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第四百八十話 調子に乗った報い

さぁ時間までにアップできるか!?

<視点 ケイジ>


 「うげ?」


麻衣さんが年ごろの女の子にあるまじき声を出した。





・・・オレのユニークスキルはイーグルアイ。


どんな遠くでも小さいものがよく見える。



外套。

確かに大きく破られて、特に片足の太腿も露わになっている。


ふともも、だけ、じゃ


ないよな。




麻衣さんの二つの目は、

信じられないものでも見たかのように、オレに視線を合わせて


そしてすぐに

何が起きたのか理解してしまったのだろう、

そのカラダは大事な部分をオレから隠そうと、必死に腰を捻りお尻をオレに向け・・・


いや、その態勢でも見え


 「ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」


これまで聞いたことがないほどの麻衣さん最大出力の悲鳴。

いや絶叫。

その瞬間、オレは全身のすべての力を絞りつくして邪龍へと体を戻す。


この状況、全力で麻衣さんを救出に向かわなくてはならないのに・・・


けどダメだ!!

オレには麻衣さんを救いに行ける資格がない!!



 「うっああああああああああああん!!

 見られたああああああああっ!!

 ケイジさんに見られたああああああっ!!」


オ、オレなのか・・・。

やっぱり角度的にも能力的にも、

麻衣さんの大事な部分を見てしまったというなら、カラドックではなくオレだけが・・・


け、けどここは出来る事なら何もなかったことに済ませられないのだろうか!?

それが一番いいに決まってる!!

ならばオレは全力で・・・


 「いっ、いや、暗いし何も見てないぞっ!!

 オレは何にも見てないっ!!」


もう首は戻せない。

後ろから飛んできた麻衣さんの糾弾にオレは必死に反論する。

実際暗いしな。


・・・でもそれは麻衣さんの前ではささやかな抵抗に過ぎなかった・・・。


 「ウッソだああああああああっ!!

 ケイジさん、こないだ夜目も利くって言ったばかりなのにいいい!!

 騙そうとしたあああああああっ!!

 よくも! よくもあたしををををっ!!

 騙したあああああああああああっ!!

 ケイジさんの嘘つきいいいいいっ!!」


・・・あっ




 「むぅ、これは悲惨、麻衣の小ぶりな具が衆目に晒される不幸。」

 「いえ、ここは同情、麻衣の可愛らしい割れ目がご開帳となる惨事。」


 「二人とも冷静に解説してないでくださいよおおおおおっ!!」


いや、エルフども、

具とか割れ目とかそんな生々しい表現を・・・


ていうか、え、ちょ、これ、どうしたら・・・


 「麻衣さん!

 とりあえず虚術を!!」


カラドックが叫ぶ。


 「え? あっ、そ、そうですねっ!

 『ダークネス』!!」


あっ、暗闇呪文か、

なら振り返って大丈夫だよな?

うむ、

麻衣さんのいた辺りが真っ暗になり何も見えなくなった。


おかげでオレが見てはいけないものを見る心配はなくなったんだが、

これこの後どうすればいい?


 「続いて『ゼロ・グラビティ』!!

 これで落っこちる心配ありません!

 はっ、早くこの触手、ぶった斬って下さいっ!!」


おっ、無重力呪文か!

真っ暗闇の塊の中から麻衣さんの声が飛んでくる。


 「わ、分かった!!」


アガサの氷呪文で、凍結とまではいかなくても、動きの鈍った触手ごとき造作もない。


狙いはダークネス範囲外に見えている邪龍の触手!!

巨大なタコの脚でも切る気分でオレはその触手を真っ二つにする。

その衝撃で、麻衣さんのカラダがどこかに飛んでいく可能性もあるんじゃないかと思ったが、

いつの間にか緑色の大蛇を呼び出した麻衣さんは、

触手の切れ端を噛みつかせた大蛇に、安全な地上へと引き摺り下ろしてもらったようだ。

もうそこはダークネスの暗黒空間の外でもある。


 「う、あ、あ、スネちゃん、ありがと!

 それとあと誰かこの巻き付いているのをっ!!」


すぐに向かったリィナが、

ザクザクザクザク触手を切り刻んでいく。


その間、麻衣さんは、

女の子座りで顔を真っ赤にしたままだ・・・

どう見ても涙ぐんでいる・・・。

でもあの座り方なら・・・

少なくともオレの位置からは何もヤバいものは見え・・・ないよな?



