第五百十三話 邪龍の反抗
<視点 ヨル>
ふえ?
ヨルでいいんですかあ?
このラスボス邪龍ことヌスカなんとか相手の最終局面、ヨルの出番てことでいいんですよねぇぇっ!?
なら全力で実況させてもらうですよおお!!
ま、まあ、ヨルはさっきの大地の牙で殆ど魔力持ってかれちゃいましたからねぇ、
一応MPポーション飲ませて貰ったんで多少は回復してますけどもぉ、
これ以上カラダ張るのは勘弁して欲しいところですよぉ。
もちろんカラドックや魔王様を守るためならもう一踏ん張りしちゃいますけどねぇ。
さてさてですよぉ。
麻衣ちゃんの召喚で呼ばれたメリーさん、
鬼人戦でも思いましたけど圧倒的ですねぇ。
あれ、鬼人相手の時より更に更に素早くなってますし、それ以上に何と言ってもいっそう禍々しい気配を溢れさせてるですよぉ。
あれに比べれば、ヨル達魔族なんて可愛いもんじゃないですかあ。
既に邪龍は体周りの触手は殆どぶった斬られて、
体の正面部分の触手しか蠢いてないですからねぇ。
ケイジさんもさっき、今が追撃のチャンスみたいに戦闘態勢取りかけてましたけど、メリーさんに阻まれて動けなくなっちゃったみたいですぅ。
まあ、全部メリーさんに任せて良さそうですかねぇ。
もちろんここにいる皆んな油断はしてなさそうですよぉ。
タバサさんもアガサさんもいつでも魔法使えるように魔力を練ってますし、
リィナちゃんも天叢雲剣の構えを解いてないですものねぇ。
おっとぉ?
邪龍に動きがあったですかあ?
『き、貴様、何者だっ!?
何故ここまで我を蹂躙できるっ!!
しかも、しかもその力は闇の力ではないかっ!!
冥府の王とは・・・一体!?』
ヨルにもよく分かりませんけど、闇属性と邪龍には親和性無さそうなんですよねぇ?
魔族には結構闇属性使える人いるんですけどねぇ。
もっとも魔族にとっても邪龍は害獣みたいなものですしぃ、やっぱり全く別の属性に区分されると思うんですよぉ。
「私の名はメリー。」
あっ、メリーさん、邪龍の質問には答えるんですかねぇ?
もう自分の感情は、全てあの人形のカラダと気味の悪い大鎌に吸わせたみたいなこと言ってましたけどぉ、理性や思考回路自体は残しているみたいですぅ。
『メ、メリーだと・・・。
異世界には、貴様のような・・・!』
「私の事を気にする必要はないわ。
心配するのなら自分のこの後の惨めな末路の方になさい。」
ばっさりですねぇ。
あっ、でも邪龍は抵抗するみたいですぅ。
邪龍の戦意が激しく増大したですよぉ!!
『くっ!!
このヌスカポリテカを舐めるなあああっ!!
我はこの時代、多くの人間どもの魂を喰らって更に強力な力を手に入れたのだああああああっ!!』
うっひゃあっ!?
邪龍の頭周りのカラダがメキメキと変形していくですよおおおおっ!?
あ、あれ、触手じゃなくっ、
まるで巨大な人間の腕のようなものが、ひ、ひーふーみー、
一本一本がそれだけで、巨人なみの大きさの・・・
ろっ、六本もの巨大な腕が生まれたですよぉおおおおっ!?
しっ、しかもアレ!?
「あっ、あれ、腕にそれぞれ別の魔法属性付加させてる!?
火、水、土、風、氷、雷!!」
さっすが麻衣ちゃんですねぇ、
あの巨大な腕も形は人間ぽいですけど、関節とか指とか昆虫みたいなのがキモいですぅ。
それとは別に、それぞれの腕に魔法属性つけてるのはヨルにも分かりましたけど、麻衣ちゃん、瞬時に見極めちゃったですよお!!
土属性のアレに殴られたら岩でも砕けそうだし、火属性の腕に掴まれたらあっという間に人間なんか蒸発しちゃうでしょうねぇ!
「意外と器用なのね。
・・・でも。」
そこでメリーさんの姿がまた消えたですよぉ!!
そして次の瞬間・・・
生えたばかりの邪龍の腕がぼたぼたぼたっと、
一斉に地面に落下!
