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第五百三十一話 違和感

少し長めです。


いぬ

「姐さん・・・。」

うりぃ

「なんや、いぬ・・・。」

いぬ

「この物語って、もしかしてホラーだったんですか?」

うりぃ

「な、何を今さら・・・って気持ちはわかるけどな・・・?」


いぬ

「今回、コメントも後書きじゃなくて前の方に持ってきたのも・・・」

うりぃ

「ノーコメントっちゅうことやな。」

いぬ

「うわぁ・・・。」


うりぃ

「というわけで、次回はケイジはんたちがグリフィス公国に戻るとかからやな。」

いぬ

「オデムちゃん、どうなっちゃうんでしょうね・・・。」


うりぃ

「・・・それよりアフロスはんやろ。

どうなるんやろな・・・?」



<視点 ラプラス>


 「マスター!?

 どうかなさったのですかっ!?

 ご返事下さいっ!!」


メリー様の質問に答えられていたマスターとの念話が急に途絶えました。


・・・いえ、

私もマスターの眷属。

あの方の性格は存じております。

もうメリー様には用はないのでしょう。


私を通したメリー様の二回目の質問の後、

少し時間を置いて返答が返ってきたのはマスターが不快に感じておられたから。


今後もメリー様の質問が続くようなら、

私の方でうまく言いくるめてでも、メリー様とのやり取りを中止にしてもらう他ないかと考えていたのですが、

マスターの反応がまるで無くなるなどということは考えられません。


 「・・・どうしたの、ラプラス?

 私の質問に不都合でも?」


以前マスターは、ご自分とメリー様は似たもの同士と仰ってました。

意味はよくわかりますとも。

メリー様が心配しているのは、かつてご自分と縁があったという黒髪の少女の魂だけで、

マスター本人には大して興味も心配などもしておられぬのでしょう。


しかしこれはどういたしましょうかね?

マスターの身体や周辺に異常事態が起きたというのなら、私自身何を置いても優先しなければなりません。

しかし、いくら私といえどもこの地から世界樹の洞窟へは距離があり過ぎます。


それに、基本、我々のマスターに他人は極力近づけたくはありません。

それは邪龍討伐を果たした彼らであっても同じことです。


前回彼らをマスターの元へお連れしたのは、あくまでも麻衣様の能力をマスターが必要とされたから。


それがなければ、マスターからのお言葉を伝える必要があったにしても、念話を通して私を介せば良いだけのこと。


詰まるところ、邪龍討伐を果たし終えた今、もはや彼らをマスターの元へ連れて行く必要など何一つないのです。



・・・しかし我らだけで対処できぬ危機がマスターに訪れていたならば?


マスターの忠実なる僕は我々三人だけです。

そして現在私はこの地にあり、

スライムから特殊進化を果たしたオデムは正体不明の魔力波を浴びて元のスライムに戻ってしまっているとか。


残るマスターの護衛は布袋さんだけです。

・・・布袋さんは戦闘能力も魔力も、そんじょそこらの冒険者では歯が立たないほどの強さを持っていますが、

・・・少々抜けてるところもあるんですよねえ・・・。


布袋さんでもどうにも出来ないことが起きていたとしても、何の不思議もございません。


・・・ならば、

彼らを・・・ケイジ様たちにマスターを助けてもらうという選択肢を考慮すべきなのでしょうか?


もしそうなら、彼らを私の飛行馬車に乗せて一刻も早くマスターの元へ?



 「ラプラス会長、何かあったのか?」


いけません、

悩んでる間にケイジ様もやってこられました。


どうしますか?

彼らを信じて全てを打ち明けるべきでしょうか?


それとも・・・



 「い、いえ、実はみなさま、

 みなさまは邪龍との戦いとの真っ最中だったと思いますが、強大な魔力が各地に拡がっていたのはご存知ですか?」



嘘はやめておきましょう。

確かリィナ様が他人の嘘を看破できるとか。

ここは今この場で明かしても差し支えない話だけを・・・


 「強大な魔力?

 何の話?」


あれ?

多分皆さんご存知の筈だと思いましたが、

メリー様は全く知らない様子?


そちらはカラドック様に説明していただきました。

 「あっ、あの時メリーさんはまだ麻衣さんの巾着袋の中だっけね。

 邪龍を始末する間際、ヤツはアビスとか深淵とか言ってただろ?

