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第四百七十四話 ぼっち妖魔は決意する

あけましておめでとうございます!


ぶっくま、ありがとうございます!


<視点 麻衣>


 『麻衣ー、これでお仕事しゅーりょーでいいのよねー?』


オックスダンジョンの出入り口は岩石の山で完全に埋め尽くしてしまった。

魔物といえどもそう簡単に這い上がっては来れないはずだ。


 「・・・はい、ラミィさん、ありがとうございました、

 あたしの期待以上の成果ですよ・・・。」


一部予想以外の出来事が起きてしまったけど、

「そっちの方面」の話に限って言えば死者もでていない。

あたしが贅沢言える話ではないだろう。


 『うっふっふっふー♪

 ようやくこのラミィさんの凄さが理解できたのねー?

 まー、でもあたしもスタンピード中の魔物と戦うこと自体初経験だものねー、

 新鮮な刺激だわー。』


どうやら向こうのほうでベルナさんが、

ラミィさんにスタンピードの影響はないのか不思議がってるようだ。


・・・そう言われるとそうだよね・・・。

いまっ、さらっ、何をと言われるかもしれないけど。


召喚士のように、契約が発生している魔物にはスタンピードの影響はないんだろうか?

それとも話は単純で、

ある程度知能を得ている魔物には、スタンピードの影響を受けないということなのか、

或いは両方の理由か。


少なくともラミィさんには全く影響はなかった。ならあたしが気にする必要はないのだろう。

ラミィさんも特に影響は感じないらしい。


ならそれで問題はないはずだ。

そういうことにする。


他に気にすべきことはたくさんあるのだから。


まず、

ラミィさんがちゃんと村人のみんなの魅了を解いたかどうかの確認。

 『ちゃんと解いたわよー、

 こんだけ魔物の新鮮な死体あるんだから、食べ物には困らないしー。』


少し不安を感じる物言いだけど、

当面は大丈夫だろう。


 「そう言えば、結構レベルやスキルポイント稼げたんじゃないですか?

 人化行けそうです?」


 『あー、さすがにまだ足らないみたい。

 でもこの調子で暴れたらそう遠くないうちに人化取れそうね。』


この先、全てうまく行けば・・・

あたし達が無事に邪龍を討伐できれば、

世界中から邪気の蔓延が止まる。

そうすれば再びダンジョンを開放することになるだろう。

その時にラミィさんが内部確認も兼ねてダンジョンアタックを敢行すれば、目的は全て達成できそうな勢いだそうだ。


あたしと直接やり取りしたわけじゃないけど、ラミィさんを挟んだケーニッヒさんとのお話だとそんな感じ。




・・・そしてもっと大事な話だ。


今この段階で、

あたしがカタンダ村で深く関わった人たちに死者は出ていない模様。


良かった。

それは凄い良かった。


けれど、

ケーニッヒさんやベルナさんの表情は重い。


彼らの知り合いの中には、当然死者は発生しているし、

話の中にはあたしが「あ、あの人たち」と認識できる冒険者だっているのだ。


もうその人達は帰って来ない。



ベルナさんは

「まーちゃんがうしろめたく思う必要は全くない」と言ってくれている。

もしそうだとしたら、あたしたちは役立たずどころじゃねーだろ、との事だ。


うん、

・・・そうなんだけどね。


こっち側でもカラドックさんも同じ意見のようだ。

戦闘の隙を見つけてケイジさんまでもあたしを慰めてくれる。

 「麻衣さんの行動は何もおかしくない、何も間違っていない。

 もう少し何か出来たろう、なんて抜かす奴はオレが叩きのめす。」



ううう、ケイジさんの気遣いが地味にハートを直撃する。

あたしを惚れさせてどうしようというんだ。


ていうかですね、

いま、あたしの内心はとても穏やかじゃないんですよ。


もちろんその原因はカタンダ村に犠牲者が発生していることなのだけど、

それとは別として、


あたし個人が邪龍に怒りを覚えてしまっているという話。



これまで、何となく、話の流れで、

何か義務感のような感じで邪龍討伐についてきた。


やることさえやってしまえば、

あたし個人の感情なんてどうでもいいとさえ思うほどに。


けれど今は明確に邪龍をどうにかしたい。


メリーさんではないが、

あたしにも戦う理由が出来たようだ。


・・・これはあたしにとって必要なイベントだったのだろうか。



さっきも言ったけど、

やることやれるのなら、そんな必要ないとは思うのだけど。


あたし個人には・・・




ああ、

例の黒髪の子のこともあるのだろうか。


なんかあたしがあの子を救うことになってなかった?


