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第四百四十八話 迎えに来た二人

ぶっくま、ありがとうございます!

<視点 ツェルヘルミア>


うっわ、恥っずっ!!

起き抜けだったせいか、よろめいちまった!

いくら女のカラダになっているとはいえ、

仮にも世界最強(自称)とまで言われたこのオレが、何つぅみっともないマネを・・・。


幸い見張りをしてくれていた衛兵が体を受け止めてくれたようだ。

これでズッターンって倒れてたら目も当てられないもんな。


 「ああっ!

 申し訳ありませんっ!

 私ったらなんてそそっかしい・・・っ!」


ホント顔から火が出るほど恥ずかしいよ。

まだしばらくは体力も回復しなさそうだな、この分だと。



ていうか、何か途轍もなく不快な夢を見たような気もする。

体力があまり回復してないのはその精神的ダメージがあるのかもしれない。


何見たんだっけかな?

誰か気持ちの悪いヤツに迫られてたような・・・?



 「おっ、お気になさらないでくださいっ!

 ツェルヘルミア様をお守りできることは私にとっても誉となりますのでっ!」


大袈裟だな、この衛兵も。

もっともそれだけこの辺りでは侯爵とやらの権力が強いのかもしれない。


ただな、

オレにもプライドがある。

いつまでもこんな一衛兵の世話になるわけにもいかない。

カラダをゆっくり離して・・・

あ、そうだ。


口止めしておいた方がいいな。


 「あ、あの、できましたら・・・」

 「は、はい、ツェルヘルミア様、な、何なりと・・・。」


そう緊張するなよ。

別に権力を笠に着て面倒な注文をするわけじゃない。


 「こ、こんな恥ずかしいことは、だ、誰にも言わないで頂けると・・・。」


世界最強の男・・・女? が躓いてコケそうになったなんて笑いのタネにしかならんもんな。


 「は、はい! 勿論ですっ!! 

 秘密・・・!

 秘密ですよねっ!?」


ん?

やけに嬉しそう、

・・・ていうか、なんでコイツの方が恥ずかしそうにしてるんだ?




・・・あ


そ、そうか、

オレは今、美女姿だったんだっけか。


あー、それでさっきの・・・


そうだよな、

オレは昔っからむさい男どもと組み手や練習やってたから、別に男と密着するような事があっても日常茶飯事だが、

こいつにとってみたら女のオレはそうじゃないってことか。


まあ、もう一声かけておいた方がいいか。


 「ですね!

 二人だけの秘密ですよ?」


 「ふぐっ!?」


あ、あれ?

そんなつもりはなかったんだが、

唇に指一本立ててウインクしたぞ、ツェルヘルミア。


その瞬間、衛兵が胸を撃ち抜かれたように固まっちまった・・・。




もしかしてオレの人格とツェルヘルミア、

変な具合に融合してるんじゃないだろうな?

彼女はこういう性格なんだろうか。


うん、男から見たら嫌いじゃない。

嫌いじゃないが・・・

それをオレがするのはどうなんだ・・・。


むうううううう。



いや、悩んでいても仕方ない。

早急に解決しなきゃいけないのはそのことでもない。


まずはオレの置かれた状況を確認せねば。



迎えが来たというのなら早く家に帰ろう。

案内・・・おい、衛兵、

早く再起動してくれ。


 「あ、あの衛兵様?」

 「はっ!?

 あ、し、失礼しました!!

 あ、あのっ、ツェルヘルミア様・・・!」


ん?

まだなんかあんのか?


 「はい、何でしょう?」

 「た、大変、失礼な、願いなのですが・・・」


なんだ?

早く言ってみろ。


 「い、妹が、あなた様の大ファンで・・・

 家に帰ったら妹に自慢してやりたくて・・・、そ、その、

 ツェルヘルミア様と握手する事など・・・いえ、ぶ、無礼な願い、ですよね?」


ほお?

こいつ妹がいるのか。


うーん、

まあ、普通に芸能アイドルがファンに握手サービスするようなもんだよな?

いいんじゃねーのか?


 「いいですよ?

