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第五百十七話 ぼっち妖魔は思い出す

ちょっとギリギリ・・・いや、文章量が多かったせいだ!!

<視点 麻衣>


はい、ということであたしです。


もうね、目ぐるぐるしく・・・


じゃなくて、目まぐるしく解説役がコロコロ変わって、いい加減にしてほしいと思うんですけどね。

(ホントに目がぐるぐるしてるんだから、「目まぐるしく」でなくて「目ぐるぐるしく」ではダメなんだろうか?)

大体、いまこの緊迫した状況はメリーさんが主役なんだから、メリーさんにセルフで任せればいいでしょうに。


しかも、ラスボス戦大詰めですよ?

もう今回の話で決着はつくのか、それとも次回なのか、その時の解説役は誰なのか、

あたしはまるで、ロシアンルーレットに参加してる気分になっているのだ。


・・・これは多分あたしの妄想なんだけど、

まさか誰かがサイコロでも転がして解説役を決めてるんじゃないかと思う時がある。

何しろ、大学入試で山を張ってなかった漢文が出てきた時に、マークシートを鉛筆転がして乗り切ったヤツだ。

ちょうどシャーペンの先っちょって、木でできた鉛筆の側面に穴開けるのに便利だものね。

過去問題集で漢文なんてほとんど出題されてなかったから、全く勉強してなかったんだと。

・・・ああ、今のがあたしの妄想ですよ。

そんな事実は存在しなかった・・・と思っていて欲しいそうです。



では現実に目を向けましょう。

いや、実を言うと冒頭の話は全く無関係じゃない。

だって思い出して欲しいんだ。

あたしはこのラスボス戦、そんなに大変な苦労を味わっていない。

大変は大変だけど、死にそうな目とか、絶体絶命の大ピンチというほどでもない。


もちろん最後まで油断できないし、

邪龍さんの反撃次第ではあたしたちはあっという間に全滅する可能性だってまだ残されてる。


単に、異世界に来て、最初のホーンラビットの襲撃から今に至るまで、

命の危険を伴う戦闘は何度もあったのだけど、

今回のラストバトルは終始あたし達のペースで進んでいるというだけのお話。


勿論予想外の出来事は何度もあったし・・・

う・・・何か思い出さなくていいものまで思い出してしまった・・・。

ケイジさん、どうしてくれよう・・・。

い、いえ、そのことはもうよくて!

そう! 肝心の邪龍さんには殆ど何もさせないまま!

メリーさん召喚までこぎつけた!!


あとは秒読み。

とはいえ、どうもメリーさんは鬼人の時同様、じわじわ甚振って邪龍さんを狩るつもりのようなので、

後はどれだけ話が伸びるのか、

・・・そうあたしは思っていた。


ところがそのいよいよ処刑開始というタイミングで邪龍さんのカラダを張った反撃。


まさに肉を切らせて骨を断つ、みたいな。

肉を自分で切って石を砕く、だね、正確には。


ああ、そうか、

今のこの状況、

あたしたちのパーティーで、メリーさんを除くと遠隔透視能力持ってるのあたしだけだった。


そりゃあたしが解説するしかないか。

そう、そうなんです。


あたしの眼には今、邪龍さんのカラダの中に閉じ込められたメリーさんの姿がはっきりと映っている。


なお、迂闊に敵を視て、敵からの精神攻撃を喰らう心配とかは不要だ。

邪龍さん、今それどころじゃないから。

あたしにカラダの中を視られてる事すら気づけまい。


それでメリーさんの状態なんだけど・・・


うっっわっ!

気色悪っ!!


まだ何本か残っていた触手を、邪龍さん自分のカラダの中に這わせてメリーさんの手足に巻き付けてる!!


あれでメリーさんの手足を引きちぎるつもり!?


