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第五百九話 最後に勝つのは私なの

<視点 メリー>


あら?

なにがどうなったというのかしら。

私は今どこにいるの?


一瞬にして場面が切り替わった。


もっとも今の私は「自分がどこにいるかなんて些細な事」はどうでもいい。


噴き上げる憎しみの感情で、今まさに私のカラダは木っ端微塵の爆発寸前なのだ。

今もビシビシと耳障りな音が鼓膜ではなく、人形のボディから直に伝わってくる。

そう言えば、私に鼓膜は元々なかったわ。


けれど次にすべきことは分かっている。

「自分が砕けかけている」ことすら些細な事だからだ。

全ての私の感情をオフにする。

すなわち邪龍を切り裂くために処刑執行人モード、

つまりエクスキューショナーモードに変わるだけでいい。


そうなったら、もはやみんなとは一緒にいられない。

けれど、こんな中途半端な形で砕け散るよりよっぽどマシだ。


えっと・・・

みんなには挨拶は済ませたのだっけ・・・

いえ、それこそそんな事に囚われてる場合ではない・・・


え?



これ、私の体が虹色の光に包まれて・・・

私を呼ぶ麻衣の声・・・


これはまさか召喚?

でも麻衣は私のすぐ側にいたはずよ?

意味がわからない。

何でそんな奇妙なマネをするの?

けれど間違いない。

これは鬼人を相手にした時と一緒だ。


違うのは私の体の中を駆け巡る異常な魔力。

凄まじいの一言に尽きる。

この世界で召喚術というのは、術者の魔力とレベルに応じて召喚した魔物や動物に多大なステータス補正を付加するという。

それはいいのだけど、

これ、下手すると私の体の崩壊をさらに速めない?


・・・いったい



ああ、

ふふふ・・・


そういうことね。

全て分かったわ。

もっと大事なものが・・・

こんな分かりやすいエモノがそこにいるじゃない。


ふ、ふふふふふ。

あははははは。


可笑しいわ、

なんてことなの。


そこに


私の目の前にいるモノが、

私から大切なものを奪った標的なのね。

あの子の魂までも貪り尽くした絶対に許してはならない存在。


本当に、

本当にみんなには頭が上がらない。

ここまでの経緯は分からないけども、

こんな素敵なお膳立てをしてくれていたのね。


今もなお、

私の体は悲鳴を上げて砕け続けている。

もう少し保つかしら?

たった今、バキンと肩が弾け飛んだけど腕はまだ繋がっている。

どうやらギリギリで間に合ったようね。


なら私の体なんかこの際どうでもいいわ?

あなたにはとても逢いたかったのよ?


さあ、始めましょう。

私の愛しいダンスパートナーさん。

ほら、ご覧なさい?

二つの月が私達にまるでスポットライトを当ててくれているよう。

もう邪魔する者はいないわ。

二人で素敵な時間を過ごしましょう?

こんな愉快なことはないのだから。


そう、

だから、

私が笑うのはこれが最後。


 「あはははははははははははははははははははははははははははぁっ!!」


うふふ、ホントに、

本当にこれが私の舞台よ!!


このカラダに転生した意味!

そんなものはもう忘れた!!

最初の目的なんかもどうでもいい!!

けれど、

この世界に送り込まれた意味!?

それは分かる!

きっとこれよね!!

この為に私が必要だったのよね!!



今まさに、

フラア!!

あなたを喰らった化け物を!

同じ化け物の私が葬るわ!!

誰もが認める!

誰もが納得する道理!!

同じ化け物同士だからこそ!!

忌まわしい殺戮人形!?

呪われた自律行動人形!!

それがどうしたって言うの!?

忘れたわけはないでしょう?

私は最初から化け物だったのだから!!

化け物が貴族の令嬢の振りをして!

化け物が王国のお妃様の振りをして!!

みんなみんな演技だったじゃない!!

それはそれで面白かったわよね!?

でもそれは本当の私じゃない!!

