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第五百三十二話 密やかな帰還

ぶっくま、ありがとうございます!

<視点 ケイジ>


ラプラスが御する馬無し馬車が空を飛ぶ。

急いで飛べば今日中にグリフィス公国に辿りつく事は出来るだろう。


けれど、既に邪龍を倒した今、急ぐ必要は何処にもない。

オレ達は二手に分かれて仮眠を取りながら、ゆったりとした空旅だ。


途中、ラプラス本人にも休憩させる必要がある為、途中の小島でも一休み。

メリーさんは眠る必要が全く無い為、

常に周りの監視をしてもらっている。


もちろんメリーさんだけに全てを任せるわけにもいかないからな。

魔力感知に優れた麻衣さんとタバサ、

視力或いは聴力感知を得意とするオレとリィナでそれぞれ交代しながらの帰り道だ。


・・・まあ、呆れるくらい何もなかったよ。


麻衣さんにも定期的に、

危険感知に反応はないか聞いてみたんだが、

相変わらず何の危機反応もないとのこと。


 「それでもまだ何か起きそうな気がする?」


 「いやあ、この分だと生命的な危機はホントになくて・・・」


ん?

何か含んだ喋り方だな。


 「もしかしたら、ただの面倒ごとが待ち受けてるだけなのかもしれません。」


 「め、面倒ごと!?」

なんだ、何か穏やかでなさそうな話だな!


すると麻衣さんはヒソヒソ話をしたいのか、

オレの耳に彼女の口を近づけてきた。

む・・・これは、麻衣さんの体sy


いや、何でもない!!


 「ケイジさん・・・いま」


急激なる殺意の昂まり!!

オレの命に絶大なる危険が迫る!!


 「ちょ、ちょっと待て!

 大丈夫!

 麻衣さんにそんな不埒な感情は覚えない!!」


 「い、いえ、あたしも油断してました・・・

 お風呂入ってませんものね、

 後でアガサさんにみんなで簡易シャワーかけてもらいましょう・・・。」


あ、そ、そっちか!

そうだよな、女の子なら自分の汗臭さとか気になるの当たり前だよな。

いや、オレが反応したのはそっちじゃなくて、女の子の、いいいいや、だから何でもない!!



ギロン!


あああ、麻衣さんの瞳がまた緑色に光った!!

面倒ごとってこの事じゃないよな?


 「・・・もう、今さらですからこのまま喋りますけど、あたしが今、一番の懸念を持っているのは、カラドックさんとヨルさんの件です。」


麻衣さんはそのままヒソヒソ話を敢行した。

良かった、

もう殺意は消してくれたようだ。

そしてうむ、なるほど。

それはオレも気にしていた。


カラドックは必ずこの二週間以内に元の世界に戻る事になる。


少なくともヨルにとってハッピーエンドは訪れない。


このまま二人が別れ・・・

いや、別れるも何も二人は付き合ってすらいないわけだが、

カラドックがヨルを連れて元の世界に戻る事もあり得ない。


それこそ未来が無茶苦茶になる。

メリーさんだって許しはしないだろう。


うむむ、修羅場しか想像できない。

ただの痴話喧嘩ってレベルなら大騒ぎする必要ないのにな。


本来ならこの話こそ、

オレが介入する義務もなさそうなんだが、

さんざん世話になったカラドックに精神的な負担を掛けさせたくはない。


いざとなったらオレがカラダを張ってでもヨルを止めないとならないのか・・・。


まあ、

問題といえば、・・・他ないよな?


 「え、いえ、ケイジさん、あの男の子は・・・」


え?

男の子?

ミュラ?

誰だそれ?

麻衣さん、何を言い出したんだ?

ああ、あのツンデレ魔王だろ?

いいよ、あいつの話は。

とりあえずミュラの件は異次元の彼方に置いておく。


 「まあ、ミュラ君の方はリィナさんがコントロールできそうだから、取り敢えずは気にしなくてもいいのかな?」


魔王を操る事のできる勇者って凄いよな。

だからあいつの事はどうでもいい。

それよりやはり、カラドックとヨルの方が心配なんだよ。


 「麻衣さん、心苦しいが、もし事態が大ごとになりそうなら、全部オレに投げてくれて構わないからな。

 カラドックにも麻衣さんにも、これ以上返せない恩を増やしてしまうのは心苦しいからな。」


 「あ、え、ええ、そう言っていただけると・・・。」


ん?

