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第四百九十八話 邪龍退場(画像有)

あとがき部分に新作画像有ります。

<視点 ケイジ>


何が起きた!?


さっきのけたたましいベルの音は!?

その後の巨大生物の心臓の音のような何かは何なんだ!?


獣人の聴力を持つオレやリィナでさえ、耳を塞ぐ程の音であったが、

アガサやタバサはそれ以上の反応を見せている。


いや、あれは脳に直接響いてきたぞ?

てことは、耳で捉えることのできる可聴範囲外の音?


いや、違う。

オレには原理は分からないが魔力関連の現象なのか。


どちらにしろ、オレにそれを判断する能力などないし、

今この場にあってそれが重要な判断だとすら思えない。


まずはこの現象の意味・・・


そう、先程麻衣さんが、

深淵なる存在を呼び覚すとか言っていた。



ならオレ達全員が味わっているこの現象は、その深淵とやらが起こした何かか?


以前、

麻衣さんは別世界から異形の動物たちを呼び出した。

あの時も、何処から得体が知れない音が響き渡っていた。


・・・その後、空が割れたんだよな。


もうその現象自体、意味がわからないと言っていい。


「次元の壁が裂けたということだろう」と、カラドックから後で説明してもらったが、

今回は違う部分がある。


麻衣さんは、

「この世界から」と言っていた。


ならば次元が裂けることもあり得ない。

そんな必要ないよな。

じゃあ、



その


深淵とやらは、


何処にいる、いや、

今まで何処にいたっていうんだ?


そして、

蹲っていたオレが、様々な疑問を浮かべながら、

その解答を得るべく麻衣さんを見上げた時、

 


そこに気味の悪い何かが立ち尽くしていた・・・。



あれは何だ。

誰だ。

笑っている。

とても邪悪な笑みで。




麻衣さん・・・じゃあないのか。



背格好は何も変わっていない。

けれど、


その瞳は黄金色きんいろに輝き、

口は耳まで裂けて笑っている。

その皮膚は病的に白く、まるで鱗のようにうっすらと





あれ?


何かの見間違いかと思い、一瞬視線を外して元に戻したらいつもの麻衣さんだ?

タバサのフォースフィールドの光の幕が、

麻衣さんの瞳に反射していたのを見間違えただけか?

でもそしたら口が裂けてたように見えたのは?





 「ケイジさん?

 大丈夫です?」


最初、麻衣さんから声をかけられている事にも気づかなかった。


見間違い?

幻覚?

いったいオレになにが


 「ケイジさん!?」


あ・・・


 「ま、麻衣さん、大丈夫だ・・・

 でも、でもいったい何が・・・。」


 「あー、ごめんなさい、

 あたしにもこの後どうなるか、何が何だか・・・。」


 「そ、そんな、いくら何でも・・・」

無責任な、と糾弾したかった。


そこまで口が回らなかったのには理由がある。


一つはさっきの幻覚からのショックからまだ立ち直っていなかったこと。


それと、もう一つの理由。


オレは今の今まで、

決して忘れてはいけない大事なことを、

完全に忘れきっていた事に気づいたからだ。


それは、

オレの前世で起きた事・・・。


そしてこの世界で、

転生者、或いは転生者でなくとも、

恐らく異世界の同一人物について、

他の世界と同じような運命、或いは出会い、

または出来事、

それらが如何なる法則に依るものかは知らないが、


往々にして同じように起こり得ることに。



もちろんそれらは全て等しく起こるわけでもないし、

或いは同じような目に遭いながらも、

跳ね返すこともできるかも知れないことは学んでいる。


オレのおふくろは

前世の母さんと同様に助けることは出来なかった。


かつて、

櫓の上から落下してゆくリナを助けることはできなかったが、

この世界のリィナは助けることが出来た。


オレの話じゃないが、

ローゼンベルクのハギルという少年は腕を引きちぎられながらも命は助かった。

元の世界ではそのまま非業の死を遂げたそうだが。

また、領主アスターナは黒髪の女の子を死産させてしまったが、

オレたちの世界の未来では、無事にその子を出産した代わりに自らの命を犠牲にしたという。


そして、

話は今のオレについてだ。


ちくしょう・・・!

