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第四百六十三話 ぼっち妖魔は崩れ落ちる

いいね! ありがとうございます!

<視点 麻衣>


危なかったあ・・・。


もうちょっとタバサさんの治癒呪文発動が遅かったら、あたしもヤバかったかもしれない。

まぁ、なんとか無事だったので良しとしよう。


・・・けれど最近、未来視のレベルがあがったのか、

自分でコントロールできないのは相変わらずだけど、極限の危機に一瞬だけ未来の光景が視えるようになったようだ。

たまたま前回の悪魔戦ではあたしの虚術でどうにかなったけど、

さすがに今回はどうしようもなかったけどね。


・・・いや、待てよ?




光属性攻撃・・・?



もしかして・・・。




あ!

いや、先にラミィさんを送り返そう!!


 「ラミィさん、さすがにもう大丈夫でしょう。

 敵ももう装備品しか残ってないし。」


遺体はもう塵だか灰になっている。

風でも吹けばそれらは全て吹き飛んでいくだけだろう。

まぁ、こんなところに風なんか吹かないけどね。


 「あーうん!

 間違いなくレベルも上がってるし、スキルポイントもかなり増えたね!!

 合計・・・ひーふーみー・・・六桁の大台乗ってるわー!!」


六桁!!

確かそれだけ貯まると・・・。

 「ラミィさん、もしかしてそれって・・。」

 「あーうん、もう浮遊は覚えられるね!

 今初めて表示されたけど、あたしの場合浮遊スキル覚えるのに十万ポイント必要だったみたい。」


 「例の人化はまだ無理そうですか。」

 「それはまだステータスウィンドウに表示されてないからね。

 でも噂とか聞くと、浮遊スキルの倍のポイントで取れそうみたいよ?」


つまりラミィさんの場合、人化を覚えるのは20万ポイントか。


・・・実はあたしも結構スキルポイント溜まってんだよね。

虚術のゼログラビティ覚えてからは、魔導体召喚と昆虫類召喚しか取得してない。


それこそ、悪魔戦、ベアトリチェさん戦、ダンジョンスタンピード戦とそしてここにくるまでの邪龍分体戦など、とんでもない量のスキルポイントが溜まってる。


けど・・・それを使って新たなスキルって言うのも・・・。

前にも言ったけど虚術最後の術は費用対効果が高すぎて使いどころが難しそう。


そして今あたしが取得できる新たなスキルは、他を探すと妖魔関連のものばかり・・・。


・・・いや人外スキルばかりと言えば納得していただけるだろうか・・・。


なに「憑依」って!?

あたしのカラダに霊を下すってこと!?

一応あたしのレベル以下のものしか呼べないようになってるけど怖すぎる!!

「エナジードレイン」・・・ベアトリチェさんも持っていたサキュバスのスキル。

「再生」スキル・・・欲しい。是が非でも欲しいが、これを取ると完全に人間とは呼ばれなくなってしまいそうなのだ・・・。


もちろん「浮遊」スキルも取得可能だ。

それどころか「人化」スキルも表示されている。

今ならいつでも取れる。

ただこれも前に言ったけど、ハーフ妖魔のあたしは外見上全く人間と差異がない。

人化したところで、鑑定で妖魔の表示が外れるだけで何もメリットがないのだ。


まぁ、この戦いが終わったら元の世界に帰れる「筈」だし、

今更人外スキルを持っているのがバレたとて、あたしの生活に悪影響が出る恐れはないのだけど、


・・・元の世界に戻ってから、なにがどうなるのか全く分からないのだ。


向こうで「妖魔」だと扱われるのだけは絶対に避けなければならない。



・・・おっと、これ以上時間はかけられないな。


 「ではラミィさんありがとうございました・・・。

 全部追わったら、元の世界に戻る前に挨拶に行きますよ。」


 「またあたしを呼ぶんじゃなくてー?」


元の世界に戻る手段と経緯がまだ不明なんだよねー。

 「あー、できればカタンダ村の皆さんにも挨拶に行きたいので、

 できればそっちに行きたいです。

 ただ・・・もしかしたら邪龍討伐後すぐに元の世界に戻される可能性もあるので、

 その場合は召喚術使うかもしれません。」


あたしとしては真っ当というか、分かりやすい話をしたはずだ。

・・・けれどラミィさんが、何か困ったようなというか不思議な表情を浮かべている。


ん?

何か背筋に冷たいものが走ったぞ?


