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第五百二十二話 さよなら、邪龍

はい、ようやく邪龍最期です。


長かった・・・。

今回も少し長めです。

<視点 ケイジ>


あらためて思う。

オレは夢でも見ているのだろうか。


あの、お伽話でしか聞いたことのなかった邪龍が目の前にいて、

そして今、オレの前世の世界から来たという自動殺戮人形のメリーさんが、その邪龍を討伐しようとしている。


例えトップランクの冒険者とて、生涯出くわすことなどないだろうと思われる存在同士の対決。


それが今にも終わろうとしている。


ここまで来てどんでん返しなんかないだろう。


邪龍は全ての手札を失った。

まあ、それはこっちも一緒だが、

それは隠し札がもうないというだけで、

攻撃手段や体力・MPの方はまだ余裕がある。


本当に誰の筋書きだか知らないが、

人類にとっては最高のエンディングになるだろう。

そいつには感謝しかない。


 「ケイジさん、念の為に迂闊なフラグは立てないで下さいね?」


 「えっ? あ、ああ、気をつけるよ。」


麻衣さんの言ってる意味はよく分からないような気もしたが、オレが余計な事を言ってはいけない事だけは理解した。


 「麻衣さん的には・・・この後も?」

だが、オレは聞かずにおれない。

果たしてそんな美味い話があるだろうか、

あの悲惨で恥ずべき前世を送ったオレには、

素直にこの結果を受け入れていいのか、どうしても楽天的な気持ちでいることが出来ないからだ。


 「・・・ふう。」

麻衣さんがため息をついて、オレを呆れた目で睨んだ。

・・・へこむ。


 「どうしてもフラグ立てるつもりですね・・・。

 でもまあ、ケイジさんの心情は分かりますよ。

 なら言っちゃいますけど、これで終わるわけない。

 あたしが吸血鬼と戦った時もそうだったんですから。

 ・・・ああ、そういう意味でも布袋さんが地道にレベルアップするように言ってたのかな。

 場数踏めば色々なことへの心構えができますもんね。

 ただ、邪龍さんとの戦いは間違いなくこれで終わり。

 今はそれでいいじゃないですか?」


麻衣さんもオレ達と合流するまでに色々あったってことか。


じゃあこの後に控えているのは何なのか。


邪龍が先ほど言ったように深淵・・・

アビスとやらがラスボスなのか。

麻衣さんはさっき否定していたようだが。


ただ、麻衣さんの言う通り、

今はこの戦いが終わる事だけは間違いない。


ならば、黙ってそれを見届けるか。




 「さて、最後の触手がいなくなったところで。」


目の前の出来事から目が離せないのも事実だしな。

そう、メリーさんの独演会は続いていた。


瞬時に爆裂した触手の後には、

腹にポッカリと大きな穴を空けていたメリーさんも、

まるでビデオの逆再生でも見せられたかのように元の姿へと戻っていった。

前の世界でもビデオなんて数回しか見た事ないけどな。

ていうか、黒いドレスまで元に戻るのかよ?

どんな原理なんだ?


 『こっ、こんなバカなっ!?

 有り得んっ!! 有りえるはずがなぁい!!』


本当に現状認識出来ない奴なんだな、邪龍は。

メリーさんにバカ呼ばわりされていたが、心の底からそう思う。

たぶんオレの口はニヤけていたんだろう。

おっと、口から汗が。


けれど、

次の瞬間、オレの背中の毛が逆立った。


 「次は何が要らないかしら?

 やっぱり目よね?」


メリーさんがそのまま自分の腕を邪龍の顔面に突き刺したのだ。


 ぐちゅううっ!


 『げへええええええええええええええええええええええっ!?』



何の迷いもなく、潰しやがったぞメリーさん。

ここまで聞こえてきたからな、眼球が潰れるっぽい音が。


 「まず右目。」


 『え、ちょ、ちょっと待って、そっ、それっ』


まずって言ったよ、メリーさん!

そ、それじゃこの後?


 「ええ、ほら、左目。」


くちゅっ!


 『ぎにゃああああああああああああっ!!』



えげつねえ・・・

すでに麻衣さんから、

邪龍の弱点はその顔の奥に存在すると言われる邪石だとメリーさんは聞いた筈だ。


そ、そこに至るまで、つ、次々と?


 「いいえ?」


あれ?

メリーさん、オレに向かって話しかけてる?

気のせい、だよね?


 「貴方には嬲り殺されるまでの感想聞きたいから、口や舌は引き抜かないであげようと思うの。」


い、今のって、まさか、

わたしって優しいでしょアピールなのか?




そして・・・



オレも過去に、

いや、冒険者としても多くの魔物を狩ってきた。


人間をいたぶり殺したことも・・・

前世においてはなかったとも言わない。


けれど、

ものには限度がある。


要は気が狂ったような悲鳴や叫び声に耐えられる神経など、オレは持ち合わせてなどいないと言う事だ。


ましてや、

邪龍とかいう化け物だぞ?

人間の形すら取ってない肉の塊が人語を解し、

今や地響きを立てて、狂乱の叫び声をあげながら「やめてやめて」と命乞いしてるのだ。



気が狂いたくなるのはこっちだと言いたい。



だから、

申し訳ないがオレには現在進行形の実況中継はこれ以上無理。


え?

最低限でいいからだと?