こんなもの、

思い出しさえしなければ、

気にせずにいても良かったのかもしれない。


けどもう遅い。


オレは気付いてしまった。


元の世界でのオレの罪。

あの世界でのオレの業。


ではこの世界で、

誰が前世のオレの役割を果たすんだ?


もちろんその可能性の筆頭はオレのままだ。

この世界で、オレはまた同じ過ちを繰り返すのかもしれない。


けど、今、このパーティー内で、

オレが誰を?

それともグリフィス公国の誰かをか?


そんな必要性も目的も何もない。

だからこそ、今まで忘れきっていたんだ。


ならオレではなく他の誰かが?


そんな時に異形の変化を果たした麻衣さんを目撃してしまったのだ。


けれど・・・

いや、思い過ごしだろう・・・。


麻衣さんとて、

別に誰かを・・・

もちろんオレに対しても・・・


そして今、麻衣さんが見ているのは彼女自身が呼び覚ましたという何かだ。


もはや邪龍でさえも彼女の眼中に入っていないのではないか?



!!

そうだ!


そんな余計な事考えている場合じゃないよな!?

オレ達の敵は邪龍!!


それだけだ!!


それで今、その、邪龍は!?


今もなお聞こえて来る心臓の鼓動のような音の根源を探しているのか?


さっきよりかは音は小さくなっているようだが。


奴の無数の触手も、今や訳のわからない無軌道な動きを繰り返している。


その時だ。


 『む!?』


状況に変化があった。

オレ達の頭上、

はるか高い位置にあった洞窟の天井部分に無数の亀裂が走ってゆく。


ま・・・まさか?

うっすらと輝きを帯びた天井は、

その後、オレ達が何の反応も出来ないうちに、一瞬で塵と化した!


それはまるで、邪龍のブレスのような・・・

いや、その後の聖女の光の暴風嵐を浴びたかのような現象だ。

洞窟全体に舞い散る大量の塵に、オレたちは一時視界は遮られる。

だが。


 『上か!!』


邪龍の意識はそのまま上方に向けられていた。

もちろんオレたちもすぐに邪龍に釣られて見上げざるを得ない。



うおっ!?


冷たい風が流れ込んできた!!

立っていることも出来ないほどの強風だ!!


え、これまさか地上からの風か!?


そ、そんな?

地上からここまで何百メートルあると!?


あんな・・・

さっきのあんな一瞬でこの深さまでの岩盤を全てくり抜いたとでも言うのか!?


 『な、なんだこれは!?

 この光はっ!?』


誰も、

オレはもちろん、カラドックや麻衣さんでさえ反応できない。


オレ達の驚きなど完全に無視されて、

地上から・・・いや、地上かどうかさえもわからないが、


くり抜かれた穴の上から


黄金色の光が降り注いで来たのだ。

正確な時間は分からないが、

今は夜更けの筈。


太陽の光なんてことは有り得ない。



それは

邪龍のカラダをすっぽりと包みあげ・・・


 『ぬああおおおおおおおお!?』


徐々に・・・

邪龍の意志も抵抗も、重力すら無視して・・・


その山のような巨体が浮かび上がる。



吸い込まれる。


天井に拡げられた暗闇の中に。



邪龍が。


オレ達の視界からも。


そして奴の気配は・・・

完全に



この洞窟から消え失せた・・・。



オレの後ろで、

放心したような麻衣さんの独り言が聞こえてきた。


 「きゃとるみゅーてぃれーしょん・・・。」



言葉の意味はよく分からなかった。


多分、それほど気にしなくてもいい言葉だったのかもしれない。



とりあえずツェルヘルミア嬢作りました。

できればヘアアクセサリー作ってみたいので

VRoid Hubにアップするのは完成してからにしようと思ってます。

挿絵(By みてみん)


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