 「・・・カタンダ村って・・・あそこ・・・」


 ドクン


え、ちょっと待って、ラミィさん、

その反応・・・。

あたしの心臓が早鐘を打つ・・・。



 「それって以前あたしと別れて麻衣が向かった人間の村よねー?」

 「は、はい、そうですけど・・・。」


ドックン ドックン ドックン・・・


 「あの村、近くにあったダンジョンのスタンピードで壊滅状態の筈よー?」






・・・う そ




あれ

おかしい、

視界が変だ。

ラミィさんの頭があたしの身長よりはるか上に見える。

ていうか、体に力が入らない。


 「「麻衣さん!」」

 「「麻衣!!」」

 「「麻衣ちゃん!!」」


なんでかみんなであたしの名を叫んでる。

どういうこと?


なんかあたしやった?

違うか、

みんなであたしの顔を覗き込んで・・・


もしかしてあたしは倒れ込んでいるのか?

ああ、足に力が入らないんだ。

尻もちついて動けなくなってしまったんだ。

でも意識はある。


 「あ・・・うう、あ」


声は出るけど言葉が出てこない。


 「どうしたんだ、麻衣さん!!」


ホント、どうしたんだろ。

頭もうまく回らない。

さっき、ラミィさんの言葉を聞いてから・・・


ああ、そうか、そうだ・・・

カタンダ村が壊滅って聞いて・・・


でも変だな

あたしはリーリト、

感情なんかいくらでもオフに出来る。


いくらあそこにお世話になった人たちがいっぱいいるからといって・・・



違う。

「お世話になった人たち」じゃないよ。


みんなの顔が一人一人浮かんでくるもの。


宿屋のローラちゃん、

あらゆる肉を料理してみせるというお母さん、変態誘拐犯をギルドに突き出すときについてきてくれた娘さん思いのお父さん、

普段の顔も怖いけど、怒った時の顔はもっと怖い、でも実は優しいエステハンさん、

目は細いけど、目はいつも笑ってないケーニッヒさんに、

お父さん大好きっこの受付チョコちゃん。

ぶっきらぼうに見えて実は世話好きのベルナさん、

そして・・・


わけのわからない挨拶しかできなくて背の高い・・・


ゲームじゃない。

物語でもない。

みんな、あたしと現実に何度も何度も触れ合った人たちである。

何でもない日常生活、買い物、ダンジョン探索、打ち上げパーティー、

二人っきり宿屋の一夜・・・。


それらが本当に幻に終わるって言うの・・・。


あたしの記憶にしか残らない、他に誰も知らない、誰の記憶にも残されない、小さな村が泡と消えてなくなる・・・



そんなのって


ダメだ

みんなの声が聞こえる。

立ち上がらないと。

邪龍を倒しに行かないと。


でも体が動かない。

他にあたしが選択できることなどないのに。

ここからあたしがカタンダ村を助けに行くことなんかできないし、

優先すべきは邪龍を倒すこと。

それ以外ない。

わかっている。

分かっているのにどうしてカラダが動かない。


そう、これは状態異常ですらない。

自分の心が自分に縛りをかけてしまっているだけ。

わかるとも。

だからタバサさんのディスペルも意味をなさない。


じゃあどうする?


ステータスウィンドウで妖魔スキルを片っ端から取るか。

妖魔に近づいて人間の心を失えば、立ち上がることができるかもしれない。


そうともあたしは妖魔リーリト。

闇の巫女。

この程度のショックで立ち直れなくなるとでも?


さぁ、見てろ。

憑依? 再生? エナジードレイン? 悪魔召喚? 浮遊? 人化?

全部取ってやろうじゃないか。


 『・・・・・・』



んん、なんだ、今の。


 『・・・・かい、リー・・・ト』


いんふぉめーしょんさん・・・じゃないな!!


 『立ち位置・・・変え・・・るのかい?』


「あの人」でもない、

お祖母ちゃんですらない!

この声は!!

忘れようはずもない、あたし達より上の次元にいる存在・・・


 「ど、どうしてこんな所に・・・いま!?」

 「麻衣さん!?」


あいつかっ!!


思わず口に出して叫んでしまった。

カラドックさんが心配してくれるけど応対する余裕はない。

 

 『別に僕はどっちでもいいけどね、

 君がどう変わるのかも見たいから。』



 「・・・見てるんですね、

 あの人だけでなく、あなたも・・・そして今もなお!!」



麻衣ちゃんが何か気づいたみたいだけど後回しにします。


カタンダ村にもダンジョン有りましたからねえ。

何も起きないわけがない。

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