・・・まあ、そうなると思ったんですよねぇ。
『なあああああああああああっ!?』
「今の六本の腕、漫画とかだったら見開き全部使って最高の見せ場になる場面だと思うけど、やっぱりメリーさんには意味なかったですね。」
麻衣ちゃんのセリフの中の、漫画ってのはよく分からないですけど、言いたいことはヨルにも理解できるですよぉ。
邪龍のせっかくの奥の手だったのに、この場に出した瞬間、無かったことにされちゃったんですものねぇ。
「理解力の足りない貴方に教えてあげる。」
あっ、またメリーさん、邪龍の頭らしき部分の上に戻ってるですよぉ。
挑発するですねぇ。
まるで仕事場の事務所の玄関の上に、ハトが巣を作り始めたので職員が追い払おうとしたんだけども、
すぐにまたハトは事務所の玄関に戻ってクルッポー鳴いて職員を嘲笑ってるかのようですぅ。
職員さん、大変ですねぇ。
『な、何をだあああっ!!』
「私の力の源は、貴方に無慈悲にも喰われた人間達の魂の苦痛、
貴方は彼等の魂を捕食して強くなったと思っているのだろうけど、
それと同様に私の力と速さも増しているわ。
死んでいった魂には意識もないし、思考も出来ない筈だけど、
彼等からは例外なく貴方への憎しみや恨みが私の体に流れ込んで来ている。」
『な、何だと・・・そ、そんなバカなスキルが・・・』
メリーさんのアレってスキルなんですかねぇ?
前にメリーさんか麻衣ちゃんがシステムって言ってたような気もしますけどぉ。
「そして、更についでに言うと、
貴方はその魂たちのエネルギーを、もっぱら自らの生体維持に使っているのよね?
それが不老不死の正体でしょ?
でもこのメリーにはそんなもの必要ないのよ?
だって石だもの。
だから、
あなたへの憎悪は、
彼等が今もなお感じている苦痛は、
全部貴方にそのままお返ししてあげるの。
・・・そう簡単に滅びちゃダメよ?
貴方の手足も、カラダも、抵抗する手段も一つずつ丁寧に消滅させてあげるわ。」
ヒィイイイイイッ!!
どっちが悪役か分からないセリフですよぉ!!
こっ、これ絶対ヨルはメリーさんを敵に回したくはありませんですからねぇ!!
で、でも実を言うと今のメリーさんの説明は、
ヨルにも凄い分かりやすかったと思いますよぉ。
邪龍が喰った魂とか、
メリーさんが自らの糧にしているとかいう死者の情念とか、
何がどう違うのかヨルにもよくわかっていませんでしたからねぇ。
ていうか、
人間・・・まあ、魔族でもエルフでも一緒なんでしょうけど、
目に見えない筈の魂なんてどう定義すればいいんですかねぇ?
あとそれと、ヒトって魂の形になっても苦痛が発生するんですかあ?
それこそどんな仕組みでそうなるんでしょうねぇ?
「邪龍に魂が喰われるって、
ガリガリ外周から削られてゆくような感覚なのかな。」
ケイジさん、
体毛逆立てながら恐ろしいこと言わないで欲しいですよぉ。
想像しちゃったじゃないですかぁ。
「でも恐らく、邪龍さんにそのことを分からせる必要があったのかもしれませんね。
いま、邪龍さんが遭遇してる現実は、全部邪龍さんが招いたことだと思い知らせる為に。」
このパーティーの中で、
メリーさんの生態に一番詳しいのは麻衣ちゃんなんですよねぇ。
何でも麻衣ちゃんの実のお母さんが、
かつてのメリーさんのカラダに宿っていた住人だったそうですからぁ。
・・・ヨルにもお母さんいるですよぉ。
怒るとちょっと怖いんですけどねぇ。
いま、お母さん旅に出ちゃってるですけど、
次に会う時は、ヨルとカラドックとの愛の結晶を見せてあげたいと思うんですよぉ。
ちなみにお父さんはお母さんに強く出れることはないのですううぅ。
あっと、邪龍はそれでどうなったですかねぇ?
ハト・・・許すまじ・・・。
森へ帰れ。
ヨル
「あっ、作者さんのリアルな日常の出来事だったんですねぇ!?」
しかもつがいで・・・。