 「麻衣さん、いったい何が起こっている!?」


カラドックさんが中の状況をあたしに聞いてきた。

もちろんカラドックさんはあたしがこの状況を把握できてることを理解してるんだろう。


あたしは手短かに説明した。

カラドックさんもケイジさんもヤバそうな事は一瞬で理解してくれたようだ。


・・・まあ、それでもあたしはそんなに不味い事態だと思ってなかったんだけどね。

一方、二人も絶望するどころか、すぐに次に取るべき手段へと頭を切り替えたようだ。 


・・・さすがだよね。

素直に感心しちゃうよ。


 「カラドック、オレらは何すればいい?」

 「そうだね、

 ・・・当然外部から攻撃、と言いたいけども、中のメリーさんごと巻き添えにするわけにもいかない。

 となると、やはり物理的な攻撃は避けるべきだ。

 それと邪龍には光属性が最も有効なわけだけど、メリーさんは闇属性。

 これも避けるべきだろうね。

 せっかくの邪龍へのアドバンテージを無効化しかけない。」


 「・・・なら。」


 「ああ、せっかくのケイジの覚悟だが、

 ここは私とアガサの氷系呪文だ。

 極低温攻撃なら無機物のメリーさんへの影響も少ないだろう。

 アガサっ・・・あ。」


途中でカラドックさんの言葉が詰まった。

そこであたしも気づいたんだよ。

アガサさんの顔が歪んでいることに。


 「無念、・・・カラドック!

 アイスジャベリン数発程度ならまだまだ余裕で撃てるけども、邪龍にダメージを与えられるほどまだMPは未回復・・・!!」


当然、氷系の呪文にも全体攻撃魔法あるんだよね。

あたしが見たことある各属性最大魔法は風と土、水。

もちろんアガサさんはそれも習得しているんだろう。

けど氷系は確か他の基本属性より高度な呪文とされる。

MP消費量もとんでもなくコストが必要なのだろう。


 「す、済まない。

 さっき私がみんなの魔力を徴収してしまったからね、

 な、なら私だけで・・・。」


 「ちょっと待ってもらおうか。」


あれ?

あたし達の後ろから聞きなれない男の子の声・・・って、ミュラ君か!


 「ミュラか、どうしたんだ?」


 「どうしたもこうしたもないよ。

 あの動く人形には驚いたけど、何やらトラブルらしいね。

 なら僕にも協力させてもらいたいな。」


あ、ミュラくんたらリィナさんにチラチラ視線を送っているな?

さては自分のいいところをリィナさんに見せつけたいのだろう。

ううう、なんというかわいい男の子だろうか。


あれ?

ミュラ君に睨まれた?


 「そ、それは願ってもないことだけど、

 中のメリーさんに被害を与えたくないんだ。

 私はこれから氷の精霊術を使うつもりだけど、まさかミュラ、君が?」


うおおお、この最後の局面で魔王の魔法が見れるのだろうか?

と思っていたのだけど、さすがというか残念というか、あたしの予想は呆気なく裏切られた。


ミュラ君の後ろから真っ白な鱗に覆われた綺麗なドラゴンさん達が三匹もついて来ていたのだ。

他のドラゴンさん達より落ち着いて高貴そうなイメージ。

人間だったら貴族の娘さん達かと思うほどの佇まいだ。


 「そ、それはホワイトドラゴン・・・!?」


 「ご明察通り、氷のブレスを撃てる上位竜だ。

 カラドックの精霊術と組ませれば邪龍と言えどひとたまりもあるまい。」


うわあああああ、それ、もう完全にオーバーキルしそう。

ていうか、いくら石でできてるメリーさんでも無事だと思えないんだけど。


あっ、これは見ている場合じゃないな。

ちょこっとだけ見てみたい気もするけど、止めないとだね。


 「あ、あのっ、すいませんっ!」


 「麻衣さん?」

 「なんだい、キミは?

