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第五十話 布袋どんは海を行かない

あらかじめ言っておきます。


一連のケイジの過去の回想シーンは・・・

ここに書かれた事全てを、カラドックに伝えているわけではありません。


回想シーンの中からケイジが言葉を選んでカラドックに伝えています。

また、例えば、

神殿でのタバサのお父ちゃんの会話シーンなども、

ケイジは見てないので、カラドックには話してません。

 

 「むう~、どこもいっぱい~!」

リィナが不満そうに口を開く。


その後、オレたちは手分けして宿を探していたのだが、案の定どこの宿屋も満室だった。

とは言え、簡易テントと寝袋はあるので、夜風の心配はない。

ただ盗賊の警戒だけはしないといけないので、ぐっすりと眠ることは諦めている。


え? リィナと二人きりで間違いでも起きるんじゃないかって?

だから、二人しかいないから交代で起きているんだよ。

そんな余裕すらないんだ。


と、いつもならそういう流れなんだが、

諦めかけていたオレに大会の運営スタッフから声がかかった。

 「ケイジ様、

 ラプラス会長が、先程のお詫び代わりにスタッフ用にキープしていた部屋を空けられるので、もしよければそちらにお泊りできると伝えてほしいと・・・。」


ラプラス会長、マジか!

 「あ、申し出はホントに嬉しいが連れの女性がいるんだ。」

 「えーと、同じ部屋でよろしいのなら、こちらは問題ないんですが?」


・・・ああ、そう。

いや、いつも同じテントで互いに寝顔晒してるとはいえ、

ちゃんとした宿屋で同室にしたことないからな・・・。


 「あたしは気にしないぜ?

 ケイジだって不届きな真似しないよな?」


合流したリィナに、ジト目できっぱりと言われた。

いや、オレだって何もする気はないが、なんかリィナの目つきが意味ありげなんだよな・・・。







一方、

 「アラハキバ神官長!

 何故、我らに協力できないと言われるのですか!」

ダークエルフのノードス兵団長は声を荒げた。


 「勘違いしてもらっては困りますな。

 出来ることは協力すると言っているのだ。

 だが、我々には人員をそちらに割く余裕はない。」

 「いかにリボン祭りとはいえ、既にあらかた準備は終わっているでしょう!

 別に難しいことを頼んでいるわけじゃない。

 街の案内や各折衝場所において顔をつないでくれるだけでよいのです!

 そのぐらいのことなど・・・!」


 「申し訳ないが、ノードス兵団長、

 我々の方でも大問題を扱っている最中なのだよ、

 事によったらそちらの事件よりも重大な結果が起きるかもしれぬ。」


 「は!?

 いくらなんでも我々の・・・」

 「いや、待てよ?」

ノードス兵団長の抗議は遮られた。

数秒考えこんだ後、アラハキバ神官長はノードスの顔をまじまじと見る。

 「な、なにか!?」

 「いえ、ノードス兵団長、

 魔法都市エルドラでも今はリボン祭り真っ最中のはずですな?」

 「そ、それは勿論ですとも!」

 「現世に戻られる御霊みたまの祭祀は、やはり我々と同じく神殿で行われているので?」

 「当然、それは我らの街でも同様ですが?」


 「ではノードス殿は、魔法都市エルドラの神殿から何か異常は聞かれてはおりませんか?」


 「異常ですと!?」


そこで後ろに控えていたタバサが近づいてくる。

 「父上、まさかハイエルフの森都だけでない可能性?」

 「そうとも、今回の現象が我々の地域、或いはハイエルフだけのものと限る保証などなにもない。

 たまたま、御霊の帰還を観測できる我々神官職だけが気付いたという話に過ぎない。

 もしこれがエルフはおろか、人間・亜人全てに共通している現象ならとんでもないことになるぞ!?」


二人の会話にダークエルフの兵団長はついていけない。

 「アラハキバ神官長、あなた方は何をおっしゃっているのだ!?」


そこでようやく思い出したかのように、アラハキバ神官長はノードスに振り返る。

 「・・・ノードス兵団長、取引をしようじゃないか、

 神殿の方から行政の方にも顔の利く渉外担当の者を君たちにつけよう。

 代わりに君たちは魔法都市エルドラの神殿に使いを出して欲しい。

 今すぐ書面を用意するよ、

 そちらは今のうちに人選を考えてくれたまえ。」


 「待ってください、何が何だかわかりませんよ!?

