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第四百九十四話 ぼっち妖魔は目撃する

<視点 麻衣>



どうやら嵐は過ぎ去ったようだ。

あたし達の目の前から天空の門が消えてゆく・・・。


思わず後ろを振り返ると・・・



うわあぁぁ・・・


洞窟の周辺ほぼ全てが抉り取られたように消失していた・・・。


 「ぜ、全員、無事か!!」


カラドックさんの声が飛ぶ。

言われるまでもなく全員健在だよ!!


 「・・・タバサ、

 世界最凶とも言える邪龍最大の攻撃を、あのタイミングで耐え切るとは、なんというセンス。」


今度はアガサさんが驚いてるね。

けれど当のタバサさんは、

誇らしげに見えるような、それとも苦り切った表情か・・・


 「なんとか成功したけど、MPほとんどすっからかん・・・

 そう何度も使うのは困難・・・!」


すぐにタバサさんはMPポーションをガブ飲み。

ううむ、今の術の展開時間はほんの5〜6秒だったはず。


なんとか邪龍の最大の攻撃を防いだはいいけど、邪龍がブレスを連発で仕掛けてこられるとヤバいのではないか?


それを警戒して邪龍を睨んでるんだけど、

攻撃を再開してくる気配ないな?

もしかしてブレス撃った後は硬直期間でもあるのだろうか?


・・・そんな美味しい話はなかった。

すぐに邪龍は動き始めたのだ。

どうやら邪龍も呆気に取られていただけなのかもしれない。



 『大したものだ。

 かつてこのブレスは、聖女というやからもユニークスキルとやらで防いで見せたが、今代の僧侶も我がブレスを一時とはいえ防ぎ切るとはな。』


 「聖女だと?

 前回、貴様を討伐したメンバーの中に聖女がいたのか!?」


ケイジさんが先頭に立って聞いてくれてるけど、互いに会話してる余裕あるのかな?

まあ、あたしも少しは気になるのだけども。


 『先のダークエルフといい、今のハイエルフといい、お前たちを侮れないのは理解した。』


もちろんダブルエルフのお二人は鼻高々だよ!


 『それと、その魔族の娘が持つ鉾と、

 獣人の少女が持つ剣も凄まじい威力よな。

 異世界のアイテムか、

 そんな物は前回、我に立ち向かった者達も持っておらなんだ。』


邪龍ったら、

最初はあれほど自信満々で、あたし達のこと舐めてたみたいだけど、

見る目を変えたってことなんだろうね。

ふっふっふ。


 『さらには我の攻撃を直前に察知する異世界の妖魔。』


まあ!

あたしのことではないですか!?

やめてくださいね?

別にあたしに注目しなくていいんですよ?


 『さて、そこでだ。』

 「む?」


会話はケイジさんに任せてあたしは様子伺いだからね。


さて、そこでなんでしょう?


 『我はこの後、如何にして貴様らを擦り潰すかだが。』


うう、まだそんな物騒なことを・・・。

諦めてどこか世界の果てとかにでも行って、大人しくしててくれませんかね?


 「そう簡単にやれるとは思うなよ!」

 『今のところ、貴様らに我の攻撃は弾かれているが・・・』


 「・・・。」


 『今のブレスも含め、連続で絶え間なく攻撃を続けていけば、貴様らの魔力も底をつくということで良いのか?』


うわっ。

ヤバい・・・。

そ、それは確かに。

あたし達は各々膨大な魔力を持ってるけど、

無尽蔵というわけではない。

MPポーションだって数に限りがあるし、

そもそも補給するときに致命的な隙が生まれる。


恐らく邪龍はまだ余力たっぷり。

今のところ一進一退を繰り返しているけど、このまま戦いを続けたら、いつか必ず飲み込まれてしまう。


 「・・・。」


ケイジさんは答えない。

有効な作戦はあるのだろうか?

もちろん、あるからと言って、ここでペラペラしゃべる必要は全くないわけで。


 『・・・返答はなしか、まあ良い。

 だが我の方はそれではつまらぬ。

 羽虫を潰すにもドラマや演出くらいあっても良いであろう?』



ん?

どういうこと?

攻撃パターンを変えるということ?

ていうか、邪龍にドラマとか演出とかって概念あるのか。


邪龍の意図がわからないのはあたしだけじゃない。

 「何が言いたいかさっぱりわからん。

 用件があるのならさっさと言え!」


ケイジさんの反応は当然だ。

邪龍は何をしたいのだろうか?


 『なに、ちょっとした悪戯心とでもいうのか。

 前回、人間どもに後れを取ったことが我の心に引っ掛かっておってな。

 その意趣返しをしたく思う。』



うん?

