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第五百八話 手札

危ない・・・今月から仕事のスケジュールパターンが変更になったせいか、更新日を忘れるところでした・・・。

<視点 ケイジ>


いよいよこの戦いも大詰めの時がやってきた。

邪龍ヌスカポリテカに対抗するオレ達の最強の駒。

非道に殺されていった者達の憎しみや恨みによって、どこまでも強くなるという闇の殺戮人形。


その、オレたちの最大最後の切り札がついに放たれた。



・・・あの時、

ローゼンベルクの貴族の屋敷で、メリーさんにとって大切な人の魂が邪龍に喰われたと聞いて、

メリーさんは体の内部から砕ける寸前になるまで怒りを沸騰させていた。

リィナと麻衣さんが機転を利かせ、

麻衣さんの巾着袋にメリーさんを収納させていなければ、

あの時点でメリーさんのカラダは完全に砕け散ってしまったに違いない。


麻衣さんの巾着袋がマジックアイテムだとは知っていたが、生き物が入るなんて・・・

いや、違う。

メリーさんは基本的に石膏人形だから生き物じゃない。

無機物なんだよな。

生き人形ともいうけれど。

完全にオカルトの領域だが、この世界ではインテリジェンスゴーレムと言い切ることも可能。

無機物なんだからマジックアイテムにも収納できるという理屈らしい。

そしてあのマジックアイテム内では時間経過による劣化はないという話なのだから、

麻衣さんの巾着袋の中で時間は止まったまま。

そこまで説明されればオレにも分かるぞ。

つまりメリーさんの時間も止まる。

すなわち、あれ以上カラダが壊れる心配もなくなったという訳だ。


・・・改めてあんな小さな袋に、よく小柄とはいえ人間大の大きさのものが入ったもんだと思う。

中は異次元空間ということなのか。


まぁ、その不思議機構は置いておいて、

結局その段階で、次にメリーさんを外に出すのは、オレたちの最終目的である邪龍を目の前にしたときにしか出来ないということが決定的となった。


無論、メリーさん本人が感情のスイッチを完全にオフにすれば、カラダの崩壊進行は止まったんだろうが、そうすると次の問題として、メリーさんは体のコントロールを一切制御出来なくなるらしい。

そうなるとオレたちと行動は供に出来なくなるし、

一人単独で海の底を歩いてでも勝手に邪龍の元に向かうことになるという。

流石にそんな目には遭わせられないし、どれほどメリーさんが強力でも、たった一人で邪龍に勝てるとも思えない。



けれどここまで来たならば・・・。

そう、ここまで邪龍を追い込んだならば。



今現在、邪龍はヨルが放った大地の牙でカラダをこの岩場に縫い留められ移動不可能。

あの厄介な触手の群れも、アガサが巨木並みの太さを持つツタで抑え続けている。

触れるものすべてを塵に変えると言う破滅のブレスとやらも、リィナの進化版天叢雲剣の雷撃で封じ込めた。


・・・足りないのは邪龍を殺し切る圧倒的攻撃力。


もし万一・・・メリーさんが何らかの想定外の事態で、その役割を果たせなくなった場合、

最後の役はオレが務めることになるだろう・・・。

獣騎士ファイナルスキル・・・その名もまさしく「ラストバイト」。


オレの全生命力を攻撃力に乗算して特攻する自爆技だ。

スキル説明だと痛覚神経が遮断され、その命尽きるまで敵を喰い破ることが出来るスキルらしい。

・・・なるほどね。

確かに「獣騎士」らしいっちゃらしい。


元々オレはパワータイプではないが、

獣人の基本性能に加えて前世から引き継いで有り得ない程上昇しているレベル。

そして悪魔からドロップした耐久度抜群のベリアルの剣をもってすれば、

邪龍を殺し切ることが出来ると思う。


ただそれを実行した場合、オレが生きて戻れる可能性が殆どない。

そのスキルを使った場合、確実に死ぬことになるのか、タバサの回復術で命を繋ぎ止められるか、それ自体全く分からないのだ。

自分の命が掛かっているだけにおいそれと実験も出来ないしな。


人類史上最悪の存在と言える邪龍を倒すのに、オレ一人の命で済むなら安いとも思えなくもないが、オレだって別に死にたいわけでもない。

何より、この話を口にしたとたん、火山が破局噴火するのでもないかという憤怒の情念をリィナから感じ取った。


だからこの手は絶対に使わないことを願う。


オレがリィナに殺されないためにも。


・・・ん?

何か理論的におかしいことあるか?

まぁ、気のせいだよな。


なお、世界樹の洞窟でアガサとタバサ、

そしてマルゴット女王のいるグリフィス公国でオレ達はそれぞれ新しいクラスに転職している。

それもここまでの度重なる戦闘で三人ともそのクラスの最終スキルを習得済みだ。

既にタバサの防御呪文はご披露したよな?