 ちゃんと説明していただけませんか!?」

 「フム、もちろんだよ、ノードス兵団長、

 ではあなたに一つ尋ねるが、このリ・ボンとはいかなる事象かね?」

 「私を試そうというのですか・・・!

 バカバカしい! エルフなら子供でも知っている。

 死んだエルフたちの魂が、一年のこの時期だけ現世に戻られることだ。」


 「仰る通りですな、では死んだ魂は普段どこに存在しているのかな?

 魂は永久に現世とその場所を行ったり来たりしているのですかな?」


 「そ、・・・それは諸説様々でありましょう、

 一般的にあの世とは言われますが、永久にそこにいるわけでもありますまい?

 どれぐらいの期間かはわかりませぬが、その内、別の生命に転生すると言われていると思いましたが・・・。」


実際のところ、死んだ人間の魂がどこに行くかなど誰にも分かる話ではない。


あの世、天国或いは地獄、または別世界、異次元・・・


死んだ魂は一時的に、どこか生きている人間には不可知の場所に赴き、

どれくらいかこれまた不明だが、長い時間を過ごした後、

新しい命に生まれ変わるとされている。

ただし、これはこの世界で定義されている転生者のことではない。


転生者という称号は、

生まれ変わる以前の記憶や人格、或いは能力を保持している者に限られる。


従って、普通に生まれてくる赤ん坊が、

過去に死んだ人間の魂の、新しい姿であったとしても、

以前の記憶や能力がなければ、転生者などと誰も言わないのだ。

そもそも検証など誰にも出来ない話なのだし。


だいたいこんな所がこの世界での一般的な認識だ。

それはダークエルフのノードス兵団長も変わらない。

それを確認した後、アラハキバ神官長は説明を行う。


 「ふむ、結構です。

 それではお話しますが、ここ数年、

 リボン祭りの期間にお戻りになられる御霊の数が著しく減少しております。

 はじめは気のせいか、或いはそんな事もあるのかな程度の認識だったのですが、

 今年に至っては毎年平均の半分にも満たないと言っても差し支えないでしょう。」


 「何ですと!?

 そんなバカなことが・・・。」

 「これは我が神殿の御霊を視ることのできる全ての神官が確認しております。

 そして今、私が知りたいのは、その原因とその現象の規模ですよ。

 この森都ビスタールだけなのか、

 他のエルフの街、或いは他種族の街でも同様の事が起きているのか?」


 「も、申し訳ない、

 話の内容は、り、理解したがそんな事が・・・いや、そ、それはまさか?」


そこで神官長の娘タバサが無表情に宣告する。

 「この世界での新しい命の誕生停止。」




また場所は変わって・・・




 「どうした、アガサ?」

既に日は沈み、町は夜の帳に包まれる。

だが、祭りの初日とあって、人々の賑わいや街の喧騒は大したものだ。

その隙間を縫うかのように、分厚いフードを被った二人一組のダークエルフが街の片隅を歩いていた。

そう、彼らは魔法都市エルドラの魔法兵団の兵士。

その内の一人が、コンビを組んでいるもう一人の反応に気付いたのである。

 「・・・かすかな波動・・・。」

 「深淵の黒珠かっ!?」

 「はっきりとは不明、場所も確定不能・・・。」


アガサはノードス兵団長率いる魔法兵団の中でもトップクラスの魔力を持つ。

魔力感知でも優れた成績をもって団に貢献しているが、

実を言うと、彼女には今、最大の懸念事項が持ち上がっており、

この探索にも支障をきたしている状態だ。

それでも他の兵士たちより一歩抜きんでた成果を出しているのは流石と言うべきか。


彼女の胸中は他の誰にも窺い知れないが、

先程、ハイエルフの神殿でノードスとアラハキバ神官長の会話を聞いていた時から、

彼女のアイデンティティーを揺るがす重大な事態が起きていのだ。


アガサは自分たちがやって来た神殿の方を振り返る・・・。

 「あのタバサという女性神官・・・

 ひょっとして私とキャラ被り?」




(そして視点はケイジに戻る)