麻衣さんはオレのセリフに意表つかれたみたいだな。

いや、どっちかと言うと、オレセリフというより、麻衣さんは自分自身の言動に戸惑っているのか?


 「そ、そうですね、

 考えてみればあたしが抱え込む話じゃないですもんね。」


ああ、

本来麻衣さんは、他人のプライバシーに関与しない生き方をするって話だったもんな。

もう、誰もそんなセリフ信用してないけどな、

いい意味で。



それと、

グリフィス公国のマルゴット女王への報告だが、非公式というか非常識な話ではあるが、メリーさんが念話を試みたら無事に女王に繋がった。

邪龍討伐という大事件の結末。

どんな手法を取ろうが最速の報告をすべきという考え方は誰も否定しないだろう。

女王達だって事の成否を一刻も早く知りたいだろうしな。


もちろんそんな詳しく報告はできないので、

邪龍を無事に誰の犠牲もなく倒せた事、

明日の明朝、オレ達を送り出した時と逆の形で、城の正門から入城するとだけ伝えておいてくれたとのこと。

案の定、女王は舞い上がって喜んでくれていたそうだ。


なお本日中に、オレ達は城外の民間ホテルに泊まり、今夜のうちにカラドックから詳しい報告内容を記した書状をホワイトパレスに届ける事になっている。


まあ、今夜は女王たちもオレ達の出迎え準備で大騒ぎだろうな。

オレを獣人ということで見下していた年寄りの官僚たちを馬車馬のようにこき使ってやるといい。

確かバルファリスとかいう名前のヤツ覚えているぞ、

あのクソジジイ。


さて、どんな騒ぎになるだろうか。



後は特に報告することもないんだが。


宿泊したホテルではオレ達の出自を公表しないで、

ただの冒険者の一団として泊まったんだが、

ホテルの支配人にはバレバレだったらしい。


声を顰めて

 「失礼ですが『蒼い狼』の皆様では?」


と聞いてきたので、

 「多分、女王から大々的に発表されると思うから、今回は何も見なかった聞かなかったで宜しく頼むよ。」


とカラドックに答えてもらった。


まあ、邪龍の脅威がいなくなれば、スタンピードや訳の分からん虫どもの発生もなくなる筈だしな。


そういや、この辺りはタバサの魔石を使ったフォースフィールドの結界範囲外の筈だ。


 「そうだ、

 邪龍を倒したのは今朝方だが、

 それから奴の眷属の虫どもは湧いているか?」


 「おお!

 い、いえ! 今朝からなのでしたら、職員にもお客様の間にもそんな話もお怪我したとも聞いてません!

 良かった・・・

 鍵を掛けた客室の中で突然虫達が湧いたとあって対応に苦慮していたのです!!

 聖水は切らさぬようにしていたのですが、

 だんだん効果も薄くなってきておりまして・・・。

 これで、ようやく・・・!

 皆様方、ありがとうございます!!

 ささやかなお礼しかできませんが、宿のお代は結構でごさいます!!」


いいのか、それで。

多分だけど、しばらくオレ達は宮殿にやっかいになるだろうから、そんなに金を使う予定ないんだよな。

まあ、支払いはいらないというなら甘えるか。

浮いた金を宴会代に充てるとしよう。


どうせ明日も宴が始まるんだが、

今夜は前夜祭&祝勝祭。

ハメを外さない程度にみんなで労をねぎらいあうことになっている。


別にいいだろ、それくらい。


オレ達は国、いやこの世界全てを救った英雄と言われてもいいくらいなんだ。


・・・いや、みなまで言わなくてもいい。

・・・わかってる。

オレも身の程は弁えてるさ。


獣人とのハーフ、公族の私生児、麻衣さんの危惧、

それだけじゃない。

麻衣さんの話とは別にオレも引っかかっていることがある。


前世からの因縁。

運命。


やり過ごすことが出来るのか、

同じような運命が待ち受けているのか。

前世ではオレの直属の部下がやらかしてくれたが・・・。


それがはっきりするまでオレは一切油断しない。


さあ、

まずは明日だ。


 

話の中に出てきたバルファリスというお爺さんは、

カラドックがこの世界にやって来た時、

マルゴット女王に怒られてたお爺さんです。


え?

伏線?

やだなあ、

そんな事あるわけないじゃないですかあ(棒





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