世の中を、世界を恨み、憎しみ、呪詛の言葉を吐き続け!

目に見えるもの全てを滅ぼしてやろうとしていたのが本当の私でしょ!?


そんなの・・・そんなの私の目の前にいる化け物と何が違うっていうの!?

安心なさい!

あなたなんかに私の役目は渡さない!

あなたの全てを私が否定する!!

あなたの存在する価値も意味も役割も!

全て私が消滅させてあげるわ!!

今度こそ!!

今度こそ私が舞台の主役!!

誰にも邪魔させない!!

誰にもこの座を明け渡したりなんかはしない!!


フラア!

貴女にもだわ!!

ただニコニコ笑うだけで全ての人々の歓心を攫っていって!!

ただ少し悲しそうな顔を見せるだけで皆んなの同情を惹きつけて!!


そんな貴女に!!

あろう事か私の心まで奪い盗られるなんてね!!

けどおあいにく様!

もう私は貴女の呪縛から解き放たれたわ!!


だから!

その汚ならしい醜悪な肉塊の中で!!

私が舞い踊る姿を!

この身の程知らずの化け物を切り刻む私を!!

その可愛い顔をうっとり蕩けさせて眺めていなさいね!!


ただの観客になるのは!

歴史や社会に何の影響も与えることのない唯のモブキャラに成り下がるのはっ!


世界から用済みだって舞台から引き摺り下ろされるのは・・・

今度は貴女の番なのよ!!



それがフラア、

私から貴女へせめてもの・・・




さあ・・・!!

エクスキューショナーモード・・・





オンッ!!





 『な、何だ、この強烈な闇の塊はあっ!?』


私の視界から色が無くなる。

先程までの噴き上がる感情がまるで嘘のよう。

それでも私が向ける氷の視線が揺らぐこともない。

そして、私がこれからしようとしている事が変わる事もない。


こいつが邪龍・・・。

なるほど、喋る知能はあるのね。

「闇の塊」って私のことだろうか。

なるほど、これだけの凝縮した想念を身に宿す私は、

魔力感知の眼にはそう映るのかもしれない。

どこから喋っているのか分からないけども、

声の響きからして今私がいるのは邪龍の真後ろということか。


・・・麻衣も余計な気を使ったみたいね。


さて、

一応、私も思考能力は残しているけども、

もう殆どこの体は自動的に勝手に動く。

けれどまずはこの人形のボディを修復させるのが先ということか。

さっきまで、身体中のかなりのパーツがボロボロになっていたけれど、破損した体は何事もなかったかのように修復され、みるみると元の滑らかな表面に戻っていく。

ちょうど召喚時に起動していた七色の光が収まる頃には、私のボディは完全な姿を取り戻したのだ。




さぁ、美少女人形のお色直しよ。

薔薇の刺繍のドレスもふわりと拡がり、

私のか細き両腕にはアラベスク紋様が施された死神の鎌ゲリュオン。



ふぅん、と改めて思う。

今は真夜中なのね、

二つの月明かりに銀色のウェーブされた髪がよく映えることだろう。


いちいち視線を飛ばす必要もないけれど、

この場にいる全ての存在が私を見つめている。


もう私の心に狂おしいほどの感情の嵐は吹き荒れてなどいない。

そんなものは全てこの人形を動かす血肉となった。

もはや私はただ目の前の標的を狩り取るだけ。


さあ、邪龍よ、

待たせたわね・・・。

あなたの最期の時が来たようよ。


だから私はこう言うの。


 「私の名はメリー、

 いま、あなたの後ろにいるの。」




ゆっくり、そしてとても冷たい声で。


 

貴女へのせめてのも


償い?

罪滅ぼし?


それとも


仕返し?


麻衣

「え、ちょ、メリーさん、それは!?

なんで喜んでいるんですかっ!?」


泡の女神

「ついに本性を曝け出しましたね・・・。」


うりぃ

「これ、最後、どうケリつけるつもりなんや・・・?」






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