 「うううう、リィナさんありがとうございます・・・!」

 「麻衣ちゃん、大丈夫だからね・・・。

 後で全部なかったことにするから・・・。」


それって

どういう


リィナが触手を引き剥がすと、

すぐに麻衣さんは巾着袋から替えの下着を取り出して


 「ホラ、ケイジはこっち見てんじゃないっ!!

 お前は邪龍を相手すんだよ!!」


ぎゃふっ!

リィナに蹴り飛ばされたぁっ!


す、すまんリィナ、

全くもってお前の言ってることは正しい。

た、ただ、一つだけ・・・

いま、オレ、目に涙を溜めた麻衣さんにずっと睨まれまくっているんだけど、オレの事はうまくとりなしてくれるよな?

オレらこの後ずっと一緒だって誓い合ったよな!?

ていうか、オレそんな悪くないよな?

誰がどう見ても今のは不可抗力ってやつだよな?


オレはリィナに言われた通り、再び邪龍の方へと向かう。

もう一本の、さっき麻衣さんを貫こうとしてした触手はヨルが破壊してくれていた。

あの触手には再生機能があるようだが、少しの時間は稼げるだろう。


 「ヨ、ヨル、よくやってくれた!

 礼を言う!!」


マジでありがたい。

本来、オレが麻衣さんを救いに行けなかったのなら、

せめてそっちを対処すべきだったんだろうが、

麻衣さんの方が気になってそれどころじゃなかったんだ。


 「別にお礼を言われることじゃないですよぅ。」


・・・あれ?

ヨルは気にもしてないような口ぶりだが・・・これアレだ。

たまにヨルが見せる無関心無感情な態度・・・。

いや違う!!

こっちに目も合わせてくれない!

完全に相手を軽蔑してる時の表情じゃねーか!!


 「ヨ、ヨル、さん、あの・・・。」



反応が・・・ない?


オレとヨルのカラダは二人とも邪龍に向けて・・・。

ヨルはその顔も視線も邪龍に・・・

いや、当然なんだけども!

オレも顔は邪龍に向けてるんだが意識だけヨルの方に


 「ケイジさぁん。」


あっ、ヨルが声を発してくれた!!


 「な、なんだっ!?」


 「ヨルはぁ・・・これでもヨルは、最近ケイジさんのことちょっと見直していたですよぉ。

 あっ、もちろん一番はカラドックですからねぇ?

 そこはわきまえて、ヨルに変な気は起こさないで欲しいですよぉ。

 けれど、まぁ・・・今はもうケイジさんの体毛も見慣れてきたですしねぇ、

 普通にヨルの中ではケイジさんはかっこいい男の人だって認識になっていたですよぉ。」


・・・いや、褒められてるようで、いろいろディスられているようにしか聞こえないんだが。


ていうか、この流れってもう・・・。


 「ケイジさぁん。」

 「あ、ああ・・・?」

そこでやっとヨルは視線をオレに向けてくれた。

 

あの・・・例の醒めた視線のまま・・・。




 「ドン引きですよぉ。」


ぐはっ!!




なんで。


なんで邪龍と直接まだ戦ってもないのに、

こんなに精神的なダメージを受けなければならないんだっ。

しかも味方から!!


オレが悪いのか!?

そんなにオレ社会的に致命的なマネやらかしたってのか?

別に麻衣さんの・・・ナニを見ても得したとか嬉しいとかないし、

・・・ちょっと記憶の中に映像がこびりついてしまうようなことはあるかもしれn


 「ギルティ!!」


げぇっ!! 麻衣さんっ!?


 「この子に七つのおいわ」

ヒィィィィッ!

その呪文はああああああああああああっ!?


 「麻衣さんストップストップだよ!!

 それはやめてあげて!!」

 「うううう、カラドックさん・・・っ。」


 「麻衣さんは感情を抑えることのできる妖魔の血を持っているんだよね!?

 なら心を落ち着かせることが出来る筈だ!!

 今この場で敵は邪龍!! 

 麻衣さん、君には冷静にそれを判断出来るだろう!?」 


あああ、あぶねぇ・・・っ!

後ろでカラドックがオレを救ってくれたようだ。


・・・やっぱりカラドック、

お前はオレを何度でも救ってくれるんだな・・・。





 『このヌスカポリテカの前に余裕だな、貴様ら』



あ、いや、ホントにすまん。



 

この後、麻衣ちゃんは我に返ります。

 「あ、う、いえ、ケイジさんがそんな悪くないのはあたしにも・・・。

 で、でもですね!?」

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