 女の子は危険だから後ろにいた方がいい。」


ううう、どうやらミュラ君にはあたしなんか今まで視界すら入っていなかったのだろうか。

どうせ、ぼっちですよ、存在感なんかないんですよ。

って、それどころじゃない。


 「お二人とも、せっかくなんですけど、

 このまま様子を見てもらえませんか?」


 「なんだって?

 あの人形が閉じ込められたままだって説明したのはキミだろう?」


 「あ、うん、確かにそうなんだけどね、

 別にメリーさんがピンチだなんて一言も言ってないよ?」


このミュラ君て子は転生者だから、

前世を合算すれば多分あたしより年上なんだろうけど、この可愛らしい姿で敬語使うのも違和感あるんだよね。

まあ、たぶんタメ口きいても怒られないと思う。


 「え、そ、そうなのかい?」


 「そうなんです、カラドックさん、現に今も・・・うわあっ」


 「どっ、どうしたんだっ!?」


 「え、ちょ、これ・・・

 あの触手、メリーさんの股間とか口の中とかあり得ない場所ばかり執拗に・・・」


 「「「は?」」」


まさか邪龍さんにそんな趣味があったなんて・・・。


 「・・・うわぁ・・・」

 「ドン引きですよぉ・・・。」

 「これはとんだエロ邪龍。」

 「これは早速神殿に報告する事案。」


リィナさんをはじめ女性陣達からも呆れたような声が上がる。


あれ?

後ろの方のオスカさんてハイエルフの人だけ目を輝かせているな。

いや、気づかなかったことにしよう。

死霊術師のカルミラさんて人が、それに気づいて信じられないような目を向けていたけども。


あたし達が好き勝手言ってたら邪龍さんの方も反応してしまったみたいだ。


 『貴様ら、我に何か言いたいことでもあるのか』


 「あ、え、いや、邪龍さん、メリーさんを性的な対象として見れるのかなって・・・。

 でもいくらなんでもメリーさん相手に繁殖行為は無理だと思いますよ?」


あたしはなんで真面目に返答してしまったのだろう。

もうあたし達に危険はないと余裕ができていたのか、

それとも単にパニくって考える余裕を失っていたのか。



しばらく邪龍さんからは反応がなかった。

向こうもあたしの言葉の意味をすぐに理解できなかったのかもしれない。


けれど突然、


 『ふざけるなあっ!!

 このメスガキがああああああああああああああああああああっ!!』


 「ひぃっ!?」

怒られたあっ!?

なんであたしがぁっ!!


 『狭い場所や穴ぐらに潜り込もうとするのは触手たちの習性だぁ!!

 我の意志の及ぶところではないっ!!』


え、だって、邪龍さんが操ってんじゃないの?


 『我の意志は触手に伝達するっ!!

 だがそこから先はこやつら独自で判断・行動しているのだっ!!

 末端の動きまで我は干渉しておらぬっ!!』


そ、そういうことだったんだ。

あ、つまり触手は邪龍さんの眷族みたいなものなのかな?



 「ね、ねぇ、麻衣ちゃん、こ、このままだとさ?」


あ、グダグダになっちゃいますね!

さすが勇者のリィナさん、場の見極めは流石です!!


ここはあたしがやると決めたんだ。

初志を貫徹しないとならない。


 「み、みなさん!」


カラドックさんやミュラ君達はあたしの言葉を待つ。

そんな大した事をするつもりじゃないんだけどね。



 「少なくとも。」


メリーさんなら一人で大丈夫。


 「みなさんの手助けは必要ないかと。」


けれど。


 「みなさんは。」


あたしの言葉の意味が伝わったかな?

あたしがやりますよ。


・・・思い返せば昔からだった。

三度目だよ。


別にあたしが何もしなくても結果は変わらないような気もするけども。

最後の切り札とか奥の手とか言われるような大したものでもないけれど。


これも何かの因縁なのか。

ここでも前と同じことをさせてもらいましょう。


あたしの声が聞こえますか、メリーさん!



 

確か漢文の配点20点だったんだよなぁ。

よく受かったもんだ・・・。

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