 「おっ、ここの部屋かぁ。」


リィナがいち早く指定された部屋を見つけた。

ちょうどオレたちがラプラス商会が使っている宿屋に着いた時、

それまで部屋を使っていた商会の人間たちが引き上げるところだった。

ハウスクリーニングやベッドメイキングは既に終わっているようで、

数人の職員とすれ違いになる。

 「あ、会長の仰ってたケイジさんたちですね、

 すいません、今引き上げますので。」


こちらこそ申し訳ないぐらいだ。

 「いえ、お気になさらず、こちらも助かります。」

オレは常識的な挨拶をしたつもりで部屋の中を一望しようと・・・

うわっ!?


今度は何だ?

巨漢だ・・・。

身の丈2メートルはありそうな・・・横幅もかなりあるドワーフ?

いや、ドワーフは小柄だそうだからヒューマンなのか、

ニコニコしたおっちゃんが、大きな風呂敷包みを背負って部屋から出てきたのだ。

でかっ!


 「お、お、申し訳ないです、い、今でて行きますからね?」

多少、どもりながらも、万人受けしそうな柔らかい笑みを浮かべてこっちを見下ろしている。

身体能力は凄そうだが、悪意は全く感じないな。

先ほど同様、軽く挨拶をしてオレは見送った。


 「すっごい大きい人だねぇ?」

リィナが呆れるように同意を求めてきた。

 「ラプラス会長のボディガードかもしれないな。」


 「コホンっ! 布袋ほていさんっ!

 袋の紐がゆるんでますよっ!」

 「お、おっ、ほ、ほんとだ、すみません、会長。」


部屋に入ろうとする寸前、廊下の奥から声が聞こえてきた。

あの声はラプラス会長か。

何気なく聞き飛ばすつもりだったが、

そのすぐ後に、またもや聞き覚えがある声がこの狼の耳に飛び込んでくる。

 「らぷらす、その呼び名はかわいくない。

 ほていどんて呼んだほうが可愛い!」


あの声はオデムだ!

こっちに気付かれないうちに部屋に入ろう!

 「な、なんだ、ケイジ!?」

オレはリィナの両肩を掴んで部屋の中に押し込んだ。


バタン!

またモフモフされに来られたら堪らないっ。


それにしても、あの大男、名前が「ほてい」って言うのか?

確かに大きな「布袋ぬのぶくろ」背負っていたけど、まさかそれが名前の由来?

てことはあだ名?

いや、問題はそんな事ではない。

だってまさか有り得ない・・・。

もしかしたらオレの他にも・・・


オレが真剣に考えこもうとしていたのに、リィナが大変なことになっていた。


 「ちょ、ちょっとケイジ、いくらなんでもそんないきなりっ・・・

 あ、あたしにだって心の準備が・・・っ。」


ええええええ・・・。

 

 

会長ラプラスと布袋どんは、この物語を考える遥か以前に何かに使えないか思いついていました。

オデムは苦労しましたけども。

「バブル」も「三世」もちゃんと意味合いを持たせています。

それはまだ明かせないので後程。


さて、○○〇ドンと言えば、

とある物語のラスボス的存在とも言えますが(ラスボスとは言ってない)、

最初にはっきり申しましょう。

七福神の布袋と、〇〇〇ドンの間に関連性は全くありません。

他の七福神には思いっきり関係深そうな人が「何人か」いますけども・・・


posei或いはpoteiは「主人」を表し、「da」は大地を指す。

すなわち彼の名は「大地の夫」または「大地の主人」。

その称号も、「大地を護りし者」「大地を揺らす者」「紺黒の髪を持つ者」。



ではこの物語において、今回登場した彼はどうかと言えば、

同じように「七福神の布袋」とは全く関係ありません。

それこそシャレで袋を持たせただけです。

いや、ケイジに何かを気付かせるため、かも。


そして、彼が「〇〇〇ドン」の方に関係あるかと言われれば・・・


ではまた。


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