いや、そこまではっきりしたことは・・・


大体、あの子はこの世界で既に一度死んで、

この世に生まれ変わる以前に邪龍にその魂を喰われてしまっている。


邪龍を倒せば救えるの?


・・・それも何かおかしい。




少なくともあたしが救うと考える存在は、

この世界のあの子じゃない。

あくまで元の世界の黒髪の子だ。


例え同一人物だろうと、違う歴史、違う世界に生きていたのなら、それは別人とさえ言っていいはずだ。


となると、この話も

やはり「ズレている」と思うべきなのか。


前回、ケイジさんと話し合った時か、

それとも世界樹の洞窟で女神さまが、

メリーさんの記憶を見て違和感を覚えたのと同じように。




 「麻衣さん?」


カラドックさんも心配してくれている。


・・・いや、そう、

これまで、


あたしがあの人の巫女として、

何か困ったことや追い詰められたような事なんて何もない。


意表を突かれたことや想定すらしてない出来事を起こされたことはたくさんあるけども。


なら、

あたしはあたしの出来ることをする。



最後の敵まであと少し。


邪龍、

首を洗って待ってるがいい。


異世界からのお土産持ってそっちに行くからね。





 『ねーねー、麻衣ー?』



あれ?

いい感じにまとめようとしてたのに、横槍入った。

 「なんですか、ラミィさん、

 そろそろそっちもキリが良さそうならコネクト切りますよ?

 まだ何かあります?」


これ以上はみんなに迷惑は掛けられない。

そろそろ出発しないとならないだろう。


 『あの人に会わなくていいのー?』



・・・






ほわっと?


 『名前なんだっけー、

 ホラ、あたしの胸をガン見してた人ー、

 今はさっきのエステハンさんておじさんに胸にこんな布切れ巻きつけられちゃったけどー、

 外してから探しに行った方がいいー?

 この人たちに聞いてみるー?』


なんでわざわざ隠してもらった胸を大公開したがるのよ?

別に男の人は女性を胸の大きさで個体区別してないからね?


ていうか、あたしとラミィさんの共通の知り合いなんて限られた人しかいない。


そしてこの状況にあってそれは、

キリオブールのツァーリベルクお爺ちゃんでも、ゴッドアリアさんでもない。



 「必要ないです!!

 生きているのさえわかればそれでいいです!

 ラミィさんは何にも気にしなくて大丈夫です!!

 どうぞそのままお帰りください!!」


 『えー、でもあたし、

 この後、打ち上げに誘われてるんだけどー?』


そんな後先考えないお誘いしたの誰だ、ベルナさんか?


 「それは自由に参加してください!

 でも誰も食べちゃダメだし、魅了もかけちゃいけませんよ!?」


 「えー、なんでー?

 麻衣だって男の人にタネつけてもらうのアリだっていったじゃなーい?」


 「え、いや、そんなストレートな表現は・・・

 あ、いや、だから通常の恋愛というか、

ちゃんとした交渉してからならいいんですって!

 そ、それとは別にあたしの知り合いには手を出さないでく、くれればそれで・・・」


後ろ髪を引かれてるわけじゃない。

かと言って一度関係持ったからって、自分のものだなんて思ってるわけでもない。

単に・・・嫌でしょ!?

別に説明することもないよね?


 『あー、麻衣のお手つきには手を出しちゃダメってことねー、了解、りょーかいー!』


 「あ、あの、ラミィさん!?

 今の話、そっちで声出して話してませんよね?

 ケーニッヒさんやベルナさんに全部聞こえてませんよね!?」



 『んー?

 お手つきって何のことーとか、誰の話ーとか言ってるけどー?』


だああああああああああああああああああっ!!


 「その話、絶対に二人にしないでくださいね!!

 この後、カタンダ村にあたし顔出せなくなっちゃいますからね!!」


虚術に人の記憶を奪うスキルはないのだろうか。

造物主さま、よろしくお願い出来ませんでしょうか?




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