 麻衣さんの話だと、この世界を作った者らしいんだけど、その深淵を麻衣さんが呼び覚ました時に、とんでもない魔力のエネルギーが発生してね。」


カラドック様、

今何かとんでもないことをサラッと言われませんでしたか?


この世界を作った者?

深淵?

それを麻衣様が呼び覚ました?


 「ああ、それで邪龍が・・・

 それにしても麻衣ったらほんと大胆なマネするのね。」


 「え、あ、いや、ま、まあ、そ、その・・・。」



メリー様、それって大胆というより何も考えてなかっただけなのでは?

ご覧ください。

麻衣様があんなに小さくなっておいでですよ。


 「それであの魔力の件で世界樹の方に何か影響でも?」


麻衣様のことはスルーしたケイジ様が私に質問を続けます。


 「あ、そ、それがですな、

 あの強大すぎる魔力を浴びてオデムの意識が戻らなくなってしまったそうなのです。」


 「なんだって!?

 そりゃ心配だな、女神のところにはヒーラーとか・・・いないよな?」


 「ケイジ様、ご心配ありがとうございます。

 そういうわけなので皆様をグリフィス公国に送ったら、私はすぐにでもマスターの下に戻らねばならないのですが・・・。」


 「そういうことなら仕方ない。

 みんな、すぐさまこの場を離れよう。」


ううう、何か皆さんを騙したみたいで心苦しいですね。

ですが、私の最優先事項はマスターを守ること。

申し訳ありませんが皆様には・・・


 『ラプラスさん、聞こえますか?』


おやっ!?

マスターから念話が!?


 「マ、マスター、ご無事なのですかっ!?」


皆様が緊張した顔つきで私の方を注視されてます。


あっ、


オデムの話しかしてないのに、マスターの無事を聞くとか不味かったでしょうかね?

いえ、そんな事は後からいくらでも誤魔化せます。

先ずはマスターの安否を確かめないと。


・・・これは念話ですので、これ以上私の声を口に出す必要ありませんね。


 『心配かけてごめんなさい。

 私達の方は大丈夫です。

 そちらは予定通りに進めて貰えますか?』


い、いえ、大丈夫と言われても・・・


 『あ、あの、私との念話が途切れるなど余程のことかと存じます。

 せめて何が起きたのかだけでも、ご説明願えませんでしょうか。』


 『・・・そうですね、

 では結論から言いましょう。

 オデムが復活しました。』


 「なんと!

 それは真でございますか!!」


あっ、つい嬉しさの余り肉声で叫んでしまいました。

またもやケイジ様皆様方に注視されてしまいます。


 『しかし、どうやって・・・

 マスターの治癒能力でもどうにも出来なかった筈では・・・。』


 『ええ、そこは、その・・・』


おや?

マスターの歯切れが悪いですね?

確かに私はマスターに仕える存在ですが、

基本、我々の間に隠し事はない筈です。


あるとすればマスターの、もうホント赤裸々な女体の神秘関連の話題だけの筈で、

オデムに関して秘密にするようなものほど・・・。


 『ええと、その、人間を一人、オデムに食べさせたら・・・

 そこにいる方々には内緒にしておいた方がよいのかなと・・・。』


なんですと!?

食べさせたって・・・それは殺人を犯してしまったと、そういう!?

た、確かにオデムを助ける為に人一人犠牲にしたというなら、この場の皆様方の心象が悪くなりますな。


ええ、もちろん私とて安っぽいヒューマニズムなど持ち合わせておりません。

単に私たちやマスターの世間体を気にする程度の話です。


しかし


 『しかし、本当にそれだけで?

 今までも小動物は食べさせてましたよね?

 もしかしてオデムの覚醒にはレベルアップが必要だったとか、そんな話なのですか?』


 『え、ええ、私も詳しくは・・・試してみたら元の姿を取り戻してくれた、としか・・・。』


うう〜ん、

オデムの復活は喜ばしいし、私の立場でマスターに反論など恐れ多いことなのですが、何か腑に落ちないですねえ・・・。

私の気にしすぎなのでしょうか。


 『あれ〜?

 らぷらす、オデムが元気になったの喜んでくれないの〜?』


えっ?



い、今の声って



 『オ、オデム、あなたなのですか!?』


 『そうだよー!!

 もう元気一発完全体!!

