第五百三十話 女神の危機
今回、
とてもここでは書けないようなアダルティな展開が起こりかけていたのですが、
女神の妄想ということにします。
<視点 世界樹の女神>
有り得ない、
何もかも有り得ない。
ここまでこの男が容易に接近できたことも、
あの気味の悪い眼球も、
そして布袋さんの全体重を乗せた体当たりも、まるで子猫がぶつかったかだけのような涼しい顔で受け止めて・・・。
「な、なんで吹き飛ばない・・・?」
攻撃を仕掛けた布袋さんだって理解できまい。
一見、あの侵入者は長身には違いないが、体重の比較だけだったら、布袋さんの方が男の倍は有るはず。
その体重が倍の人間に思いきりぶちかましを当てられて、その場から一歩も動かないでいられるわけがないのだ。
サイキックか何らかの能力だろうか?
けれどそんな能力を使った気配もない。
「な、なら・・・!」
布袋さんはちょっと抜けたところがあるけれど、私を守るという目的においては絶大な能力と信頼性がある。
すぐに切り替えて土魔術と格闘術を同時に・・・
「ああ、もういいよ。」
長身の男が布袋さんの頭にそっと手を添えた。
その瞬間、布袋さんの体が洞窟の冷たい地面に大きな音を立てて沈んだのだ!!
「ぐえっ!?」
わからない!
サイキックでないなら何らかのスキル!?
いえ、この世界のスキルなら私に見通せるはず・・・
違う!!
私の目を以てしても何も見通せない!!
一体何者なの!?
男は地面に這いつくばってる布袋さんには一切の興味を示さず、薄い笑みを浮かべて私に近づいてくる!!
『マ、マスター、何かございましたか!?』
ラプラスさんとの念話が、中途半端なところで途切れたからだろう。
私に忠実なラプラスさんは、こちらの様子の異変に気付いてくれたようだ。
「助けてください!!」と念話を送りたい気持ちは十分にある。
けれどいくらラプラスさんといえども、ここまで一瞬で移動することなどできないし、
また私にも念話を送る余裕すらない。
「マ、マスター・・・っ!
体が、う、動かない・・・!?」
一体布袋さんは何をされたの?
麻痺?
それとも超重力!?
けれど・・・布袋さんがあの位置から動けないなら私にも抵抗する手段はある!!
私が授かった能力は、強力過ぎて布袋さんを巻き込みかねないからだ。
「『雷霆』!!」
ゼウス様ほどの威力はないが、この世界のオーガ程度なら一撃で葬り去れる!!
最速にして回避不能のこの能力ならっ・・・!
そっ、そんなっ!?
私の青い稲妻は男の胸に吸い込まれたはずだ!!
なのに・・・なのにどうして今もなお涼しい顔をして近づいてこれるのだっ!?
いや、見れば薄汚れてはいるが男のローブには焦げた気配もない!
ということは私の雷撃は当たらなかったのか!?
すると防御魔術の類なのだろうか?
ならば精神攻撃をっ!!
「私の足元にひれ伏せ!! 『権力』!!」
だ、ダメか・・・
全く何の反応もない・・・。
「命を奪え!! 『死』!!」
私の体から白いモヤが発生し、男の周りを取り囲む・・・!
けれど、その白いモヤなど何も意味はないとばかりに相変わらず男は薄い笑みを浮かべたままなんて・・・
こ、こんな・・・おかしい、
私の能力は全て発動している。
なのに、如何なる攻撃も通じない!!
あ、あ、お、男が私の目の前に
「これなら・・・絶対防御の盾よ! 『アイギス』!!」
いけ好かない傲慢女神の能力だが効果は絶大!!
けれど・・・わたしの微かな抵抗をも男は嘲笑う。
まるでそこに壁など何もなかったかのように、男は「アイギス」の盾をすり抜けたのだ!
ま・・・まさか、これは幻覚なのだろうか?
この近付いてきている男がただの虚像だというのなら、
私の能力が一切効かないのは理屈が通る。
・・・けれど、先程布袋さんのカラダは、体当たりであの男にぶつかっている筈なのだ。
あ・・・
そ、そんな・・・
男が、わ、私の体に・・・太腿に手を伸ばして・・・
体温も感じる!
間違いなくこの感触は実体なのだけども・・・
「驚かせたのなら申し訳ない、
私に・・・貴女への敵意はないから安心していいよ・・・。」
敵意は・・・ない、だって?
男の手のひらは私のキャミソールの真下、
肌が露出している膝の真上に直に触れている・・・。
この世界で・・・
ラプラスさんや布袋さん以外の男になど、肌を触れさせたこともないのに・・・!
「・・・なるほど、美しい方だ・・・。
あなたが今の世界樹を管理されてるというわけだね・・・。」
見ず知らずの男に太腿を触られて、気持ち悪いと叫ぶべきだろうか?
否、私の今の感情は怒りだ。
布袋さんをいいようにあしらわれた事に対してもだ。
「ああ? 彼も大丈夫。
あれでも一切危害を加えてないから。
あっ、もし地面に倒れた衝撃で傷が出来てるようなら、後で治してあげるからね?」
私の心を読んだとでもいうのだろうか?
だがそんなことで私の怒りを消せると思ったら大間違いだ。
私のカラダに見惚れているの?
