第五百二十四話 ぼっち妖魔はご褒美を提示される
ぶっくま、ありがとうございます!
<視点 麻衣>
ほい、来ました。
働き者の麻衣ちゃんですよと。
ええ、もう邪龍戦は終了しました。
今回は後始末的なお話です。
エンディング?
それは・・・えーと、
この後皆さんそれぞれあるんじゃないですかね?
別にあたしも何を知らされてるというわけでもありませんので。
もしかしたら、今届いたメッセージに何か書いてあるかもしれませんけどね。
さてさて。
一応あたし達三人は、それぞれアイコンタクトをして、自分たちに届いたメッセージを読んでみる。
内容?
うん、あたしがここに連れてこられた時と文体はほとんど変わってなかったよ。
さすがに今回はオオアリクイは登場しなかった。
まずは邪龍を無事に倒せておめでとうございますってな感じかな。
この後の物語的なものは何も書いていなかった。
まあ、予想していたよ。
ただね、
あたしにとって重要なこと。
それ「ら」について。
まず一つ。
すなわちこの世界から元の世界への帰還。
メッセージの中に・・・
なんか添付ファイル?
みたいな感じで点滅してるアイコンがあった。
下に説明文が書かれている。
「元の世界への帰還チケット、使用期限はこのメッセージが届いてから二週間以内。
それを過ぎると帰れなくなりますのでご注意を。」
はい、来ましたーっ!!
もう、これその二週間びっちり働き通せといってるようなもんだよね!?
きっとこの後、
カラドックさんイベントやらケイジさんイベントやら色々起こるのだろう。
その世話をしろと言われてるような気が思いっきりする。
やっぱりキリオブールでのゴッドアリアさんとキサキお婆ちゃんのイベントは、この後のエンディングへの予行演習に過ぎなかったのだ。
あ、一応、メリーさんもカラドックさんも、
元の世界への帰還チケットは同一だったらしい。
メリーさん、どうすんだろ?
「二人は最後まで残るの?
ならお付き合いさせてもらおうかしら。
どうせ元の世界に戻ってもまた感情を失った毎日に戻るだけだもの。」
あ・・・
そ、そうか、メリーさんの場合、
もう一つ選択肢があるわけか。
すなわち、
「この世界に残る」という・・・。
「いえ・・・。」
あ、あたしの思考読まれたかも?
「今のところそのつもりはないわ。
あの子も・・・何十年か何百年か経てば、
それこそ再びこの世に生まれ落ちる可能性はあるのだろうけど、
さっきも言った通り、それは私の知る子ではない別人格の存在。
別に今更あの子に会えるだなんて思ってもいないけども、やっぱり自分の世界に戻るべきだと思う。」
「そうですか・・・。」
それはメリーさんの人生。
メリーさんの決断。
もうあたしが口を挟むべきじゃないな。
造物主様が、何考えてるか知らないし。
そして話はあたしの話に戻る。
たぶん、これあたしだけにだよね?
帰還チケットとは別に、
さらに添付ファイルがあったのだ。
それも選択肢付きの。
ああ、これが前にうりぃちゃんが言ってたやつだ。
あれ?
でも、うりぃちゃん、大きなつづらと小さな
つづらって言ってなかった?
大きさ一緒っぽいよ?
そう思ってたら下に文面が続いていた。
「申し訳ありません。
以前うりぃちゃんがご褒美アイテムについて説明されたかと思いますが、ぼっち妖魔製作委員会の会議の席上で、それだと麻衣様に分かりづらいのではないかという意見が出まして、アイコンの変更を致しました。
なおご褒美の内容については当初の予定と何も変更はございませんのでご安心くださいませ。」
・・・なんだよ、ぼっち妖魔製作委員会って。
まるであたしがぼっちみたいじゃないですか!!
ていうか、
アイコンのみ変更って・・・
あたしはその二つ同じ高さに並んだアイコンを見比べる。
よくあるパソコンフォルダみたいな黄色い四角の中に、
ひとつは
宝石?
一つはお花のマークが記されている。
宝石とお花・・・
これ、
どっちか選ぶヤツ・・・
あ
あ、これ、めちゃくちゃ重要な話じゃない?
い、いえ、あたし個人の話じゃなくて!!
