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第四百九十話 ご対面

すいません、

何故ツェルヘルミアが領地の外に出ようとしてたかの件ですが、

字数が伸びて次回になるようです・・・。

<視点 ツェルヘルミア>


そうこうしているうちに馬車が速度を落とした。

窓の外を見やると、とても大きな洋館が聳え立っているのが見える。


城・・・の一歩手前の大屋敷だ。

さぞ贅沢しているのだろう。


まだ父母の顔は思い出せないが、

ツェルヘルミアは家族と良好な関係にあるのだろうか。


・・・家族、か。

オレに父親と母親は・・・


思い出せない・・・というより、

そんなものが存在したかどうかも分からない。


大事な家族はいたはずなんだが、

それは常にオレが守るべきものであって、

オレが誰かに守られていた、保護されていたという感覚がまるでないのだ。


ツェルヘルミアの感情も今は分からない。


この家は間違いなく、彼女の生まれ育った家なのだが、

家に帰ってきて安心したとか、

家に嫌なことがあって帰りたくなかったとか、どちらともわからない。


やがて馬車が堅牢かつ華麗な門を抜けて屋敷の正面に。


ウサギ少年リィドはナツリを厩舎まで連れて行く。


オレ達は馬車を降りて、

これまた重厚な玄関口を・・・


おおお、オレ達が帰ってきたのは分かっていたのだろう、

勝手に扉が開いたぞ?

中から若い使用人が扉を開けてくれたようだ。


 「お帰りなさいませ、ツェルヘルミアお嬢様!」


えっと・・・

ああ、先にバートラーが入るのね。


 「バートラー、只今戻りました。

 ツェルヘルミアお嬢様をお連れしてございます!」


そしてオレはバートラーの案内に従って後ろから家に入ると。


やっぱりというか、多少予測できたが大勢の使用人が両脇に並んでやがる。


エントランスの奥には・・・


奥には


奥には



いかめしい顔した貴族・・・

はい、お父様ですね、

そして隣には泣きそうな顔でこちらを見つめる・・・

ええ、お母様です。


 「「ツェルヘルミア!!」」


二人ともダッシュで駆け寄ってきた。

お母様、そんな長いドレスで駆けるとさっきのオレみたいに転びますよ?


ああ、なるほど、

お父様はガッチリ体型の長身で、

お母様は彫りの深い立体的な顔立ちだ。

年は40行ってない筈。


うん・・・すんげえ美人だ。

これは娘のオレも期待できるな。


 「し、心配したぞ、ツェルヘルミアっ・・・て」

 「ツェル、ツェル、あ、あなたその姿はっ きゃああああああああっ!?」


 「「いったい何がああああああっ!?」」


どうやら純粋に心配してくれてるようだ。

とりあえず何度も同じ説明したくないので、

バートラーにほとんど任せた。

正直めんどくせーもんな。

もちろん補足的なことや、二人に聞かれたことに対してはオレ自身で答えておいた。


記憶に障害があるという話もある程度信じてくれたようだ。



一方、オレの・・・ツェルヘルミアの感情は・・・

どうやら父母に会ってから次第にはっきりしてきたようだ。



湧き上がってくるこの感情は・・・

憎しみ・・・ではないよな。

微妙に分かりづらいが、怒り、憤り・・・悲しみ?

どういうことだ?


この両親の態度からも、ツェルヘルミアを大事にしていることはわかる。

ツェルヘルミアの記憶からでも二人の愛情は感じられる。


じゃあ、なんでツェルヘルミア本人は、実の両親に対してそんな感情を抱いたままなんだ?




途中、ムスメを傷物にされた父親のように興奮している侯爵が、「すぐにウィルソンを呼んでこい」と叫び出す。


ウィルソン、

・・・ああ侯爵家お抱えの治癒士とやらだな。


ツェルヘルミアの記憶をサーチする。

ウィルソンの顔は・・・やっぱり思い出せないが、

治癒士の方は検索に引っかかった。


ここでは医者ももちろんいるが、

医者ってのは、オレらの感覚でいうと、

ほとんど内科医のことらしい。


外科や皮膚科は治癒士か僧侶の出番だと。

僧侶?

祈祷でもするのか?


いや・・・魔法?

魔法っ!?