 とろーるだろうがさいくろぷすだろうがひとひねりー!!』


声も発言内容も間違いなくオデムですね。

しかも本当に元気そうです。

これなら私の心配は杞憂だったということでしょうか。


 『マスター、ご無事のようで安心しました。

 ではこれより「蒼い狼」の皆様方をグリフィス公国までお運び致します。』


 『・・・ええ、よろしくお願いします、ラプラスさん・・・。』


こうして、一時はどうなる事かと思われましたけども、私とマスターとのやり取りは滞りなく終了いたしました。


 「ラプラス会長、オデムは大丈夫だったのか?」


 「はい、ケイジ様、お騒がせしてすみませんでした。

 私も詳細は聞きませんでしたが、何やら色々スライム状態の彼女に食べ物を与えていたみたいですな。

 もしかしたらレベルアップか何かのきっかけで目を覚したのかも?」


 「へえ、だが良かったな。

 これで本当にオレらには何の被害も出ずに戦いが終わったってことだものな。」



ううう、ギリギリ嘘じゃありません。

詳しくは聞いてないのも確かです。

本当に誰を食べたんでしょうね?

まさか、あの地下洞窟に迷い人でも侵入してしまったのでしょうか。


しかしまあ、これで何の憂いもなく使命を果たせるというものです。


ああ、そうそう、

メリー様からの質問にまだ答えてませんでしたね。

マスターからは既に回答は得ておりましたので、

私の口からメリー様にはお伝えしています。


もっともメリー様もある程度予想されてたようで、

無感動に「そう、ありがとう・・・」と小さな声でお返事していただいたと、この場で述べさせていただきます。




あれ?

・・・そういえばオデムって、

いつの間に念話を使えるようになったんでしょうねえ?

私達が念話を使うのは、あくまでもマスターの能力なのであって、

私や布袋さんでさえ自分からは使えないのに。




<視点変更 布袋どん>


う、うう、

いったい、


いったいオデムはどうなってしまったんだろう。


僕が地面に這いつくばってる間に全てが終わっていた。


もちろん耳は聞こえているのだから、

あの不気味な男とマスターとの会話は全て把握出来ていた。

途中までだけど。


でも、僕は口を挟むことすら出来なかったんだ・・・。

うん、もともと僕は喋るの得意じゃないものね。


そしたら、あれよあれよという間に、マスターと男の話は終わってしまったんだ。


さ、最初はマスターのカラダ目当ての男かと思った。

だから僕はどんな事をしてでもマスターを守らないとと思っていたんだけど。


あっさり、

やけにあっさりあの男はマスターのカラダから離れた。

その後、オデムを治せるとかそんな話をしているうちに・・・


そう、特にそこから先の話は全く理解不能。


 「私を食べればオデムちゃんは目を覚ますよ」


ね?

意味わからないよね?



僕に理解できたのは、

彼は飛び込み自殺でもするように、スライム状態のオデムの中に身を投じてしまったこと。


その光景自体、僕は目にすることも出来なかったけど、それまでのマスターとのやり取りで、

彼が自分からオデムに食われに行ったことだけは理解できたんだ。



オデムの意識は醒めてなくても、

そんな事をしてしまえば、オデムの本能で取り込んだ生き物を消化する。

だから、あの男が生き延びれるはずなんかないんだ。


それとマスターの様子も不自然だ。

これだけの突拍子もないことを目の前にしている筈なのに、マスターが落ち着きすぎている気がする。

まるであの男の言動を、全て何の疑問もなく受け入れてしまったかのように。



そうこうしてるうちに僕の戒めが解けた。


あの男がオデムに食べられたからだろうか。

何らかの能力を使って僕を動かなくしていたというなら、

あいつの死後に能力が解けるというのは自然なことと思う。

なら間違いなく、あの男はオデムに食われて死んだのだろう。


そして、

僕がマスターの無事と現状把握でいっぱいいっぱいだったのにも拘らず、

オデムのカラダに変化が起きた。


あの男がオデムを治すことができると言ってた言葉は僕にも聞こえていた。

オデムは治るという話は本当だったのか?




そして、オデムのカラダから眩しすぎるほどの光が溢れ始め、

次第に・・・彼女は元の少女の姿を取り戻し始める。


 「ああ、オデム! オデム!!」


マスターの喜びが僕にも伝わってくる。

そりゃ僕だって嬉しいさ。


・・・でも




でも光が収まり、

完全に僕らが見慣れた姿のオデムが目を見開いた時、



僕のカラダはまた、

身動き一つ出来なくなったんだ。




恐怖で。




だって、




オデムの二つの瞳が、

黄金色きんいろに光り輝いていたのだから・・・。

 

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