なら通じる筈!!
借り物ではないこの私本来の能力をお見舞いしてあげるわ!!
「『支配』!!」
くっ、こ、れ・・・でも・・・なの?
そっ、そんな・・・
・・・男の涼しげな顔に変化はない。
ダ、ダメ、なのか・・・。
たとえこの男の姿が幻覚だとしても、
意識体がそこにあるのならば、私の支配下に置けるはずなのに・・・!
「おや?
私を貴女の虜にしようとしたのかい?
ふむ・・・悪くないんだけどね・・・。」
あ・・・
男は両腕を私のカラダに沿わせて・・・
待って!
何をするつもりなのっ!?
世界樹の幹に埋まってる私は普通の人間より高い位置にいる。
男がいかに長身とはいえ、私の視線の方が高いのだ。
つ・・・つまりどの程度かというと・・・
ちょうど、お、男の顔が・・・私の二つの胸の盛り上がりに・・・
「やっ! やめろっ!!
ぼ、僕らのマスターに手を出すなああああああっ!!」
布袋さんが必死に叫んでくれるけど彼は体を起こすことも出来ない。
この男、私達に危害は加えないとは言っているけど、
こ、このままだと私の貞操が・・・
この世界に生まれ変わって清いカラダのままでいたのに・・・
これじゃ、あの人に会わせる顔が・・・
あっ、男の手が私のキャミソールの中にっ
きっとそうだわ。
こいつは私の体が目的なのだ。
私はここから動けない。
それどころか手足一本動かせないし、あらゆる抵抗ができない状態なのである。
このままこいつに胸を揉みしだかれて、
顔を埋められようと、わたしに残された抵抗の手段は、
イヤ、お願いやめてと、悲鳴を上げることくらい。
この男の細長い指は、私の白い乳房にピッタリ吸い付いて絶対に離してはくれないだろう。
それどころかこの小さな乳首を、くりくりこね回しし続けられるかもしれない。
ああ、
下腹部にも指を這わされて、
薄い草むらを掻き分けられて、
私の肉の抵抗など一切無視されて、
硬くて大きいモノを突き入れられてしまうのだろうか。
そ、それどころか、
このままコイツに居座られたら毎日毎日、或いは昼も夜もなく、この男が出したくなったら私のお腹の中に白い体液を注ぎ入れることになってしまうというのっ?
そんなの絶対にダメっ!!
ど、どうにかこの状況をっ!
「わ、わたしのカラダがあなたの目的ですか!?」
すると、私の胸にむしゃぶりつく寸前みたいな状況で、
男は何か気付いたかのように私の顔を見上げたのだ。
「ん?
・・・ああ、そうか、そういう風に取られちゃうよね?」
へ?
いけない。
女神ともあろうものが品のない反応をしてしまった。
けれど、私の問いかけが意外だったのか、
男の態度が変わったようにも見える。
私のカラダに抱きつく事が男の目的ではない?
「いやあ、貴女のカラダが綺麗だなぁと思ったのは確かだよ?
もちろん、お顔も美しい。
正直見惚れていたよ。
なのでちょっと観察させてもらっただけでね。
さすがに初対面で私もそんな大それたマネはしないさ。
もちろん、この後仲良くなったら、そういう事もやぶさかではないけどね。」
ふざけるな。
初対面だろうが顔見知りだろうが、お前などにこのカラダを好きにさせるわけもあるまい。
「・・・この私のカラダは一人の男性に捧げています。
お前などに蹂躙されるくらいなら舌を噛み切ってみせましょう・・・!」
ここで意外なことが起こる。
今のはやけっぱちに放ったセリフなのだったが、
そこで初めて男の態度に変化が生じたのだ。
「あっ、待って待って!
死んじゃダメだよ。
君はこの世界樹の女神だろ!?
・・・何より私が困ることになる。
ごめん、悪かったよ、謝るから許してね?
ほら、離れたから。」
・・・どうなってるの?
さっきまで何の攻撃も効かなかったのに、私の命を出したとたんにあっさり引き下がった。
しかも両腕をあげて万歳スタイルだ。
いや、これはホールドアップというんだっけか?
「・・・なら布袋さんの拘束も解いてもらえるのでしょうね?」
「もちろんだよ、
っていうか、彼から攻撃してきたんじゃないか。
私に攻撃しないでくれるならこっちも何もしないよ。」
むぅ・・・確かにそれはそうなのだけど・・・。
途端に不貞腐れてるようね?
なにかブツブツ「せっかく彼とは七福神繋がりだと思ったのに」とか意味が分からないことを口走っている。
「こちらは貴方を招いた覚えも、この洞窟に立ち入る許しを与えた覚えもありません。
なのに勝手にずかずかと入って来たのなら、攻撃されるのもやむを得ないと思いますが?」
「はは、まぁ、そうかもしれないけどね。
じゃあ、先にキミらに美味しい話をしてあげようかな?
えーと、そこでぐったりしてるスライム、
オデムちゃんだっけ?
私なら彼女を治せるけど?」
なんですって。
ちょっとドロドロした展開にしようと思いましたけど、
今後の関係のことを考えて未遂にしておきました。
布袋さん、かわいそすぎるし。
「マ、マスターああああああああっ!!」