オレがその情報を整理しきれないうちにウィルソンとやらがやってきた。

ロン毛でローブを纏った30代くらいの陰の薄そうな男。


本来治癒呪文を扱うには、どこかの宗教に入信して修行する傍らスキルを獲得していくんだそうだが、

特定の宗派を持たなくても僧侶呪文を獲得することは可能らしい。


そういう職種についたものを治癒士と言うそうだ。


そして治癒士ウィルソンはオレの真正面にやってきて・・・

やっぱりコイツもオレの火傷見て驚くのか。


 「ウィルソン!

 娘は・・・ツェルヘルミアは治るのか!?」


 「傷、火傷一つ残すことは許されませんわよっ!?」


お父様、お母様落ち着いて。

気持ちはよく分かる。

きっと、

オレも自分の娘が傷だらけになったら似たような反応するだろう。

もしそれが誰かにやられたものなら、

オレはそいつを七万五千二百六十三回はぶっ殺すかもしれない。


 「お、おまかせを!

 さっそく回復させていただきます!

 『何人なんびとにも平等に降り注ぐ光よ、の者を癒し給え、ヒール!』」


え?


おっ!?


オレのカラダが柔らかい光に包まれて・・・?


あ、これも思い出した!!

ここじゃケガをこうやって治すんだ!


うん、やっぱりここは地球じゃねぇ!!

オレたちが住んでた世界とは全く異なる別世界・・・異世界っていうのか?


 「ヒール一回じゃ治りきってないようですね・・・

 ではもう一度・・・『ヒール』!!」


おお、痛みは全くなくなったぞ?

これで完治したんじゃないだろうか?


 「恐らく火傷のたぐいは全て治ったと思うのですが、

 男の私ではその確認をするわけには参りませんので・・・。」


 「そうね、ではシーデー?

 娘を入浴させながら、宝石のようなツェルのカラダに傷が残ってないかどうか、確認して頂戴。」


お母様の命令で、

すぐにオレの後ろに貞淑そうなメイドが一人、頭を下げた。


シーデー。

もちろん知ってる。

ツェルヘルミア専属のメイドだ。


 「お嬢様、ではこちらに・・・。

 ご入浴はすぐにできますので・・・。」


風呂に入れるのか。

それはありがたい。

疲れてるし腹も減ってるが、カラダの汚れも落としたい。

オレは清潔好きなんだよ。


屋敷の中もすげぇ広い。

ツェルヘルミアの記憶にももちろんあるんだが、

実際の自分の目で見るのとでは全然迫力が違う。

風呂場も凄いんだろうな。


 「お嬢様、こちらでございます。

 お召しのものを外すのは私にお任せください。」


脱衣場も豪華だな。

純銀製のランプやふっかふかのバスマット。

あの棚に並んでる陶器のボトルは何だ?

入浴後の肌に塗りたくる乳液とかオイルとかか?

男のオレがそんなもん使ったことなんかねーからな?

どこか高級ホテルのロイヤルスイートってこんな感じなんだろうか。

まぁ、それも気になるんだが・・・。


 「えっと・・・シーデーよね?

 私の専属の・・・。」


オレの後ろに控えているメイドを振り返る。

確かツェルヘルミアより年上だったはずだ。

二十歳を越えた辺りだろう、

前髪を綺麗に切りそろえたボブカットの女性だ。


 「は、はい、左様ですが、

 お嬢様、本当に記憶が?」


彼女は戸惑いながらも流れるような動作でオレの衣服を外していく。

プロだな。


 「・・・ごめんなさい、

 今、みんなの顔を見て、ようやく記憶が戻りつつあるんだけど、

 まだ完全と言えなくて・・・。」


 「そ、そうなのですね・・・。

 それは確かにウィルソンの回復呪文では記憶までは回復できないでしょうし・・・。」


話をしながら完全にスッポンポンにされてしまった。

同性同士問題ないと言うべきなのか、

男の感覚だと初対面の女性に裸にひん剥かれるのはどうなんだと思う。


・・・ただ脱衣場には大きな姿見があった。



そこにはハニーブロンドの髪を垂らした長身の女性が映っている。



 「ツェルヘルミア・・・。」


思わずオレは驚愕の声を漏らした・・・。

美しい・・・。



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