それは前回自分を滅ぼされた恨みってヤツかな?

そんなもんあってもなくてもあたし達を殺そうとしてるくせに。


その時だ。

邪龍のカラダに変化があった。


当然あたし達は緊張して身構える。


まるで邪龍の頭部部分がカラダの内側からせり出してくるみたいな?

分かりづらいかな、


それよりかは、お料理にたとえてみるか?

そう、まるでカレーの鍋の表面に、大きなあぶくが浮かびあがってくるような・・・



何かが来る・・・



この隙に攻撃してもいいような気もするけど・・・


そこまでの時間は与えてくれないか。



邪龍のカラダから浮かび上がってきたのは・・・


 「な、なんだ、あれ!?」

 「邪龍のカラダの中に人間ですかよぅ!?」


リィナさんとヨルさんの反応が早かった。


 「ボロボロになってはいるが、女性もののドレス!?」

 「・・・いや、あれミイラになっているんじゃ・・・。」


続いて見たまんまの情報を、

ケイジさんとカラドックさんが・・・。


現れたのはドレス姿の女性の死体・・・。

お腹に大きな穴が空いている・・・。


うわ!

内臓が露出してるのかと思ったら、

中で何かが蠢いているのが見え隠れする。

あそこにも邪龍の触手だかなんだかが侵食しているのか。


ううん、

これはミイラでもただの死体でもない。

ついさっきあたし達は似たようなものと戦ってきたばかりだ。


 「まさか、前回の邪龍討伐メンバーの一人か!

 まだ抱え込んでいやがったのか!?」


 『この者が前時代の聖女だそうだ。

 我と差し違えて心中しようとは恐れ入った。

 今でも大した女だと思う。』


聖女!?

勇者と同じくらいレアなジョブといわれている聖女!?


ついつい、反射的に鑑定すると、

ヒューマンとハイエルフのハーフで、

聖女ベルリネッタと表示された。

状態は前回の聖騎士さん達と同じく「傀儡」。


こんなところに・・・

邪龍と・・・

自分の命を賭けて邪龍を滅ぼしたっていうのか・・・


すごい・・・。

凄い人だ・・・。


でも、

でもそんな人をコイツはどうしようっていうの!?


死体にしてまで・・・

さっきの聖騎士の人たちみたいにその死体を弄んであたし達に攻撃させようと!?

自分の命を懸けてまで邪龍を封じようとした人に!?

ふざけてる!!

そんなの聖女さんの想いも覚悟も踏み躙って鼻で笑うような行為じゃないか!!


これはリーリト的にも怒りが沸々と沸いてくる事案っ!!



 『先程の・・・我のブレスを止めたハイエルフ・・・』


 「ん? 私!?」


え?

ここでまさかのタバサさんご指名?

とは言えさすがにタバサさんも邪龍に選ばれても嬉しくないだろう。


 『あの防御呪文は見事だった。

 だが、あの呪文で防ぐことができるのは、

 我のような特定の属性に連なるものだけではないか?』


え。



そ、それって・・・。


 『既に紹介した聖女のスキルは他の属性攻撃も防げるようだが、お前の防御呪文はそこまでではないな?

 では、例えば・・・だが、

 貴様らを包んでいるものと同じ、

 すなわち光属性の攻撃ではどうなのか?』


う、うわ、

ちょ、

ちょっと待って、


その話の流れで聖女さんを出してきたってことは・・・


あ、聖女さんのカラダから膨大な魔力が?



 『見えるか、感じるか?

 我が捉えたこの女の残骸から発する光の魔力を・・・!』



う、あ、あ

邪龍の言葉通り、

聖女さんの死体からとんでもない量の光の魔素が湧き起こる・・・。


前回も思ったけど、どういう原理で死者のスキルを・・・

もしかして邪龍にもユニークスキルのようなものがあるのだろうか?


いや!

そんな事はどうでもいい!

いま!

あたしの肉眼でも視えるこれは光の粒子とでも言うべきか!?


 『聖女のユニークスキルと言っていた。

 元は全ての邪を弾く光の渦、

 だが一度攻撃に転じれば・・・

 あらゆるものを塵と化す光の嵐になるとのことだ。』


邪龍の言葉をなぞるかのように、

聖女さんのカラダを中心に光の渦が巻いてゆく。



その光の嵐とやらをあたし達にぶつけるってことか!

これ・・・


防ぐ手段はあるのだろうか。



防ぐ手段?

そんなもの、

アガサさんにもタバサさんにもありません!!

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