「あ、一応、麻衣様への配慮でこんな形にしたそうです。」
さらに下に追加の一文があった。
だから最初に書いておこうよ。
ていうか編集しなよ。
これ、もしかして、
以前、人類最初の女性の話をした時、
イブは知恵を得て、
リーリトはそれを取らなかったからバカなんじゃないかとか、
コノハナサクヤヒメはお花のように美しかったのに、
イワナガヒメは石のように醜かったとか、
あたしがそんな事を口走ったからだろうか?
でもそうか、
もしかしたらこれが原初の形・・・。
人類最初の女性はどちらを選んだのか・・・
永遠の輝きを持つ綺麗な宝石か・・・
それとも
すぐに色褪せ枯れてしまうけれど、
儚くも美しく子孫を残してゆく草花か・・・。
「安心してください。
どちらを選んでも麻衣様へのご褒美が変わるだけで、麻衣様や人類の寿命や遺伝子に変化はありません。」
だから後からメッセージ追加で流すな。
ふう、
リーリト的には永遠の象徴たる宝石を選ぶべきと思うのかもしれないけど、
あたしはパパの娘でもある。
イブの子孫とのハーフなのだよ。
だからどっちを選んでもいいのだ。
何も気にする事はない。
で、
つづらっていうか、ファイルの中身は見れるの?
日本昔話だったら中を開けてみないと分からないのかもしれない。
でもこの贈り物をしてくれた人は親切設計なのだろう。
少なくとも片方については凄い分かりやすい説明がついていた。
「宝石のつづら
このメッセージが届いた時点で、麻衣様がその世界で身につけたスキルと術法を元の世界でも使えるようになる。」
「なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
あまりの衝撃に大声を出してしまった。
慌てて皆さんが寄ってきてくれる。
「だ、だいじょぶです、びっくりしただけです!
なんの心配も要りません!!」
ていうか、
こっこれ、なに!?
あたしの虚術とか、この子の七つのお祝いにとか、
召喚術は・・・あ、もともと似たようなの持ってたっけ。
で、でも虚術と七つの状態変化呪文持って帰ったら大変なことになるよ!?
下手したらあたし元の世界で最強だよ?
「麻衣さん、
私が君と同じ世界の人間でなくて本当に残念だ。
どうにか、君の世界の騎士団の者達に君をスカウトするよう助言する方法はないものか・・・。」
カラドックさん、目がマジだああっ!!
「いっ、いえいえ! 遠慮しますっ!!
あたしは何の変哲もない一般女子校生ですっ!!」
ううう、誰も信じてくれない・・・。
「す、凄いな、麻衣さん、
・・・あれ?
でももう一つの方とどっちか選べるんだろ?
ならそっちにも破格のものが入っているのかな?」
ケイジさんが興味津々とばかりに鼻を突っ込んできた。
うん、まっとうに考えればそうだろう。
「お花のつづら」
なんか嫌な予感すんだよね。
いや、ホントに嫌だったら宝石のつづら選べばいいだけなんだけど、
あっちを選んだら、きっとあたしのこれからの人生サバイバル。
しかもハードモード。
もしかしたら麻衣マストダイモードかもしれない。
マジでリーリト・クィーンの座を争わねばならなくなりそうだ。
それで一族みんなの運命背負うんでしょ?
重過ぎる。
ていうかそんなのリーリトの行動原理から矛盾しない?
ん?
リーリト・クィーンてなんの仕事やんのかって?
あたしも知りません。
いや、普段なら適当に好き勝手暮らしてると思うんだけどさ。
今の時期が時期だけに、造物主さまのお手伝いとか何か大変そうだと思うんだよね。
あ、話が逸れた。
そう、
お花フォルダだ。
ただ、
そのフォルダに注記された内容は、
宝石のつづらに記されたもの以上に、
しばらく全ての思考を吹き飛ばすくらいの衝撃をあたしにもたらした。
「お花のつづら
麻衣様が会いたいと思う人間を、更なる別の平行世界から一度だけ呼び出す。
呼び出せる時間は麻衣様のMP依存。」
なるほど、
宝石の方はあたしが元の世界に帰っても変わらずそのまま使い続けられるように、
そして、
お花の方は、あたしが召喚術で呼び出せる限りの時間、つまりその場、一時限りの・・・って
え
ちょっと
・・・待って
それって
だ れ を 。
ラスボス戦終わって早速難問です。
さあ、どっちを選ぶ!?