邪龍の滅びのブレスを防いでみせたアレだ。

麻衣さん曰く、あのタバサの術も何かもう一段、更なる姿があるんじゃないかという話だったが、

恐らくこの物語でその先を語られることはないだろう。

未来のことは何も分からない。

え?

どこでそんな会話する余裕あったんだって?

いや、ホラ、邪龍が大空に拉致されてた時間が有ったろ?

あん時だよ。


それとアガサの最終スキルについてなんだが、実はまだ誰もその姿を見たことはない。

アガサからは、スキル習得とその内容の説明を受けただけだ。

これはこのカスタナリバ砂漠に到着するまでのラプラス馬車の中での話。

そこでカラドックや麻衣さん達中心に邪龍との戦闘パターンの検討をしていた時に話題となったんだ。

あ、一応念のためにアガサの最終スキルってのは魔導士の方でなく、木属性魔法の方な。

それでその木属性魔法の最終スキルは「ドリアテ」というらしい。

麻衣さんが「召喚魔法ですか?」と訝しがったが全く違うとのこと。

名前からして精霊っぽいもんな。

ところがアガサによると、これまでの木属性魔法によくみられる形態変化に近いものだという。

なので「素体」が「存在しない」邪龍戦では使えない類のものらしい。

そこまで聞いてカラドックがピンと来たようだ。

 「ああ、本人が来たがらないよね。」

麻衣さんも理解したらしい。

 「ああ、怪獣大決戦の構図が目に浮かびます。」

凄いな、二人とも。

それだけの情報で内容を理解できるんだからな。


まぁ、現実に起こりえない話の方はここまででいいか。




他に考えることはリィナの天叢雲剣。

まだリィナには雷撃を撃つ余力があるし、カラドックのユニークスキルもまだ使える。

どうも集めた魔力があまりにも過剰だったらしく、麻衣さんでも使いきれなかったようだ。

その魔力はまだカラドックが保有しているので、その残りの魔力をリィナにくれてやれば、

天叢雲剣も最大の力を発揮し続けられるだろう。

リィナは微妙な顔をしているが。

ん?

天叢雲剣の雷撃って魔力依存じゃないのか?

よく分からないって?


む、むう、

ならその話は飛ばすとするか。


そ、それじゃ元の話に戻すとしよう。

天叢雲剣の話な。

既にこれまでリィナは二回、天叢雲剣を繰り出しているが、邪龍のカラダが大きすぎるせいなのか、

リィナの雷撃でも邪龍に止めを刺し切れるか、怪しいらしいんだよな・・・。

どうもあの巨体が雷撃を「散らして」しまってるんじゃないか・・・。

そんな印象も受ける。

だから邪龍の体力を減らしたり、その行動を封じるという意味では、天叢雲剣はこれ以上ない効果を上げている。

けれどトドメを刺すには至らない。


まぁ、いろいろ善後策も考えてみたが、やはり一番確実なのはメリーさんだ。


鬼人を倒した時のあの圧倒的なスピード、

そして鬼人の防御、腕力、再生力全てを無にしたあの無慈悲なる殺傷力なら邪龍にも通じる筈。


何より・・・今回はメリーさん本人の恨みの念が凄まじい。



おや?

麻衣さんが召喚の魔法陣を、いつもの足元ではなく邪龍の後方に展開した?


本来なら死角で見えない位置だが、立ち昇る光の円柱で場所を特定できる。

かなり強烈な光のようだ。

間近で見たら目が潰れるんじゃないか?


 「何あれ、尋常でない魔力の塊。」

 「何あの、可視化する程禍々しいオーラ。」


アガサやタバサはオレにない魔力感知でこの事象を捉えているのだろう。


ならば邪龍も・・・


む、全身真っ黒こげだった邪龍の体表が波打ったかのような。

奴にもわかったんだろう、

自分の背後に突然現れた凶悪な気配にな。


そして・・・これで全ての役者、全ての手札が切られた・・・。

後は・・・結果が残るだけだ!!


 「今回のケイジさんの説明で、対邪龍戦全部の伏線が回収されたですよぉぉぉぉっ!!」


おい、待てヨル、

お前は何を言い出した?

 

次回、久しぶりのメリーさん視点です。


なお、アガサの木属性魔法最終スキル「ドリアテ」は対邪龍戦において当初使用の検討もしていました。

最終的に「彼女」が旅に同行する理由がなかったのでボツとなりました。


???「絶対に行かんのじゃ! そんなとこぉぉ!!」


麻衣

「あたしと召喚契約しておいた方が良かったですかね?」


それでも「彼女」の方に契約するメリットないからね。


麻衣

「ああ、そうかぁ・・・。」



でもなんか余計な伏線増やしてしまった気もしなくもない・・・

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