ってもなあ・・・。

メリーさんの姿もオレの位置から見えるけど、

邪龍の返り血というか・・・

返り体液でドロドロなんだが。


確かに他の人間には出来ない。

真似できない。

動く処刑道具と言った方がいいかもしれない。

最後の転移者がメリーさんで本当に良かった。


出来れば耳を塞ぐどころか、ここからお暇させて欲しいと言うのが本音なんだが、さすがにそれは無責任過ぎよう。



でもただの拷問だよな、これ。



 『あああ~ああぁ・・・

 こ、ころして・・・、こ ろしてくれぇぇ~

 は、はやく、お、願いぃぃ・・・』


完全に心が折れてやがる。


ふと、隣を見ると麻衣さんと目があった。

この状況でも平然としてるのかよ、

もう凄いというか尊敬に値する。

拝んでもいい。


 「あ、あの、別にちゃんとひいてますからね?

 精神耐性あるから平然としてるように見えるだけですよ?

 ケイジさん! なにあたしに跪こうとしてるんですか!! やめてください!!」


それでも凄いと思う。

オレの本心からの信仰心は叩き折られてしまったが。


 「・・・ただ分かりやすく言うとですね。」


お?

麻衣さんがオレの代わりに解説してくれるのか?


 「人間で言ったら、もう邪龍さんは手足ちょん切られて、ダルマさん状態で、

 さらに、目と鼻をくり抜かれて・・・

 あ、今、顔の皮をベロリと剥がされ」

 「いや! ありがとう!!

 もういい!

 もういいからっ!!」


そしてオレの言葉すら途中で、

邪龍の長く永遠に続くかと思われるような、辺り一帯に響き渡る『うあぅおおあおぉうおおおぅげおおぅぅう』という胃袋を捩じ切られたような悲鳴が聞こえてきた。


これ、グリフィス公国に戻ったらなんて報告すればいいんだ?




 「なるほど、私は理解。」


 「む? タバサどうした?」

今まで黙って見ていたはずだが、彼女は何かに気づいたのか?


 「メリーさんの存在は、

 悪い事をしたらああなるぞと戒める為に作られたと推測。

 これはエルフの神殿で良い子達に伝え広めるべき物語。」


 「そ、そうか、子供たちにトラウマを与えすぎないようにな?」


 「ああ、それって」


む?

再び麻衣さんか?


 「たぶん、それは事実だったのかもしれません。

 メリーさんが最初に動き始めた時代って、

 夜の森にデーモンが闊歩するから子供達は表に出るな、なんて教えが広まってたそうですよ?」


そうなのか。

いつの時代にも、恐怖を与える存在ってのはあるもんなんだな。

ただ、邪龍はその害が大き過ぎた。

この地の生態系まで崩壊しそうになっているんだ。

もはや、この世界に存在していいもんじゃない。


だから。



 「ねぇ、もう死にたい?」


 『にぃだい~なぜで~お~ね~が~いぃ~』



いよいよか、

あ、ていうか、そろそろ麻衣さんの残りMPも限界か?


 「いえ、実は何気なくカラドックさんからMP流してもらっちゃっていまして・・・。」


さすがカラドック、抜かりないな。

あ、オレに向かって力こぶ見せつけてくれやがって。


 「・・・兄弟っていいですね。」


い、いや、まあ・・・

そうか、麻衣さん一人っ子で、

でも今は家に姉妹扱いの女の子たちがいるっていってたっけ?

オレから見れば逆に多少は憧れる。


 ガツン!


あ痛!?

頭に衝撃が!


 「いや、ケイジ、目の前に集中しなよ。」

リィナに頭はたかれたか。


 「すまん、最期だよな、邪龍の。」


オレの位置からはメリーさんが何をしているか手元の動きは見えない。


言うなれば、

手術を行う医者が患者の臓器を好き勝手にいじくればどうなるのか、

しかも麻酔は無し。


うん、自分の身に置き換えたりとか想像は止めよう。


 「あなたがどうしてこんな目に遭うかわかった?」


 『わがりまじだ~っ、わがりまじだあぁあ、

 だがらじなせで、じなぜで~っ・・・』



 「・・・わかったわ、

 本当に反省しているようだから・・・」


なんかメリーさん、学校の先生みたいだな。

・・・オレ学校行った事ないけどな。


 『ああああ、メリーざまあ~、お慈悲をををお慈悲おおおおおっ・・・』


 「だから、最後まで苦しんで死ぬといいと思うの。」


 『いやあああああああっ!!

 ひど思いにごろじでえええええっ!!

 ごろじでえええええええええええええっ!!』


最後まで容赦ねぇ・・・

メリーさん、死神の鎌をゆっくり、少しずつ、

邪龍のカラダに埋めてゆく・・・。


顔の奥に弱点、邪石があるって話だったよな。


 「解説しますね、

 人間の顔で言ったら、こめかみの辺りから死神の鎌の刃を埋めていって、どんどん奥に掘り進んで、これも人のカラダで言うと延髄?

 その辺りにある邪石を・・・。」


麻衣さんからの有り難い説明を聞く。

その間も邪龍は騒ぎ続けている。

いや、喚き声も更にヒートアップしてるか。


そしてメリーさんは最期の宣告を行う。




 「私の名はメリー」


お決まりのセリフ。

これも伝説が広がる時に効果的な役目を果たすということだろうか。



 「いま、あなたの頭の中にいるの。」


そして・・・


さよならだ、邪龍。

また生まれ変われるんだとしたら、

次は5000年ばかし、草でも食っててくれ。

そうしたら人間とも仲良く共存できるだろう。


 

いぬ

「姐さん!

 『じゃりゅうさまぁ~!』って叫んでみて下さい!」


うりぃ

「アホかああああああああああああっ!!

だから体型しかかぶっとらん、ゆーとろーがあああああああっ!」


(ていうかな、いくならんでもウチの声に悠木さまはあかんやろ!?)

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