


 「ケイジの発言を否定したりはせぬ。

 じゃが今回は、・・・全く別の理由じゃ。」


別の?

いったいそれは?


 「何かあるのなら教えてくれ、女王。

 こっちの心構えが変わってくる。」


後ろで麻衣さんやカラドックも女王の本心を知りたいだろう。

ならオレが矢面に立たないとな。


 「・・・ふむ、自分で言って奇妙なことと思うのじゃがな・・・。」


女王も詳細は掴めないということか?

紅玉のような輝きの魔眼を持つ女王が?


 「聖女ミシェルネ殿は12歳の女の子なのじゃが・・・。」


若いなっ!!

若いっていうか、幼すぎねーか!?


 「この妾が・・・

 一目見てその者を敵にしたくないと思ったのは生まれて初めてじゃ・・・!」


マルゴット女王が!?

12歳の少女を?


敵に・・・したくないと思っただと!?

何もんだよ、そりゃあ!?

 

ついにここまで来た・・・。


挿絵(By みてみん)

そして彼女の登場に間に合わせることができたか?

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