 でも皆さんが殺到してきたら大変なので、これも妹さん以外には秘密にしてもらえますか?」


 「あっ・・・

 ありがとうございますっ!!

 はいっ!!

 妹以外には喋りませんっ!!」


 「うふふ、妹さんを大事にしてあげてくださいね?」


 「は、はいっ!!」


そうだよな、妹はどんな時でも大切にしてやらないとな。




やけに長く感じる握手をしてやった後、

やたらめったらハイテンションな衛兵に案内されて、オレは城壁の内門の先へと向かった。


さっきの衛兵の責任者もいるが、

完全に衛兵とは違う身なりの二人の人物がそこにいた。





知っている。

オレはこの二人を知っている。

初老の男性と小柄な少年。


いや、これも今思い出したんだ。

二人の顔を見た途端、彼らが誰で、どんな人物であったかと。


そしてそれと同時に、オレは一つの衝撃を口の中に飲み込んだ。


だって小さい方の少年は・・・



 「おっ、お嬢様っ!!

 知らせをお聞きした時は耳を疑いましたが・・・そのお姿はっ!!」


一人は執事姿の初老の男性、バートラーだ。

ツェルヘルミアが生まれる前から侯爵家に仕えている男。

こっちはいい。


問題はもう一人。


 「ツェ、ツェル様っ!!

 その格好、どうしたのっ!?」


こっちだ。

いや、名前も顔もみんな思い出した。

見た目は少年というよりも幼い児童。

今、八才だよな。

現代感覚だと、

屋敷でそんな児童を働かせていたら、

児童虐待とかで労働法に引っ掛かりそうだが、

ツェルヘルミアがいるこの国では合法。

ていうか、

もちろんそんなキツい仕事はさせていない。

年相応の軽作業だ。

一応、役割は小間使い。


名前はリィド。

三人家族で両親も屋敷で働いている。

父親は庭師で母親は洗濯係だ。

その父母については、

ツェルヘルミアが雇ったというか、拾ってきたというか、親におねだりしたというか・・・。


その時にはリィドはまだ生まれていない。


そう、

現代人のオレの感覚じゃ、

素直に受け止めづらい話なんだが・・・

彼の両親は奴隷だった。


奴隷販売所で売りに出されていたその両親を、ツェルヘルミアが幼い時分に見初め、

その場にいた父親におねだりして、二人とも侯爵家で買い落とした。

勿論、その時の彼女に罪悪感などまるで無い。


「お父さま、あれ買ってー!」

「よしよし、仕方ないな、お父さまが買ってあげるとも!」


まあ・・・それがこの国の習俗なんだろう・・・。

そして真面目に二人が働いているうちに、

このリィドという男の子が生まれたのである。

まあ、奴隷と言っても侯爵家だ。

奴隷が悪さをしなければ虐待も暴行もあるはずが無い。

三食ついて睡眠時間も休憩時間もたっぷりあるのだ。

この家に買われてこの家族は幸せだったといえるのではないだろうか?

同じトライバル王国の他の領地では、

奴隷など骨と皮だけで暮らしているという話も耳にするくらいだ。

・・・ましてや彼らの「種族」なら。


そして実質、この家での彼らの主はツェルヘルミア。

そんなところへ新しく生まれてきたリィドを、ツェルヘルミアが自分の弟のように可愛がっているのは容易に想像できるだろう。




そして今オレが衝撃を受けているのはまた別の話。


すなわちその姿、外見。


ツェルヘルミアにしてみれば、

何を今更と思うのだろうが、現代の・・・

そしてここはおそらく地球ですらないのだろうと、オレが確信するに至ったその姿。



先程、弟扱いと言ったが、それは正確でないかもしれない。

正しくは愛玩動物というペット扱い、と言うべきだろうか。




そう、

少年リィドには、

白く長いウサギの耳がついていたのだ。

 

いぬ

「あっ・・・。」

うりぃ

「そういうことやったんか・・・。」


次回、ツェルヘルミアが領地の外に出ようとしていた理由が明らかに


・・・字数が予定を超えなければ・・・。

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