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第四百八十九話 帰路

<視点 ツェルヘルミア>


・・・獣人。

耳だけでなく鼻もヒクヒクしている。


そしてオレは理解する。

ここは地球とは違う世界。


以前も、

何処かで普通の人間とは違う異形の存在を見た事がある気がする。


だが奴らは遺伝子異常の化け物だった。


この世界の彼らは化け物ではない。

ちゃんとした種族だ。

他にも犬型獣人、猫型獣人、馬型獣人とか、複数の種族も・・・



あれ、おかしいな?


なんで


地球じゃないってのに、


人間は人間の姿で

獣人は地球の各種動物の特徴を備えている?



 「お嬢様っ!?」


いや、今は彼らに応えないと。



 「心配をかけて申し訳ありません、爺や、リィド。

 ご覧の通り、外見は大変そうに見えるでしょうが、私自身の体は無事ですわ。」


 「なにを仰っているのです!?

 お嬢様の美しいカラダが火傷だらけではないですかっ!!

 そもそもどうして誰にも告げずに屋敷をお出になられたのですかっ!!」


そう言われてもなあ。

未だに思い出せねーんだよ。


ていうか、やっぱりお忍びで外出してたのか。



 「えーと、どこから話せば良いか、

 私の馬車に雷が落ちたというのは聞きました?

 それで・・・残念なことに記憶が、完全に消えてしまって・・・

 いま、爺や達の顔を見るまで二人の名前はおろか、存在すら思い出せなかったのです。

 さらにいうと今この段階では、

 お父様やお母様のお顔さえ思い出せません。」


 「な、何と・・・そんな、

 いえ、

 そんなお姿を見てしまった以上、それを嘘とは言えませんな・・・。

 では、お嬢様を連れ出したモリソンはどこに?」




モリソン?


・・・ああ!

馬車に乗ってた御者か!

あいつの名前も今思い出したぞ。


 「・・・ああ、彼の名前もたった今、思い出したところです。

 ですが、モリソンは落雷を受けて即死していました・・・。

 生き延びたのは私と馬のナツリだけです・・・。」


あれ?

なんだ・・・?

心がザワザワする・・・。

これはツェルヘルミアの感情か?


 「おお、なんということ・・・。」

 「ええっ!?

 モリソンのおっちゃん、死んじゃったの!?

 朝に会った時はあんなに元気だったのに!?」



む・・・

目頭が熱くなってきた・・・。

カラダが小刻みに震えているのがわかる。

これ・・・ツェルヘルミアが悲しんでいるのか・・・。


まだ、

ツェルヘルミア達が黙って城門の外に出ていた理由は分からない。

分からないが恐らくツェルヘルミアが自分の都合で外に出たのだろう。


そして、ツェルヘルミアのせいではないが、馬車が落雷に遭った。

重ねて言うが、ツェルヘルミアのせいではなくとも、結果的にそれが原因で御者のモリソンは死んだんだ。


18才、

そうだ、ツェルヘルミアは18才だが、

その年齢の少女に、長年侯爵家に仕えていた御者を死なせてしまったという事実は心に堪えるだろう。



お前のせいじゃない。

だから泣くなよ、ツェルヘルミア・・・。


 「お嬢様、念の為ですが、モリソンがお嬢様に良からぬことなどは・・・。」


ふざけんな。


 「ありません!

 馬車の中に私が拘束されたりしていたような形跡はありませんでした!

 恐らく私の都合で屋敷を出たのでしょう。

 記憶が戻らぬ以上、迂闊なことは申し上げられませんが、少なくとも今の段階で、モリソンに不名誉な疑いを向けることは許しません!」


もちろん執事のバートラーも分かっていて聞いてるんだろう。

その仕事の役目上、オレに確認取らなきゃならなかっただけのはずだ。

だからオレもそれ以上は言わない。


 「か、かしこまりました、

 では、一刻も早く屋敷に戻りましょう。

 旦那様がたも心配されておいでですが、

 まず、その火傷や傷も治癒士に治させねばなりません。」


治癒士・・・

医者じゃないのか?


ああ、オリオンバート家お抱えの治癒士・・・

むう、それ以上思い出せん。






帰りは侯爵家の別の馬車が用意されていた。

御者はまた別の男で、

ユアンだったかな。

まあ使用人は大勢いるからな。



オレと執事のバートラーが一緒の馬車に乗る。

ウサギ少年リィドはナツリの背中だ。

この年でもう乗馬できるのか。

そりゃ凄いな。


オレ達の前にも馬に乗った三騎の騎兵が先導している。

リィドとナツリは殿だ。


御者のモリソンの件だが、

後で遺体を引き取りに行ってもらうよう掛け合おう。

あの時は記憶も全く蘇らずにこっちも混乱真っ最中だった。


ツェルヘルミアが何故黙って家を出たのか、

原因を調べると同時に、ちゃんとツェルヘルミアにお別れをさせてやった方がいいかもしれない。


それにしても侯爵令嬢ともあろうものが、使用人の死を悼むとは優しい女じゃないか。

何の因果でオレがお前のカラダの中にいるのかさっぱり分からんが、

オレがこのカラダにいるうちはお前のことは守ってやるからな。



・・・ん?

少し心が落ち着いた?

さっきまで手足に余計な力が入っていたが、今は普通に動く。


もしかしてオレの思考がツェルヘルミアに伝わっているのだろうか。


・・・さっぱりわかんねぇ。



馬車の中では最低限の話だけさせてもらった。

別に執事のバートラーが嫌いとか苦手とかそういうことではない。

まだ体調が優れないだけだ。


暗殺者でも襲って来るなら、いくらでも迎え撃ってやるといいたいところだが、

多分10分も動けない。

途中でガス欠となる。


なのでまたしても休ませてもらった。


モリソンの件と、

馬車の振動のせいで眠れやしなかったけどな。



市街地エリアを通り抜けるようだ。

電気はなくとも街灯はあるんだな。

間隔はかなり空いているが、主要な通り沿いには何本も街灯が立っている。

油かなにかで・・・

いや、もうこの辺りはツェルヘルミアの記憶から引っ張り出せる。

アルコールランプみたいに芯を伸ばして街灯の下に油を溜めているんだ。

夕方になると係りの人間が油を注いで回るのだとか。

点火はどうしてるんだろう?

3メートルくらいの長さの着火マンでもあるのだろうか。


そして油が切れる頃には朝になると。

なるほどなるほど。

・・・それって爆発する心配はないのか?



街並みは綺麗だ。

東洋風の建築はない。

侯爵が治める街だけあって、美観もしっかりしている。


メインストリートのようなところは人々の賑わいがあった。

歓楽街はまた別の場所だそうだが、

夜でもそこそこ人はいるのだろう。


酒を飲みながら、脇道でボードゲームらしきものをしている連中もいる。


 「雰囲気の良い街ですね・・・。」


静かにしていたオレがいきなり口を開いたのに違和感を覚えたのか、

執事が不思議そうに尋ねてきた。


 「お嬢様、どうされました?」

 「いえ、私はどうして街を出ようとしていたのか、どうしても分からなくて・・・。

 バートラーも何か心当たりとかはないでしょうか・・・。」


 「・・・いえ、

 申し訳ありませんが・・・。」


ん?

何か間があったな。

一瞬、考え込んだのか、

それとも何かを悩んだのか。


 「バートラー?」

 「は、いえ、まずはお身体を休めていただきますよう・・・。」



これは・・・使用人が何かを知っている可能性もあるか・・・。





ツェルヘルミア編、下書き全て書き終わりました。

いよいよ邪龍編の再開下書き作業復活です。

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